絹釣糸の開発を目的として, 紫外線照射によって重合樹脂化する光硬化樹脂を用いて, マルチフィラメント状の絹素材糸をモノフィラメント状に形成する樹脂被覆絹釣糸を製造した。最初に, 製造方法並びに製造装置について検討した。
製造方法は, 走行中の絹素材糸に光硬化樹脂液を付着せしめた後, 適度の口径を有する細管内を通過させる, かつ該細管の出口から余剰の樹脂液を吸引排出する。その後, 複数個の高圧水銀灯で紫外線照射して樹脂液硬化処理を施して, モノフィラメント状に固着せしめる。製造装置は, 光硬化性樹脂液入り容器, 適度の口径を有するピペット細管, 樹脂液吸引管, 吸引ポンプ, 孔付隔板, 集緒器, 複数個の紫外線照射用高圧水銀灯などから成る。
本装置で絹釣糸を製造した結果, 樹脂液を硬化させるには, 紫外線照射とともに放熱乾燥も効果的である。材料の絹素材糸の形態は諸撚糸よりも甘い片撚糸またはブレード糸 (編組糸) が好ましい。生糸の方が精練糸よりも平滑な樹脂被覆絹釣糸となる。コーティング樹脂の種類並びに加工方法によって, 自然の海洋環境下の分解速度を随意に調節可能な絹釣糸の開発が可能であることが推定された。
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