紫外線を照射した絹および劣化した絹の粘弾性について研究を行った。紫外線を照射しない場合, 生糸のβ分散は-50℃と+13℃付近に二つのピークが現れ, 練糸では-13℃付近に, 一つのピークが現れた。動的弾性率E′は練糸より生糸の方が高かった。
紫外線照射を100時間以上続けると, 生糸のβ分散は二つのピークから一つの平坦なピークに変り, 練糸のβ分散もピークの形が次第に平坦に変っていく。紫外線照射が200時間以上続くと, 生糸のE′は減少した。
古い練糸のE′は劣化が進むほど, 低温側のE′と高温側のE′との差が顕著になる。古い生糸のE′は古い練糸のそれよりずっと低いが, 伸度は古い生糸の方が高い。
長い間保存されてきた古い生糸は表面のセリシンから劣化されるので, 劣化したセリシンは生糸の粘弾性にあまり影響を及ぼさないが, フィブロインの劣化に遅延の作用があることを明らかにした。
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