剣持および剣持からコルヒチンによって誘起された4倍体の5年生桑樹から冬枝を採取し, 5kR/hで0~10kRのガンマー線を照射した後, 伸長した新梢の生長円錐および若齢器官における放射線の影響を組織細胞学的に調査し次の結果を得た。
1. ガンマー線照射の影響は生長円錐, 腋芽の始原体, 葉および花器の原基および幼葉に及んだが, このうち葉および花器の原基で影響が大きかった。
2. 照射後の生長円錐および若齢の器官では細胞分裂の異常, 細胞破壊, ハイデンハインのヘマトキシリンに対する細胞の濃染および非染色, 細胞の巨大化, 2核および多核細胞の形成, 染色体橋の形成, 核質の増加等が観察されたが, このうち細胞の巨大化および核質の増加が著しかった。
3. ガンマー線照射後に認められる生長の抑制, 叉状分枝および帯化枝の発生, 多裂, 葉先・葉縁・葉底の奇形, 葉のよじれ・ちぢれ・ちぎれ, まだら葉等の葉の異常は細胞の破壊による生長円錐の叉状化, 葉原基, 幼葉, 葉脈の細胞破壊および幼葉の切断等に起因するものと推定される。
4. 生長円錐, 腋芽の始原体, 胚のう等における細胞の巨大化, 核質の増加, 2核細胞の形成等は倍数体および混数体の形成を示唆している。
5. ガンマー線照射後の生長円錐における組織細胞学的な異常の出現は高線量は低線量に比較して, また2倍体は4倍体に比較して著しかった。
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