家蚕成虫アルギナーゼの酵素学的諸性質を明らかにすると共に, 活性に関する系統間差異の検索を行なった。本酵素は, pH9.5, 37℃に於いて最大活性を示し, 50℃熱処理及びMn
2+, Co
2+, Ni
2+の添加による活性化, Cd
2+, 又はオルニチンの添加による阻害を受ける。
供試された32系統の家蚕成虫アルギナーゼ活性は, 何れも顕著な性差を示し, 雄の活性は常に同系統の雌より高く, 平均約6倍であった。日131号雌の活性は, 諸系統雌中で最大であり, 雄中で最少の活性を示す無翅種
fl雄より高いが, 同じ日131号雄の1/5に過ぎない。この雄は全系統中で最も高く,
fl雄の10倍の活性を示した。家蚕系統雌雄間には, アルギナーゼ活性に関して正の相関関係が認められ, 本酵素活性を支配する遺伝的要因の一つは, 雌雄同様に作用するものであることが示唆された。また天蚕蛾科ヒマ蚕においては顕著な雌雄差は認められず, 本酵素活性の性差は家蚕特有であると考えられる。
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