水溶性3官能エポキシド (グリセロールポリグリシジルエーテル) を用いて絹を加工した。チオシアン酸ナトリウム, 炭酸ナトリウム, 塩化ナトリウムは触媒効果が認められ, 反応初期において前二者は後者に比べ反応速度に関して約2倍の効果を有しており, WETの切断強度およびヤング率が増加した。これは水膨潤の状態で, 絹フィブロイン分子のコンホーメーションを安定化させる位置に架橋が導入されるためと考えられる。加工絹布のしわ回復性はDRY, WETともに大きく向上し, エチレングリコールジグリシジルエーテルのような2官能エポキシドで加工した絹布よりも回復性が優れていた。走査型電子顕微鏡観察の結果, 絹フィブロインフィラメント表面に変化はみられなかった。また, アミノ酸分析の結果, エポキシド加工絹ではチロシン, ヒ
スチジン, リジン, アルギニンが減少していた。3官能エポキシドと2官能エポキシドを比較すると, 前者ではチロシン, アルギニンの減少が少なかった。これは, エポキシド分子の分子量や立体構造の違いによると考察した。
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