日本蚕糸学雑誌
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45 巻, 5 号
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  • I. スズ酸ゲルに対するメタクリル酸のグラフト重合
    坂口 育三, 清水 滉
    1976 年 45 巻 5 号 p. 381-384
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹のスズ増量を塩化第二スズで行なうとき, 絹の中に沈着するスズ酸ゲルと同様なスズ酸ゲルをつくり, これにMMAのグラフト重合を行ない次の結果が得られた。
    1. スズ酸ゲルに対するMMAのグラフト重量増加率は少く, 最高約6%であった。
    2. グラフト重合の最適条件はMMA濃度は仕込液量の約6%, グラフト温度は85℃付近, グラフト時間は約2hrであった。また非イオン活性剤濃度は0.1~1.5%の範囲では濃度が増加するにしたがいグラフト重量増加率がわずかに増加する傾向がみられた。
  • 岡 成美, 大山 勝夫
    1976 年 45 巻 5 号 p. 385-391
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワカルスの継代培養条件を明らかにするため, オーキシンの種類と濃度, サイトカイニン (BA), p-アミノ安息香酸 (PABA), イースト抽出物 (YE), カゼイン加水分解物 (CH) などの効果について検討した。その結果, カルスの継代培養においては, オーキシンのみの添加では不十分であり, サイトカイニンの添加が同時に必要なこと, PABAはカルスの褐変を少なくすること, YEおよびCHはあまり効果をもたないことが明らかとなった。この結果をもとに, 修正MS+NAA10-5M+BA10-6Mの培地で継代培養を行ったところ, 毎代約12倍の増殖率を維持することができた。
  • II. メタクリル酸メチルのグラフト重合条件およびスズ増量率とグラフト重量増加率との関係
    坂口 育三, 清水 滉
    1976 年 45 巻 5 号 p. 392-398
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    スズ増量絹に対しメタクリル酸メチルの無触媒, 乳化重合を行ない, グラフト条件やスズ増量率とグラフト重量増加率の関係を調べ次のことがわかった。
    1. スズ増量絹羽二重にMMAのグラフト重合を行ない, グラフト条件を調べたところ, MMA濃度0.5~5%の範囲では濃度が高くなるにしたがいグラフト重量増加率も多くなる傾向を示した。グラフト温度は約85℃付近でグラフト重量増加率が最高値を示した。グラフト時間は4時間までの範囲では時間が長くなるほどグラフト重量増加率も多くなった。非イオン活性剤濃度は0.3%付近まではグラフト重量増加率が増加したが, それ以上濃度が高くなっても増加がみられなかった。
    2. スズ増量した絹にMMAによるグラフト重合を行なうと, スズ増量率の多い試料ほどグラフト重量増加率はスズ増量率に逆比例して少くなった。また逆に, はじめにグラフト重合を行なった試料をスズ増量した場合も, グラフト重量増加率に逆比例してスズ増量率が減少した。この関係はスチレンのグラフト重合の場合にも同様であった。
  • 平林 潔, 安村 作郎, 佐藤 幸夫, 荒井 三雄
    1976 年 45 巻 5 号 p. 399-402
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    解じょの悪い繭のセリシンは難溶性で熱分析の結果によると, 溶解性と関連する吸熱ピークは260℃位に現われ, 易溶性セリシンでは230℃位に現われる。
    したがってこれらの吸熱ピークから繭の解じょの良否が判別できる。
  • 渡部 仁, 高宮 邦夫
    1976 年 45 巻 5 号 p. 403-406
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    人工飼料育蚕と桑葉育蚕を供試し, それらの幼虫期の光条件 (明, 暗, その組合せ) を異にした場合, 核多角体病ウイルス (NPV) と細胞質多角体病ウイルス (CPV) に対する感受性がどのように変わるか調べた。その結果つぎのような現象が認められた。
    1. 全暗条件で飼育された蚕は, 全明条件で飼育された蚕に比べてNPVおよびCPV感受性が高くなった。
    2. ウイルス接種前後の齢期を暗条件で飼育された蚕は, 全明条件で飼育された蚕に比べてウイルス感受性が高くなる傾向があった。
    3. 飼育光条件のウイルス感受性に及ぼす影響は, 人工飼料育蚕よりも桑葉育蚕で大きく, またNPV感受性よりもCPV感受性に対して大きく現われた。
    以上のような現象に関連して, 飼育光条件の異なる桑葉育蚕の中腸を組織学的に調査したところ, 全暗条件で飼育された蚕は全明条件で飼育された蚕に比べて中腸組織における盃状細胞の割合が大きく, また円筒細胞の細胞質に空胞が多かった。このような事実から, 飼育光条件の違いは直接中腸の組織分化の差異, 従って生理的変化を誘起し, これがウイルス感受性の差異をもたらすという過程が考察された。
  • 関 潔, 赤井 弘, 吉武 成美
    1976 年 45 巻 5 号 p. 407-414
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの若令幼虫における脂肪体の分布, 発達ならびに眠周期にともなう変化について光学顕微鏡で観察し, 以下の知見を得た。
    1. 脂肪体の分布については, 第1および第9体節は第5体節に比較し, 脂肪体がよく発達している。同一体節内の脂肪体の分布状態は背脈管の両側と腹部神経節の周囲に多く, 体側部よりも背面側および腹面側に発達する傾向がある。
    2. 脂肪体は小球状, ひも状, 紡錘状ならびに塊状を呈することが多い。第5および第9体節では, 小球状およびひも状の脂肪体が多く認められるが, 第1体節はいずれの時期も塊状の脂肪体が体腔に充満する。
    3. 脂肪体細胞の細胞質中には, azure-B によく染色される径1.4~5.2μmの円形顆粒と, 染色性が低く空胞状にみえるさらに大形の顆粒が観察される。後者の大きさは通常4×6.5μm~13×23μmである。
    4. azure-B 好染色性顆粒は2令摂食開始後しだいに増加し, 2令24時間で最高となりその後減少して眠期にはほとんど消失するが, 3令起蚕には再び出現する。一方, 染色性の低い顆粒は前者とは逆に, 眠期ならびに起蚕期に多く食桑期には少ない。
    5. azure-B 好染色性顆粒は, 2令6時間では, 皮下脂肪体に比較して消化管周辺部の脂肪体細胞中に分布密度が高い。2令中期では, この顆粒の分布密度の差はいちじるしくなり, 眠期では消化管周辺部に局在する。
    3令起蚕では, この顆粒は中腸周辺部に認められなくなり皮下脂肪体中に出現する。
    以上のような顆粒の周期的な変動について論議した。
  • 黄色 俊一
    1976 年 45 巻 5 号 p. 415-420
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの4, 5齢CA摘出幼虫の脳-側心体をBOUIN固定し, パラフィン切片をAF染色して無手術対照幼虫のそれと比較した。そしてこれらの結果をもとに, 脳の神経分泌について若干考察した。
    1. 終令幼虫の脳のNSCの特異的変化は, 大型MNSCの空胞化において顕著であった。
    2. CA摘出幼虫では脳内の軸索, ncc-interni およびCCにおいて, AF染色性物質が観察された。
    3. 対照幼虫のCAの共同被膜の内側および細胞間隙には, AF染色性物質が存在していた。
    4. これらの結果から, 脳のNSMの分泌経路は, 軸索-ncc-interni-CC-CAであり, CAがNSMの貯溜・放出器官であろうと推察した。
  • 平林 潔, 鈴木 孝雄, 奈倉 正宣, 石川 博
    1976 年 45 巻 5 号 p. 421-425
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    生糸が LiBr 水溶液中で構造変化を受け弾性体へ移る際の活性化エネルギーは25~30kcal/molである。また, あらかじめ塩縮処理により収縮させた生糸では20kcal/mole以下であり, 一般に LiBr 水溶液で切断されると考えられる水素結合は水洗により完全には再生しない。
    また, LiBr 水溶液中でのあらかじめ収縮させた生糸のもつ熱力学量の変化は未収縮生糸の収縮に伴うβ→α転移とともに減少する。
  • 平坂 忠雄
    1976 年 45 巻 5 号 p. 426-430
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    パルプを用い, カイコの人工飼料の素材の一つであるセルロースに関する実験を行った。得られた結果はつぎの通りである。
    1. 稀硫酸や稀アルカリによって加水分解し, パルプ粉末の重合度を500以下に低下させ, この試料を含んだ人工飼料でカイコを飼育したところ, 重合度300前後のものが適当で, 未処理のものに比べ, 経過日数で1~2日, 繭重で0.1g, 健蛹歩合で5~6%の向上がみられた。
    2. 350の重合度をもったパルプ粉末を, 50~325メッシュの範囲で5段階に篩別し, それぞれの飼料でカイコを飼育した。その結果, 100~200メッシュ以上の粒度の場合経過日数で2~3日, 繭重で0.3~0.4gの向上がみられた。
    3. 200万電子加速器を用い, パルプシートに吸収線量5~3000×105radの範囲で放射線を照射したところ, 20~2000×105radの範囲で照射したものは非照射に比し経過日数で1~2日, 繭重で0.1g前後, 健蛹歩合で3~5%の向上がみられた。なお, これらの試料は重合度が50前後で茶色に着色し, 特有の焦げ臭さを感知した。
    4. 加水分解で得られたセルロースと, 放射線照射で得られたセルロースのカイコの成長を最適とする重合度に差のみられたことについて考察を加えた。
  • 石坂 尊雄, 渡部 仁
    1976 年 45 巻 5 号 p. 431-436
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ヒシモンヨコバイの萎縮病桑樹液吸汁に伴う一部の成虫体蛋白質成分の減少と桑萎縮病病原保毒の関係を明らかにするための実験を行いつぎの結果を得た。
    1. 萎縮病桑樹液を吸汁したヒシモンヨコバイの成虫体蛋白質の電気泳動像で一部蛋白質成分の減少が認められた個体においては, 電子顕微鏡観察の結果, いずれも唾腺組織にMDMが観察された。一方, 病桑樹液を吸汁した虫でも, 蛋白質の電気泳動像に変化のみられない多くの個体では, その唾腺組織にMDMが認められなかったが, 一部MDMが検出される個体もあった。
    2. 萎縮病桑樹液を吸汁したヒシモンヨコバイを八丈桑実生苗に接種吸汁させ, その個体の蛋白質の電気泳動像と実生苗発病との関係を調べたところ, 実生苗を発病させた多くの個体が, 異常泳動像を示すことが認められた。
    3. 上記の結果から, ヒシモンヨコバイの萎縮病桑樹液吸汁に伴う成虫体蛋白質の電気泳動像の変化は, 虫体内における病原増殖に起因する現象と考えられる。
  • 大山 勝夫, 返田 助光, 佐藤 光政
    1976 年 45 巻 5 号 p. 437-442
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑枝条の伐採時における残葉が伐採後の再生長に果している役割を明らかにするため, ポット植桑苗 (品種, 一ノ瀬) を用いて, つぎの実験を行った。
    枝条の基部に4枚の葉を残葉して伐採した残葉区ならびに残葉しないで伐採した摘葉区を設け, それぞれの区について, 遮光処理を0日, 5日, 10日および15日間施し, 45日目まで乾物生産量を調べたところ大要つぎの結果を得た。
    1. 伐採後の再発芽の時期は残葉によって数日促進された。しかし, 伐採後の当初に遮光処理を施すと残葉による促進効果は低下した。
    2. 伐採後, 45日間の乾物生産量は伐採時の残葉によって著しく増大した。また, 伐採後, 遮光処理を施すと, 残葉の有無にかかわらず乾物生産量は減少したが, その程度は残葉した場合に顕著であった。
    3. 伐採後, 8日目における残葉の光合成能は, 伐採前に比較して著しく増大した。
    4. これらの結果から, 伐採後の残葉は乾物生産に好影響をもたらしているが, その内容は, 第1に残葉の光合成能があげられ, 第2は再発芽が促進されるため, 葉面積比が増大したものと考えられる。
  • II. 産卵時期による周年経過の相違
    伊庭 正樹
    1976 年 45 巻 5 号 p. 443-447
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    キボシカミキリ Psacothea hilaris PASCOE の産卵時期と周年経過との関係を明らかにするため, 初夏から晩秋の間に採集した卵からふ化した幼虫を, 自然温度で新鮮なクワ枝を用いて個体別に飼育し, その後の発育経過, 次世代成虫の羽化時期および大きさなどを調べて次の結果を得た。
    1. 6月および7月の産下卵に由来する幼虫は産下当年の夏秋季に, 8月以降とくに9月および10月の産下卵に由来する幼虫は産下翌年の春季から夏季にかけて発育がそれぞれ急速に進み, 前者は終齢幼虫, 後者の多くは若齢幼虫で越冬することが明らかにされた。
    2. 1に述べた幼虫の大多数は産下翌年の6月から8月に羽化した。しかし, 初夏の産下卵からは産下当年の8~9月, 秋季の産下卵からは産下翌々年の5~6月に羽化する個体も出現した。
    3. 次世代成虫は樹内成育期間が長いほど大形化する傾向が認められた。
    以上の結果から, 産卵時期の早晩によって幼虫の発育経過に差異があらわれ, これが次世代成虫の羽化時期と密接に関連しているといえる。
  • III. 2種の寄主植物に対する加害習性の比較
    伊庭 正樹
    1976 年 45 巻 5 号 p. 448-451
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    キボシカミキリ Psacothea hilaris PASCOE のクワおよびイチジク両寄主植物に対する加害習性について, 自然温度条件により成虫の後食および産卵選択性, 枝幹内における卵のふ化率, 幼虫の発育経過, 次世代成虫の羽化時期および大きさなどで比較検討し, 次の結果を得た。
    1. 成虫における後食は両種の葉および樹皮に対して行われた。これらのなかではクワの葉を最も好む傾向がみられ, また, イチジクでは樹皮に対する後食が高い頻度で観察された。
    2. 両種の枝に対する産卵選択性は認められず, 産下卵のふ化率にも差異はなかった。
    3. 両種の樹幹内における幼虫の発育経過および次世代成虫の羽化時期には顕著な差異はなかった。しかし, イチジクでは幼虫が成育初期から肥大し, 成虫もやや大形化する傾向が認められた。
  • 清水 慶昭
    1976 年 45 巻 5 号 p. 452-456
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ミルクカゼイン―アクリルニトリル共重合繊維を種々のタイプの反応性染料で染色し, 絹との比較を試みた。特に C. I. reactive blue 19の場合には, 反応に関与しているミルクカゼイン部分のアミノ酸を決定した。以上の実験から, 次のようなことがわかった。
    1. Basazol Bordeaux BはPM繊維に対して, 低pHにおいては吸尽率は高いが, pH 2.7~11.5にわたって固着率はあまり高くはなかった。常法による染色により, Cibacron brilliant red 3B-AはPM繊維, 絹に対して吸尽率, 固着率ともに低かった。
    2. Procion brilliant red M 2-B, Remazol brilliant blue R, Remazol black BはPM繊維, 絹両方に対して良好な固着性を示した。
    3. C. I. reactive blue 19とPM繊維の反応に関して, 非常に重要なアミノ酸は絹の場合と同様にリジン, ヒスチジンであった。そのほかアルギニン, アスパラギン酸, セリン, グルタミン酸, グリシン, アラニン, バリン, メチオニン, イソロイシン, ロイシンがpH 4-10で反応した。チロシンはpH 7, 10での反応が認められた。
  • 漆崎 末夫
    1976 年 45 巻 5 号 p. 457-458
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1976 年 45 巻 5 号 p. 459
    発行日: 1976/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Galleria mellonella の幼虫におけるアラタ体機能の制御
    Manduca sexta の脳―後脳神経分泌器官における軸索経路
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