日本蚕糸学雑誌
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53 巻, 4 号
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  • 精製と3, 3の性質
    片方 陽太郎, 野田 真弓, 西沢 誠, 志村 憲助
    1984 年 53 巻 4 号 p. 283-291
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    これまで報告されたH1ピストンは単一かサブタイプに分類される。我々は家蚕後部絹糸腺よりH1ピストンを分離・精製し, 単一成分であることを認めた。その調製は過塩素酸, デオキシコール酸それに Triton X-100を組み合せて行った。
    豚胸腺, ウニ生殖巣, アスの精巣, ホヤ生殖巣からもH1ピストンを分離し, 家蚕のそれと蛋白質化学的性質について比較検討した。5種のH1ピストンの中で, 家蚕のそれは最も分子量が大きく, しかも他の4種のH1ヒストンと比べてアミノ酸組成の点でセリン含量が多く, リジン含量が少ない等の特徴を有していた。
  • 山野井 文夫
    1984 年 53 巻 4 号 p. 292-298
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコに対する農薬投与が投与世代並びに後代の実用形質に及ぼす影響を, 有機リン殺虫剤MPP, ヒ素殺虫剤ヒ酸鉛, 有機ヒ素殺菌剤MAFA, 水酸化トリフェニルスズ殺菌剤DPTHで調べた。5齢期間添食して繭重, 繭層重, 産卵数などに悪影響を及ぼすと考えられる濃度の最低限界はMPPとヒ酸鉛が63ppm MAFAが65ppm, DPTHが100ppm程度であった。これらの濃度を8世代にわたって添食投与したところ, 各世代の実用形質は第1世代と同程度であって, 影響が加重したり軽減したりすることはなかった。薬剤投与を停止すると実用形質は対照区と差がなくなり, 薬剤投与の影響が後代に及ぶことはなかった。また累代投与の次世代蚕に薬剤抵抗性の発達は実験追跡の範囲では認められなかった。影響を及ぼす最低限界よりやや高濃度のMPPとヒ酸鉛の125ppmを累代投与したところ, 前者は孵化率, 後者は蛹化率が累代とともに悪化し, 6世代目と4世代目でそれぞれ継代不可能となった。
  • 高林 千幸
    1984 年 53 巻 4 号 p. 299-309
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    自動繰糸機において実解繰じょ率を簡易に計測する方法として, 落繭分離機手前の排繭樋中に自然落緒繭及び不時落緒繭をその大きさにより判別する複数個 (4基) の検出端を設け, 排繭樋を流れるほとんどの落繭を判別・計数し, 実繰解じょ率を演算・表示及び印字する装置を開発した。この装置の検出性能・演算精度の検討を行い, 自動繰糸機において計測実験を行った結果, 装置の初期調整を除き, 人手を介さず連続的に自動計測できることが確認され, 前報で示した1基の検出端による方法に比べ計測精度が向上することを認めた。
  • 塚田 益裕, 石黒 善夫
    1984 年 53 巻 4 号 p. 310-315
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    スチレングラフト加工絹の熱的挙動及び構造特性を明らかにするため, 示差走査熱量測定 (DSC), X線回折および走査型電子顕微鏡観察を行った。
    グラフト率が20%以上の加工絹糸のDSC曲線において, 320℃と430℃付近とに二つの吸熱ピークが現れた。前者は絹フィブロインの熱分解に, 後者は加工絹糸中に充填したスチレンポリマーの熱分解に帰属した熱的挙動であることがわかった。430℃付近で見出される吸熱ピークのエンタルピー変化量は, スチレングラフト加工率の増加につれて増大しており, 430℃付近のエンタルピー変化量の値からグラフト加工率が推定できるものと考察した。グラフト加工の有無に関係なく絹フィブロインの結晶構造変化は見られなかった。グラフト率が20%以上の加工絹糸のX線回折像には絹フィブロインの Silk II型結晶の回折のほかに, 非結晶性スチレンポリマーによる散漫散乱の重複が認められた。
  • 絹の金属媒染に関する研究VI
    清水 滉, 滝沢 陽子
    1984 年 53 巻 4 号 p. 316-319
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    落果したくるみ仮果被抽出物中のタンニン分を調べるとともに, その抽出物で絹羽二重を染色し, 金属塩処理による色の変化と染色堅ろう度を調べた。この仮果被抽出物中のタンニン分は16.6~34.4%であり, 第1回抽出物中よりも3回目の抽出物中の方が割合が高かった。この抽出物で染色した羽二重の色はわずかに赤みの茶色で, 抽出物に含まれているタンニン分の量による色への影響は極めてわずかであった。金属塩処理によって黄みと灰みが増し, 硫酸第一鉄処理では黄みの黒褐色が得られたが, タンニン-金属錯体生成による色の変化はタンニン酸吸着羽二重における場合に比べて小さく, この抽出物中の非タンニン分による着色が大きな割合を占めることが認められた。また, 金属塩処理による染色堅ろう度の向上は認められなかった。
  • 何 毅, 黄色 俊一
    1984 年 53 巻 4 号 p. 320-324
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    本報の目的は, 中国の低緯度地方における夏秋蚕用強健性蚕品種の交雑育種に際し, 交雑第1代目に2化性または多化性系統のどちらを雄 (または雌) 親として用いた方が有利であるかを知ることである。カンボージュと支124, 大造と支124の正逆交雑後代 (F2とF3) に不良条件を与え, 生存率によって抵抗性・強健性を検討した。不良条件は高温多湿育, 不良飼料育, 絶食およびスミチオン投与である。実験結果は正逆交雑および選抜方法によって差が認められ, 不良条件に対する抵抗性が常染色体上のポリジーン系と伴性遺伝子 (晩成遺伝子と思われる) によって制御されていることを暗示していた。これらのことから, 強健性を主目的とする中国の低緯度地方の夏秋蚕期用品種育成のための交雑育種においては, 交雑第1代目に多化性系統を雄親として使う方が, 有利であろうと考察した。
  • 野口 洋子, 山口 邦友
    1984 年 53 巻 4 号 p. 325-330
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    アメリカシロヒトリおよびヒメシロモンドクガ幼虫では, カイコ細胞質多角体病ウイルス (CPV) に感染するが, 感染細胞が脱落し, 新しい中腸皮膜組織が形成されて治ゆする。これらの治ゆした幼虫は, 同種のカイコCPVの再感染に対して極めて高い抵抗性を示したが, 異種のCPVや核多角体病ウイルス, 顆粒病ウイルスの感染に対しては抵抗性の増大が認められなかった。
    カイコCPVに感染後治ゆした幼虫にCPVを接種し, ウイルス増殖の様相を電子顕微鏡により観察したところ, 同種のカイコCPVを再接種してもウイルス増殖を示す徴候は観察されなかったのに対し, 異種のCPVを接種した場合は, あらかじ, めカイコにCPV感染させなかった対照幼虫と同様に増殖した。
    以上の結果から, カイコCPVに感染後治ゆした幼虫が獲得したウイルス抵抗性は, 同種ウイルスの感染に対してのみ特異的に働くことが明らかになった。
  • 重金属が無菌蚕に及ぼす影響 IX
    増井 博之, 松原 藤好
    1984 年 53 巻 4 号 p. 331-334
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    人工飼料で無菌飼育した蚕 (無菌蚕) および無菌蚕にNi 250ppmを蟻蚕から5齢6日目まで連続投与した場合の蚕体内におけるNiの分布について調べ, 生体内各組織・器官別に乾物g当りおよび1頭当りの分布量を明らかにした。つぎに糞中のNiの排泄については蟻蚕から5齢2日目までNi 250ppmを連続投与し投与停止直後から24時間毎に96時間まで調べたところ投与停止直後は排泄量が最も多く, 無投与区の約24倍となり, 48時間では対照と殆ど変わらなかった。したがってNi 250ppmを連続経口投与した場合, 投与後48時間までにすべて排泄された。無菌蚕を上蔟, 営繭させた化蛹2日目の蛹中のNi量は4.57μgであり, 幼虫期にNi 250ppmを投与した後上蔟, 営繭させた場合の蛹中のNi量は6.17μgであり, 対照の無投与区より僅かに増加した。
  • 伴野 豊, 河口 豊, 土井 良宏
    1984 年 53 巻 4 号 p. 335-340
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの幼虫3齢期から成虫に至るまでの間における体液アミラーゼの活性値および活性帯の消長を雌雄別に比較分析した。アミラーゼ活性は3.4齢期は比較的低い値で推移し, 5齢期に急速に高くなった。特に雌では5齢3日以降の活性上昇が顕著で熟蚕期には雄の約2倍になった。その後, 蛹中期までは高い活性が維持されたが, 雌では蛹後期に急激に低下した。一方, 電気泳動法により活性帯を分離検出したところ, 3.4齢期6成分, 5齢前期2成分であったのが, 5齢中~後期には雌で10成分, 雄で6成分, 蛹期には雌5成分雄4成分となり, 成虫では雌雄ともに1成分となった。すなわち, 体液アミラーゼは発育経過により活性が変動し, 5齢中期から蛹中期にかけては雌>雄の関係にあるが, 5齢期後半にはS-1~S-4, 蛹期前半にはSVの電気泳動的に異なる雌特異活性成分が検出されるなど, 発育段階, 性により質的にも顕著に変動する。
  • 川瀬 茂実, 蔡 幼民, 伴戸 久徳, 関 宏夫
    1984 年 53 巻 4 号 p. 341-347
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    濃核病ウイルス (山梨株) として単離されたウイルスは, 精製後の電顕観察により直径24nmの球形を呈し, ごく一部の粒子には突起が認められた。本ウイルスの核酸はDNAであるが, 核酸を抽出すると, 複鎖のDNAが得られる。これは伊那株と同様の現象により複鎖となると推定した。このDNA標品をアガローズ・ゲル電気泳動にかけると, 2種の複鎖DNAのバンドが認められ, それぞれの分子量は複鎖DNAとして4.0×106と3.8×106ダルトンであった。この2種の複鎖DNSの制限酵素による切断断片から, 両者は明らかに塩基配列の異なったDNA分子種であることが判明した。構成たんぱく質をSDSPAGEで分画したところ, 6種類のたんぽく質が認められ, このパターンは伊那株のそれとは明らかに異なっていた。以上の結果より, 山梨株は2種の濃核病ウイルスの混合物で, それぞれのウイルス粒子は3種類の構成たんぱく質をもつ可能性が高く, 伊那株とは形態, 核酸やたんぱく質の性状が明らかに異なったウイルスであると推定した。
  • 吉村 亮, 土井 良宏, 新倉 克己
    1984 年 53 巻 4 号 p. 348-351
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    支132号から左半身は正常であるのに右半身は透明な油蚕様になった1頭の半身モザイク蚕を発見した。これを正常系統と交配した次代に多数の体躯短太な油蚕を生じたのでその遺伝様式を調べたところ, 常染色体上の1優性遺伝子により支配されることが判明した。従来, 多数の油蚕が得られているがそのすべてが劣性であり, ここに見出されたモザイク蚕由来の変異体は油蚕としては最初の優性突然変異である。これを優性短節油 (記号, Obs) と命名し, 連関検索を行った結果, 第18連関群に所属することが判明した。そこで本連関群を構成する既知の2遺伝子, elp, mln との間で3点実験を行い, 第18連関群の地図を Obs: 0.0, elp: 9.9, mln: 35.3と改めた。
  • 廉屋 巧, 山下 興亜, 川瀬 茂実
    1984 年 53 巻 4 号 p. 352-357
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    細胞質多角体病ウイルス (CPV) 感染蚕児における血液および中腸皮膜中の糖およびグリコーゲン濃度の毎日の変動を, 健康蚕, 給桑制限蚕, 絶食蚕のそれらと比較した。CPV感染蚕児では, 血糖量は病勢が進むにつれて対照蚕に比べて急激に減少したが, そのパターンは絶食蚕のそれと類似していた。しかし, 中腸の糖濃度の変動パターンは, ほぼ対照蚕や絶食蚕のそれと同様であった。一方, 中腸のグリコーゲン量は, CPV感染蚕では病勢進行の過程中常に対照蚕や絶食蚕のそれに比べて有意に増大していた。このことから, 中腸皮膜でのグリコーゲン代謝は, CPVの増殖過程とより密接に関連した代謝系であることが判明した。
  • 森 精, 赤井 弘
    1984 年 53 巻 4 号 p. 358-362
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの幼虫と蛹のクチクラの形成における構造的な差異を明らかにするため, 幼虫脱皮期および幼虫から蛹への変態期における皮膚を電顕的に比較観察した。幼虫脱皮期では, エピクチクラの形成時からすでに乳嘴突起や微皺の形成のために微絨毛や Pore canal が関与し多くの突起が形成される。幼虫-蛹変態期には, クチクラ形成当初からその表面には起伏が少く, 微絨毛は活発な形状を示すが Pore canal は明らかでない。隣接する真皮細胞の境界部には蛹のクチクラ表面にみられる多角形紋に対応する隆起が形成される。以上の差異はクチクラ形成後の蚕体の成長の違いによるものと考えられる。
  • 横井 直人, 吉井 太門
    1984 年 53 巻 4 号 p. 363-364
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 古沢 寿治, イントラシット レスリー, 四方 正義
    1984 年 53 巻 4 号 p. 365-366
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 姚子, 杉山 浩
    1984 年 53 巻 4 号 p. 367-368
    発行日: 1984/08/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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