日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
49 巻, 4 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 第1報 養分の分布
    渋谷 加代子, 稲松 勝子
    1980 年 49 巻 4 号 p. 279-287
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑園に対する家畜排泄物の効果的施用技術の確立を目途とし, ライシメーターを用いて家畜ふん尿を多量に連用した場合における桑に与える影響, ならびに家畜ふん尿成分の土壌中に蓄積と溶脱状況, 桑へのとりこみ量を調べてその収支を明らかにした。
    得られた結果は次のとおりである。
    (1) 窒素200kg/10a相当量の豚ぷんを施用した場合, 障害はみとめられず対照区に比べて増収となった。しかし鶏ふんの場合には葉量は増収となったが, 条や根の生育は対照区と同等かやや不良であった。
    (2) 施用した成分中溶脱量が多かったのは陽イオンではナトリウム, 陰イオンでは塩素であった。ついでカリウム, 硝酸であったがリン酸の溶脱はほとんど認められなかった。
    (3) 土壌への残存量を分析した結果, リン酸とカリウムに関しては家畜の種類にかかわらず, 相当量が土壌に蓄積することを示した。窒素の残存量は豚ぷん混和区で最も多かった。
    (4) 施用成分の収支を算出した結果, 三要素とも土壌への残存量が多く, 流亡量は少なくて窒素で施用量に対して35-18%以下, カリウムで10%以下, リン酸では痕跡であった。
  • 東城 功
    1980 年 49 巻 4 号 p. 288-293
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    コルヒチン処理により育成した剣持 (♀), 鼠返 (♀), 一ノ瀬 (♀), 改良鼠返 (♂), 利桑 (♀) の4倍体と2倍性品種改良鼠返 (♂) および一ノ瀬との交雑実生中に混数体が出現した。
    1. 混数体の葉は3倍性細胞 (2n=42) と6倍性細胞 (2n=84) とが混在していた。また, 6倍性細胞の周辺には巨大細胞が多かった。
    2. 出現した混数体の外部形態の共通的特徴は, 葉が不定形であること, 葉先・葉縁・葉底などが奇形を呈すること, 葉脈は曲折して左右非対称で縮れていること, 葉序が不規則であること等である。また, 葉色にむらがあり葉面は粗〓ででこぼこが甚しかった。その葉の断面をみると, クチクラ層・表皮細胞あるいは柵状組織等に異常を来し, その配列も不均一で葉の厚薄が甚しかった。なお, 葉脈の細胞組織も異常を来していた。
    3. 混数性枝条と正常枝条とが共存する株について, 枝条長を比較すると前者は後者より短かった。また, 葉の大きさは, いずれの葉位においても前者が小さかった。
    4. 春期における発芽は正常なものに比較して遅くかつ不整であった。
  • 東城 功
    1980 年 49 巻 4 号 p. 294-301
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    剣持および剣持からコルヒチンによって誘起された4倍体の5年生桑樹から冬枝を採取し, 5kR/hで0~10kRのガンマー線を照射した後, 伸長した新梢の生長円錐および若齢器官における放射線の影響を組織細胞学的に調査し次の結果を得た。
    1. ガンマー線照射の影響は生長円錐, 腋芽の始原体, 葉および花器の原基および幼葉に及んだが, このうち葉および花器の原基で影響が大きかった。
    2. 照射後の生長円錐および若齢の器官では細胞分裂の異常, 細胞破壊, ハイデンハインのヘマトキシリンに対する細胞の濃染および非染色, 細胞の巨大化, 2核および多核細胞の形成, 染色体橋の形成, 核質の増加等が観察されたが, このうち細胞の巨大化および核質の増加が著しかった。
    3. ガンマー線照射後に認められる生長の抑制, 叉状分枝および帯化枝の発生, 多裂, 葉先・葉縁・葉底の奇形, 葉のよじれ・ちぢれ・ちぎれ, まだら葉等の葉の異常は細胞の破壊による生長円錐の叉状化, 葉原基, 幼葉, 葉脈の細胞破壊および幼葉の切断等に起因するものと推定される。
    4. 生長円錐, 腋芽の始原体, 胚のう等における細胞の巨大化, 核質の増加, 2核細胞の形成等は倍数体および混数体の形成を示唆している。
    5. ガンマー線照射後の生長円錐における組織細胞学的な異常の出現は高線量は低線量に比較して, また2倍体は4倍体に比較して著しかった。
  • I 無水酢酸による絹のアセチル化
    塩崎 英樹
    1980 年 49 巻 4 号 p. 302-306
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    溶媒としてDMFあるいは氷酢酸を用いて無水酢酸による絹のアセチル化について, 処理濃度, 温度および時間を変えて検討した。無触媒下, 温度65~90℃でのこの条件では主としてチロシン残基に反応を生ずると考えられるが, 最高反応率 (アセチル含有量) はDMF法で6%強, 氷酢酸法では5%弱であった。さらに熱酢酸による前処理を施してから, 硫酸触媒の存在で氷酢酸法によって処理する方式について検討し, 最高反応率14%を得ることができた。ただしこれにはオキシアミノ酸残基への硫酸化副反応の寄与もあると思われる。アセチル化絹は染色性は変らず, 吸湿性の低下と防しわ性の若干の向上が認められた。
  • II 種々のモノカルボン酸無水物の反応に対する置換基効果
    塩崎 英樹, 田中 芳雄
    1980 年 49 巻 4 号 p. 307-311
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    10種のモノカルボン酸無水物, (RCO)2Oの絹に対する反応性を無触媒下, DMF溶媒中, 温度65~95℃で検討した。反応性は一部例外もあるが, 脂肪族置換基の鎖長が長い程低くなる傾向があり, 芳香族置換基ではR=C6H5よりもC6H5OCH2やH3OS-C6H4の方がはるかに高かった。この置換基効果についてはTAFTの式を変形した直線的自由エネルギー関係式によって考察し, Rの立体因子の寄与が大きいことを示唆した。巨大アシル基を導入した絹は, 疎水的相互作用の寄与によってしわ回復性を増加し, 吸湿性が著しく低下し, 銅エチレンジアミンに不溶性になった。フェノキシアセチル化絹は分散染料による転写捺染性を顕著に示したが, ベンゾイル化を含めた他のアシル化ではこのような効果は認められなかった。
  • II 弱光下における枝条の貯蔵物質とその分配
    村上 毅
    1980 年 49 巻 4 号 p. 312-318
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1年生桑枝条の基部から順次12本づつ切り取って調整したさし穂を, 35℃, 弱光下でさし木し, 貯蔵物質の消費とその分配について検討を加えた。その結果を要約すればつぎのとおりである。
    1. 35℃, 弱光下でさし木した場合, さし穂が枯死するまでにさし穂乾物量の17~23%が減少し, その減少率は枝条先端に近いものほど高かった。
    2. さし穂の単位表面積当り乾量は, さし木前およびさし穂の大部分が枯死した調査時とも, さし木前さし穂基部直径との間に高い相関を示し, これを利用すればさし穂乾量, 貯蔵物質減少量を推定出来る。
    3. 消費貯蔵物質のうち, 根, さし穂および新梢の生長への分配率は, それぞれ2~7, 10~20および14~20%であり, 60~70%は呼吸によって消費されたものと考えられる。
    4. さし穂単位容積当り消費貯蔵物質量は, さし穂採取部位間に差がなくほぼ80~95mg/cm3であったが, 単位表面積当り消費貯蔵物質量は20~40mg/cm2であり, 枝条基部に近いものほど多かった。
    5. さし穂の生存期間はさし穂採取部位によって異り, 20~50日の範囲であったが, 貯蔵物質の転形率は0.3~0.4であり, さし穂採取部位間に大きな差はなかった。
  • X 分散染料に対する水/ブタノール処理スチレングラフト絹繊維の染色性
    加古 武, 片山 明, 黒木 宣彦
    1980 年 49 巻 4 号 p. 319-323
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    水/ブタノール混合溶媒で, 前処理した絹, スチレングラフト絹繊維を, 4-ジメチルアミノアゾベンゼンで染色 (水系) し, 適当な仮定を設けてスチレングラフトポリマー部分に対する混合溶媒の影響を見積った。結果は, 次のようである。
    1) 混合溶媒処理により, スチレングラフトポリマー部分に対する分散染料の分配係数は大となる。この効果は混合溶媒中のブタノール濃度が大になるにつれてより顕著となる。
    2) 混合溶媒処理により, スチレングラフトポリマー部分に対する分散染料の染色速度は大となる。この効果は混合溶媒中のブタノール濃度が大になるにつれてより顕著となる。
    3) 1), 2)の結果から, 混合溶媒処理により, スチレングラフトポリマー部分は可塑化され, 染着有効体積が増大すると, 同時に構造はより乱れた状態になるものと推定した。
  • (I) 絹紡織物の繰返し伸長による剛軟度について
    土屋 幾雄, 久間 秀彦, 松本 陽一
    1980 年 49 巻 4 号 p. 324-329
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹紡織物の繰返し伸長による剛軟度は, 伸長率の増加と共に変化し, 緯糸の伸長において, 2つのピークをもつことを認めた。即ち, 1%での第1ピークは, 緯糸の繊維間空隙の変化であり, 3%での第2ピークは, 緯糸中の単繊維の再配列化のためと考えられる。また, 絹紡織物の繰返し伸長における剛軟度は, その撚係数及び織物組織が, かなり影響することがわかった。
  • 第2報 晩秋期伐採時の残葉効果
    松波 達也
    1980 年 49 巻 4 号 p. 330-334
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑枝条伐採時における残葉はその後の再生長の状態に影響を及ぼすが, 伐採時期や残葉のエイジによって, その程度が異なることが予想されたため, 晩秋期に伐採を行って残葉のエイジが生育に及ぼす効果について検討した。その結果の大要は次の通りであった。
    1. 晩秋期における残葉は伐採後の側芽の生育に対して抑制作用を示したが, この程度は残葉のエイジによって異なり, 若葉でその作用が強く, 古葉で弱い傾向を示した。
    2. 冬期および翌春における乾物重は新梢・古条残葉区および新梢残葉区で多く, 次いで古条残葉区, 全摘葉区の順であった。
    3. 残葉各区における残葉の着生状態は10月下旬まで伐採時とほとんど変らず, 以後減少をはじめ, 11月下旬にほとんど落葉した。
    4. 各器官におけるでんぷん含量は再発芽の有無と密接な関連があり, 再発芽した場合にはいずれの器官においても大幅な減少が認められたが, 特に根の含有量が著しく減少した。
    5. 伐採時の残葉の有無は翌春の新梢量にも影響を及ぼし, 全摘葉区に比較して新梢に残葉した場合は91%, 古条に残葉した場合は45%それぞれ増加した。
  • 尾暮 正義, 原島 典雄, 長沼 計作, 松島 幹夫
    1980 年 49 巻 4 号 p. 335-341
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑品種の性表現を変動させ, 任意の交雑組合せを可能にする目的で, エスレルおよびジベレリン散布処理の性表現に及ぼす影響について検討し, 次の結果を得た。
    1. エスレル400ppmの散布処理による桑の性表現の雌性化において品種間差異があり, 改良鼠返が一番高く, 続いて白芽荊桑, しんいちのせ, あつばみどり, 赤芽魯桑の順で, 司桑は雌性化が認められなかった。
    2. エスレル散布処理により誘発した雌花穂の採種量は無処理の雌花穂と同程度であり, 発芽率および発芽勢もそん色がなかった。
    3. ジベレリン (GA3) 散布処理によって, 雌雄両性品種の大島桑に雄性化が認められ, 雌性品種の剣持には多数の奇形花穂が観察された。
  • 石坂 尊雄
    1980 年 49 巻 4 号 p. 342-346
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    萎縮病桑樹液を吸汁したヒシモンヨコバイ成虫の組織を観察し, つぎの結果を得た。
    1. 萎縮病桑樹液を吸汁したヒシモンヨコバイ成虫では唾腺組織の腺細胞の細胞質にフォイルゲン陽性部位が認められた。さらに腺細胞には液胞の増加, 細胞の変形などの異常がみられた。
    2. フォイルゲン陽性部位は唾腺組織のほかにマルピギー管, 脂肪組織にも観察された。しかしこれらの組織では唾腺組織に比べフォイルゲン陽性部位は少なく, しかも細胞の形態的変化もみられなかった。
    3. 本実験で確認されたフォイルゲン陽性部位は, 健全桑樹液を吸汁したヒシモンヨコバイ成虫では全く確認されないこと, 保毒虫の唾腺組織の電子顕微鏡観察により高い頻度でMDMが観察されたことなどからMDMの増殖部位を示すものと考えられた。
  • 蜷木 理, 土井 良宏, 筑紫 春生
    1980 年 49 巻 4 号 p. 347-351
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    2眠蚕の連関検索を行った結果, 本遺伝子は第11連関群に属しており, 既知の眠性遺伝子とは異なることが判明した。そこで改めてこれを2眠 dimolting (記号, mod) と命名した。さらに, K, mp両遺伝子を基準に選び3点実験を行い, mod遺伝子の座位を第11連関群15.5と決定した。
  • II 温度パターンによる煮繭の最適化について
    木下 晴夫, 菅沼 よし, 渡瀬 久也
    1980 年 49 巻 4 号 p. 352-358
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    煮繭工程内の処理効果は互に関連しあっているので特定要因を独立に変動させても的確に工程を制御するとは必ずしも期待できない。そこで, 回帰主成分分析法により煮繭要因を集約して少数の煮繭温度パターンを決定することについて検討した。その結果の大要は次のとおりである。
    1) 煮繭要因は3個の互に独立な回帰主成分に集約された。
    2) 第1回帰主成分は浸漬部温度および触蒸部温度の影響が大きく, 繭層セリシンの膨潤程度の均一化をはかる温度パターンで, 特に大中節の個数および小節点に対して効果が大きい。
    3) 第2回帰主成分は滲透部温度の影響が大きい。
    4) 第3回帰主成分は触蒸部温度あるいは調整部温度の影響が大きい。
    5) 第2回帰主成分, 第3回帰主成分は中層・内層セリシンあるいは繭層セリシン全体の膨化や凝集をはかる温度パターンで, 特に糸故障や索抄緒効率に対して効果が大きい。
    6) 繰糸成績より, 適正な温度パターンを選択し, 煮繭工程を制御することによって, 煮繭の最適パターンが形式化され, また単純化された。
  • 岩成 義才
    1980 年 49 巻 4 号 p. 359-360
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 竹下 弘夫, 平尾 常男
    1980 年 49 巻 4 号 p. 361-362
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 川北 弘
    1980 年 49 巻 4 号 p. 363-364
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 黒田 秧
    1980 年 49 巻 4 号 p. 365-366
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 石坂 尊雄
    1980 年 49 巻 4 号 p. 367-368
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 高橋 幸吉, 藤本 勲, 小松 利久男
    1980 年 49 巻 4 号 p. 369-370
    発行日: 1980/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
feedback
Top