日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
57 巻, 6 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 羽賀 篤信, 土井 良宏, 渡辺 忠雄, 坂口 文吾
    1988 年 57 巻 6 号 p. 451-459
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繭の解じょ率ならびに繰糸条件に特異性を有する蚕品種を用いて, 絹糸腺セリシンのスラブ電気泳動分析を行い, S-A, S-B, S-Cの3成分に分画してそれらの系統間変異を見出した。これら3成分はいずれも中部絹糸腺前区において合成分泌されているので, 繭糸外層のセリシンIの主成分であり, 解じょ率及び繰糸特性と深い関係を有するものと判断した。解じょ不良系にはS-A, 良好系にはS-Bがそれぞれ検出されたが, 両成分のアミノ酸組成は異なっており, Ap/An比はS-Bで大であった。さらにS-A, S-Bを支配する遺伝子が第11連関群に属することを確認して, K遺伝子を標識としセリシン成分の型と解じょ率との関係を調べたが, 明確な相関はみられなかった。しかし, K個体と+個体との繭の解じょ率を比較すると, 明らかに+の方が良好であった。以上の結果から繭解じょの遺伝的支配機構として少なくとも外層セリシンの組成と, 吐糸速度などの営繭運動とが関与するものと考えられる。
  • 塚田 益裕, 朝倉 哲郎, 吉水 広明
    1988 年 57 巻 6 号 p. 460-465
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール (PVA) あるいはポリビニルピロリドン (PVP) を可塑剤として用い, これに絹セリシンを加えて作製したブレンド膜における, ニトロオキサイドスピンプローブ分子の運動性を, ESR法を用いて検討した。用いたスピンプローブ剤は, 4-oxo-TEMPO, 4-hydroxy-TEMPO, 4-amino-TEMPOおよび3-carbamoyl-PROXYLである。スピンプローブの運動性は, PVA膜ならびに絹セリシン/PVAブレンド膜中の方がPVPならびに絹セリシン/PVP膜中よりも低下しており, これは, 膜の含水率の違いを反映していた。3-carbamoyl-PROXYLの運動性は, PVA膜中に絹セリシンが含まれると, 特異的に低下することから, セリシンの分子側鎖とプローブのC=O(NH2)との間で水素結合が形成されていると推察された。
  • 塚田 益裕, 川北 弘, 森 精, 奈倉 正宣, 石川 博
    1988 年 57 巻 6 号 p. 466-469
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Nd-sセリシン蚕繭糸を熱水溶解処理することで得られる熱水不溶解残渣が何であるかを明らかにするため, 熱測定ならびに電子顕微鏡観察を行った。セリシン蚕繭糸の熱水不溶解残渣には, セリシンの熱分解による吸熱ピークの他, 絹フィブロインの熱分解に帰属できる322℃の幅広い吸熱ピークが現れた。電子顕微鏡写真によると, セリシン繭糸の断面には繭糸断面積で約6%を占める電子密度の高いコアー部分が観察された。以上の結果から, Nd-sセリシン蚕繭糸にはフィブロインが僅かに含まれるものと推定された。
  • 数種りん翅目昆虫の中腸細胞質で増殖する Enterobacter sp. 第5報
    冨田 健夫, 岩下 嘉光
    1988 年 57 巻 6 号 p. 470-474
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワゴマダラヒトリのへい死虫より分離した Enterobacter sp. のカイコ及び6種の昆虫に対する経皮感染性について検討した。本細菌はカイコ, オビカレハ, クスサン, オビヒトリ, クワコには感染したが, キボシカミキリ, クワノメイガには感染が認められなかった。なお, 人工飼料育と桑葉育したカイコへの感染性には差異がみられなかった。螢光抗体法による本菌の特異螢光は, 真皮細胞, 脂肪体, 気管に認められた。さらに, 本菌がそれら組織の細胞質内で分裂増殖しているのが電子顕微鏡により観察された。
  • 飯塚 英策, 藤原 孝之, 中村 文洋
    1988 年 57 巻 6 号 p. 475-480
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    細い単繊維の荷重-伸長曲線を, 簡便に且つ精度良く記録する繊維引張り試験機を試作した。この装置を用いて日本白繭改良種, 中国白繭在来種および欧州黄繭在来種の3蚕品種群に属する多数の蚕品種より得た繭から採取した繭糸について, これらの強度と伸度とを測定し, 繭糸繊度との相関を考察した。すべての蚕品種群について, 品種によらず繭糸繊度に関して強度は負の, また伸度は正の有意な (危険率0.05以下) 線型相関関係が, 繭層の部位ごとに認められた。このような相関は, 同一蚕品種内の多数の繭から採取して得られた試料集団についても見出された。しかし, 一粒の繭糸の全長に互って等間隔に多数採取して作られた試料集団については, 一般に伸度に関してのみ有意な相関が認められた。
  • 洗 幸夫, 本間 慎, 久野 勝治
    1988 年 57 巻 6 号 p. 481-488
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    重金属で汚染された群馬県安中市の桑園土壌4点, 水田土壌3点の計7点を用いて, 桑をポット栽培し, 土壌中重金属濃度と桑の生長, 重金属吸収ならびに移行との関係について実験を行った。その結果を要約すると以下のようになる。
    1. 土壌pHの低下にともなって, 溶出してくる交換態結合画分中の重金属濃度は高くなった。桑の生長に対しては交換態重金属濃度のほか, 土壌pHによる有毒元素の活性化も影響するようである。
    2. 桑に吸収されたCd, ZnおよびPb量と, 土壌中のそれら重金属濃度, 特に交換態結合画分中の重金属濃度との間に高い相関関係が認められた。なお, ポット土壌中に存在する交換態結合画分中の重金属量に対する桑の重金属吸収量の割合は, 3元素ともほぼ同程度であった。
    3. 吸収されたCdの87%, Znの65%, Pbの38%は根に留まり, 桑葉に移行したのはCd 5%, Zn 15%, Pb 31%であった。
  • 神田 俊男, 田村 俊樹, 井上 元
    1988 年 57 巻 6 号 p. 489-494
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    摂食性に関与する遺伝子を明らかにし, 低コストの人工飼料飼育に適する蚕品種の育成法の確立を目的として, 線形計画法により設計された人工飼料LP-1に対する摂食性を, 実用品種を含む46品種について調べた。その結果, LP-1飼料に対し日本種では日01号, 日148号, 日147号, 沢J等の品種が高い摂食性を示した。一方, 中国種では摂食性を示す品種はほとんどなく, そのうえかなりの個体が掃立48時間後には発死した。また, 摂食性の高い品種と低い品種との交配実験の結果から, この飼料に対する摂食性を支配する遺伝子は劣性であることが分かった。さらに, F2およびBF1の個体重の度数分布から, LP-1に対する摂食性には劣性の主遺伝子と, これを修飾するいくつかの遺伝子が関与しているものと推定された。
  • 荒川 昭弘
    1988 年 57 巻 6 号 p. 495-499
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ核多角体病ウイルスに対する抗血清を作製し, ウエスタンブロッティング法によるウイルス抗原の検出を試みた。多角体を溶解して精製したウイルス粒子およびウイルス病蚕の体液を分画遠心して得た病蚕体液画分を, それぞれ抗原として家兎を免疫し, 抗血清を作製した。抗血清を健全な蚕体成分で吸収した後に, IgGを精製して抗原検出に用いたところ, IgGはそれぞれの免疫抗原と強く反応し, また, 400倍から800倍に希釈することによって, ウイルスの検出感度を損わずに健康蚕の磨砕上清との非特異反応を完全に抑えることができた。ウイルス接種蚕を経時的に磨砕して本手法を行ったところ, 2種類のIgGを同時に使用した場合では, 接種2日後からウイルス抗原が検出された。
  • 北沢 敏男, 大槻 良樹
    1988 年 57 巻 6 号 p. 500-505
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕幼虫期の飼料条件が, 熟蚕期以降化蛾に至るまでの血液浸透圧, 並びに卵汁の浸透圧に及ぼす影響について検討した。熟蚕の血液浸透圧は250~260mOsm/kgで, 桑育蚕と人工飼料育蚕との間ではほとんど差がみられなかった。その後, 桑育のカイコの血液浸透圧は吐糸及び前蛹期に上昇して蛹化時に約300mOsm/kgに達し, 蛹化から羽化まではほぼ一定のレベル (290~300mOsm/kg) で推移した。一方, 人工飼料育したカイコの血液浸透圧は, 前蛹期及び蛹期を通じて桑育したものより常に30~40mOsm/kg高い値を示した。さらに, 人工飼料育蚕の卵汁の浸透圧も桑育したものより高かった。こうした違いが生じる原因を追究するため桑葉と人工飼料の組合せ実験を行ったところ, 人工飼料育したカイコの5齢後半に3日間だけ桑葉を与えると, 蛹の血液及び卵汁の浸透圧が全齢桑育したものと同程度まで低下することが明らかになった。人工飼料中の桑葉粉末の含量の違いは, 血液及び卵汁の浸透圧に何ら影響を及ぼさなかった。
  • 胡 衛軍, 柳 悦州, 平林 潔, 吉武 成美
    1988 年 57 巻 6 号 p. 506-510
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    光照射による絹の劣化を強伸度の変化から調べた。254nmの紫外線による短時間 (200hr.) の照射では, フィルムで包装し紫外線を遮断すれば, 絹の強伸度低下は抑制されたが, 同じ時間で紫外線を直接絹に照射すると, 絹の強伸度が大幅に低下した。長時間の太陽光の照射では, 紫外線のカットできるフィルムの使用によって, 絹の強伸度の低下は緩やかになった。酸素のある状態と比べれば, 無酸素状態にある絹の強伸度低下は緩和される。また, 同じ試料では強度の低下より伸度の低下の方が速いことがわかった。
  • 岩下 嘉光, 周 垂欽
    1988 年 57 巻 6 号 p. 511-518
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    消石灰液による核多角体タンパク質の溶解と包埋ウイルス粒子の不活化様相について, 感染調査と電子顕微鏡観察を行った。飽和液に2分, 飽和液の2倍液に30分の処理でウイルスは完全に不活化された。しかし, 飽和液の2倍液, 4倍液の5分処理ではそれぞれ29%及び91%の発病率を示し, 溶液濃度を稀釈するに従って不活化効果が低下した。飽和液に多角体を浸漬すると, 多角体タンパク質は急速に溶解した。溶解と共に多角体は互に融合して不定形塊状となり, 更に金米糖状, 菊花状を呈するものもあり, 逐には形状を消失してコロイド状となった。次に飽和液の8倍液に5分間浸漬し, 溶解の様相を電子顕微鏡により観察を行った。多角体の内部に向って多数の溶解路が形成され, ウイルス粒子のソケットからソケットへと通じ, 同時にウイルス粒子のヌクレオキャプシッドが溶解し, 続いて膜系が崩壊した。多角体の溶解は更に進行し, 大亀裂を生じ, 逐には崩壊した。
  • 清水 義雄, 関口 定, 林 誠, 石川 忠, 古川 貴雄, 鳥羽 栄治, 近田 淳雄, 清水 裕子
    1988 年 57 巻 6 号 p. 519-527
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    布のような繊維集合体と固体表面との間の接触状態を, 接触圧力の増加とともに観察する装置を作製し, この装置を用いて絹平織布の接触状態を測定した。一方, 絹平織布の接触感について官能検査を行い, 布の接触状態が接触感にどのような影響を与えるかを検討した。その結果,「凹凸感」,「つるつる感」,「ざらざら感」,「すべりやすさ」等の接触感は, 総接触面積やその圧力による変化および接触点の面積の度数分布とは相関がみられないが, 接触点の分布に影響されることがわかった。「暖かさ」と「かたさ」については, 今回検討した接触面積や接触の変化指数N値等の接触のパラメータとは相関がみられなかった。接触感の方向性, すなわち縦方向と横方向の違いについては, 差がほとんどみられないが, これは, 接触点の形とその向きが接触感の方向性に影響するためと考えられる。
  • 絹の放射線グラフト加工に関する研究 第8報
    塚田 益裕, 横沢 三夫, 青木 昭, 浦島 開
    1988 年 57 巻 6 号 p. 529-530
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 甲斐 英則, 三輪 貴, 土井 真也, 河合 孝
    1988 年 57 巻 6 号 p. 531-532
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 甲斐 英則, 繆 雲根, 河合 孝
    1988 年 57 巻 6 号 p. 533-534
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 森 精, 塚田 益裕
    1988 年 57 巻 6 号 p. 535-536
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
feedback
Top