日本蚕糸学雑誌
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59 巻, 4 号
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  • 保久良 文彦, 大西 敏夫
    1990 年 59 巻 4 号 p. 255-258
    発行日: 1990/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑カルスの冷蔵の期間と出庫後の増殖並びに休眠類似現象について検討した。冷蔵3週間経過頃から休眠類似現象が認められはじめ, 8週間でその現象が顕著になった。しかし, 18週間に至ると休眠類似現象から覚醒し, あたかも外界の温度条件による他発休眠のような状態になることが判明した。一方, 冷蔵の期間のパーオキシダーゼ活性バンドの消長との関連を検したところ, 冷蔵3週間あたりから消長の変化が現れ, 18週間を経過すると冷蔵開始時のパターンにもどる。
    そして, この消長の模様は休眠類似現象の消長と傾向が符合することが判った。また, カルス蛋白質の構成分子の大小と増殖率の高低とは関連あるもめと思われた。また, ジベレリンとジチオスレイトールの培地への添加は, 休眠類似現象の打破に効果のあることが認められた。
  • 北村 愛夫, 陳 開利, 柴本 秋男
    1990 年 59 巻 4 号 p. 259-264
    発行日: 1990/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹への有機溶媒の拡散過程における熱力学的諸量のうち, 親和力の尺度である活性化エネルギー, 構造弛緩の尺度である活性化エントロピー変化量の値は, いずれも絹に近い溶解度パラメーターをもつエタノールが最大であることが判明した。また, これらの量は溶媒分子の絹高分子固体中での飛翔距離 (λ) とも密接な関係をもち, エタノール, ジメチルスルホキシッド (DMSO) でこれらの量とλのいずれも大きい値をとることがわかった。さらにそれぞれの溶媒の活性化エネルギーを示す勾配の交差する温度はそれぞれの溶媒における転移温度とみなされ, この温度以上の領域で拡散が, この温度以下の領域で溶媒和が支配的となり, 絹と有機溶媒の相互作用は溶媒和・拡散の二段収着がおこなわれていることが明らかとなった。
  • ウイライ サン, 須貝 悦治, 黄色 俊一
    1990 年 59 巻 4 号 p. 265-270
    発行日: 1990/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    末期の雌蛹を高温密閉条件で処理し, 羽化後これに正常雄を交配すると, 産下卵の多くが不着色死卵となるが, 十分な空気の供給下では不着色死卵は殆んど発現しない。蛹1頭当りの空気容量が9ml又は20mlの場合には, 35℃で12時間処理すると100%が不着色死卵となった。また, 空気容量を58mlにすると, 不着色死卵の発現はかなり遅れ, 18時間処理で100%となった。このような不着色死卵の多くは正常精子と受精はするが, 核分裂の初期段階で致死し, 胚盤葉形成まで発育しているものはなかった。これに対し, 処理区に混在する着色卵では, 多くのものが孵化能力を有し, 次代への遺伝的影響は認められなかった。
  • ニット用絹撚糸の開発研究 第I報
    加藤 弘
    1990 年 59 巻 4 号 p. 271-279
    発行日: 1990/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    分繊性に優れた捲縮絹糸を開発するために, 絹撚糸を硝酸カルシウムの濃厚溶液中で塩縮加工し, さらに分繊剤処理を施した。そして, 次のような結果が得られた。
    1. 塩縮程度は生撚糸の方が練撚糸よりも大きかった。これは生撚糸の場合, 繊維表面を被覆しているセリシンが微細構造的に非結晶構造をとっているために, 熱水吸収とともにセリシン中に吸着された中性塩が濃縮された高濃度状態となり, 内部のフィブロインに浸入し, 膨化, 収縮させるためと推察された。
    2. 細かいイレギュラー捲縮形態をした加工糸を製造するには, 塩縮加工は生撚糸に対するよりも, セリシンを除去した練撚糸に対して行う方がよいことが認められた。
    3. 練撚糸の繊度と撚数としては, 撚り係数が1,500から2,500までのものが最も良好であり, 塩縮率を40%程度にすると捲縮性のよい加工糸が得られた。
    4. 塩縮の加工条件としては, 浸漬温度80℃において約1分間とし, 塩縮程度は硝酸カルシウム溶液濃度で制御するようにする。40%の塩縮率に加工する場合, 比重1.410~1.420が標準的な濃度と考えられた。
  • ニット用絹撚糸の開発研究 第II報
    加藤 弘
    1990 年 59 巻 4 号 p. 280-287
    発行日: 1990/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    綛糸状態の練撚糸を塩縮加工する際の加工量, 塩縮糸に対する分繊剤処理及び表面樹脂化処理について検討した。そして, 次のような結果を得た。
    1. 練撚糸を塩縮するときの綛糸量としては, 綛の固着や塩縮糸の分繊性捲縮性, 圧縮性などからして, 20~25g範囲にするのが好ましいと考えられた。
    2. 塩縮率が増大するにつれて, 絹糸の直径比, 面積比は増加し, 繊維容積は減少した。約30%の塩縮率において直径比は2.5倍以上, 気孔容積は85%を越えるかさ高をもっていることが認められた。
    3. 分繊剤による処理効果はいずれの活性剤についても認められた。そして, 鉱物油・非イオン活性剤配合活性剤 (ブリアンMSC) で処理した絹糸にはキシミ感があった。
    4. エチレン尿素樹脂による表面樹脂化処理を塩縮・分繊絹に対して行ったところ, 吸湿性と白度については何ら影響なかったが, 飽和吸水率, 伸長弾性回復率, 光沢度及び捲縮は低下することが分かった。
  • 河原畑 勇, 早坂 昭二, 一田 昌利, 瀬川 裕美, 寺峰 孜, 植松 秀男, 安田 慶次
    1990 年 59 巻 4 号 p. 288-292
    発行日: 1990/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    西南暖地の桑園およびその周辺で採集したモンシロチョウ成虫の微胞子虫感染率は5%以下の地区が多かった。検出された微胞子虫類の胞子の表面抗原を, 3種類のモノクローナル抗体で感作したラテックス (市販キット) による凝集試験で検討した。抗 Nosema sp. M11胞子モノクローナル抗体と反応した分離株が多くみられた。2分離株が抗 Nosema bombycis NIS 001胞子モノクローナル抗体に反応したが, 蚕に対する病原性は確認できなかった。今回の調査では, 抗 Vairimorpha sp. M12胞子モノクローナル抗体に反応陽性の胞子は検出されなかった。また, 3種類のモノクローナル抗体のいずれとも反応しない胞子表面抗原を持った, 蚕に対する病原性の低い Thelohania sp. Pr-K-25が分離された。
  • 佐原 健, 川村 直子, 飯塚 敏彦
    1990 年 59 巻 4 号 p. 293-303
    発行日: 1990/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    4倍体雌蚕に劣性伴性遺伝子を有する2倍体雄を交配して得た3倍体にはZZWとZWWという2種類の性染色体式が異なる雌が存在する。ZWW雌は4倍体と同様の大型卵を産下するが, ZZW雌は不正形卵を混在する2倍体と同様の大きさの卵を産下する。これは卵サイズ決定遺伝子 (Esd) がW染色体上に座位していてZWW雌は2本のW染色体を持つために大型卵を産下すると考えられる。もし, Esd遺伝子の働きが体内環境に影響されるなら, ZZW雌体内に移植されたZWW卵巣に形成される卵のサイズは宿主の卵と同じ大きさになるはずである。本実験では, 卵サイズ決定に関する環境要因の影響を知るために, 3倍体のZZWとZWW間, および大卵遺伝子 (Ge) を持つ2倍体と持たない2倍体間で卵巣移植を行った。移植および宿主卵巣ともに本来の木きさの卵を形成したため, 環境要因は卵サイズ決定に関与しないことが明らかになった。
  • 瓜田 章二, 杉浦 正昭, 酒井 哲也
    1990 年 59 巻 4 号 p. 304-310
    発行日: 1990/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑条木質より調製したセルロースアセテート (CA) 可塑剤膜における重金属イオンの対向輸送について検討した。可塑剤としてトリス (ブトキシエチル) フォスフェート (TBEP) と0-ニトロフェニル=オクチル=エーテル (ONPOE) を, キャリアとしてテノイルトリフルオロアセトンを膜に加えた。駆動力源として水素イオンの濃度差を用いた。輸送イオンとしては, 銅, 亜鉛, コバルト, ニッケル, 鉛を供試した。それぞれのイオンの流束は10-6moles/cm2hに近い値を示した。重金属イオンの中で最高の流束を示した銅の値は, 6.68×10-7moles/cm2hに達した。pHに依存した流束はpH5.0~6.0で, それぞれ異なるピークを示した。従って, pHの制御によりイオンの選択透過性が増すものと考えられた。さらに, 対向輸送の理論を明らかにするため, 銅における促進対向輸送について解析した。平衡理論より解析した促進対向輸送理論が, 実験的に明らかにされた。
  • 煮繭のエキスパートシステムの構築第3報
    木下 晴夫, 但馬 文昭
    1990 年 59 巻 4 号 p. 311-315
    発行日: 1990/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    前報で, 煮繭工程のエキスパートシステムについて報告した。しかし, 従来方法によるプロダクションルールの記述ではルール数が多くなることや, 結論として生成される解決案の具体的数量化の困難さにより利用者が理解しにくいことなど改善すべき点があった。そこで, エキスパートシステムにファジィ理論を応用したファジィ・エキスパートシステムについて追究し, これらの問題点の改善について検討した。特に, ここでは一例として触蒸温度と大中節点の関係に適用した。目標節点と現在の節点との偏差Ai1のメンバーシップ関数μAi1, 触蒸温度Ai2のメンバーシップ関数μAi2及び操作量Biのメンバーシップ関数μBiを作成し, ファジィ・ルールにより記述した。すなわち, (If X1 is Ai1 and X2 is Ai2 then Y is Bi.) である。ファジィ推論法としてMAX-MIN合成重心法を採用し, 全体の推論結果を具体的な数量として求めた。その結果, 従来のエキスパートシステムの問題点が改善できた。
  • 重松 正矩
    1990 年 59 巻 4 号 p. 316-318
    発行日: 1990/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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