日本蚕糸学雑誌
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57 巻, 4 号
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  • 谷合 幹代子, 井上 元
    1988 年 57 巻 4 号 p. 265-269
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ核多角体病ウイルスの抗原分析を行った。多角体をアルカリ溶解後SDS-PAGE及びウエスタンブロッティングを行ったところ, SDS-PAGEでは分子量32Kのポリヘドリン蛋白質を含めて21本のバンドが検出された。SDS-PAGEゲルのウエスタンブロッティングでは, 分子量66K以上のバンド6本, 45K近傍のバンド3本及び25K近傍のバンド2本の合計11本のバンドが抗ウイルスIgGと反応した。また抗ウイルスIgGによる発病幼虫体液のウエスタンブロッティングでは, 25K近傍に2本のバンドが検出され, この蛋白質は多角体に包埋されたウイルス粒子と体液中に遊離したウイルス粒子に共通な構造蛋白質と考えられた。
  • 幼若ホルモン活性化合物, methoprene の育蚕への利用に関する研究, IV
    釜田 壹, 島田 秀弥
    1988 年 57 巻 4 号 p. 270-274
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の5齢初期における methoprene 投与による増繭効果と, 蚕体内主要器官の成長への影響について検討した。その結果, 雌雄とも methoprene 投与により最初に残渣の体重に対する比率が減少し, 次に絹糸腺の体重に対する比率が減少することが判明した。さらに, 絹糸腺の体重に対する比率の減少に伴ない, 皮膚及び脂肪体, 血液の体重に対する比率の増加がみられた。この比率の増加は, 皮膚, 脂肪体および血液が熟蚕期以後に活発になる絹糸蛋白質の素材の蓄積に与かっていることを示唆している。
    また, 上蔟時における絹糸腺, 血液, 皮膚及び脂肪体のそれぞれの体重に対する比率の合計が最も高くなるのは, methoprene 1μg投与区であった。
  • 塩崎 英樹, 塚田 益裕
    1988 年 57 巻 4 号 p. 275-283
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    化学加工した羽二重を機械的に摩擦した際に生ずる微繊維の剥離状態を, 走査型電子顕微鏡 (SEM) により観察するとともに, 絹織物の静摩擦係数との関連を検討した。未加工の精練絹糸を摩擦した場合には, (1) フィブリルの剥離 (2) フィブリルの巻き込み, (3) 小ボール状ピルへの成長等の異なる過程が観察された。エポキシドによる化学修飾効果により羽二重の厚さは増加し, 絹糸表面の静摩擦係数は次第に増加するが, 静摩擦係数が増加する度合いは2塩基酸無水物による加工羽二重のそれより微小であった。エポキシド加工羽二重を摩擦した場合のSEMの観察結果によると, 未加工羽二重には蛋白質の粉末物が, 無水グルタル酸加工羽二重にはピルの発生が見られたが, エポキシド加工織物の摩耗程度は軽く耐摩耗性が若干向上していることが観察された。
  • 八尋 正樹, 新城 健, 田代 一美
    1988 年 57 巻 4 号 p. 284-288
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    暖地の鹿児島地方に栽培されている桑の4品種について, 冬芽が休眠した場合に休眠打破に必要な低温要求度 (Chilling requirement) を知るため実験を行った。7℃の冷蔵では,「みなみさかり」と「しんいちのせ」は約15日間 (約360時間) で,「はやてさかり」と一ノ瀬は約30日間 (約720時間) で冬芽の休眠は打破された。10℃の冷蔵では「みなみさかり」と「しんいちのせ」は約5日間 (約120時間) で, 一ノ瀬は約40日間 (約960時間) で冬芽の休眠は打破された。しかし,「はやてさかり」は約30日間 (約720時間) を経過しても, 冬芽の休眠は打破されなかった。
    これらの結果から,「みなみさかり」と「しんいちのせ」は暖地向の品種, 一ノ瀬と「はやてさかり」は比較的寒地向の品種であろうと推定し,「みなみさかり」と「しんいちのせ」は, 亜熱帯の南西諸島 (奄美大島, 沖縄) で栽培可能であるが,「はやてさかり」と一ノ瀬は不可能であろうと推定した。
  • 河口 豊, 宮路 由香利, 土井 良宏, 藤井 博
    1988 年 57 巻 4 号 p. 289-297
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    第2小形卵系統に分離する正常蚕とsm-2蚕とを用いて, 卵巣の発達過程におけるsm-2遺伝子の形質発現様式を, 卵巣 (卵) タンパク質の形成という面から比較解析した。正常蚕における卵巣の重量増加は, 特に蛹中期から後期にかけて著しかった。重量増大に伴って卵巣 (卵) タンパク質は量的にも成分数でも増加した。一方, sm-2卵巣では正常蚕の様な著しい重量増加はみられず, 卵巣 (卵) タンパク質も含量, 成分数とも増加は僅少であった。5齢幼虫期の体液タンパク質は正常蚕, sm-2いずれも発育に伴い濃度上昇, 成分数の増加がみられ, 更に幼虫期にはFL, 蛹期には vitellogenin が雌体液中に検出された。しかしながら, 正常蚕の卵巣は vitellogehin を体液から取り込み卵内に蓄積するのに対し, sm-2では大量の vitellogenin が体液中に残留したままであった。このことからsm-2遺伝子の作用の一つは卵巣の Vitellogenin 取り込み機能に欠陥を生ぜしめることであると考えられる。
  • 下郡 洋一郎, 浦野 松幸
    1988 年 57 巻 4 号 p. 298-303
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕用人工飼料の近似消化率と供試期間の初期体重, 飼育温度との関係について検討した。5齢期のカイコでは, 供試開始時の初期体重の違いは, 近似乾物消化率や近似粗蛋白質消化率に影響を与えなかった。飼育温度の差は近似消化率に影響を与え, 近似乾物消化率は, 22℃では25℃と比較して雄では38%, 雌では18%高くなり, 近似粗蛋白質消化率は, 22℃では25℃と比較して雄では16%, 雌では10%高くなることが判明した。飼料や飼料原料の近似消化率を比較する場合, 供試蚕の初期体重の差は重要ではなく, 供試期間の温度条件が同一であることが極めて重要であることが判明した。
  • 桑園管理機の操向制御に関する研究 (第1報)
    小林 亨, 大浦 正伸
    1988 年 57 巻 4 号 p. 304-312
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑園管理機の自動操向システムに用いる超音波距離計の性能を検討した。30~200cmの距離にある平面や丸棒は, 3cm以内の精度で測距が可能であった。平面から60あるいは130cmの位置に設置した距離計のセンサを12度まで旋回したり, 傾けても測距誤差は小さかった。60, 130cmの位置の丸棒は, それぞれ6度前後, 9度前後までセンサを旋回, 傾けても測距誤差は小さかった。気温は測距に影響したが, 振動による影響は認められなかった。角柱と円柱の検出値は実測値よりかなり大きかったが, ポット植え桑樹では測距誤差が小さかった。これらの結果から, 超音波距離計が桑株の検知に利用可能と考えられた。
  • 甲斐 英則, 繆 雲根, 許 品仙, 河合 孝
    1988 年 57 巻 4 号 p. 313-317
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Ease A4は, 休眠時間をはかるタンパク質と考えられる。休眠打破のために卵を冷蔵すると Ease A4は活性化され, 精製 Ease A4in vitro に冷蔵しても活性化される。そこで, 休眠打破手段の浸酸と Ease A4との関係について, in vitro で検討した。まず, Ease A4と0.25~2.5%塩酸とを5℃で混合した。混合15時間後に塩酸を除去し, 除去後の Ease A4活性を測定したところ, 7~10時間後に最高活性に達した。その上昇割合は, 2.5%塩酸で最大であった。次いで, 混合時間について検討した。Ease A4と1.25~5.0%塩酸とを15分~15時間混合し, 塩酸除去7時間後に酵素活性を測定したところ, 1.25~2.5%塩酸との1時間混合で最高活性となった。塩酸が卵内の Ease A4に直接作用する可能性がある。
  • 土井 良宏, 木原 始, 益田 敏
    1988 年 57 巻 4 号 p. 318-322
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    劣性の致死作用を伴う皮膚光沢蚕遺伝子Glの連関分析を行った。他系統との交雑後代ではGlの識別が困難になる場合が多かったが, 第19連関群に所属する狭胸nbとの交雑F1を雌に用いた戻し交雑区において, 組換型個体が10%に満たないという分離異常を生じた。後代検定を行った結果, この少数型はGlの分別過誤によるものと判明し, Glnbと連関していることが確実であった。そこで基準遺伝子として新多星紋msnを加え3点実験を試みたが, Gl及びmsnの発現度が低く例外型を多発した。10世代以上に及ぶ淘汰によってもGlの分別過誤は解消し得なかったので, これを致死遺伝子として取扱い, Gl nb msn/+++個体の相互交配による組換実験を行った。その結果, Gl遺伝子は従来0.0位とされてきたnb座の左方12.0に占位することを認めた。これに伴い第19連関群の地図をGl: 0.0, nb: 12.0, msn: 26.6と改めた。
  • 桑の内生生長物質に関する研究IV
    柳沢 幸男, 塩入 秀成, 高橋 みくり
    1988 年 57 巻 4 号 p. 323-327
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑条伐採時における残条のサイトカイニン含量の変化と再発芽との関連について検討し, 次の結果を得た。1) 残条中のゼアチン (Z) とゼアチンリボシド (ZR) は実験期間中常に検出されたが, イソペンテニルアデニン (2iP) は検出できない時が多かった。2) 伐採両区の残条のZ含量は対照区のそれより多くなった。また伐採残葉区 (RL区) の残条のZ含量は腋芽の発芽とともに伐採摘葉区 (RP区) のそれより少なくなった。3) 伐採両区の腋芽のZ含量は伐採直後に対照区のそれより増加し, 膨芽とともに対照区より減少する傾向を示した。4) 伐採両区の残条のZR含量は対照区のそれより少なくなり, 特に伐採後7日目には対照区との差が顕著であった。また開葉期前後までは, RP区の残条のZR含量がRL区のそれより多かったが, その後この関係は逆になった。5) 伐採両区の腋芽のZR含量は対照区のそれより多くなり, 腋芽の発芽および発芽促進とZRの増加とはよく一致した。
  • 顧 世紅, 岩下 嘉光, 川崎 秀樹
    1988 年 57 巻 4 号 p. 328-334
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    3眠小の3眠化するしくみを解明する目的で本実験を行った。4齢初期のエクジステロンの添食及び幼若ホルモン類似物 (JHA) の投与により, 正常な過剰脱皮蚕が誘導された。体液中のエクジステロイド濃度は4齢24時間目に小さいピークが見られ, 以後低下した。エクジステロンの注射により体内のJHを推定したところ, JHタイターは4齢48時間目に低下し, 96時間目に体内からほとんど消失するものと思われた。さらに, 3齢2日目にKK-42及び高温湿度処理した幼虫の4齢初期にJHAを投与したが, 正常な過剰脱皮蚕は誘導されなかった。また, これら処理幼虫の体液中のエクジステロイド濃度を測定した結果, 無処理幼虫の4齢24時間目で認められたピークはなかった。以上の結果により, 3眠小の4齢初期に終齢決定が行われていないことと, エクジステロイド濃度の4齢36時間目からの低下が3眠化に係わりを持つこととが推定された。
  • 甲斐 英則, 繆 雲根, 河合 孝
    1988 年 57 巻 4 号 p. 335-340
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    時計機能を有すると考えられるタンパク質は, カイコ休眠卵のエステラーゼA4 (Ease A4) である。カイコ支108号の休眠卵を産下2日後から5℃に冷蔵したところ, 孵化能力は約2週間後から認められはじめた。卵中 Ease A4のコレステロールエステラーゼ活性は, 冷蔵初期では非常に低かったが, 卵が孵化能力を獲得しはじめる冷蔵2週間後に急上昇した。次に, 休眠卵から Ease A4を精製し, 結晶化した。この精製 Ease A4を試験管中で5℃に冷蔵したところ, やはり冷蔵2週間後にそのコレステロールエステラーゼ活性が急上昇した。in vitro でも in vivo と同じ時間でコレステロールエステラーゼ活性が発現した。これらの結果より, Ease A4の時間よみ機構とその生理学的意義について論議した。
  • 赤井 弘, 高林 菊次, 木内 信
    1988 年 57 巻 4 号 p. 341-344
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の終齢幼虫に高濃度の幼若ホルモンを投与することにより, 不吐糸蚕 (永続幼虫) が出現する。これらの幼虫は吐糸や変態の徴候を示すことなく正常蚕に比し15日以上も生き続け, その後斃死する。この不吐糸蚕にエクジステロンを含む飼料を5齢10日目から13日目にかけて給与すると, 1-2日後にすべて熟蚕となり吐糸行動を始め, 鶏卵大の繭を営繭した。
  • 加藤 弘, 安田 公三, 山口 雪雄
    1988 年 57 巻 4 号 p. 345-346
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 清水 滉, 中井 俊博
    1988 年 57 巻 4 号 p. 347-348
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 小林 亨, 石川 喜夫
    1988 年 57 巻 4 号 p. 349-350
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 天蚕の生活環の制御に関する研究 (第3報)
    談 恩智, 木内 信, 藤沢 巧, 鈴木 幸一
    1988 年 57 巻 4 号 p. 351-352
    発行日: 1988/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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