日本蚕糸学雑誌
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48 巻, 1 号
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  • 渡辺 喜二郎, 堀江 保宏
    1979 年 48 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    アミノ酸飼料を用いて家蚕5齢幼虫を飼育し, 5齢期の各組織の成長, 体液成分および尿酸排泄に及ぼす飼料中の酸性アミノ酸および非必須アミノ酸量の影響を検討した。得られた結果を要約すると次のごとくである。
    (1) 5齢期の体重は, 酸性・非必須アミノ酸量が143mg/g (E/TA値0.44) において最大を示し, 絹糸腺, 脂肪組織の成長は, 両アミノ酸量がさらに多量の場合に良好であった。
    (2) 絹糸腺以外の体組織, 中腸および睾丸は, 絹糸腺, 脂肪組織に比べて両アミノ酸量が少量 (E/TA値が高い) の場合に成長が良かった。
    (3) 体液蛋白質量は飼料中の両アミノ酸の添加量が増すにつれて増加したが, 遊離アミノ酸量は比較的一定値を示した。
    (4) 尿酸排泄量は両アミノ酸添加量が200mg/g以上で急激に増加した。
    (5) 上記各組織の成長, 体液成分, 尿酸排泄に対する両アミノ酸量の影響は飼料中の蔗糖の存否で異なり, 蔗糖無添加区では上記アミノ酸の蚕体内の利用が妨げられる徴候がみられた。
  • 小西 孝, 坂部 寛, 有本 肇
    1979 年 48 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    LiBr 水溶液に生糸を浸漬し, 緩和による内部ひずみを除き伸度の回復を試みた。
    1) LiBr 水溶液濃度1~6M処理生糸は強度, ヤング率および動的弾性率には大きな変化はなく, 分子の主鎖は切断していない。伸度, タフネスおよび動的損失率は増加し, これは生糸を構成するフィブロイン繊維の緩和と非晶領域の緩和によるものと考えられる。この濃度範囲では表面観察からセリシンの損傷は軽微であり, X線回折からも結晶破壊は起らず, 繊維の配列と分子配向が僅かに乱れる程度である。
    2) LiBr 水溶液濃度が8Mになると, 塩縮を起し, 強伸度はいちじるしく低下する。X線回折から結晶破壊も認められる。
    3) LiBr 水溶液濃度が9Mになるとβ型結晶中にα型結晶が現われ, セリシンおよびフィブロインは溶解固着する。
  • 野口 洋子, 山口 邦友
    1979 年 48 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコCPVに感染後治癒に向かったアメリカシロヒトリ幼虫に, 再び同種ウイルスを接種し, 2度目のウイルスに対して感染防禦が成立するか否か検討した。カイコCPVは正六面体の多角体を形成するTC系統と, ぶどうの房状の多角体を形成するB1系統を供試した。その結果, B1系統に感染後治癒に向かった2齢起, もしくは治癒の進んだ3齢起にTC系統を接種すると著しい抵抗性を示し, TC系統の多角体形成個体は全く認められず, またウイルス系統の接種順序を変えても結果は同様であった。従ってカイコCPVに感染後治癒に向かったアメリカシロヒトリは, 新たに接種された同種ウイルスに極めて感染しにくいことが明らかで免疫的生体防禦機構が存在するものと考えられた。
  • 阿部 芳彦, 藤原 公
    1979 年 48 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ幼虫の中腸円筒細胞にのみ寄生する微胞子虫の1種, pleistophora sp. の増殖様式を組織学的に追求した。
    本原虫は中腸先端部の円筒細胞で核分裂し, 桿状の多核シゾントとなり, 分裂して球形の2核性シゾントとなった。2核性シゾントは宿主細胞外へ移行し, 新しい宿主細胞へ再び侵入して増殖する。これに対し, 中腸末端部の円筒細胞へ侵入した原虫では核分裂後に形成された2核性シゾントはスポロントとなり, 核分裂を行ってパンスポロブラストとなって胞子を形成した。
    以上の知見をもとに, 本原虫の生活史について論述した。
  • 中井沢 健二, 諸橋 征雄, 中島 誠
    1979 年 48 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    第4眠期 (48時間) の呼吸活性は最初の12時間 (Phase a) で増加し, 次の12時間 (Phase b) で急減するが, 最後の12時間 (Phase d) で再び増加するという変化を示した。Phase a では諸物質量が増加し体重も増加することから Phase a の呼吸活性の増加は, 生合成活性の増加と関連しているように思われた。Phase b ではキチン量および中腸内の脂質および窒素量が減少した。これは第4齢幼虫の諸組織の分解の結果と考えられ, この Phase における呼吸活性の急減もこれらの事を反映しているように思われる。一方, Phase d では中腸内の脂質および窒素量の増加が観察された。この時期は新外皮形成期に相当しているという事を考えあわせると, Phase d は第5齢幼虫の諸組織の形成が行なわれている時期に相当していると考えられ, Phase d の呼吸活性の増加はこの観点から理解することができる。
    Phase c とdでは幼虫は無摂食であったので, この時期の呼吸基質を調べた所, Phase c では体液の窒素化合物および体腔側脂肪体の脂質が主に利用されており, Phase d では体壁内および体腔側脂肪体に含まれる脂質が主に利用されていた。
    旧クチクラのキチンはその一部が脱皮殻, あるいは起蚕の体表面に捨てられているにすぎなかった事から, そのほとんどは回収されて再利用されているものと考えられた。
  • 基質特異性と阻害剤の影響
    巌本 章子, 江口 正治
    1979 年 48 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの消化液より分離した3種のプロテアーゼについて, 基質特異性と各種阻害剤の影響を調べ, これらの酵素の性質を比較検討した。
    実験に用いた5種のタンパク質の中では, ハマステンカゼインが最も分解されやすく, 大豆カゼインの分解活性は低かった。また3つのプロテアーゼのなかで, 6B-1が比較的天然のタンパク質を分解しやすいという結果が得られた。合成基質を用いた場合, TAMEについては6B-3が最も分解しやすく, BAPNAの場合は6B-2および3が分解しやすいことがわかった。しかし, 6B-1は上記2つのトリプシンに特異的な合成基質の分解活性が弱かった。
    種々の合成阻害剤の影響からこれらのプロテアーゼは, 共に活性中心にセリンをもったプロテアーゼで, SH基に依存性のプロテアーゼとみることができる。さらに大豆トリプシンインヒビターによって3種のプロテアーゼともに阻害を受けたが, 程度は異っていた。また, カイコの血液中に存在するプロテアーゼインヒビターによっても6B-2および3は強く影響を受けたが, 6B-1はほとんど阻害されなかった。
    以上を考察した結果, 消化液の3種のプロテアーゼは, 基質特異性や阻害剤に対する挙動の面でも類似点と相違点のあることがわかり, 基質の分解などの点で役割の分担が推定できる。
  • 小針 要吉, 赤井 弘
    1979 年 48 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    現行蚕品種に対するJH投与による増繭効果を明らかにする目的で春蚕期にマンタの投与試験を実施した。
    1. JH投与による5繭の経過日数は, 投与液の濃度が高まるに従って長くなった。上蔟蚕数では対照区に比べ差はないが, 蔟中減蚕は高濃度のJH投与区に若干みられた。
    2. 化蛹歩合は投与時期が遅くなるほど, また同一投与時期では投与液の濃度が高いほど低下する傾向がみられた。
    3. 繭重および繭層重の優れた現行蚕品種にJHを投与した場合においても高い増繭効果がみられ, 実用範囲の投与濃度 (500~100倍液) においても繭層重で7~19%の増加がみられた。増繭効果の高い区では, 対照区の繭層重の雌雄平均62.7cgに対し, JH投与区では76.8cg (雌81cg,雄72.9cg) に達し, 個体別では90cg以上の巨大な繭が多数得られた。
    4. 従来のJH投与に関する諸研究を比較し, 今回のような絹生産量の高い場合における増繭効果とその限界について考察した。
  • 河上 清, 仲 昭年
    1979 年 48 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの硬化病の感染源は, 糸状菌病でへい死した各種の野外昆虫とされているが, それら昆虫への第1次感染源を探索するために桑園土壌から Metarhizium anisopliae を検出し, 分離菌のカイコに対する病原性および培養的性状などを調査し, つぎの結果をえた。
    1. 土壌から M. anisopliae を選択的に検出するためCRCC寒天を案出し, それによる希釈平板法で菌検出を行なった。
    2. 桑園土壌からカイコに病原性を示す M. anisopliae を, 高頻度 (約70%) に検出した。
    3. カイコの黒きょう病菌としては, 従来記載されていない小型分生子・淡緑色コロニー系 (M. anisopliae var. anisopliae) および大型分生子・暗黄緑色コロニー系 (M. anisopliae var. major) の菌株を見出した。
    以上により, 桑園土壌が本菌の第1次感染源であり, さらに本菌は土壌菌である可能性が明らかにされた。
  • 江口 正治, 巌本 章子, 山内 啓二
    1979 年 48 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    中腸組織, 胃腔膜および消化液プロテアーゼの関係について, カラムによる溶出パターン, 酵素活性および免疫学的方法によって比較検討した。
    セファローズ6Bカラムによって分離すると, 中腸と胃腔膜の結合型プロテアーゼのピークの位置が一致した。遊離型プロテアーゼについても, 中腸, 胃腔膜および消化液プロテアーゼの溶出位置に関連性がみられた。また, 中腸の結合型プロテアーゼをルブロールWXによって可溶化すると, 消化液プロテアーゼの第2のピーク (6B2) に相当する酵素に転換することがわかった。
    さらに, 胃腔膜プロテアーゼの重量当りの活性は中腸のものより少し低い程度であるが, 比活性でみると高く, むしろ消化液のプロテアーゼ活性に近かった。また, 上記3つの起源のプロテアーゼは, 免疫学的には区別できないことが明らかになった。
    得られた結果から, 中腸組織のプロテアーゼが胃腔膜で保留あるいは濃縮され, 消化液のプロテアーゼとして放出されるものと推論した。また, 中腸から消化液プロテアーゼへ, あるいは消化液プロテアーゼ3型の相互転換についても論じた。
  • 三木 六男, 村上 昭雄
    1979 年 48 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ胚子期の雌生殖腺・細胞の発育と放射線感受性の関係を分析する目的で, 支108号の産下44時間目より212時間目までの胚子を12または24時間々隔で137Csγ-線 (線量率300R/min) を1KR照射し, 孵化幼虫を飼育し, 化蛾後標識系統 (pe・re) 雄と交配し, その産下したF1卵について突然変異頻度を測定し, 以下の結果を得た。
    1. 突然変異頻度は産下80時間目から急激に増加し, 産下116時間目に最高値に達し, それ以後低下するが, 反転完了後から産下188時間目までほとんど変化せず, 産下212時間目 (孵化2日前) に再び上昇した。
    2. 生殖細胞は産下68時間目 (Stage 17) から産下116時間目 (Stage 21) に至る48時間の間に, 一世代30時間のサイクルで細胞の増加がみられた。また, 生殖腺の形成は支108号系統において産下116時間目に完了することが観察された。しかし産下116時間以後約96時間は生殖細胞数の増加は非常に少なく分裂増殖がほとんど認められず, 孵化2日前に再度増殖が開始された。
    3. 突然変異頻度を指標とした生殖腺形成期における放射線感受性の変動は, 幼虫期の生殖原細胞の場合と同様に生殖細胞の分裂増殖に強く依存することが認められた。
  • 東城 功
    1979 年 48 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワ品種「一ノ瀬」の代出苗の中から黄葉の自然突然変異体がみいだされた。
    この突然変異は形態, 発芽, 性その他の形質は全く一ノ瀬と同様で, 葉色のみが異なった。そして葉色は季節によって異なり, 春期および秋期の比較的低温のときは黄色度が強く, 夏期の高温時は弱かった。また, この黄色形質はF1に遺伝することが判明した。
  • 黒田 秩
    1979 年 48 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    アミノ基転移反応に関与するケト酸の1つであり, またトリカルボン酸回路のメンバーでもあるα-ケトグルタル酸 (α-KG) について, カイコ幼虫期の体液と中腸組織での発育にともなう消長を, 大倉ら (1971) の吸光度定量法を用いて調べた。
    単位体液量当りのα-KG量は第4齢の食桑期と第5齢の前・中期の間, ほとんど変動がなく定常値を維持したが, 眠期では著しい増加とその後の減少がみられた。一方, 中腸組織のα-KG量も体液での消長とよく類似したパターンを示した。
    また供試した品種においては体液α-KGの定常値に品種的な差異の存在する可能性があり, さらに雌の値は雄よりもやや高い傾向にあることがわかった。
  • 川村 直子
    1979 年 48 巻 1 号 p. 77-85
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕卵の漿液膜の核および細胞の大きさを測定し, 倍数性との関係を検討した。
    漿液膜細胞の核の面積は, 4倍体の卵では2倍体の卵の約2倍であった。一方, 3倍体の卵では, その平均値は2倍体と4倍体の卵の中間の値をとったが2倍体の卵との間に統計的に有意な差は見られなかった。漿液膜における核・細胞比は, 2nおよび4n×4n卵では殆んど差は見られず, これは核の大きさの増加とともに細胞の大きさが増加することを示している。
    発生初期に低温処理された卵の中で, 漿液膜細胞の核が大きい卵と小さい卵を選別し, 別々に飼育したところ, 核の大きい卵の区では97%が4倍体であった。これに対し, 核の小さい卵の区からは, 113頭中1頭の4倍体の個体が出現したのみで, 残りはすべて2倍体であった。
    以上の結果から, 滝沢・玉沢 (1968) の低温処理法によって4倍体の蚕を得る場合に, 漿液膜細胞の核の大きさによる卵の選別は, 有効な一手段と考えられる。
  • 1979 年 48 巻 1 号 p. 86
    発行日: 1979/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    切りとつたウラジロサトウカエデ (Acer saccharinum L.) 葉の光合成, 蒸散および暗呼吸速度におよぼすカドミウムの影響
    Popilius disjunctus における耐寒性の季節的変化
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