日本蚕糸学雑誌
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51 巻, 5 号
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  • 瀬戸山 幸一
    1982 年 51 巻 5 号 p. 365-369
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹の熱黄変に及ぼす水分の影響を調べる目的で水分量を変えた絹羽二重を用い, 水分が蒸発離散しないように密閉試料管の中で加熱試験を行った。その結果, 水分量が増加するに従い黄変指数は大きくなった。またその傾向は処理温度が高くなるほど顕著であり, 高温においては少量の水分変化でも黄変を著しく増大させた。熱黄変に及ぼす雰囲気の影響をみるために空気中, 真空中での熱処理を行い, 黄変指数の変化を調べた結果では, 熱黄変においては酸素の影響は少いことが明らかとなった。熱黄変絹のアミノ酸分析結果では, 酸性アミノ酸, オキシアミノ酸が減少していることが明らかとなった。含水率が増加するに従い, 酸性アミノ酸, オキシアミノ酸の熱分解による破壊量は多くなった。また疎水性のアミノ酸ほど熱水処理に強く, 破壊されずに安定であった。熱黄変に関与するアミノ酸の種類についても論及した。
  • 清水 進
    1982 年 51 巻 5 号 p. 370-373
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) によるカイコ軟化病ウイルス (IFV) の検出を検討し, 次の結果を得た。ELISA法におけるIFVの検出感度はウイルス蛋白量で3ng/mlでありゲル内拡散沈降反応, 沈降反応 (重層法) およびラテックス凝集反応の検出感度よりもそれぞれ6,000倍, 1,700倍, および200倍高い値を示した。正常蚕磨砕液によるIFVと抗体の反応の阻害および非特異的反応はELISA法においては認められなかった。ELISA法によってIFVを定量したところ, 感染価の定量値と相応した値が得られた。
  • 加古 武, 太田 健一
    1982 年 51 巻 5 号 p. 374-380
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    消費科学的見地から, 各種洗浄処理が富士絹の風合い特性に, どのように影響を及ぼすかを, KES-Fシステム (布の風合い計測装置システム) を用いて計測し, 2, 3の考察を行った。各種洗浄処理のうち, ドライ洗浄処理は, 布の寸法や風合いにほとんど変化を起こさないが, 水または洗浄剤の水溶液を用いるウェット洗浄処理の場合, 富士絹は大きく収縮し, 特に, たて方向の収縮が大きく, 布の風合い特性の“こし”,“はり”が増大し,“しなやかさ”が減少する。また, ウェット洗浄処理においては, 洗浄剤の種類によって力学的特性値に差がみられ, 特に, 布の剪断特性に明らかな影響が認められた。しかもウェット洗浄処理による布の収縮差を除くために, 前処理した試料についても, 同様の傾向がみられたことから, 洗浄剤の種類によって, 風合いへの影響が異なることが認められた。
  • 勝又 藤夫
    1982 年 51 巻 5 号 p. 381-388
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    八丈桑と改良鼠返の交雑親和力は非常に強い, 八丈桑の長花柱性は改鼠の短 (或無) 花柱性に対し不完全優性である。八丈桑の多裂片葉性は改鼠の5裂片葉性に対し優性である。但しF2において劣性であるべく考えられた個体は丸葉であった。F2において分離した長花柱個体と多裂片葉個体は同じ植物であり, 短花柱個体と丸葉個体は同じ植物でF2における分離比は3:1であった。此の場合長花柱性と多裂片葉性との間, 短花柱性と丸葉性との間には連関が考えられる。両親の葉先長には大差があるが, F1, F2のそれは両親の中間であり, 巨大細胞の形は何れもA型で遺伝型式は解らない。この試験で種間雑種は桑の改良に, また分類学に多少貢献し得ると考えられる。
  • 清水 滉, 武内 一郎, 穂刈 英幸, 坂口 育三
    1982 年 51 巻 5 号 p. 389-395
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    酸性媒染染料で染色した絹糸を金属塩で後媒染し, 金属イオン吸着量及びフェードメータ照射時間と絹糸の強度保持率との関係を調べた。重クロム酸カリウム後媒染では, 時間の経過に従ってクロムの吸着量は増大したが強度は低下した。しかし光照射に対して, 染色絹糸には光劣化抑制が認められ, クロムの吸着量が多いほどその効果は大きかった。硝酸銅で後媒染した場合には, 光劣化抑制の効果は重クロム酸カリウム媒染ほど顕著でなかった。しかし約3×10-5mol/g以上の金属イオン吸着量で, 吸着量が等しい場合の光劣化抑制効果はクロムよりも銅の方が大きかった。硝酸亜鉛で後媒染した場合, 亜鉛の酸化作用による光劣化は染料の滬光作用によって抑制されたが, 亜鉛の吸着量が多くなるに従って, 染料による滬光作用をしのぐことが示唆された。
  • 三浦 幹彦
    1982 年 51 巻 5 号 p. 396-406
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    原料繭特性と定繊繰糸における接緒生起との関連, また原料繭特性と生糸に現れる繊度の擬似周期性との関連について統計的考察を加えた。その結果, 1) 同一原料繭のもとでは, 接緒間隔の標準偏差は目的繊度に反比例する。2) 解じょの特に優れた原料繭を用いた場合, 接緒間隔の分布型は原料繭の初期繊度と最終繊度の分布特性だけに依存する。3) 繰糸開始前に, 接緒生起の状態と生糸に現れる繊度の擬似周期の長さとを予測できる, ことが知られた。
  • 堀江 保宏, 渡辺 喜二郎, 磯貝 彰, 鈴木 昭憲, 田村 三郎
    1982 年 51 巻 5 号 p. 407-414
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の5鹸幼虫を用いて, 飼料添加, 経口的投与および注射の3種の方法によって, カナバニンの吐糸, 営繭および蛹化に対する影響について検討した。カナバニンを飼料添加, 経口投与および注射すると, 不結繭蚕, 未化蛹蚕を多発し, 羽化率は著しく低下した。また薄皮繭を多発した普通繭歩合は低下した。
    有効最低閾値は飼料添加においては約200μg/g附近にあり, 体重当たり投与量では0.5~1.0mg/g程度であることが分かった。カナバニン添食蚕では絹糸腺重およびその外部形態に異常は認められず, 熟蚕体重は増加しており, 体液蛋白質量は若干減少し, 体液中にオルニチンが多量に存在していた。以上のことからカナバニンが蚕の吐糸, 営繭を阻害し, その結果蛹化, 羽化が阻害されることが確認された。これらの阻害はアルギニンにより緩和されなかった。
  • 住岡 秀司, 黒田 秧, 吉武 成美
    1982 年 51 巻 5 号 p. 415-419
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ幼虫の5齢期に6段階の指数制限給餌を行い実用諸形質の調査結果をもとに, 給餌指数と飼料効率との関係について検討した。給餌量制限の強化にともなって5齢期の食下量は漸減した。指数0.2区の食下量は, 飽食状態に近い指数0.8の区のそれの約1/2量であった。給餌量制限によって低下の著しい形質は, 食下量, 消化量, 繭層重, 蛹体重, 造卵数および産卵数などであり, 消化率, 繭層歩合, 1粒卵重および蛹体重1g当たり造卵数はその影響が軽微であった。また, 消化量の繭重への転換効率 (繭重転換効率) と造卵の飼料効率は, 給餌量制限によってわずかに向上した。これらの結果より, 消化率, 繭重転換効率および繭層歩合の各要素を総合した繭層生産効率 (繭層重/食下量) は, 要素間で相殺され, みかけ上給餌指数による影響がほとんど認められなかった。
  • 中垣 雅雄, 川瀬 茂実
    1982 年 51 巻 5 号 p. 420-424
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕のデンソウイルス (濃核病ウイルス) のカプシド構造を, ネガティブ染色での電顕像とローテーション法とを併用して調査した。その結果, 本ウイルスは正多面体であり, 2回, 3回および5回対称軸をもつこと, 2回および5回対称軸から観察した粒子像は, 12のサブユニット模型とよく一致することが判明した。また, ウイルス標品中に直径11nmの球状体が混在していた。12個のサブユニットで直径22nmのウイルス粒子を被うためには, サブユニット1個の大きさが10nm前後となることから, この小粒子は崩壊ウイルスに由来するカプソメアであろうと推定した。以上の結果より, 本ウイルスは12個のカプソメアで構築され, 主要構成たんぱくであるVP1が5個集まり, 5量体でカプソメアが形成されるものと推定した。
  • 加古 武, 太田 健一
    1982 年 51 巻 5 号 p. 425-429
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹羽二重にスチレンをグラフトした場合 (グラフト率約20%以下), どのように風合いが変化するかについて, 乳化重合法でグラフトした絹布をKES-Fシステム (布の風合い計測装置システム) を用いて計測し, 比較検討した。絹羽二重にスチレンをグラフトすると, グラフト率10%前後では, 各特性ともに, 未グラフト布 (グラフト率0%) に比べて大きな変化は認められないが, 20%前後では, とくに, 剪断, 曲げ特性の各特性が著しく大となり, 未グラフト布に比べて大きく異なる。他の特性も, 変化は比較的小さいが, ほゞ同様の傾向が認められる。これらの結果, 基本風合い値も, 未グラフト布に比べて, グラフト率20%前後では“こし”,“はり”,“ふくらみ”が大となるが,“きしみ”が小となり,“しなやかさ”が低下する。しかしグラフト率10%前後では, これらと概して反対の傾向が認められた。
  • 新田 実, 前田 進, 河合 孝
    1982 年 51 巻 5 号 p. 430-434
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    核多角体病ウイルスの多角体および顆粒病ウイルスの顆粒に, アルカリ条件下で多角体蛋白質および顆粒蛋白質を分解するプロテアーゼの存在することが報告されている。カイコの核多角体の場合にも, 同様のプロテアーゼが存在するかどうかについて確かめ, さらにその2, 3の性状について明らかにした。Na2CO3のアルカリ溶液中で, 分子量28×103の多角体サブユニット蛋白質を分解するプロテアーゼが, カイコ核多角体中に存在することが示唆された。このプロテアーゼは, 至適pHが10.5から11.2であり至適温度については45℃から50℃であった。また, このプロテアーゼは, Hg2+, Cu2+さらにTPCK, TLCKによって活性が阻害された。以上のことから, カイコ核多角体中のプロテアーゼは, カイコ消化液プロテアーゼと性状が類似しているものと考えられた。
  • 堀江 保宏
    1982 年 51 巻 5 号 p. 435-439
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕5齢幼虫を用いて〔U-14C〕-グリシンおよび〔U-14C〕-チロシンを蚕体に注射した場合の代謝半減期を測定した。すなわち14C-グリシンあるいは14C-チロシンに3H-イヌリンを混合し, 注射後の時間経過に伴う14C/3Hの比率の変化を追跡した。その結果, 両者の体液中における代謝半減期は約25分であり, 代謝回転速度が著しく速いことが分かった。本測定法は特に代謝回転速度の早い物質については, 実験誤差を生ずる要因を相殺的に除去でき, 同時に体液量も測定できる利点もあって有効であると判断される。
  • トレハラーゼ活性化, 3-ハイドロオキシキヌレニン蓄積および休眠卵産生に与るホルモン作用の関係
    東 政明, 山下 興亜
    1982 年 51 巻 5 号 p. 440-444
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の休眠ホルモンによる卵巣のトレハラーゼ活性の上昇, 卵巣への3-ハイドロオキシキヌレニン (3-OHK) 蓄積量の増大, さらに休眠卵産生率を指標にし, ホルモンの作用時間, 用量―応答関係について検討した。その結果ホルモン作用はトレハラーゼ活性に対しては注射3~6時間後に, 3-OHK量に対しては, 12時間後に現れた。一方休眠ホルモン注射量と, トレハラーゼ活性, 3-OHK蓄積量, 休眠卵産生率との関係はホルモン量が1~10μgの範囲で三者共にほぼ直線的に増加し, かつ最大効果の半分の値も約3μg/頭であった。これらの結果は, 家蚕の卵巣でみられる多様な休眠ホルモン作用はホルモンの単一の作用点に起因した一連の作用であると推定させた。
  • 山本 俊雄, 藤森 胡友, 清水 文信, 田中 教夫
    1982 年 51 巻 5 号 p. 445-446
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 楠 純, 渡部 仁
    1982 年 51 巻 5 号 p. 447-448
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1982 年 51 巻 5 号 p. 449
    発行日: 1982/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕消化系における蛋白質の段階的消化について
    家蚕蛹における脂肪体から血液への脂質移行に対するプロスタグランジンE1の影響
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