日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
56 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • カイコの血組織に関する電子顕微鏡的研究 IV
    小林 勝, 田中 一行
    1987 年 56 巻 3 号 p. 196-201
    発行日: 1987/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    囲心細胞の機能的特異性を調べる一環として, カイコにおける核多角体病ウイルスの増殖を, 感受性細胞である気管皮膜細胞の場合と形態学的に比較した。その結果, 囲心細胞におけるウイルスの増殖過程は, 感受性細胞とほぼ同様であったが, つぎの点で相違していた。
    (1) 囲心細胞におけるウイルスの増殖過程は, 感受性細胞より遅延していた。その原因の1つとして, この細胞がもつタンパク性顆粒の蓄積機構を指摘した。
    (2) 囲心細胞では, Virogenic stroma の形成が悪く, 産生されるウイルスも少なかった。
    (3) 囲心細胞を構成する基底膜の間隙部には, ウイルスを集積する特徴がみられた。
    (4) 囲心細胞で形成された多角体は形が異常で, 数も少なく, その内部にウイルスを全く包埋しないか, 包埋していてもその数が僅かであった。
  • 古沢 寿治, 清水 喜一, 矢野 竹男
    1987 年 56 巻 3 号 p. 202-209
    発行日: 1987/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕卵の休眠期間が嫌気的状態下で延長されるかについて検討するため, 産卵83日後の休眠卵を, 酸素量が0, 5, 10および20%の条件下で封入し, 5℃と1℃に保護した。その結果, 封入しない卵のソルビトール量は5℃下では減少し, 休眠覚醒がおこるのに反し, 封入した卵ではソルビトール量は125μmoles/g eggs のレベルで維持され, ふ化する卵はみられなかった。そこで, これらの卵がふ化能力をもっているか否かについて検討するため, 封入125日 (産卵205日後) に開封し, 5℃下で保護を続けたところ, 酸素量の多い条件下に封入された卵ほどソルビトールの減少量が大きく, このことは, ふ下歩合にも反映された。
    また, 1℃保護卵を同じ, 方法で処理したところ, ソルビトール量の減少およびふ化歩合は5℃に比べ大きかった。
    以上のことから, 家輩卵の休眠期間は酸素量の調節によって, 人為的に延長できることが示唆された。
  • 諸橋 征雄, 楠 茂樹
    1987 年 56 巻 3 号 p. 210-215
    発行日: 1987/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    発芽を促進されたクワ種子においては, 吸水開始24時間以降に顕著なアミノ酸含量の増加がみられる。一方, 発芽が抑制されている種子では, そのようなアミノ酸の蓄積はない。蓄積したアミノ酸については, 何か特定のアミノ酸が特異的に増量するのではなく, アミノ酸が全体的にその含量を高くした。種子を胚と胚乳に分けて調べた限りでは, いずれの部位にもアミノ酸は蓄積していた。これらの結果を基に, クワ種子の発芽におけるアミノ酸蓄積の意味について若干の考察を試みた。
  • 一田 昌利, 鮎沢 千尋, 赤井 弘
    1987 年 56 巻 3 号 p. 216-219
    発行日: 1987/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    イミダゾール系抗幼若ホルモン活性物質“SSP-11”(AJH) の投与が蚕児のウイルス病抵抗性に及ぼす影響について検討した。3齢起蚕にAJHを投与し, 3眠化した蚕児の4齢起におけるウイルス (NPV, CPV及びIFV) 病抵抗性は, いずれもAJH無投与蚕の4齢起よりも高くなった。一方, 病原接種直後からAJHを投与した影響については, 3齢起及び5齢起処理ではウイルス病抵抗性に差は認められなかったが, 4齢起処理ではCPV及びIFV抵抗性に幾分の差が認められた。また, AJH投与後のNPV抵抗性の経時的変化をみると, 3齢起投与, 4齢起投与ともに無投与区と比べ, AJH投与1~2日目に差がみられなかったが, その後はAJH投与区の方が幾分高い抵抗性を示す傾向がみられた。
  • 土井 良宏, 中山 光育, 伴野 豊, 河口 豊
    1987 年 56 巻 3 号 p. 220-225
    発行日: 1987/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの第23連関群の基点にあてられているt裸蛹 Nd-t は, 第25連関群所属の Nd の1交雑系から得られたもので形質的特徴も Nd と識別できない。そこで Nd-t が遺伝子突然変異によるものか, Nd を担う染色体の異常によるものかを確認するため, 第23連関群を tub で, 第25連関群を oy で標識して交雑実験を行った。Nd との交雑系では予期通り tuboy, Nd とは独立で, oyNd とは連関することを示す分離が得られた。一方, Nd-t との交雑系では Nd-ttub との連関は当然であるが, Nd-toy, さらに tuboy ともが連関するかの如き分離結果であった。また, Nd-ttub との間の交叉型6個体の後代では Nd-ttub との連関を保っていたのは1例のみで, 5例では tub との連関を失い oy と連関する結果が得られた。したがって Nd-t は遺伝子突然変異ではなく, Nd 遺伝子を担う第25染色体が第23染色体に附着若しくは転座したT (23; 25) Nd であることが明確である。
  • 葉 夏裕, 赤井 弘, 木内 信
    1987 年 56 巻 3 号 p. 226-230
    発行日: 1987/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    正常蚕及びAJH4齢投与による3眠蚕のアラタ体の成長の特性を明らかにする目的で, 4-5齢期のアラタ体の成長を顕微鏡写真とその面積から比較観察した。正常蚕では, アラタ体の成長曲線は眠間期に漸増するが眠期には突出し, 熟蚕期から化蛹期には顕著な肥大成長を示した。一方, AJH投与蚕では投与後アラタ体は漸増し, 熟蚕期から化蛹期にかけては正常蚕と同様に顕著な成長を示した。
  • 塚田 益裕, 木村 敬助, 渋川 明郎, 嶋崎 旭, 赤井 弘
    1987 年 56 巻 3 号 p. 231-234
    発行日: 1987/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    太繊度系, 細繊度系, ならびに現行蚕品種に幼若ホルモン活性物質 (JHA) あるいは抗幼若ホルモン活性物質 (AJH) を投与し, 発育経過, 繭の量的形質, 繭糸繊度などに及ぼす影響を明らかにした。3, 4, 5齢期にJHAを投与した太繊度系蚕品種 (HN101×C23) の繭糸繊度曲線には内層部分に最大繊度領域が現れた。JHA投与区の繭糸の最大繊度値は, 対照区のそれとほぼ同様であったが, 繭糸長は増加し特に太繊度の部分が大きく延長される特徴が見られた (Fig. 1)。これに対して3齢期にAJHを投与した3眠蚕の繭糸繊度は対照区のほぼ1/2まで細くなるが, 繭糸長は対照区よりも長く, 全体的に太さの均斉な繭糸であることが確かめられた。細繊度系蚕品種 (N5・N6×C5・C6) および現行品種 (N134×C135) においても繭糸繊度については同様な傾向がみられた。
  • 滝川 新一郎, 津末 玄夫, 山本 俊雄
    1987 年 56 巻 3 号 p. 235-239
    発行日: 1987/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕幼虫の皮膚に含まれているセピアプテリンデアミナーゼを調べるために, 電気泳動法を用いた当酵素の活性染色法を開発した。この方法で家蚕幼虫の種々の系統及び突然変異種におけるセピアプテリンデアミナーゼの分布を調べたところ, 調べた限りの全ての系統にこの酵素活性が見られた。一方等電点電気泳動法によりこの酵素には6.0から6.7に至る0.1きざみの等電点を持つ8種のアイソザイムがあり, 系統によって特定の組み合わせを持つ事が分かった。これらのアイソゾイムは同じ分子量であり, ゲル滬過の結果分子量7万と推定された。
    この酵素を持たない系統が無い事は, 幼虫の組織における広い分布と考え合わせて, 家蚕幼虫の生活に必須ゐものと考えられる。黄浮蚕に特有な当酵素のアイソザイムは見出されなかった。
  • 新野 孝男, 神田 俊男, 江口 良橘, 嶋崎 旭, 渋川 明郎
    1987 年 56 巻 3 号 p. 240-246
    発行日: 1987/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    限性黄繭系統の転座障害を具体的に明らかにするとともに, 転座染色体の大きさについて検討した。その結果, 当研究室所有の系統は, 5齢期蚕体重からみた成長曲線の雌雄差がほとんどなく, 上蔟前に雌が雄より若干重くなる程度であった。対4齢起蚕健蛹歩合は, 春, 初秋, 晩秋のすべての蚕期において, ほとんどの系統で雌が雄より劣り, 初秋及び晩秋蚕期に雌にのみ脱肛蚕が出現した。さらに蛹体重の雌雄差は, 通常品種に比べ少なく, 繭層重については雌雄の関係が逆転し, 雌が軽くなった。
    転座染色体の大きさについて検討した結果, W染色体に転座した第2染色体は+Grcol (6.9) 及び+i-lem (29.5) 遺伝子を有していることがわかった。従って, 転座している第2染色体はかなり大きく, その全部あるいは大部分がW染色体に付着しているものと考えられた。
  • 中山 喜平, 山本 俊雄
    1987 年 56 巻 3 号 p. 247-248
    発行日: 1987/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
feedback
Top