即時浸酸法と人工越冬法とは, ともに卵のエステラーゼ (Ease A) 活性を変動させる。そこで, 人工孵化法の作用について考察するため, この Ease Aを等電点電気泳動法で複数の成分に分離し, 各成分の活性変動割合を両処理間で比較検討した。
1) 休眠卵を産下2日後から5℃に冷蔵すると, 冷蔵日すぎから孵化能力が賦与されはじめた。一方 Ease A活性は孵化能力の賦与に先行して変動し, 冷蔵28日後に顕著となった。
2) 冷蔵28日後の卵では, 非冷蔵の産下27日後卵より, Ease A
2, A
3, A
4およびA
5の活性がそれぞれ3.2倍, 5.0倍, 2.4倍および0.83倍高かった。
なお, Ease A
1活性は, 産下20日をすぎると非常に低くなった。
3) 産下20.5時間後の休眠卵を加温即時浸酸すると, Ease A活性は処理後30分以内に変動しはじめ, 20時間後には顕著となった。
4) 上記処理20時間後の卵では, 産下41時間後の無処理卵に比して, Ease A
1, A
2, A
3, A
4およびA
5活性がそれぞれ0.79倍, 3.2倍, 4.3倍, 2.2倍および0.95倍高かった。
5) このように, エステラーゼA各成分が同様な上昇割合を示すことは, 塩酸と低温とが同じ作用機構を有する可能性を示唆すると考える。
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