日本蚕糸学雑誌
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64 巻, 4 号
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  • 但馬 文昭, 石黒 善夫, 木下 晴夫
    1995 年 64 巻 4 号 p. 297-301
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    生糸の節の自動識別装置を開発するための基礎的研究として, レーザー光により計測した節形状波形から抽出した各種類の節の特徴量 (幅, 高さ, 面積, 相互相関, スロープの長さ) に基づいて節の種類識別規則 (ファジールール) を生成した。この識別規則は特徴量を座標軸とする特徴空間を分割してできるファジー集合と特徴空間に位置する節との対応関係を If-then 形式で表現するものである。さらに, 生成した規則の1次元および2次元の分割空間における分布を調べた。その結果, 生成された識別規則は小ずる節に対応するものが最も多く, 次いで小節, 中つなぎ節の順であった。このことから, 小ずる節の識別率が最も高く次いで小節, 中つなぎ節の順で低くなると推定された。また, このとき識別率が高くなる特徴量の組み合わせについても知見が得られた。
  • 古畑 研一, 岡田 暁夫, 丹羽 宏文, 坂本 宗仙
    1995 年 64 巻 4 号 p. 302-309
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕絹フィブロインをハロゲン化リチウムとジメチルホルムアミドあるいはジメチルアセトアミド系溶媒中, 均一条件下で検討した。凍結乾燥により, 粉末状のハロゲン化絹が得られた。メタンスルホニルハライドはセリン残基の水酸基をハロゲン置換した。一方, N-ハロスクシンイミドとトリフェニルホスフィンからなる試薬系は, セリン残基の水酸基のハロゲン置換に加えて, チロシン残基の核水素をハロゲン置換した。均一条件下でのメタンスルホニルクロリドによる塩素化は, 同一温度での不均一条件下での塩素化に比べ10倍以上速かった。
  • 松本 陽一, 鳥海 浩一郎, 原川 和久
    1995 年 64 巻 4 号 p. 310-318
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    複合紡績絹糸 (コア・スパンヤーン) におけるシース繊維とコアフィラメントの相互関係を明確にするために, 種々のコアフィラメントとシース繊維の組合せでコア・スパンヤーンを作成し, 引張特性および摩擦係数を測定することによって, シース繊維に対するコアフィラメントの影響を詳細に検討した。その結果, コア・スパンヤーンの引張特性にはシース・コア間の摩擦が大きく影響を及ぼすこと, および絹紡績糸に用いるコアとしては練減率の調整した生糸が最適であることが明らかとなった。
  • 坂口 明男
    1995 年 64 巻 4 号 p. 319-322
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    衣類材料としての布の重要な性質である接触感と接触状態の関係について配置状態の数量化の方法として接触部分布の容量次元を採ることでその関連性の説明を試みた。既に報告済みの接触状態観察装置で7種類の絹布の接触部の分布状態を調査すると共に, 滑り感に関する官能検査を行った。これまでに接触部の集団化の様相が接触感に影響していることが知られており, より詳しい検討のために今回は接触部分布の容量次元を算出した。容量次元はフラクタル次元の一種であり与えられた画像情報からの計測が容易である。その結果, 滑り感を感じ易いものは接触部が2次元的に配置され接触圧の分布が均等になり刺激を与えずらく, 滑り感を感じにくいものは接触部分布が1次元的になり, 接触圧の勾配が出来やすいため指を滑らすとざらざらした感触を与えるといった構造が認められた。
  • 上石 洋一, 新井 幸三
    1995 年 64 巻 4 号 p. 323-332
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    水溶性3官能エポキシド (グリセロールポリグリシジルエーテル) を用いて絹を加工した。チオシアン酸ナトリウム, 炭酸ナトリウム, 塩化ナトリウムは触媒効果が認められ, 反応初期において前二者は後者に比べ反応速度に関して約2倍の効果を有しており, WETの切断強度およびヤング率が増加した。これは水膨潤の状態で, 絹フィブロイン分子のコンホーメーションを安定化させる位置に架橋が導入されるためと考えられる。加工絹布のしわ回復性はDRY, WETともに大きく向上し, エチレングリコールジグリシジルエーテルのような2官能エポキシドで加工した絹布よりも回復性が優れていた。走査型電子顕微鏡観察の結果, 絹フィブロインフィラメント表面に変化はみられなかった。また, アミノ酸分析の結果, エポキシド加工絹ではチロシン, ヒ
    スチジン, リジン, アルギニンが減少していた。3官能エポキシドと2官能エポキシドを比較すると, 前者ではチロシン, アルギニンの減少が少なかった。これは, エポキシド分子の分子量や立体構造の違いによると考察した。
  • 勘場 麻里, 園部 治之, 間宮 祥隆, 原 典行, 藤本 善徳
    1995 年 64 巻 4 号 p. 333-343
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの休眠卵のエクジステロイドを高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いて分離し, ラジオイムノアッセイにて検出したところ, 未同定の数種類のエクジステロイドが存在することが明らかとなった。これらのうち, 2種の抱合型エクジステロイドを約9kgの休眠卵から, 主にHPLCにて精製した。これらの化合物は, NMR分析と質量分析により解析したところ, 3-epi-2-deoxyecdysone 22-phosphate (2dE'22P) と3-epi-ecdysone 22-phosphate (E'22P) であると同定された。またこれらの化合物は, 少量ではあるが, 遊離型すなわち3-epi-2-deoxyecdysone (2dE′) と3-epi-ecdys one (E′) としても存在することが, HPLC解析によって確かめられた。上に述べた4種類の化合物のうち, E′とE'22Pおよび2dE′は他の昆虫でも既に同定されていたが, カイコでの検出は今回が初めてである。また, 2dE'22Pは今回の実験で初めて明らかにされた新しいエクジステロイドである。
  • 周 垂桓, 岩下 嘉光, 深見 元弘, 川崎 秀樹, 管家 英治
    1995 年 64 巻 4 号 p. 344-351
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕のフッ素中毒発症の過程を明らかにする目的で, NaFを5齢幼虫に経口投与し, 発症に伴う中腸細胞の変性について病理組織学的観察を行った。50μg/mlの投与では, 初め粗面小胞体および滑面小胞体が発達したが, 48時間後から粗面小胞体, ミトコンドリアなどの変性が起こった。細胞質内の変性領域は局所的で小さく, 新生細胞による皮膜更新が観察されたものの, 継続してNaFを食下させると細胞変性は徐々に進行し, 遂には中腸細胞の崩壊に至った。高濃度 (300μg/ml) の投与では12時間以内に小胞体のラメラ状変性やミトコンドリアの形状, 膜変性が起こり, 続いて大形の自家食胞が形成されると共に, 多数の空胞が出現し, 細胞は崩壊した。一方, 組織化学的に検出した中腸細胞のアルカリ性ホスファターゼ活性はNaF投与により低下し, その程度は円筒細胞よりも盃状細胞において著しかった。
  • 野口 洋子, 小林 正彦, 嶋田 透
    1995 年 64 巻 4 号 p. 352-359
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    配蚕時の核多角体病蚕混入の有無を診断するため, ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) の応用方法を検討している。本報では, 集団検査技術として実用化するため, DNA抽出操作の簡易化と飼育残沙からの病原検出方法を検討した。DNAの抽出法については, フェノール・クロロフォルム抽出を数回繰り返す代わりに, 8M酢酸カリウムによる沈澱操作を1回行うだけで同等の結果が得られ, 簡易で安全な技術とすることができた。蚕糞や腐敗した桑葉を含む試料から抽出したDNAは, 夾雑物によりPCRが阻害され検出感度が低下した。これについては, エタノール抽出処理を行う過程でDNAに2Nの塩酸を7%量 (体積比) 加えることにより, 阻害反応を除去することができた。この方法で, 人工飼料育残沙, 桑育残沙あるいは蚕糞等の試料500gに混入した1齢の核多角体病蚕1頭の検出が可能となった。2齢では1kg, 3齢では2kgの試料から検出が可能であった。
  • 古畑 研一, 岡田 暁夫, 陳 玉, 徐 瑩瑩, 坂本 宗仙
    1995 年 64 巻 4 号 p. 360-369
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕絹フィブロインをハロゲン化リチウムとジメチルホルムアミドあるいはジメチルアセトアミドの二元系溶媒中, 均一条件下でブチレンオキシドおよびグリシドールと処理した。反応は不均一条件下よりも速やかに進行した。再生絹の固有粘度は未処理のものより低下した。チロシン, リシン, セリンおよびN-末端グリシンおよびアラニン残基へのエポキシ化合物の付加物が生成した。エポキシ化合物とアンモニアとの付加物の生成も認められた。不均一系処理でしばしば用いられるチオ硫酸ナトリウムを系に添加すると, 回収率および固有粘度の著しい低下が起こった。
  • 新野 孝男, 白田 和人, 岡 成美
    1995 年 64 巻 4 号 p. 370-374
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワ遺伝資源を長期間安全に保存するための実用的方法を開発するために, 376品種のクワ冬芽を用いて, 本試験を行った。5年間, -135℃の超低温槽に保存した冬芽を茎頂培養によって再生させたところ, 376品種中279品種で50%以上のシュート形成率を示した。全品種の平均シュート形成率は58.8%と比較的高いレベルであった。再生した3品種のパーオキシダーゼアイソザイムのパターンは, 凍結保存しないものと差異がなかった。保存冬芽の芽接ぎも有効な再生方法であった。以上の結果, 冬芽を用いた凍結保存法がクワ遺伝資源の有効かつ実用的な保存法であることが確認された。
  • 加古 武, 片山 明
    1995 年 64 巻 4 号 p. 375-379
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹羽二重にキトサンを処理し, 織物の物理的性質を調べた。キトサン処理すると保温性, 乾燥速度, 耐光性, 帯電性が増加し, 光沢度, 摩擦係数, 白度, 透湿性, 吸湿率, 吸水率が減少した。プリーツ性は, 乾燥状態では保持できるが, 湿潤状態では効果はなくなり, 燃焼性は自己消火性はなく変化がみられなかった。
  • 佐原 健, BERIA FALAKALI, 川村 直子, 飯塚 敏彦
    1995 年 64 巻 4 号 p. 380-384
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    限性系統「ほまれ」を用いて性染色体の由来が同品種間交配のホモ型ならびに異品種間交配のヘテロ型4倍体雌を誘起した。次代3倍体の性染色体構成により分類された個体数を調査したところ, 雄 (ZZZ) はホモ型次代では12.46%, ヘテロ型次代では5.07%であった。ZWW雌は双方ともに0.7%前後であった。この結果より,「ほまれ」系統4倍体雌の減数分裂において, Z-ZとW-W間で性染色体対合を行う卵母細胞数はZとW間で対合を行うものよりも多いと考えられた。さらに, ヘテロ型4倍体雌における性染色体対合の選択性はホモ型のそれよりも2.8倍高かった。
  • 宮沢 福寿
    1995 年 64 巻 4 号 p. 385-391
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    養蚕農家に導入可能な稚蚕人工飼料育用として開発した飼育装置および自走式小型給餌機を用いて1~3齢の各齢1回給餌技術を組み立て, 養蚕農家で1蚕期10~13箱ずつ年間4回の実証試験を行った。飼育条件として, 1) 1~3齢の飼料形態を3齢用に統一し, 2) 給餌量を従来の標準給餌量より10%増量, 3) 給餌の36~48時間後に次齢の給餌面積に拡座して眠拡座は省略, 4) 飼料の乾燥防止に遮光ネットと防乾紙を併用することなどを骨子とした。本技術の導入によって養蚕農家における作業時間は著しく短縮でき, 蚕病の発生は認められず, 蚕の揃いおよび収繭量などについても良好な成績が得られ, 蚕作の安定と省力化の両面から, 多回育養蚕農家への導入が可能であることが実証された。
  • 栗岡 聡, 平野 久
    1995 年 64 巻 4 号 p. 392-394
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 古田 要二
    1995 年 64 巻 4 号 p. 395-398
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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