カイコの若令幼虫における脂肪体の分布, 発達ならびに眠周期にともなう変化について光学顕微鏡で観察し, 以下の知見を得た。
1. 脂肪体の分布については, 第1および第9体節は第5体節に比較し, 脂肪体がよく発達している。同一体節内の脂肪体の分布状態は背脈管の両側と腹部神経節の周囲に多く, 体側部よりも背面側および腹面側に発達する傾向がある。
2. 脂肪体は小球状, ひも状, 紡錘状ならびに塊状を呈することが多い。第5および第9体節では, 小球状およびひも状の脂肪体が多く認められるが, 第1体節はいずれの時期も塊状の脂肪体が体腔に充満する。
3. 脂肪体細胞の細胞質中には, azure-B によく染色される径1.4~5.2μmの円形顆粒と, 染色性が低く空胞状にみえるさらに大形の顆粒が観察される。後者の大きさは通常4×6.5μm~13×23μmである。
4. azure-B 好染色性顆粒は2令摂食開始後しだいに増加し, 2令24時間で最高となりその後減少して眠期にはほとんど消失するが, 3令起蚕には再び出現する。一方, 染色性の低い顆粒は前者とは逆に, 眠期ならびに起蚕期に多く食桑期には少ない。
5. azure-B 好染色性顆粒は, 2令6時間では, 皮下脂肪体に比較して消化管周辺部の脂肪体細胞中に分布密度が高い。2令中期では, この顆粒の分布密度の差はいちじるしくなり, 眠期では消化管周辺部に局在する。
3令起蚕では, この顆粒は中腸周辺部に認められなくなり皮下脂肪体中に出現する。
以上のような顆粒の周期的な変動について論議した。
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