日本蚕糸学雑誌
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64 巻, 6 号
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  • 原 敏夫, 樽井 寛, 川口 浩之, 吉村 憲保, 河原畑 勇
    1995 年 64 巻 6 号 p. 477-481
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    大腸菌β-ガラクトシダーゼ遺伝子をもつ組換え体ウイルスAc360-501β-Galに感染したカイコ培養細胞株において, 大腸菌β-ガラクトシダーゼの発現を調べた。供試した5株の細胞の中でS.P.C. Bm36株のみがTC-100培地にて大腸菌β-ガラクトシダーゼに相当する120k蛋白質を発現した。本細胞株による120k蛋白質の発現に及ぼすカイコ体液の添加効果を検討した。細胞内可溶性タンパク質の総量に対する同蛋白質の占有率は, 添加したカイコ体液の濃度に依存して増加し, 2%添加のとき5.4%であった。そのときの細胞内に発現した大腸菌β-ガラクトシダーゼ活性は5.0×105個の細胞当たり7.5×103単位であった。この活性は10%ウシ胎児血清を添加した培地で発現した細胞内酵素活性とほぼ同等であった。
  • 陸 旋, 平林 潔
    1995 年 64 巻 6 号 p. 482-486
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹粉末への金属 (銅) の吸着機構について検討した。銅イオンを吸着した絹粉末についてアミノ酸分析, 赤外吸収スペクトル, X線回折を行なった結果, 銅イオンの吸着量は絹粉末の二次構造, 処理時のpHにより左右されることが明らかとなった。1%銅イオンを吸着した絹粉末から作製した成形物の強度は, 未吸着絹成形物より10%程度上昇し, それ以上の銅イオン吸着量では減少した。しかし, 耐紫外線効果は銅吸着量の増加と共に増した。
  • 川崎 秀樹, 永田 昌男, 土田 耕三, 管家 英治
    1995 年 64 巻 6 号 p. 487-492
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    5齢食桑期のカイコ翅原基の蛹化能力の獲得に関わる因子を明らかにする目的で, 5齢食桑期の体液エクジステロイド濃度を測定し, 培養系で翅原基の細胞分裂に及ぼすエクジステロイド, JHおよび体液因子の影響を調べた。エクジステロイドは5齢脱皮時に40ng/ml検出されたが, 36時間以降著しく低濃度となり, 96時間から120時間までに8~10ng/ml認められ, 132時間以降更に上昇した。幼虫へのJHA塗布および培養液へのJHI添加により, 翅原基の細胞分裂が抑制された。培養液への20Eと体液の添加は翅原基の細胞分裂を促進した。5齢1, 2, 3日と発育が進むにつれ, 翅原基細胞の反応性は体液よりもエクジステロイドに対して高くなった。翅原基の蛹化能力の獲得には5齢3日までに体内因子の影響を受けることが必要で, さらにJHの消失によって蛹化が誘導され, 低濃度のエクジステロイドがこれを促進しているものと推察した。
  • 野口 洋子
    1995 年 64 巻 6 号 p. 493-497
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    マツカレハ細胞質多角体病ウイルス (CPV) を接種したマツカレハより, 多角体の形状が外観六角形のおむすび型をしている, 本来のマツカレハCPVの多角体の形状と異なるCPVが分離された。その増殖様相を電子顕微鏡により観察したところ, virogenic stroma 内の中心に近い部分でウイルスの形態形成がなされ, ある程度の量のウイルス粒子が形成されると, その場で多角体に包埋された。virogenic stroma 内の周縁部にはウイルス粒子と多角体は認められず, 従来報告されている鱗翅目昆虫のCPVとはウイルスおよび多角体の形態形成の場が異なっていた。このCPVは, 中腸円筒細胞, 盃状細胞以外にも筋肉細胞, 気管皮膜細胞等に感染が認められ, また, アメリカシロヒトリ, ヒメシロモンドクガ, カイコ等にも感染することから, 組織特異性や宿主の範囲の広いウイルスであると考えられた。
  • 但馬 文昭, 石黒 善夫
    1995 年 64 巻 6 号 p. 498-503
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ファジー識別規則による生糸の節の種類識別装置しの開発を目的として, 節パターン空間における特徴集合と特徴軸の分割数をパラメータとしてコンピュータ上で識別実験を行い, 高識別率を得るためのパラメータの条件を分析し, 次の知見を得た。(1)2または3次元の識別規則を使用すると, 高識別率を与える特徴集合は節の種類により特有である。(2)5次元の特徴集合による識別規則を除いて, 特徴集合の次元数が高くなるほど高識別率が得られた。(3)3次元識別規則による節の種類毎の識別率は小ずる節95%, 大わ節・さけ節95%, 中つなぎ節73%, 小節66%であった。
  • 岡崎 博之, 金谷 利道, 西村 小百合, 小川 克明, 渡部 仁
    1995 年 64 巻 6 号 p. 504-508
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコのバキュロウイルス組換体とカイコ幼虫を用いた物質生産系においては, 通常ウイルス注射による経皮接種法が行われている。しかし, この方法は多大の労力と時間を要し, 大規模生産系への応用は困難である。本研究では大規模生産系に使用する目的で, 低温処理したカイコに人工飼料とともにウイルスを食下させるという, 省力的で感染率の高い経口接種法を確立した。その最適低温処理条件は5齢起蚕を2.5~5℃で12~24時間冷蔵することであり, 低温処理後直ちにウイルス液 (2.3×106PFU/100μl/g) を塗布した人工飼料を1時間摂食させれば, 100%に近い感染率が得られた。またこの方法によるカイコでのルシフェラーゼ遺伝子の発現量は, 従来の経皮接種法による発現量と差異は認められなかった。
  • 陸 旋, 高橋 將, 平林 潔
    1995 年 64 巻 6 号 p. 509-514
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹粉末を塩化ビニルまたは塩化ビニルペースト樹脂とブレンドし, 吸湿性, 熱的性質, 機械的性質, 染色性を調べると共に酵素処理を行った。30%以内の絹粉末を塩化ビニルペースト樹脂に混入した場合, 吸湿性の改善 (0から1~2%に上昇) がみられ, 耐熱性も約20℃上昇した。染色した絹粉末を塩化ビニルペースト樹脂とブレンドすると, 鮮明な色を持つ樹脂が得られた。ブレンド樹脂は酵素の攻撃を受けやすく, 機械的性質及び耐熱性が低下することがわかった。絹粉末はプラスチック生分解過程の加速剤として十分使用できると推測された。
  • 井上 志の, 横田 仁子, 安永 智佐, 舟越 正子, 河原畑 勇, 早坂 昭二
    1995 年 64 巻 6 号 p. 515-522
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ病原性微胞子虫 Vairimorpha sp. NISM12胞子を Rinaldini 液に浮遊した4種の鱗翅目由来昆虫細胞系 (A. eucalypti, B. mori SES-BoMo-15A, S. exigua Se3FHおよび S. frugiperda Sf21AE II) に接種し, 感染細胞の増殖, 本微胞子虫の細胞感染率および宿主細胞における原虫増殖率を経時的に比較検討した。いずれの細胞系においても胞子接種時の Rinaldini 液処理による細胞濃度の減少が認められたが, その程度は細胞系によって異なった。さらに, 細胞感染率および感染細胞での原虫細胞の増殖の経時的変化を調査した。昆虫培養細胞間で微胞子虫の感染および増殖に差異が認められ, in vitro での宿主適合性の存在を示唆する結果が得られた。また, 各細胞系におけるV. sp. NIS M12の生活環は, 二胞子形成性を示し, octospore の形成は確認されなかった。持続感染系が成立したのは S. frugiperda Sf21AE II細胞系のみであった。
  • 小山内 実, 國友 義博, 長岡 純治
    1995 年 64 巻 6 号 p. 523-533
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコガの雄性生殖器官の粗抽出液では, グリコーゲンホスホリラーゼは, 低分子物質の除去によって, 初めてAMPで活性化された。ホスホリラーゼ活性は, 精巣, 精管, 精管膨大部で検出された。精液の構成成分を分泌する雄性生殖輸管では, 乳白腺と貯精嚢に見出された。乳白腺, および貯精嚢のホスホリラーゼ活性, 並びに比活性は, いずれも射精後低下した。a型酵素は, これら2つの腺の分泌液の全ホスホリラーゼ活性の約80%を占めるが, 腺の細胞では極めて低い。精包のホスホリラーゼ活性は, 時間的経過に際しても, 常に一定のレベルを維持した。このことは, グリコーゲン分解の最初の酵素が, 精子を除く無細胞系で作用することを示し, 精包における, 細胞外解糖の存在を示唆する。
  • 三木谷 研一
    1995 年 64 巻 6 号 p. 534-539
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    遺伝子発現レベルでのエクジステロイド活性を, 高感度かつ効率的に測定できる評価系を確立した。エクジステロイド応答性エレメントを含む, ショウジョウバエhsp27遺伝子の転写調節領域と, ホタルのルシフェラーゼ構造遺伝子を接続したレポータープラスミドを構築した。このレポータープラスミドをエレクトロポーレーション法によりKc細胞に導入し, エクジステロイド存在下で24時間培養後, 細胞抽出液中のルシフェラーゼ活性を測定した。その結果, 20-ヒドロキシエクダイソン (2.0×10-7M) およびα-エクダソン (2.0×10-5M) 存在下で, コントロールの80倍以上のルシフェラーゼ活性誘導が認められた。20-ヒドロキシエクダイソンに対しては, 4.0×10-9Mまで明らかな活性が認められ, 本評価系の再現性を考慮すると, 4.8ngまで検出可能でありエクジステロイドアゴニスト活性評価系としては最高レベルの感度であることが示された。
  • 加藤 弘, 於保 正弘, 宮澤 光博
    1995 年 64 巻 6 号 p. 540-542
    発行日: 1995/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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