日本蚕糸学雑誌
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56 巻, 6 号
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  • 張 義成, 浜野 国勝, 向山 文雄
    1987 年 56 巻 6 号 p. 449-456
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    9種鱗翅目昆虫の終齢幼虫の第1~2日目のフィリッピ腺 (FG) を光顕および電顕で観察した。FGは普通頭部に存在するが, アワヨトウ, アケビコノハ, およびアメリカシロヒトリの3種では前胸部に存在している。FGの痕跡も見られないエリサン, FGが前部糸腺に付着した突起を形成しているエビガラスズメを除く他の昆虫においては, FGは導管と腺体から構成され, 腺体は1~数本の胞状体からなっているが, 左右の腺体が癒合して1本となったものも見られた。光顕観察によるとエビガラスズメの腺体には液胞は全く見られなかったが, 他の昆虫では腺細胞に多数の液胞状の空隙が見られた。サクサンおよびアケビコノハでは導管は前部糸腺と連続しており, 他の昆虫においても同様と推定される。電顕観察によると, FGには不定形のフェルト状基底膜が各昆虫に見られ, 外膜に接する細胞膜の陥入状態, 腺細胞小器官および導管の内膜の超微形態に差異が見られた。
  • 三石 賢, 八木 敏之, 石渡 勉
    1987 年 56 巻 6 号 p. 457-462
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹糸の酸性染料による混合染色の速度論的検討を行った。pH3.0, 75および85℃における酸性染料の単独染色および混合染色の時間-吸着量等温線を求めた。これらの実験結果は Ceggara・Puente の速度式によって再現できることがわかった。平衡吸着量 (Mi), 染色の速度定数 (k) を Ceggara らの式によって等温線から求めた。また, 拡散係数 (D) は, 拡散に関する渋沢の近似式によって求めた。単独染色の実験結果は Ceggara らの式によってよく再現されることが分かった。混合染色の場合, 親和力の小さい染料の等温線上に吸着極大が現れる場合があることが分かった。単独染色の場合, 染料の親和力が大きくなるにしたがって, Miおよびk値は増大しDは小さくなることが分かった。混合染色の場合の拡散係数は, 絹糸上の座席に対して, 両染料が競的争に吸着するために大きくなる。
  • 山野井 文夫
    1987 年 56 巻 6 号 p. 463-466
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ5齢幼虫に低濃度の有機リン殺虫剤MPPならびにEPN (MPP: 250ppm, EPN: 90ppm) を経口投与し, その成虫の産下卵をガスクロマトグラフィーによって分析したところ, 投与薬剤そのものがMPP投与区からは生物重当たり11.0ppm, EPN投与区からは同16.6ppmが検出された。この検出量は産下卵1粒当たりMPP投与区では6.1ng, EPN投与区では9.3ngの薬剤残留量に相当した。このことから, 幼虫期に薬剤投与を受けたカイコ成虫の産下卵が孵化不良となるのは薬剤が蛹・成虫を経て卵へ移行し, 残留していたことによるものであることが実証された。以上の結果に基づき, 有機リン殺虫剤による孵化阻害作用について考察した。
  • 古沢 寿治, イントラシット レスリーS.
    1987 年 56 巻 6 号 p. 467-473
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕卵の休眠状態と卵特異蛋白質 (ESP) およびビテリン (Vtn) との関連を追求するため, 産卵48時間後に5℃と1℃に保護し, 休眠過程に伴う蛋白質パターンの変動をSDS-ポリアクリルアミドケル電気泳動法によって調べた。その結果, 主として7本のバンドがみられ, このうち, 休眠覚醒に伴い顕著に変動したバンドはESP由来蛋白質 (分子量55kDa) とVtn由来蛋白質 (分子量46kDa) であった。すなわち, 5℃保護卵では産卵40日後から, また, 1℃保護卵では産卵160日後から休眠覚醒が始まった。いずれの保護卵でも覚醒期に対応して, 産卵直後から増加した55kDa ESPが減少を始め, 46kDa Vtnが増加した。さらに, 5℃保護卵を産卵140日後に25℃へ移したところ, 55kDa ESPが胚発育に伴って再び増加した。これらの結果から, 55kDa ESPと46kDa Vtnの変動は, 休眠状態と密接に関連していることが判明した。
  • 伊藤 大雄
    1987 年 56 巻 6 号 p. 474-482
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    望ましい桑の伐採時期, 栽植型式, 樹型等を受光態勢の観点から究明するため, 既往のプログラムを改良してMORUS-LICSを開発した。MORUS-LICSは, 計測データに基いてモデル桑樹群落の各枝 (円錐台)・各葉 (楕円形) を数式化する一方, 多数の入射光線 (直線) を設定し, 両者の連立方程式を解いて数値実験的に受光状態とCO2同化量を求めるシミュレーションプログラムであり, 栽植密度, 畦の方位や植栽面の傾斜等を初期条件として自由に指定できる。MORUS-LICSによる計算結果は, 透過光の割合, 物質生産量や生育初期の生産構造に関して実測値と若干異なる場合があったが, 計算結果と実測値は概ね一致しプログラムの有用性が認められた。
  • 松本 陽一, 土屋 幾雄, 久間 秀彦
    1987 年 56 巻 6 号 p. 483-488
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    生糸/絹コアスパン糸およびそれから作成した織物において, 精練による生糸のセリシン量の減少が糸の引張強伸度および織物の圧縮特性にいかなる影響を及ぼすかを検討した。
    生糸の精練はセリシン量を減少させるとともに, 生糸をバーブ (繭糸) へ, さらに繭糸をブラン (絹糸) へ分繊させる効果をもっているので, コアフィラメント糸の構成本数を増加させる。したがって, コアスパン糸における精練効果はコアフィラメント糸の剛軟度の低下と摩擦係数の増加であり, またコア層とスキン層のなじみ易さの増加であると考えられる。その結果, 生糸/絹コアスパン糸の引張強伸度は練減率の増加とともに増加すること, そしてこれらの織物の圧縮特性は練減率10%から増加することが明らかとなり, 絹紡織物の腰の弱さをいくぶん改善できると考えられた。
  • 塚田 益裕, 神田 千鶴子, 高橋 保, 青木 昭
    1987 年 56 巻 6 号 p. 489-493
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    γ線により前照射処理した絹糸を素材にして製織した“ななこ”絹織物の剛軟度, 防しわ率などの力学的特性を中心に検討した。加工糸をよこ糸に用いることにより, 織物見掛け密度, 絹織物の厚さ, たて糸の織縮み率が増加した。剛軟度, 防しわ率はたて糸方向よりも, よこ糸方向で高い値を示した。加工絹糸を用いると, たて糸・よこ糸間の接触状態が疎となり, 絹織物の剛軟度, 防しわ率がともに増加することから, γ線照射処理に基づくグラフト加工により絹織物の実用性能を向上させ得る可能性が示唆された。
  • 黄色 俊一, 仲沢 功貴
    1987 年 56 巻 6 号 p. 494-499
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワコヤドリバエは, 家蚕への寄生時期が3齢期から5齢期までのいずれの時期であっても, 常に寄主家蚕の前蛹期に老熟幼虫となって蚕体から脱出する。この寄生者の急激な成長発育は, 寄主の最後の幼虫脱皮の3日後, 吐糸開始に先立って始まった。すなわち, 寄生者の1齢期間はまちまちであったが, 寄生者の脱皮は常に寄主の変態に関して同じ時期におこった。4齢期にクワコヤドリバエが寄生した家蚕を終齢1日目に胸腹間結紮すると, 寄生者は, 成長発育を促進するエクジステロンを投与しなくても, 遊離腹部内で脱皮して2齢になった。一方, 遊離腹部内での寄生者の成長発育は, メトプレンを投与することによって完全に阻止された。これらの結果は, クワコヤドリバエ幼虫の成長発育が, 家蚕の変態に同調していること, 寄生者の内分泌機構が, 寄主の若齢中は高濃度のJH環境によって抑制されていることを示唆している。
  • 萩原 応至, 滝沢 克子
    1987 年 56 巻 6 号 p. 500-504
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ソヨゴ (冬青) 生葉抽出液の性質, および抽出液にて絹羽二重を染色したときの媒染剤の種類と色, 染色堅ろう度等について調べた。抽出液の色は時間経過にともない緑味淡黄色から澄赤色へ変化した。この変色には光と空気が可不欠で特に光の寄与が大きく, 3日間日当りのよい室内に放置された2回目の抽出液が染色に最適であった。種々の媒染剤を用いて染色した結果, 多様な色が得られたが, ソヨゴ染色に特有な橙赤色を得るにはアルミ明バンが最適であった。各種媒染剤を用いて染色された絹布の日光堅ろう度は未媒染のものと差が認められず4~6級であった。洗たく堅ろう度は金属およびアルカリ媒染処理した場合3~4級で, 未媒染および酸性媒染に比し2~3級堅ろう度を向上させた。酸性媒染剤で染色された絹布はアルカリ性洗剤で洗にくすると黄色から茶色に変色し, アルカリ媒染したものと同色系統になった。しかし, 中性洗剤で洗たくした場合には変色が認められず, 被染物の色はpHにより大きな影響を受けることが判った。
  • 鈴木 健夫, 藤林 弘恭, 河野 清
    1987 年 56 巻 6 号 p. 505-510
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    前年春切無収穫の根刈仕立のクワ (品種,‘しんいちのせ’) 古条の春発芽パターンと芽の休眠との関連を調べるため, 8月25日から翌年3月16日まで経時的に枝を5分割し, 部位毎に各部位の上部から約15cmの挿穂を調製, 水挿して部位別の発芽率と発芽所用日数を調査した。(1) 枝の最上位からの挿穂の場合, 11月1日と12月1日の発芽はなく, その後発芽率を回復するとともに発芽所用日数は著しく短縮された。一方, 枝の基部近くからの挿穂の発芽率は全期間を通して100%であり, 発芽所用日数の変動は小幅であった。また, 枝の中位からの挿穂の発芽率と発芽所用日数は前2者の中間とみられる変動パターンを示した。(2) 同一枝上の上位と下位の芽の発芽の早晩に関する勾配の休眠前後の逆転はなく, また春発芽直前においても勾配に重要な差を生じなかった。このため, 根刈仕立のクワの同一古条内の上位から下位までの芽がほぼ斉一的に春発芽, 伸長し始めると考えられた。
  • 今井 暹, 吉井 幸子
    1987 年 56 巻 6 号 p. 511-515
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ヒ素を添加した飼料をカイコの幼虫に連続的に与え, 慢性毒性について組織化学的に調べた。
    1. ヒ素摂食蚕は薄黄色の体色を呈し, ヒ素濃度に反比例した経過体重を示した。上蔟後は不結繭蚕が多数出現し, 繭中斃蚕や未化蛹, 半化蛹などの変態異常蛹が多く発生した。
    2. ヒ素の組織化学的検索結果から, 中腸, 後腸, 真皮細胞, 前・中部絹糸腺のセリシン層, 神経球の髄質, マルピーギ管などにヒ素の集積が認められた。
    3. ヒ素中毒蚕の中腸組織には白色と黒色を呈する2種の腫瘍状の組織が突出形成されていた。
  • 胡 衛軍, 柳 悦州, 荒井 三雄, 平林 潔, 吉武 成美
    1987 年 56 巻 6 号 p. 516-521
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    紫外線を照射した絹および劣化した絹の粘弾性について研究を行った。紫外線を照射しない場合, 生糸のβ分散は-50℃と+13℃付近に二つのピークが現れ, 練糸では-13℃付近に, 一つのピークが現れた。動的弾性率E′は練糸より生糸の方が高かった。
    紫外線照射を100時間以上続けると, 生糸のβ分散は二つのピークから一つの平坦なピークに変り, 練糸のβ分散もピークの形が次第に平坦に変っていく。紫外線照射が200時間以上続くと, 生糸のE′は減少した。
    古い練糸のE′は劣化が進むほど, 低温側のE′と高温側のE′との差が顕著になる。古い生糸のE′は古い練糸のそれよりずっと低いが, 伸度は古い生糸の方が高い。
    長い間保存されてきた古い生糸は表面のセリシンから劣化されるので, 劣化したセリシンは生糸の粘弾性にあまり影響を及ぼさないが, フィブロインの劣化に遅延の作用があることを明らかにした。
  • 絹の染色機構に影響を及ぼす諸因子に関する研究 第2報
    中嶋 哲生, 清水 慶昭, 四方 正義, 木村 光雄
    1987 年 56 巻 6 号 p. 522-526
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    精練剤を異にする絹糸の60, 70, 80℃における等温吸着平衡並びに半無限浴での初期吸着速度を測定し, 精練剤が染色性に及ぼす影響について検討した。現行蚕品種から繰糸した生糸を, 炭酸ナトリウム, 炭酸カリウム, ケイ酸ナトリウム, ケイ酸カリウム及びわせ藁灰汁で精練して用いた。染料は特級試薬を水で再結晶したC. I. Acid Orange 7を用いた。その結果は以下のようであった。1) 等温吸着平衡における染料の吸着量は, ケイ酸塩で精練された絹糸の方が炭酸塩によるものよりも若干小さな値を示した。2) 炭酸ナトリウムと炭酸ウリウムで精練された絹糸の初期吸着速度に差は見られなかったが, ケイ酸塩で精練された絹糸は炭酸塩で精練された絹糸より大きかった。3) 藁灰汁による精練の作用は, ケイ酸カリウムのそれと類似していた。この様に精練剤の違いによって酸性染料の初期吸着速度に影響を及ぼす事が判った。
  • 横井 直人, 吉井 太門
    1987 年 56 巻 6 号 p. 527-528
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 横山 岳, 須貝 悦治
    1987 年 56 巻 6 号 p. 529-530
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 北野 実
    1987 年 56 巻 6 号 p. 531-532
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 塚田 益裕, 山口 雪雄
    1987 年 56 巻 6 号 p. 533-534
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 山口 雪雄
    1987 年 56 巻 6 号 p. 535-536
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 八尋 正樹, 新城 健
    1987 年 56 巻 6 号 p. 537-538
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 56 巻 6 号 p. 539
    発行日: 1987/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕の前胸腺刺激ホルモンのアミノ酸配列
    カイコの前胸腺のRNA合成に及ぼす前胸腺刺激ホルモンの生体外での作用
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