日本蚕糸学雑誌
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50 巻, 2 号
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  • 渋川 明郎, 赤井 弘
    1981 年 50 巻 2 号 p. 73-76
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    育成中の多糸量系品種の幼若ホルモン剤投与による増繭効果を明らかにする目的でマンタの投与試験を実施した。
    1. 今回用いた品種, HN87号×HC8号では対照区での雌雄平均の繭層重は72.4cgであったが, マンタ投与区では84.1cgに達した。
    2. 個体別調査では, マンタ投与区の雌に繭層重1gを越す超重量繭が得られ, 雄では90cgを越す個体がみられた。なお, 投与区の雄では繭層歩合が30%を越す数値が得られた。
    3. 今回の結果に基づき, 蚕の造繭能力, 幼若ホルモン投与効果と品種の選択, などについて考察を加えた。
  • 加藤 昭輔
    1981 年 50 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕の囲食膜は細菌によって溶解されるが, この溶子解力がもっとも強い Aeromonas sp. を材料として, その培養ろ液を用いて囲食膜の溶解に関与する酵素にこついて検討を加え次の結果を得た。
    1. 囲食膜を添加した合成培地で Aeromonas sp. を培養したところ, 培養ろ液中に多量のアミノ酸が生成され, 強力な蛋白分解酵素作用のあることが判明した。
    2. 蛋白分解酵素産生に関する培養の至適条件は, 30℃で2日間振とう培養することであった。
    3. 蚕蛹煎汁培地で培養したろ液と, 合成培地で培養したろ液の酵素活性をカゼインを基質にして調べたところ, 前者にきわめて高い活性が認められた。
    4. この酵素作用の至適温度は55℃, 至適pHは8.2で比較的広いpH範囲を示した。
    5. この酵素液を用いて囲食膜を基質として酵素作用を調べたところ, カゼインを基質にした場合よりは低いが酵素活性が認められた。
    6. 合成培地に蛋白質, ペプチドを添加することにより酵素産生が著しく促進され, 蛋白物質添加が酵素産生の促進要因として重要な意義をもっているものと考えた。一方, グリシルグリシンならびにグリシン添加は Aeromonas sp.の増殖と酵素産生を阻害することが知られた。
    7. 硫安分画沈澱にこおいては20~55%飽和の硫安分画に全酵素活性の約89.4%が集まった。
    8. Sephadex G-75を用いるカラムクロマトグラフィーによって, Aeromonas sp. 培養液の蛋白分解酵素は1つの活性ピークを示した。
  • II. 有機リン殺虫剤の投与と次世代
    山野井 文夫
    1981 年 50 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    有機リン殺虫剤のMPP, EPNおよびMEPをカイコ幼虫に投与し, その次世代の成育や諸形質ならびに遺伝的影響等について調べ, 次の結果を得た。
    1. MPPおよびEPN投与によって孵化不良をもたらす濃度区の産下卵から孵化した幼虫は, 成育がやや不斉で4眠時体重も軽く繭重, 繭層重もわずかながら劣った。特にEPNの場合は孵化直後に中毒症状を示して致死し, 生き残ったものには遅眠蚕がみられた。それゆえ, カイコが農薬被害を受けると薬剤によっては孵化のみならず次世代の成育や諸形質にまで悪影響が及ぶ。しかし, 孵化に影響を及ぼさないMEPの場合は次世代の成育にも影響はなかった。
    2. MPPおよびEPNを投与した次世代の産下卵の孵化 (3世代目) は正常で, これら薬剤による孵化の異常は遺伝的に後代にまで及ぶものとはみなせなかった。
    3. MPPおよびEPNを投与することによって次世代において薬剤抵抗性が発達するという確証は得られなかった。
    4. MPPのカイコに対する突然変異誘発性は認められなかった。
  • 今西 重雄, 吉武 成美
    1981 年 50 巻 2 号 p. 88-93
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    光による人工飼料の飼料価値低下の機構を解明するために実験を行い, 次のような結果を得た。
    1. 準合成飼料よりも桑葉粉末を含む人工飼料 (以下, 人工飼料と記す) は光照射により, その飼料価値が低下した。
    2. 光照射した桑葉粉末は, 暗保護の桑葉粉末とほとんど同じ飼料価値を示した。
    3. 大豆油を除いて調製した人工飼料は, 光照射による飼料価値の低下を示さなかった。
    4. 光により酸化変敗した大豆油を含んだ人工飼料は, 蚕児の発育経過を遅延させた。
    5. 光照射した人工飼料から抽出した総脂質を含む人工飼料は, 蚕児の発育を不良にさせた。
    6. 人工飼料から抽出した総脂質の過酸化物価は, 光の照度と照射時間に比例して変動した。
    7. 以上の結果から, 光照射による人工飼料の飼料価値低下は, クロロフィルの存在下で人工飼料中の総脂質が光照射により有害物質である過酸化物に変質したことが主たる原因であると考える。
  • 金 三銀, 四方 正義, 甲斐 英則
    1981 年 50 巻 2 号 p. 94-100
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕卵の卵内容物と卵殻の脂質を分析し, 卵の水分透過性と卵殻脂質との関係から蚕卵の休眠性を考察した。
    (1) 卵内容物の脂質はトリグリセリドを主成分とする比較的単純な組成であるのに対し, 卵殻脂質の主成分は炭化水素であり, 卵内容物に存在する成分のほかに, 未同定のX1・X2と長鎖アルコールなどが確認された。
    (2) 卵殻の総脂質含量は, 休眠卵が非休眠卵より多いものの, 両方とも卵齢の経過による変化は少なかった。しかし, 卵殻脂質成分のうち, 炭化水素, X1, X2含量は休眠性の違いにより特異的に変化した。特に休眠卵にこおけるX2は, 産下直後の約14μg/g eggs から急増して産下6日後に約40μg/g eggs の最高値に達した。一方, 非休眠卵と浸酸卵のX2含量は全発育期間中ほとんど変化しなかった。
    (3) 休眠卵からの水分蒸散速度は, 産下直後すでに非休眠卵のそれより低く, 卵齢の経過とともに低下した。この水分不透性は卵殻のX2量の変化と平行関係にあった。
    (4) 以上の結果は, 卵殻脂質のうち, 炭化水素とX1・X2成分が休眠性に密接な関係を持ち, さらにX2は卵殻透過性の調節に関与していることを示唆する。
  • 木村 滋
    1981 年 50 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの変態に伴う中腸のキチン分解酵素の消長について検討した。キチナーゼ活性は, 吐糸終了時前まで中腸組織およびその内容物中には見出されなかったが, 蛹化と共に急上昇した。中腸内容物中の値は組織中のそれの28倍であった。一方, キトビアーゼ活性は, 組織中ではU字型に変動したが, 内容物中では吐糸終了から蛹化にかけて20倍に上昇した。同時に測定したα-マンノシダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼの全活性変動は前述の両酵素のそれと著しく異なっていた。これらの事実から, キチン分解酵素は活性化され組織内から管腔へ移行するものと推察された。
    キチナーゼは, ゲル滬過法による分子量の測定により, リゾチーム様酵素でないことが知られた。内害物中のアミノ糖量の変動は, キチン分解酵素活性と一致していた。
  • 甲斐 英則, 加藤 純, 新野 孝男, 河合 孝
    1981 年 50 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの休眠性卵を冷蔵し, 低温保護中にみられるエステラーゼA (Ease A) 活性を, 等電点電気泳動法を用いて測定し, 休眠間発達との関連について考察した。
    1. 澱粉ゲル電気泳動法で単一バンドとして分離された Ease A画分を, さらにIEFにかけると, 5本のバンド (Ease A1-5) に分画された。
    2. 各 Ease Aについて人工越冬中の卵の活性を測定したところ, 3種のエステラーゼ (Ease A2-4) が, 冷蔵しない休眠卵とは異なる変動を示した。
    3. 産下直後の休眠卵では Ease A2-4の活性は低いが, 冷蔵後25日頃から急上昇し, 30日頃極大に達した。しかし, その活性も直ちに低下し, 40日頃にはほぼ産下直後の値にもどった。
    4. Ease A2-4活性極大期は, 卵の孵化能力獲得期と一致していた。
    以上の結果は, Ease A2-4活性の上昇が, 休眠間発達と関連することを推察させた。
  • 田中 茂男
    1981 年 50 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    人工飼料育で飼料蚕座の1部を核多角体病ウイルスで汚染して1齢2日目蚕及び2齢起蚕を短期間飼育し, その後は個体育をして, 核多角体病感染蚕と非感染蚕の蚕座内の分布にこつき調査した。その結果, 6時間飼育で核多角体病感染蚕が認められ且つ汚染部位から離れた蚕座上にこも分散していたこと, 汚染蚕座で24時間の飼育では, 汚染部位が飼料蚕座の中心の区画と隅の区画では中心の区画の場合に, 飼育温度が32℃と28℃では32℃飼育の場合に, また飼育密度が高密度の場合ほど, 何れも核多角体病感染率の高いことなどを明らかにした。
  • 飯塚 敏彦, Robert M. FAUST, Russell S. TRAVERS
    1981 年 50 巻 2 号 p. 120-133
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    鱗翅目または双翅目幼虫に病原性を示すB. thuringiensisの24変種について, 通常はリゾチームに溶解し難い栄養型細胞の最適な溶菌方法を明らかにし, extrachromosomal DNAを単離するとともにその分子量を求めた。結果は下記に要約した。
    1. B. thuringiensisの24変種は, 種々の大きさの extrachromosomal DNA分子をもち, その分子の大きさは変種によって1メガダルトン以下から200メガダルトン以上までにおよんだ。
    2. それぞれの変種において, extrachromosomal DNA element が1個の変種はvar. sottoならびにvar. thompsoni, 2個はvar. subtoxicus, var. entomocidus, var. ostriniaeならびに var. darmstadtensis, 3個はvar. dendrolimusならびにvar. indiana, 5個はvar. galleriae, 6個はvar. canadensis, var. morrisoniならびにvar. israelensis, 7個はvar. wuhanensis, 8個はvar. kenyae, var. tolworthiならびにvar. pakistani, 9個はvar. thuringiensis (BA-068) ならびにvar. dakota, 10個はvar. toumanoffi, 11個はvar. thuringiensis Berliner, 13個はvar. alestiならびにvar. aizawai (juroi), 14個はvar. kyushuensis, そして16個はvar. kurstaki (HD-1) であった。
    3. 血清型が同じ変種間ではvar. thuringiensis Berliner ならびにvar. thuringiensis BA-068の serotype 1, var. sottoならびにvar. dendrolimusの serotype 4a, 4b, var. subtoxicusならびにvar. entomocidusの serotype 6の3組の中, serotype 6でのみ extrachromosomal DNAの数で完全に一致したが, 他では一致せず, また, それぞれの血清型の異なる変種間でも相違が認められた。
  • I. 明暗リズムと就眠との関係
    鷲田 純彦
    1981 年 50 巻 2 号 p. 134-140
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    人工飼料による稚蚕飼育において, 明暗リズムの時刻的な相異と, 就眠, 脱皮時刻との関係を調査した。
    1. 掃立時刻, 及び日長時間 (12時間明:12時間暗) を同一条件とし, 1日の暗時間帯を6時間づつ異らせると, 概ね就眠は暗期に, 脱皮は明期におこり, よく明暗リズムに同調することを認めたが, リズムの設定時刻によって, 就眠蚕率の曲線は単峰型あるいは双峰型となった。また双峰型となる設定時刻は飼料の種類によって異ることが認められた。
    2. 日長条件を12時間明:12時間暗と, 6時間明:18時間暗の二種とし, 明の開始時刻を6時間づつ遅らせながら, 暗の開始を二区づつ同一とした場合, 暗の開始が同時であれば, 明の開始に関係なく, 同時に就眠, 脱皮することを認めた。
    3. 同一明暗リズムの境境下で掃立時刻を6時間遅らせた場合, 就眠, 脱皮の時刻は同一となることを認めた。
    4. この結果に基づき, 内分泌機構との関連および飼育現場への適用方法について考察を加えた。
  • 寺島 利一
    1981 年 50 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    2枚のガラス板の間にはさんだ乾糸及び湿糸を用い, 横方向に圧縮された生糸の厚さの変化と弾性限界について検討した。糸条の厚さtは圧縮荷重pと(p+c)(t-a)=bなる式で関係づけられる。式中のa, b, cは糸条の性状に依存する定数である。
    圧縮ひずみは荷重が増すにつれてある値に収束するように増大した。乾糸ならびに湿糸はそれぞれ10ならびに3g/cm以下の荷重で圧縮される場合に回復率は100%を示したが, それ以上の荷重で圧縮されると残留ひずみは急速に増大する。この結果から, 圧縮弾性限界はこの荷重付近にあると推定される。
  • 渡部 仁, 清水 孝夫
    1981 年 50 巻 2 号 p. 146-153
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1978年および1979年の晩秋蚕期を中心に, 各地の養蚕農家での核多角体病蚕の発生調査, 並びに蚕室内塵埃の生物検定による核多角体病ウイルス (NPV) の分布調査を行い, 最近多角体病が流行していることを確かめた。
    一般にウイルス病の流行はウイルスの病原力・飼育環境・蚕の耐病性の3要因の相互関係で決定されるので, 農家を中心にそれぞれの要因を調査した。その結果NPVの病原性が高くなっていたり, 普通飼育条件下で蚕品種のNPV抵抗性が低下している可能性はなく, 消毒効果不充分の飼育環境がしばしば認められた。従って最近の核多角体病流行の主因は多回育と簡易構造蚕室利用に伴うホルマリン消毒の不徹底にあり, その結果不活化を免がれ, しかも生存力の高いNPVが蚕期毎の感染を繰返して蚕室の汚染度を増大し, 核多角体病蚕の発生の機会を多くするものと考察された。
  • 土井 良宏, 木原 始, 筑紫 春生, 梅津 良蔵
    1981 年 50 巻 2 号 p. 154-157
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    典型的な母性遺伝の様式に従って発現されるところから, いずれも第1褐卵とみなされてきた白系褐卵と欧州3眠系褐卵との遺伝子的異同を調べた。その結果, 白系褐卵は欧州3眠系褐卵とは独立であったので, これを辻田褐卵 (b-t) と命名した。さらにb-tの連関分析を行い, その座位を第13連関群3.6と決定した。
  • 1981 年 50 巻 2 号 p. 158
    発行日: 1981/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    湛水に対する Melaleucaquin queneruia 実水の反応
    タバコスズメガにおけるアラタ体活性の神経内分泌的制御: 絶食によって誘導される超過幼虫脱皮の内分泌的基礎
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