ロート油溶液に浸漬された絹の酸性染料による染色性について研究した。試料は5%o.w.f. のロート油溶液に35℃で4時間浸漬し, 10%o.w.f. 炭酸ナトリウムで2時間精練したものを用いた。40, 50, 60℃における等温吸着平衡, 並びに等温初期染色速度を測定した。その結果, ロート油溶液に浸漬された絹は, 飽和値, 吸着熱および初期染色速度において, 無処理の絹よりも小さな値を示した。従って, 生糸時に吸着されたロート油は, 精練後も残存し, 同じアニオン性を示す酸性染料の絹繊維への吸着, 拡散を阻害しているものと考えられる。
以上のような結果は, ロート油の吸着の度合いにむらがあると, 染めむらの発生する可能性があることを示唆している。
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