営繭中の蚕体の動き特性を調べるため, 3品種の蚕を用いて蚕体上の15点の位置の変化を1秒ごとに測定した。このうち, 吐糸口から尾部までの13点の位置データを用いて, 蚕体を12個の部分に分割し, 異なった吐糸場所での蚕体の動きから, 各部の方向分散, 方向相関係数を求めた。その結果, 方向分散は, 吐糸口から体の後部に向けて小さくなる他には顕著な特性がみられなかった。しかし, 相関係数の値は, 営繭段階が進むと大きくなる傾向を有し, 連続する二つの体節の角度の変化は, 営繭段階が進むと小さくなることが示唆された。さらに, 営繭領域の中心からの吐糸位置の方向分散を計算した結果, 営繭領域の中央部分に吐糸する場合は広い範囲に, 両端部分では狭い範囲に吐糸する傾向にあった。また, 蚕体形を多変量データとして表し, 一般プロクラステス解析を用いて, 異なった吐糸場所での平均蚕体形を推定したところ, 営繭初期の段階では比較的自由な平均体形を示すが, 段階が進むにつれて狭い範囲で動き, 吐糸場所が異なってもほぼ同じような平均体形をとることが明らかとなった。さらに, 蚕体各部の長さの変化についても考察を加えた。
抄録全体を表示