蚕の囲食膜は細菌によって溶解されるが, この溶子解力がもっとも強い
Aeromonas sp. を材料として, その培養ろ液を用いて囲食膜の溶解に関与する酵素にこついて検討を加え次の結果を得た。
1. 囲食膜を添加した合成培地で
Aeromonas sp. を培養したところ, 培養ろ液中に多量のアミノ酸が生成され, 強力な蛋白分解酵素作用のあることが判明した。
2. 蛋白分解酵素産生に関する培養の至適条件は, 30℃で2日間振とう培養することであった。
3. 蚕蛹煎汁培地で培養したろ液と, 合成培地で培養したろ液の酵素活性をカゼインを基質にして調べたところ, 前者にきわめて高い活性が認められた。
4. この酵素作用の至適温度は55℃, 至適pHは8.2で比較的広いpH範囲を示した。
5. この酵素液を用いて囲食膜を基質として酵素作用を調べたところ, カゼインを基質にした場合よりは低いが酵素活性が認められた。
6. 合成培地に蛋白質, ペプチドを添加することにより酵素産生が著しく促進され, 蛋白物質添加が酵素産生の促進要因として重要な意義をもっているものと考えた。一方, グリシルグリシンならびにグリシン添加は
Aeromonas sp.の増殖と酵素産生を阻害することが知られた。
7. 硫安分画沈澱にこおいては20~55%飽和の硫安分画に全酵素活性の約89.4%が集まった。
8. Sephadex G-75を用いるカラムクロマトグラフィーによって,
Aeromonas sp. 培養液の蛋白分解酵素は1つの活性ピークを示した。
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