日本蚕糸学雑誌
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56 巻, 5 号
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  • 桑原 昂, 増島 弘美
    1987 年 56 巻 5 号 p. 359-363
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繭糸質を異にする生糸の水溶性高分子によるサイジング効果を主として耐摩擦性について調べた。繊度, セリシン量を異にする4種の生糸を, ポリビニルアルコール (PVA), 酢酸ビニル・無水マレイン酸共重合物ナトリウム塩 (VAc×MA), ポリアクリル酸部分メチルエステル (PAM) の3種の水溶性高分子で, 温度, 濃度別に処理し, 静摩擦係数, 摩擦前後の表面特性の変化を測定した。
    繭糸質を異にする生糸の表面は, サイジングによって粗になるが, その度合いは, 標準糸≫少セリシン系糸≫細繊度系糸>太繊度系糸の順に大きい。しかし, 水溶性高分子別の差異はほとんど認められない。摩擦に対するサイジング効果は, 水溶性高分子別には, PAMよりもPVAあるいはVAc×MAサイジングの方が有効であること, また生糸別には, 細繊度系糸・標準糸に比し, 太繊度系糸・少セリシン系糸の方が, より効果的であること, がわかった。
  • 瓜田 章二, 太田 輝夫, 杉浦 正昭
    1987 年 56 巻 5 号 p. 364-368
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑条木質より調製したセルロースジアセテート (di-CA) およびセルローストリアセテート (tri-CA) 膜を加水分解したイオン透過能について追究した。透過イオンにはKClのみを用いた。
    その結果は次の通りである。溶媒にトリクロロメタンを用いたtri-CA膜を加水分解した膜がイナン透過度が最も高く, をの透過度は市販セルロース膜よりすぐれる。これに対しdi-CA膜を加水分解した膜のイオン透過度は低い。膜の荷電の影響はdi-CA膜を加水分解した膜に大きく, 膜電位が充分高い。
    膜のイオン透過の機作については小畠, 永沢の理論より考察した。
  • 横山 岳, 須貝 悦治, 黄色 俊一
    1987 年 56 巻 5 号 p. 369-373
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    着色卵歩合および孵化歩合を指標として, カイコの発生初期卵に対する浸酸効果を検討した。常法による即時浸酸 (HCl S. G. 1.075, 46℃, 5分) では, 産下直後より210分頃までは, 極めて高い感受性が示され, ほとんどが着色前の発生初期段階で致死した。これに対し, 産下後220分 (分割期) 以後では, 産下後10~13時間 (胚盤葉形成期) に示される感受性の高い時期を除けば, いずれの時期でも80%以上の孵化歩合が得られた。塩酸液温を40℃, 浸漬時間を10分間とした浸酸では, 産下後20分および100分に高い感受性時期が存在し, 特に産下後100分 (第2減数分裂終期) では, ほとんどが着色前に致死した。これに対し, 産下後60~70分 (第2減数分裂中期頃) および産下後140分 (精・卵前核合体期) では, 抵抗性を示し80%以上の高い孵化歩合が示された。
  • 蜷木 理, 土井 良宏, 筑紫 春生
    1987 年 56 巻 5 号 p. 374-378
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの幼虫体液中に存在する血球細胞は通常, 原白血球, プラズマ細胞, 顆粒細胞, エノシトイドおよび小球細胞の5種に分類される。しかし, 系統によっては小球細胞を欠くものが有り, この欠如性には優性的に発現されるものと劣性的に発現されるものとがある。優性の欠如系統について交配実験を行ったところ, 本形質は常染色体上の単一の優性遺伝子によって支配されることを確認し得たので, この遺伝子を, 優性小球細胞欠如 (Dominant spherule-cell minus, 記号 Sph) と命名し, 連関分析を行った。その結果, Sph は第21連関群に所属し, 合計1,193頭からの rb との組換価は8.4であった。次いで, rb, Sl-v および Sph による3点実験により, 3遺伝子の配列が rb-Sph-Sl-v の順であることを確定し, Sph 遺伝子の座位を第21連関群8.4と決定した。
  • 飯塚 敏彦, 後藤 千枝
    1987 年 56 巻 5 号 p. 379-384
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕5齢幼虫ならびにヨトウガ5齢幼虫に対する数種 B. thuringiensis 結晶蛋白質の毒素活性が調べられた。家蚕幼虫は B. thuringiensis 結晶蛋白質に対して極めて感受性であり, 直接経口投与した場合 subsp. sotto で0.01μg, subsp. kurstaki HD-1で0.1μg, subsp. kurstakiHD-73で30.0μg, subsp. wuhanensis で0.2μgのLD50を示した。一方, ヨトウガにおいて飼料に結晶蛋白質を混ぜて検定した場合, LD50sottoで33μg, wuhanensis で23μg, aizawai で46μgであった。しかしながら kurstaki HD-73の結晶蛋白質を与えた場合, 個体当り1,000μgのレベルでも全く毒性を示さなかった。HD-73の場合, 家蚕幼虫ならびにヨトウガ幼虫から消化液を得, そのプロテアーゼで結晶蛋白質を消化しSDS-PAGEで検討した結果, 家蚕プロテアーゼでは135-kdalの protoxin が活性化されるのに対し, ヨトウガプロテアーゼでは活性化されなかった。
  • 須貝 悦治, 横山 岳, 三野 卓哉
    1987 年 56 巻 5 号 p. 385-389
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    正常卵 (+/+) 雌蛾に赤卵 (re/re) 雄蛾を交配し, 産下初期卵を低温 (0℃) または温湯 (40℃) で処理し, 発現した赤卵を雄核発生卵として, その最適誘起条件, 孵化歩合および胚の染色体数を調べた。1) 低温処理では卵齢20~40分卵を4~9日間, 温湯処理では卵齢60~80分卵を60~135分間処理した場合に, それぞれ80%または70%以上の雄核発生卵が得られた。2) 雄核発生卵の孵化歩合は, いずれの処理でも1%以下であった。3) 雄核発生卵胚子の染色体は, 低温処理の場合には86%, 温湯処理で74%が半数染色体 (n=28) を保有し, 2n (=56) 胚はいずれの処理でも2%程度であった。以上の結果をもとに, 雄核発生卵の発現機構を考察した。
  • 桑の内生生長物質に関する研究 III
    柳沢 幸男, 塩入 秀成
    1987 年 56 巻 5 号 p. 390-393
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑条伐採時における残葉のサイトカイニン含量の変化と再発芽との関連について検討し次の結果を得た。1) 検出された残葉のサイトカイニンはZ, ZRおよび2iPであった。しかし2iPは前年より低温で日照不足であった1986年の材料では検出されなかった。2) 残葉のZ含量は残葉の若返りによる生理機能の回復とともに減少した。しかし腋芽の開葉期前後からは増加する傾向を示した。3) 残葉のZR含量は伐採後7~10日目の腋芽の脱苞・燕口期まで増加し, その後減少した。この残葉のZR含量の変化はZの含量変化とは反対の傾向を示した。4) 残条の腋芽のサイトカイニンレベルは着生葉の有無にかかわらず, 腋芽の生長が同程度である場合には同様であることがわかった。
  • 稲垣 秀一郎, 中村 研三, 小林 迪弘, 山下 興亜
    1987 年 56 巻 5 号 p. 394-397
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの卵巣ポリ (A)+RNAから大腸菌発現ペクター (pKEN 602) を用いたベクタープライマー法により, cDNA 発現ライブラリーを作製した。卵特異たんぱく質 (ESP) に対する特異抗体を用いた in situ コロニーラジオイムノアッセイ法を用いて, 形質転換コロニーより ESP cDNA をスクリーニングした。抗体に反応した cDNA のうち, 最も鎖長の長いインサート (約1.9kb) をM13ファージにサブクローニングし, 5′側塩基配列を決定した。その結果, 塩基配列より推定されたアミノ酸配列には精製ESPのN末端のアミノ酸と同一の配列が認められた。さらに, 塩基配列より, ESP前駆体N末端側にはシグナルペプチド様のアミノ酸配列が存在することが示された。以上の結果より, ほぼ全鎖長の ESP cDNA が単離できたと結論された。
  • 梶浦 善太, 門野 敬子, 山下 興亜
    1987 年 56 巻 5 号 p. 398-406
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    幼若ホルモン類縁体 (JHA) であるメトプレンのカイコ4齢幼虫への局所投与は, 5齢への幼虫脱皮には大きな影響を及ぼさなかったが, 5齢期間を延長させ, 永続幼虫を誘導した。永続幼虫誘導率は低密度飼育によって高められた。投与時期による影響は認められなかったが, 有効投与量は10μg以上であった。幼若ホルモンIとIIIの投与は5齢期間を延長させたが最終的に幼虫-蛹変態を阻止しなかった。永続幼虫は20日間以上摂食し, この間に体重は10g以上に達した。アラタ体の摘出はJHAの作用発現には全く影響しなかった。血液中のエクジステロイド濃度は永続幼虫では低いレベルで推移した。
    20-ヒドロキシエクダイソンの永続幼虫への経口投与は, 背脈管の露出と吐糸を開始させたが, 蛹化脱皮はもたらさなかった。
  • 大西 敏夫, 木山 智之
    1987 年 56 巻 5 号 p. 407-410
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    従来のプロトプラスト単離用酵素液を改良することにより, プロトプラスト収量の向上を検討し, 以下の結果を得た。
    一部変更した斉藤による単離用酵素液に2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 (2,4-D) とベンジルアデニン (BA) を添加し, プロトプラスト収量の向上を試みたところ, 桑葉を材料とした場合では, 2,4-D 0.02ppmとBA 0.20ppmの添加で収量が増加した。また, 桑カルスを材料とした場合では, 2,4-D 0.20ppmの添加で収量の増加がみられた。ところで, カルスを材料とした場合, 継代後のカルスからプロトプラストを単離すると, 初代に比べ収量が低下するが, ジチオスレイトール (DTT) を培地に添加してカルスを継代培養し, このカルスからプロトプラストを単離することにより, その収量は増加した。しかし, 継代初代培養カルスからの収量に比べては, まだ低いものであった。
  • 朝岡 潔
    1987 年 56 巻 5 号 p. 411-417
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコおよびその近縁昆虫の培養細胞株の性格付けを行うために, SDS-PAGEおよび二次元電気泳動法により, その構成タンパク質の分析を行った。その結果, カイコの胚子由来の細胞株 BoMo-15A, Bm-e21, Bm-130, Bm-130R では, 両法とも非常によく似た泳動パターンを示し, これらの細胞株間の区別は困難であった。一方, カイコの卵巣由来と考えられている細胞株Bm36は, カイコ由来の他の細胞株とは異なった泳動パターンを示した。クワコ胚子由来の細胞株 Bma はカイコ胚子由来の4種の細胞株によく似た泳動パターンを示したが, カイコの培養細胞では見られない2~3の特異的なスポットが存在した。ヨトウガの脂肪体由来の細胞株 MaBr-3, MaBr-5および Antheraea eucalypti の卵巣由来の細胞株は, カイコやクワコ由来の細胞株とは全く異なった泳動パターンを示した。以上の結果は, 本法により, 少なくとも種の異なる培養細胞株の分類・同定が可能であることを示している。
  • 大西 敏夫, 木山 智之
    1987 年 56 巻 5 号 p. 418-421
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑プロトプラストの融合率を向上させるために,「一ノ瀬」と「剣持」について, ポリエチレングリコール法における融合液の温度, pHおよびCaイオン濃度等の検討を行い, 以下の結果を得た。
    まず, 温度については40℃の高温条件下で融合率に向上がみられた。また, 融合液に塩化カルシウム75mMを添加し, pHを6.5に調整することにより融合率が高まることが判った。
  • 絹の染色機構に影響を及ぼす諸因子に関する研究 第1報
    中嶋 哲生, 清水 慶昭, 四方 正義, 木村 光雄
    1987 年 56 巻 5 号 p. 422-427
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    数種の蚕品種について行なった酸性染料の染色性の測定から, 絹繊維の非晶領域の微細構造の相違を検討した。用いた蚕品種は, 支21号, 満月, 漢口赫繭及びそれらの交雑種である支21号×漢口赫繭と満月×漢口赫繭である。C・I・Acid Orange 7による半無限浴中での40, 50, 及び60℃における開始から480秒までの染料吸着の速度と60, 70及び80℃における吸着等温線を測定し, 次のように推定した。1) 漢口赫繭の非晶領域の割合は他種のそれより僅かに小さい。しかし, 非晶領域の表面近くの緩い配向のためにその中への染料吸着は他種の場合より容易である。2) 支21号の非晶領域について, 他種のものより配向の度合いは若干高いがアミノ末端基の量は多い。3) 交雑種の非晶領域の微細構造全体は雌の形質の影響を受け, 表面近くの配向の度合いは雄の形質の影響を受ける。
  • 阿部 芳彦
    1987 年 56 巻 5 号 p. 428-430
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコに病原性を示す鞭毛虫の1種, Leptomonas sp. のシスト形成を組織化学的に観察するとともに, 人工培地を用いた培養により検討した。その結果, シスト皮膜には酸性粘液多糖類 (ヒアルロン酸) および含硫蛋白質が存在することが組織化学的に示された。プロマスチゴートの培養試験の結果, 酸性粘液多糖類としてはヒアルロン酸を (又はN-アセチル-D-グルコサシおよびD-グルクロン酸の両者), 蛋白質としてはウシアルブミン・フラクションVを培地に添加した場合にシスト皮膜の形成が誘導された。
  • 韓 明世, 渡部 仁
    1987 年 56 巻 5 号 p. 431-435
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    通常の母蛾検査試料, すなわち感染母蛾を70℃で2時間熱乾燥し, その後2% KOHを加えて磨砕濾過した試料を用い,その中に存在する微胞子虫類の胞子を染め分けて識別できるような酵素抗体法の応用を検討した。その結果色素基質であるDAB (diaminobenzidine-4 HCl) を用いて, 胞子表面を特異的に茶褐色に染め分け得る簡便な酵素抗体間接法およびPAP (peroxidase-antiperoxidase complex) 法の手技を確立した。通常の母蛾検査試料における胞子の識別は検出感度の点からみて間接法の利用で充分である。しかし, かなり高温で乾燥されたり, 乾燥後長期間放置された母蛾に由来する検査試料で, 胞子表面の抗原性がかなり低下している恐れのある場合には, 間接法よりも更に検出感度の高いPAP法を利用すべきであろう。
  • 潘 慶中, 須貝 悦治, 黄色 俊一
    1987 年 56 巻 5 号 p. 436-439
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ蛾のマルピギー管, 吸胃, 直腸嚢, 輸卵管および粘液腺の各組織細胞核の性クロマチン (SB) を検出し, これとW染色体との対応関係を調べた。1) 雌蛾では各組織ともにSBが観察されたが, 雄蛾では認められなかった。2) 2倍体雌蛾の組織細胞では, 1核当り1個のSBが, 4倍体では2個のSBがそれぞれ検出された。3) 幼虫の腹脚細胞のSB数は, 同じ個体の雌蛾の組織細胞のSB数とよく一致していた。
  • 1987 年 56 巻 5 号 p. 440
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワの低温馴化の逆過程における原形質膜の変化
    クワ側芽の器官培養にみられる花序形成の季節的な差
  • 横山 岳, 須貝 悦治
    1987 年 56 巻 5 号 p. 441-442
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 阿部 広明, 渡部 仁, 江口 良橘
    1987 年 56 巻 5 号 p. 443-444
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 誠
    1987 年 56 巻 5 号 p. 445-446
    発行日: 1987/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 56 巻 5 号 p. 448
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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