分繊性に優れた捲縮絹糸を開発するために, 絹撚糸を硝酸カルシウムの濃厚溶液中で塩縮加工し, さらに分繊剤処理を施した。そして, 次のような結果が得られた。
1. 塩縮程度は生撚糸の方が練撚糸よりも大きかった。これは生撚糸の場合, 繊維表面を被覆しているセリシンが微細構造的に非結晶構造をとっているために, 熱水吸収とともにセリシン中に吸着された中性塩が濃縮された高濃度状態となり, 内部のフィブロインに浸入し, 膨化, 収縮させるためと推察された。
2. 細かいイレギュラー捲縮形態をした加工糸を製造するには, 塩縮加工は生撚糸に対するよりも, セリシンを除去した練撚糸に対して行う方がよいことが認められた。
3. 練撚糸の繊度と撚数としては, 撚り係数が1,500から2,500までのものが最も良好であり, 塩縮率を40%程度にすると捲縮性のよい加工糸が得られた。
4. 塩縮の加工条件としては, 浸漬温度80℃において約1分間とし, 塩縮程度は硝酸カルシウム溶液濃度で制御するようにする。40%の塩縮率に加工する場合, 比重1.410~1.420が標準的な濃度と考えられた。
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