日本蚕糸学雑誌
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61 巻, 1 号
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  • 朝岡 潔, 真野 保久
    1992 年 61 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    低コスト人工飼料に適合する広食性蚕品種を育成するため, 育成中の蚕系統の中からLP-1飼料に対する摂食性の高い系統を蟻蚕の毛振るい率を指標にして選抜し, その初期選抜過程における系統の性状を調べることによる選抜方法について検討を行った。その結果, 1齢と4齢のLP-1飼料に対する摂食性の相関関係は高く, 毛振るい率の高い系統は4齢期においても摂食性が高いことが分かった。またLP-1飼料により選抜した系統は, 準合成飼料に対する摂食性は向上したが, LPY-5飼料に対しては摂食性が低下する場合があった。中国種はLP-1飼料に対する摂食性は低く, 選抜により摂食性の向上する系統は少なかったが, MCS26AはLP-1飼料だけでなく他の人工飼料に対しても著しく摂食性が向上した。選抜系統のLP-1飼料摂食性は劣性の遺伝子に主に支配され, 選抜系統間のF1は両親の中間の摂食性を示すことが分かった。以上の結果から広食性蚕品種の育成が可能であることが示唆された。
  • 金勝 廉介, 掘 三千代, 井桁 潔
    1992 年 61 巻 1 号 p. 6-14
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕幼虫中腸組織中の分子量を異にする3種のスクラーゼをSDS-電気泳動と活性染色により確認し, そのうちの2種を硫安塩析とゲルろ過および陰イオン交換クロマトグラフィーによって分離した。
    最も小さいスクラーゼ (Suc-1) は分子量31,000で等電点をpH4.1に持ち, 至適pHは6.5, スクロースに対するKm値は約6.9mMであった。
    中間の分子量 (約66,000) を持つスクラーゼ (Suc-2) は等電点pH4.5, Km値は約34.0mMであった。この酵素の至適pHは, Suc-1と同様pH6.5であったが, よりシャープなpH-活性曲線を与えた。またラクターゼ, マルターゼ, グルコアミラーゼなどの少糖分解酵素活性を伴っているなど, Suc-1とは性質を異にしていた。
    以上の結果より, Suc-1は単独で中腸全域に分布するのに対して, Suc-2は中腸後部組織に分布しており, 他の少糖分解酵素と複合体を形成しているものと考察された。
  • 加藤 弘
    1992 年 61 巻 1 号 p. 15-27
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    タンニン酸/吐酒石処理により絹糸に防縮性を付与するには, 20% o. w. f. のタンニン酸が必要であった。防縮糸を用いた異収縮糸は, 圧縮弾性率と伸縮弾性率が収縮糸よりも僅か大きい値であった。試作した異収縮糸ニット地はレジリエンスの値が大きく, 剛性やヒステリシスが小さく, 変形に対して回復しようとする力があり, しなやかで弾性的であることが認められた。絹繊維とタンニン酸が結合し, 分子鎖のセグメントの運動が抑制される結果, 分解温度は高温に移り, 野蚕糸に近づくことが明らかとなった。
  • 楊 峻, 清水 養一, 鈴木 幸一
    1992 年 61 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの2化性大造の蛹脳や孵化幼虫の遊離アミノ酸を高速アミノ酸アナライザーで解析したところ, ガンマアミノ酪酸, グルタミン酸, アスパラギン酸, タウリン, グリシン, アラニンのような従来知られている脳内伝達性アミノ酸では, 休眠性と関係する量的差異は認められなかった。しかし, アスパラギン酸とスレオニンの間に溶出し, 天然型アミノ酸関連物質であると考えられる未同定物質が, 卵期の高温全明条件によって蛹脳や孵化幼虫体で量的に増大した。このことは未同定のこのアミノ酸関連物質が休眠に関与することを示唆している。
  • 陳 開利, 高野 亮, 平林 潔
    1992 年 61 巻 1 号 p. 32-35
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹の非衣料分野での用途開発を目的に塩酸加水分解法を用いて水溶性絹粉末の作製を行ってきた。しかし, フィブロインを塩酸で加水分解すると粉末が黄変してしまうので, 白い粉末を得るための脱色法と黄変機構について検討した。
    加水分解溶液に, イオン交換樹脂による処理と活性炭による処理をそれぞれ施したところ, 溶液が無色透明になり, さらに凍結乾燥することにより, 白い粉末が得られた。イオン交換樹脂に吸着したペプチドはアンモニア水や水酸化ナトリウム溶液で溶離が可能で, これらのペプチドは主に, チロシン, フエニルアラニンから構成されていた。さらに, フェニルアラニン, チロシン含量の違う白い粉末を再び塩酸で加水分解したところ, これらのアミノ酸含量の増加にともない黄色度の増した溶液が得られた。これより, 粉末作製時の黄変は, チロシン, フェニルアラニンが関与していることを確認した。
  • 瀬木 秀保
    1992 年 61 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    各種繰糸過程, すなわち, 1粒繰, 定粒, および定繊度の各繰糸過程において, ある接緒点から次の接緒点までの区間LBF (Length between Feeding-end) の分布に関し, それぞれの分布に共通な基本分布を求め, これにもとづき, 各繰糸過程における瞬間接緒率IRF (Instantaneous Rate of Feeding-end) の特徴について考察した。ここで, 瞬間接緒率とは, ある区間まで正常に繰糸されてきた繭糸または生糸が, 次の区間に落緒, または細限繊度LSF (Limit Size for Feeding-end) に達する割合をいう。
    その結果, 共通の基本分布としては, ワイブル分布が適用可能であること, およびこの共通分布を基礎として, 繰糸過程のIRF値をそれぞれのLBF値に対し求めれば, (1) 1粒繰糸過程では, Bath-tub曲線部分の形状を示し, (2) 定粒繰糸過程では, ほぼ一定の値のなだらかな曲線となり, (3) 定繊度繰糸過程では, LBFに対し増加型 (劣化型) の曲線を示すことが認められた。
  • 奈倉 正宣, 西園 寺和男, 塚田 益裕
    1992 年 61 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹フィブロインのギ酸水溶液への浸漬による構造変化を検討し以下の結果を得た。
    Silk I型結晶はヘリックス同士が水素結合で結合しているためヘリックス自身及び結晶ともに安定であり, 一方, 浸漬初期にβ-シートがランダムコイルから形成され, 次いで, このβ-シートが互いに積み重なりSilk II型結晶に成長する。
  • 斎藤 裕行
    1992 年 61 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    組織培養によるクワの増殖法を開発する目的で, 不定芽を誘導した未熟葉を継代培養し, その間に不定芽から伸長するシュートを育成して柔苗を生産する方法について検討した。冬芽内の未熟葉をBA (10mg/l) を含むMS培地で培養し, 多数の不定芽が形成された葉片を, 種々の濃度のBAを添加したMS培地で継代培養したところ, 不定芽から伸長したシュートの本数は, BA 1mg/lを添加した培地で最も多かった。品種別では「はやてさかり」が最も多く, 次いで「みなみさかり」, 剣持の順であった。また,「はやてさかり」では不定芽形成葉片を継代培養するとマルチプルシュート状の組織 (不定芽塊) となり, 1個の不定芽塊から約7カ月間に合計700本以上のシュートが得られた。これらのシュートを発根, 順化させ苗床に移植したところ, 移植固体の90%以上が活着した。このように, 未熟葉由来の不定芽塊を用いることにより, 組織培養によるクワの大量増殖の可能性が示唆された。
  • 中村 匡利, 柳川 弘明, 倉田 啓而
    1992 年 61 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    人工飼料へのリボフラビン添加の有無とカイコ幼虫の成長および体内のビタミンB2含量との関係について検討した。カイコ幼虫の成長におよぼすリボフラビン欠如の影響は急激に現れることはなく, 5齢期をリボフラビン無添加飼料で飼育しても正常に営繭蛹化した。一方, カイコ体内のビタミンB2含量は3齢あるいは5齢起蚕からリボフラビン無添加飼料で飼育すると減少し, このうちリボフラビンの減少が著しく, 補酵素型であるFADやFMNの減少は軽微であった。通常にリボフラビンを添加した飼料で飼育したカイコのマルピギー管にはリボフラビンが多量に存在していたが, リボフラビン無添加飼料で飼育するとこのリボフラビン量は急激に減少した。他の組織ではリボフラビン無添加飼料で飼育しても補酵素型特にFADは恒常性が良く保たれていた。すなわち生体内にはFADやFMNの恒常性を維持する機構があり, マルピギー管に存在するリボフラビンは体内におけるビタミンB2の貯蔵形態と考えられる。
  • 廣川 昌彦
    1992 年 61 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    正常着色卵, 白血, 限性セーブル斑の雌 {pe, +/+, re, p, +Y/p, +Y, T(W; 2)+P, psa} と橙卵, 黄血, 姫蚕の雄 (pe, re/pe, re, p, Y/p, Y) を交配し, 産下直後卵を46℃で18分間温湯処理し, 42.9%の孵化個体を得た。性比は雄3頭に対し雌158頭で, 雌のうち154頭が淡セーブル斑, 黄血, 黒眼で3倍体と考えられた。次にこの3倍体雌に2倍体雄を交配し, 産下直後卵に同処理を行った。処理卵の孵化率は22.5%で, 雌133頭と雄4頭を得た。雌はすべて黒眼, 黄血, 淡セーブル斑で, 眼色, 血色での分離は認められなかった。処理卵の胚子と雌の卵原細胞で染色体数は4n=112が観察され, 4倍体の発生が認められた。さらに, 雌7頭とos油雄を交配したところ40.9%が孵化し, 油蚕は発生せず, 性比は雌170頭に対し雄209頭で, およそ1:1を示した。以上の結果から, 3倍体雌×2倍体雄の産下直後卵の温湯処理により, 非還元型3倍性卵核 (ZZW) と精核 (Z) とが受精し, ZZZW型4倍体が得られたものと結論された。
  • 出村 誠, 竹之下 仁子, 朝倉 哲郎, 酒井 治利, 栗岡 聡, 小松 計一, 金子 正夫
    1992 年 61 巻 1 号 p. 66-72
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹セシリン単独あるいは絹セシリンと絹フィブロインのブレンド水溶液を用いて, 絹フィブロイン不織布にグルコースオキシンダーゼ (GOD) をコーティングし, 固定化されたGODの活性を調べた。絹セシリンのみを用いてGODを不織布にコーティングしたところ, 0.5%のグルタルアルデヒドで処理したにもかかわらず, 絹セシリンのコーティング層からの溶出は, 完全に抑えられなかった。しかしながら, 従来の絹フィブロインでGODをコーティングした場合と同様に, 高活性を示すことがわかった。一方, 絹セシリンを絹フィブロインとともにコーティングした場合, 絹セシリンの溶出はほとんど見られなかった。さらに, 絹セシリンの重量分率が0.14のとき, 絹フィブロインのみの場合より活性が約1.2倍向上した。この現象は, 絹セシリンの重量分率の増加に伴うGODの有量ならびに酸素透過性の増加, ならびに絹フィブロインの分子運動の変化によるためと結論した。
  • 加藤 弘
    1992 年 61 巻 1 号 p. 73-75
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 矢沢 盈男
    1992 年 61 巻 1 号 p. 76-79
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 陳 開利, 高野 亮, 勢籏 毅, 平林 潔
    1992 年 61 巻 1 号 p. 80-81
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 柳沢 幸男, 塩入 秀成, 中村 琢朗, 高橋 俊明, 陸 小平
    1992 年 61 巻 1 号 p. 82-84
    発行日: 1992/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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