日本蚕糸学雑誌
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59 巻, 5 号
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  • 生体高分子素材の調製と構造解析に関する研究 第1報
    塚田 益裕, 後藤 洋子, 箕浦 憲彦
    1990 年 59 巻 5 号 p. 325-330
    発行日: 1990/10/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕絹糸の溶解特性を解明するため臭化リチウム溶液に対する絹糸の溶解量を調べた。臭化リチウムの濃度が9M以上, 溶解温度が50℃以上で絹糸の溶解度は急激に増大した。臭化リチウム水溶液の温度と時間とを変えて絹糸を溶解した後, 脱塩処理して得られる再生絹フィブロイン水溶液の電気泳動パターンを観察したところ, 溶解条件が異なっても試料は2ないし3万~20万以上に亘る幅広い分子量分布を示し, 絹糸の溶解時における分子量低下が認められた。溶解条件が異なっても試料間の電気泳動パターンには差異が現われなかった。再生絹フィブロインのアミノ酸組成は溶解条件が変わっても, 蚕の後部糸腺内容物から調製した未変性試料とほぼ同一であることが確かめられた。赤外吸収スペクトルの測定によると, 試料は固体状態においてランダムコイル型分子形態を取り分子形態的にも試料間の差異は認められなかった。
  • 小此木 エツ子, 三木 六男, 平尾 〓蔵
    1990 年 59 巻 5 号 p. 331-335
    発行日: 1990/10/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    育成した緑繭系蚕繭による生糸および織物の力学特性について, 実用品種 (交雑種) と比較検討した結果, 育成系統の繭を原料とする織布は, 圧縮弾性率, 剛軟度は低いが, 引張り強さ, 伸び率, 圧縮率, 保温率が高く, 嵩高で織物として優れていることを示した。この傾向は, 新方式の精練後の織布および, 織物組織が密な布ほどよい結果を示した。
  • 久保田 貴志, 大塚 照巳, 柳川 弘明
    1990 年 59 巻 5 号 p. 336-340
    発行日: 1990/10/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    広食性蚕品種の低コスト飼料を用いた1~4齢人工飼料育飼育標準表作成を目的として, 4齢期の成長および食下, 消化量に対する飼育温度の影響並びに成長に対する飼育密度の影響を調査した。
    その結果, 飼育温度が高くなるほど, 食下, 消化量が多くなり, それに伴い成長量も多くなった。しかし, 乾物食下量当りの生体重の増加量は23℃区が最も優れ, 一飼育経過および量的形質等を総合的にみた場合には, 26℃が飼育適温と考えられた。また4齢期の飼育密度は, 0.1m2当り210~250頭が妥当であると考えられた。
    これらの結果から, 4齢期の飼育標準表を試案した。
  • 塩縮加工によるニット用絹撚糸の開発研究, 第3報
    加藤 弘
    1990 年 59 巻 5 号 p. 341-349
    発行日: 1990/10/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    塩縮・分繊・樹脂加工糸編地の力学的な特性をKES-FB計測システムを用いて測定し, さらに力学特性値より風合い評価値を計算した。塩縮・分繊・樹脂加工糸を使って試作した絹編地は, 手触りがソフトで, ふっくらとした軽いものであった。加工糸編地の目方は未加工糸編地と比べて, 原料糸量が少なかったにもかかわらず, 同じような地厚さの編地が得られた。絹編地に対する各種の力学特性値は, 塩縮・分繊・樹脂加工糸を用いることにより, LT, WT, B, 2HB, LC, WC, MMD, SMDが増加し, 反対にG, 2HG, 2HG3の特性値が減少した。これらは加工糸編地が, しなやかで弾力性, 圧縮反撥性に富み, ソフトで伸びやすいことを示している。さらに, アウター冬服用を基準にした場合, 加工糸絹編地のKOSHI, FUKURAMI, NUMERIの基本風合い (HV) は, 未加工糸編地と同じ程度であったけれども, 布の良否を判別する総合風合い (THV) は高い値を示した。
    以上のように, 各種力学的性質およびHVやTHVなどの品質評価値から判断して, 塩縮・分繊・樹脂加工糸は品質のよいニット用絹糸としての可能性をもつことが確かめられた。
  • 寺崎 朝子, 川合 秀樹, 下郡 洋一郎
    1990 年 59 巻 5 号 p. 350-354
    発行日: 1990/10/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕幼虫体液にチオ硫酸ナトリウムを添加し, 黒化反応の抑制を試みた。また, この体液から凍結乾燥処理によって粉末蚕体液を調製し, これらの処理を行った体液を Grace 培地に添加して. 昆虫培養細胞に及ぼす影響を検討した。チオ硫酸ナトリウムを0.1%添加した体液は採取後数時間にわたって黒化が抑制された。また, この体液にはチオ硫酸ナトリウム無添加体液と同様の昆虫培養細胞に対する増殖促進効果が認められた。さらに, チオ硫酸ナトリウム添加粉末蚕体液は蒸留水で容易に溶解し, 増殖促進効果も低下していなかった。これらのチオ硫酸ナトリウム添加体液を長期に渡って昆虫培養細胞の継代に利用しても, 細胞形態の変化および増殖率の低下は認められなかった。
    牛胎児血清添加量の異なる Grace 培地における2種の昆虫培養細胞 (Antheraea eucalypti およびS. P. C. Bm 36細胞系) の増殖に対し, 粉末蚕体液添加の効果は牛胎児血清添加量の低い場合に顕著で, 昆虫培養細胞の種によって若干の差異が見られた。
  • 今井 恒夫, 坪内 紘三
    1990 年 59 巻 5 号 p. 355-359
    発行日: 1990/10/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹カードスライバー中のネップの大きさとネップを構成する繊維の太さを調べ, 絹のネップ形成について検討した。絹のネップの大きさおよびネップを構成する繊維の太さの分布は, 基本的には対数正規分布を示した。これについては, ネップを構成する繊維は brin と brin から分繊したフィブリルから成り立っているが, これらはネップ中で均一に混ざらず, 一般に大きいネップは太い繊維, 小さいネップは細い繊維でできているためと考えられる。また, ネップの形成については, まず分繊したフィブリルがからんでネップを作り, これが他の繊維にからんでネップは大きくなると考えられる。
  • 竹田 敏, 河野 義明, 亀田 幸彦
    1990 年 59 巻 5 号 p. 360-365
    発行日: 1990/10/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    トレハラーゼの強力かつ特異的な阻害剤として知られているバリドキシルアミンA (VAA) のカイコに対する作用の一つとして, 不膠着卵の出現について検討した。
    蛹齢6日および8日の蛹にVAAを注射 (0.01~1μg/蛹) または浸漬 (0.05~5μmg/ml溶液) を行ったところ, いずれの場合にも, 一定量以上のVAAで不膠着卵の産生が認められた。すなわち, 注射の場合では0.5μg以上で, 浸漬の場合では1mg/ml以上で不膠着卵の産生に効果があった。このVAAの不膠着卵の誘導効果は今回試みた何れの蚕品種においても観察された。14C-グリシンの産卵後の粘液腺蓄積部および卵表面の膠着物質への取り込みは, VAA処理区において顕著に抑制されていた。走査電子顕微鏡で観察した結果, VAA処理を行った蛹から羽化した蛾が産下した不膠着卵の表面構造は, 対照区のものに比べて, 著しく平滑であった。
  • 談 恩智, 永田 昌男, 小林 正彦
    1990 年 59 巻 5 号 p. 366-374
    発行日: 1990/10/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    天蚕前幼虫休眠の覚醒条件と休眠を制御する部位について検討した。1) 休眠打破には卵産下後の25℃での保護期間の影響はほとんどなく, 5℃の低温期間の影響が強かった。2) KK-42を直接前幼虫に処理すると微量 (0.15μg/larva) で, また低温の介在なしに, 休眠が打破された。
    3) 休眠中の前幼虫を結紮したところ, 頭-胸間結紮では休眠は打破されないが, 胸部第3~腹部第5環節の間の結紮によって, 尾側の休眠は打破された。4) KK-42の処理は, 結紮では休眠が打破されない前部の休眠を打破した。5) 結紮個体に20-OH-ecdysone を処理すると休眠の覚醒が遅れたが, JH-Iでは影響がなかった。以上の結果から, 天蚕の前幼虫休眠を制御する要因は胸部に存在し, 低温あるいはKK-42の作用によって解除されることが明らかになった。従って, 休眠要因はアラタ体とは関係がなく, 胸部にある前胸腺と強い関わりがあると推察された。
  • 浅野 真一郎, 飯塚 敏彦
    1990 年 59 巻 5 号 p. 375-380
    発行日: 1990/10/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    菱形の結晶タンパク質を産生する20亜種の Bacillus thuringiensis を材料として, 従来のアルカリ処理法ではなく, 約5分間のSDS加熱処理といったより簡単な方法を用いて, 結晶タンパク質のプロトキシンレベルにおける分子量の比較を行った。この結果, 菱形結晶タンパク質を産生する20亜種の中で, 130~145kDaのペプチドが検出された株では, subsp. japonensis を除き全ての亜種でカイコ幼虫に対する殺虫活性が認められた。しかし, 130~140kDaのペプチドが検出されなかった株では, 殺虫活性が認められなかった。このことから, このより簡便なSDS処理を用いて, 結晶タンパク質の鱗翅目昆虫に対する殺虫活性が判別可能と考えられた。
  • 町井 博明
    1990 年 59 巻 5 号 p. 381-382
    発行日: 1990/10/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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