1. ふっ化水素のクワおよびカイコに及ぼす影響について, ガス暴露実験装置を用いて調べた。
2. クワをふっ化水素に暴露したところ, 葉の先端や周縁から褐変が現われ, それは被害の進行につれて内方に拡がった。それに伴って葉身は捲縮し, やがて離脱した。
3. クワに被害徴候が現われるまでの時間は, ガス濃度が30ppbの場合に12時間程度, 200ppbの場合に1.5時間程度であった。被害徴候はガス濃度と暴露時間の積が300~360程度になったとき発現した。
4. 被害徴候が現われた時点における葉のふっ素取り込み量 (乾物重あたり) は, ガス濃度が30ppbの場合に107ppm程度, 200ppbの場合に98ppm程度であって, ガス濃度が違っても大差なかった。
5. ふっ化水素に暴露したクワ葉をカイコに給与したところ, ふっ素量 (乾物重あたり) が35ppm程度以上の葉がカイコに悪影響を及ぼした。カイコはその汚染度に応じて挙動不活発, 食慾不振などを示したのち, 発育経過の遅延, 不斉, 半脱皮状などとなり, 時に環節間膜に黒色斑点などを現わして, 平伏状, 軟化病状などで死んだ。
6. ふっ化水素に暴露しながらカイコを飼育したところ, ガス濃度が30ppbでも悪影響が現われた。ふっ化水素酸を飲ませた場合の致死量は体重1gあたり49~58.5μg程度であった。カイコはふっ化物に敏感なので, ふっ化物による環境汚染検定のための指標生物として有用である。
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