日本蚕糸学雑誌
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61 巻, 3 号
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  • 桑園の受光態勢に関する研究 第8報
    伊藤 大雄
    1992 年 61 巻 3 号 p. 193-200
    発行日: 1992/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    既報のシミュレーションプログラムを用い, 普通植 (畦間2.0m×株間0.6m) 及び密植 (1.0m×0.5m) 桑園について, 畦方位による受光状態と地上部純CO2同化量の違いを検討した。枝条長は60, 120あるいは180cmで枝葉の空間配置は畦方位によって変わらないものとし, N30°Wの桑園で得たデータに基づいて定めた。普通植の同化量は, 関東における7月の気温・日射条件下では枝条長に関係なく南北畦で最高, 東西畦で最低を示し, 両者の差は3~7%に達した。これは, 南北畦が早朝と夕刻により多くの光を捕捉できるためと考えられた。しかし9月の条件下では畦方位による差はほとんどなかった。一方, 密植における同化量の優劣は季節よりも生育段階に大きく左右され, 枝条長60cmの時には光捕捉量の多い南北畦が東西畦を4% (7月)~2% (9月) 上回るものの, 枝条長180cm, LAI9.5の群落では光が中・下層まで透入する東西畦が南北畦を1~8%上回った。
  • 榎本 末男, 伊藤 博孝, 大島 正弘, 岡 成美, 大橋 祐子
    1992 年 61 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 1992/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    コウゾ (Broussonetia Kazinoki Sieb.) の子葉および葉片に Agrobacterium tumefaciens を感染させて外来遺伝子 (35S-GUS) を導入し, 形質転換細胞をカナマイシンを含む培地で選抜したところ, 得られた個体において導入遺伝子の発現を認めた。導入遺伝子としてはβ-glucuronidase (GUS) 遺伝子をつないだ35S-GUS融合遺伝子を, 選抜マーカーとしてはカナマイシン耐性遺伝子を用いた。不定芽形成は, Agrobacterium 接種40日後に観察した。形質転換体の選抜に用いる培地としては25mg/lのカナマイシンを添加したMS分化培地が最も適していた。カナマイシン自身の障害のため100mg/l以上のカナマイシンを含む分化培地では不定芽を選抜できなかった。Agrobacterium 接種直後にカナマイシン添加選抜培地へ置床した場合より, 接種後4日間カナマイシン無添加の不定芽誘導培地で培養してから選抜培地へ移植した方が不定芽形成率が高くなった。形質転換に供試したコウゾ組織の不定芽形成率は接種期間4日とした場合, 子葉が11.4%, 葉片が28.4%で後者が高かった。選抜したカナマイシン耐性個体のGUS活性を調べたところ, その90%に活性が認められた。サザンハイブリダイゼションによってカナマイシン耐性の7個体のうち5個体に導入遺伝子の存在が認められ, 形質転換体であることが確認された。
  • 天蚕の生活環の制御に関する研究-第7報
    藤沢 巧, 熊谷 拓哉, 桑野 栄一, 鈴木 報一
    1992 年 61 巻 3 号 p. 207-214
    発行日: 1992/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    天蚕卵に対し休眠打破効果のあるイミダゾール化合物KK-42とKK-80を用いて, 天蚕卵の人工孵化を行う場合の最適な方法を検討した。その結果, 産下後10日の卵を10日間冷蔵した後, イミダゾール化合物20μg/卵を処理した場合に最も高い休眠打破・孵化率を得ることができた。また, KK-42で処理した前幼虫に20-ヒドロキシエクダイソンを注射すると休眠打破が促進することから, イミダゾール化合物の休眠打破作用は抗エクダイソン作用によらないものであることが確認された。
  • 絹と有機溶媒との相互作用 第III報
    北村 愛夫, 陳 開利, 柴本 秋男, 出村 誠
    1992 年 61 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 1992/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹の有機溶媒中での伸長・収縮挙動は合成繊維に見られる収縮のみを示すような単純な挙動でなく, その温度依存性から, 伸長のみを示すタイプ (メタノル, ブタノール), 低温においてわずかに伸長挙動を示すが, 高温になると収縮を示し, 概して収縮が支配的なタイプ (ベンゼン, プロパノール, ジオキサン, 四塩化炭素, トリクロロエチレン) および収縮から伸長に転ずるタイプ (エタノール, DMF, DMSO, DMAc) の3のタイプに分けらることを明らかにした。またこの伸長・収縮挙動は測定温度と測定時間に関連する溶媒の侵入速度と分子間の緩和程度に大きく依存していることがわかった。
  • 白 倫, 羊 亜平, 嶋崎 昭典
    1992 年 61 巻 3 号 p. 221-227
    発行日: 1992/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    本報では, 定繊繰糸過程の細限接緒繊度と初接緒点間の生糸繊度特性について論議し, 初接緒点の繊度分布の Laplace 変換を導き, 分布の形を検討し, それの形成について考察を加えた。そして, シミュレーション実験により, 理論解析結果の妥当性を確かめた。
  • 山崎 泰正, 小川 克明, 金勝 廉介
    1992 年 61 巻 3 号 p. 228-235
    発行日: 1992/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    高速液体クロマトグラフィー (HPLC) およびSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法 (SDSPAGE) によりカイコガコクナーゼを分離するとともに, その作用特異性について酸化インシュリンB鎖を基質に用いて調査し, 次の結果を得た。1) 小顋のコクナーゼは, ゲルろ過法と陽イオン交換法において二つの主要な280nmの吸収ピークが現われ, 逆相法においても同様に二つの主要な220nmの吸収ピークが現われた。これらのピークのうち, 大きい方のピークに吸収曲線と対応するプロテアーゼ活性を認めた。活性ピーク面積は全吸収ピークのそれぞれ80%と66%, 88%であった。推定分子量はゲルろ過法で26,400, SDS-PAGEで28,000であった。2) 脱繭液中に含まれるプロテアーゼは, ゲルろ過法および陽イオン交換法において小顋のコクナーゼと極めて近い位置に溶出しSDS-PAGEゲル上でも, このプロテアーゼ活性分画のバンドの位置は小顋のコクナーゼと等しかった。3) 逆相法によって, 酸化インシュリンB鎖をコクナーゼ処理して得られたフラグメントが, トリプシン処理して得られたフラグメントと等しい位置に溶出することを確認した。したがって, コクナーゼの作用特異性はトリプシン様であると考えられた。
  • 胡 衛軍, 嶋田 透, 小林 正彦
    1992 年 61 巻 3 号 p. 236-240
    発行日: 1992/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    中部糸腺各部位の液状絹中のセリシンが蚕の発育に伴って変化する様子を, 酸性アクリルアミドゲル電気泳動によって解析した。セリシンの電気泳動像は, 蚕の発育段階と中部糸腺の部位によって大きく異なっていた。セリシン成分のうち, S1は5齢2日以降に中部糸腺の中区, 4日以降に前区で見られた。Sは5齢2日から4日まで中区で, 5齢4日以降は前区で認められた。S8は5齢3日以前に中区, 5日まで前区で認められた。S3は5齢3日から7日まで中区, 吐糸2日には前区に存在した。S4は5齢4日以降の後区, 7日以降の中区および吐糸2日の前区で認められた。S5は5齢6日まで中区, 吐糸1日まで前区で見られた。以上の結果から, 各々のセリシン成分が, 異なる時期に異なる部位で分泌され, 次第に絹糸腺の前方へ送られてゆくことが推定される。
  • 繭生産費調査結果の分析
    能美 誠, 佐藤 俊夫, 北川 太一, 田中 浩
    1992 年 61 巻 3 号 p. 241-246
    発行日: 1992/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    養蚕経営の生産構造に関する計量的分析を林の数量化理論IV類, 重回帰分析等を用いて行った。その結果, 養蚕経営の生産構造では, 生産要素価格差に基づく生産構造の相違, 生産要素間の代替関係, 経営による重点費目の相違等, 種々の潜在構造が析出できた。また今後の経営改善では, 生産費に占める割合がかなり大きい労働費の節減が絶対的に重要な課題だが, とくに耕うん・施肥・中耕除草作業, 飼育作業の時間節減が求められる。ただし桑園防除, 収繭作業については手抜きすべきでないことも明らかになった。
  • 塩崎 英樹, 田中 芳雄
    1992 年 61 巻 3 号 p. 247-256
    発行日: 1992/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    触媒として中性塩水溶液を含浸した樟蚕, 柞蚕, 天蚕, エリ蚕各絹糸フィブロインと種々モノェポキシドとの不均一付加反応について検討した。主要官能性アミノ酸側鎖の反応性は, Lys>His>Tyr>Argの順に低下した。KSCN触媒, エタノール溶媒を用いた68℃でのPGE反応において, いずれの絹フィブロインもHisの80%以上, Tyrの70%以上が6時間以内で消費されたが, Arg側鎖の反応性は非常に小さく, 特に柞蚕絹および樟蚕絹においては30%にも達しなかった。これら3種アミノ酸側鎖の反応に対する動力学的解析を試みた結果, Tyrは2.5-3時間に, Argは4-5時間に反応速度が極大となるのに対して, Hisの反応速度は時間と共に単純に減少することがわかった。さらにTyrおよびHis側鎖の反応に対するエポキシドの置換基効果を検討すると共に, 家蚕絹の反応性との差異を考察した。
  • 高林 千幸
    1992 年 61 巻 3 号 p. 257-264
    発行日: 1992/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    煮繭機内の温度を煮繭バスケットの進行とともに連続的に計測するために, 煮繭バスケット内に入れた温度計測装置へ温度データを記憶し, 煮繭機内を一巡した後パソコンによって温度解析する煮繭機内の温度計測システムを開発した。本システムを用いて計測実験を行ったところ, 煮繭機内の温度を連続的にしかも正確に計測でき, また取扱いが簡易であるため実用に供する装置であることが確認された。
  • 瀬木 秀保
    1992 年 61 巻 3 号 p. 265-271
    発行日: 1992/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    自動繰糸機における繊度検出端の機構上の機能について, 次のような結論を得たので報告する。
    (1) 繊度感知器の円形ゲージ型 (DI) および矩形ゲージ型 (RI) の回転軸のまわりの回転モーメントは, 双方ともに剛体の複振子の原理を援用できる。
    (2) DI型の回転モーメントに対するRI型の回転モーメントの比Cは, DIおよびRIの軸心とそれぞれの質量の中心巨離がほぼ同一であれば, RIの質量/DIの質量によって示される。
    (3) 円形ゲージ (DG) および矩形ゲージ (RG) の感度φは, それぞれについての質量の増分に対するDGまたはRGの変位角αの比で示される。
    (4) DGまたはRGを生糸繊度検出用として考える場合には, 繊度の検出が細限繊度方式 (LSF) であることから, DGまたはRGの必要最小回転角に対応する質量増分の比ψを考えることが必要である。
    (5) DIまたはRIの回転モーメントは, それらをDGまたはRGとともに構成する偏心要素 (OI) の質量に依存する。
  • 胡 衛軍, 小林 正彦
    1992 年 61 巻 3 号 p. 272-274
    発行日: 1992/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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