日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
66 巻, 3 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 伴野 豊, 境田 耕作, 中村 隆, 土田 耕三, 河口 豊, 古賀 克己, 土井 良宏
    1997 年 66 巻 3 号 p. 151-155
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    軟体蚕 (sol) の遺伝子座を3点実験により分析した結果, 同遺伝子は第6連関群上の-21.0にマッピングされ, 第6連関群には未知の染色体領域が存在することを見出した。これを確かめるために現行, 同連関群上の1.4に位置付けされているNc遺伝子座内の Bmantp 遺伝子をジコキシゲニンで標識したリボプローブを作出し, 染色体に対し蛍光 in situ ハイブリダイゼーションを行った。胚子期の体細胞中期では2本, 第一精母細胞中期においては1本の染色体の中程にそれぞれシグナルを認めた。Nc遺伝子座は染色体の中央近辺にあることを示しており, sol遺伝子の解析結果に合致するものであった。したがって, 第6連関群の新起点はsol遺伝子が妥当であり, これを基に第6連関群上の各遺伝子座を改訂すると, sol 0.0, E 21.1, Nc 22.5, M 24.1, Ign-128.6, b-2 29.1, ki 29.7, mgr 30.0, ve 32.2 F 34.7, l-k 38.8, Yr 39.8, V42.6となる。
  • 古畑 研一, 久米野 康彦, 坂本 宗仙
    1997 年 66 巻 3 号 p. 156-162
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕セリシンをジメチルホルムアミド中, 不均一条件下でハロゲン化した。塩化メタンスルホニル (MsCl) はセリン, およびおそらくトレオニン残基の水酸基を塩素置換した。また, リジノアラニンの生成がGC-MS分析により認められた。等モル量のN-ブロモスクシンイミド (NBS) とトリフェニルホスフィンから成る系は, 選択的にセリン残基の水酸基を臭素置換した。NBS単独の臭素化では50℃, 3時間でチロシン残基は完全に消失し66%の収率で3, 5-ジブロモチロシンが生成した。水酸基の置換の程度は, MsClによる塩素化の場合は臭素化の場合の2倍程度であった。生成した3-ハロアラニン残基はプロピルアミン処理により3-プロピルアミノアラニン残基に転換された。
  • 松本 陽一, 鳥海 浩一郎, 諸岡 英雄, 原川 和久
    1997 年 66 巻 3 号 p. 163-168
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ガラ紡績における原料繊維長と, 紡績操作条件, および糸質に及ぼす影響とを調べつつ, ガラ紡絹糸の可紡性について検討した。原料繊維長は, ガラ紡絹糸の作製に必要な繊維の滑脱状態に関係する重要な因子であり, 紡出糸の太さとその作製量に影響を及ぼすことが明らかとなった。また, ガラ紡機で使用する綿筒サイズ (高さ) は原料繊維長の3~4倍以上の長さが適当であることが分かった。
  • 黄 龍全, 張 剣韻, 早川 享志, 柘植 治人
    1997 年 66 巻 3 号 p. 169-175
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いてカイコ体内ビタミンB6の存在形態について, 分析・検討した。桑葉と人工飼料で飼育したカイコ体内では, PNが補酵素型誘導体であるPLP, PMPよりもはるかに多量に存在しており, 5齢起蚕から成虫羽化までの間の主な組織, 器官中の含有量の変化も顕著であった。桑葉と人工飼料中のPNは容易にカイコの消化管に吸収されて体液に入り, 5齢前半では主に脂肪体とマルピギー管に集まり貯蔵され, 5齢後半ではPNの大部分が絹糸腺に集積したと考えられる。絹糸腺は, 過剰なPNの排泄経路の一つであるかも知れない。吐糸を終えたカイコの体内では, PNがほとんど脂肪体に集まり, 雌蛹の場合, 蛹期には脂肪体中のPNは再び体液に入り, 卵形成にともなって最終的にその大部分は卵に取り込まれたと考えられる。産下卵のPN含有量は1,920nmol/gと非常に高かった。一方, PLPとPMPについては, 絹糸腺と脂肪体でのタンパク質の生合成が盛んになる時期に含有量が増加した。
  • 上村 親士, 古賀 進, 橋本 昭彦, 松石 直樹, 鳥浜 義巳, 西口 達郎, 篠原 公人
    1997 年 66 巻 3 号 p. 176-191
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑園生産力は土壌型により大きな差があるが, その原理を明らかにするため各種の影響因子について試験した。試験成果は栽桑・育蚕上, 効果の大きい順序, 直接および間接に及ぼす潜在的な効果の観点から取りまとめた。
    1. 桑の生長と収量に対し最も大きな影響を有する因子は土壌からの窒素の供給であった。桑は年間N30kg/10aの施用に対し, 窒素の集積量は25.3kg/10a程度あり, その利用率は高かった。即ち, これが栽培上の leading factor となっている。その影響の範囲は無窒素区の生育が他の一般作物と同様30%以下になるケースが多く, 通常の栽培条件下では全栽培要因の50%以上の要素を占めていると考えられる。
    2. 窒素の利用率は高いのであるが, 1~2回程度の窒素無施用の影響では, 約10%程度の減収にしかならず, 一般作物の減収率50%以上とは比較にならない程小さな影響であった。
    3. この原因として, 根群の深さの相違が考えられた。桑の細根の発達は深さ60cmまで密であり, それ以上の深さの土層への拡がりも認められた。また, 施用した窒素肥料の土層中の分布も帯状を成して約半年以上深さ1mまでの土層に留まり, 根群と窒素肥料が常にどの位置かで接触することが判明した。
    4. 肥料の種類による収量の差は, 施用窒素と根の接触の機会が多いこともあって, 最大20%通常はおおよそ10%程度の増減になる場合が多かった堆肥等有機物の施用は, 土壌の有機物含量や土壌型によって差があるが, 地力が高く根圏も大きな桑園では, その影響は単年では10%以内の増減となり, 影響はあまり大きいものではなかった。堆肥の連用は地力維持の為で, 年々の小刻みの差が積み重なって効果を示すので欠かすことはできない。
    5. 桑の仕立・収穫法は, 桑の樹勢と直接関係があり, 収量には通常10%程度の差があるが, 収穫過剰になれば, 樹勢が衰え耐病性が著しく低下する。晩秋蚕期の過剰収奪は秋の養分貯蔵を著しく阻害して, 桑の病害に対する防御機能が未発達となり, 樹が消耗したまま越冬するので, 冬期間の桑芽枯病の被害が甚大になった。その影響は翌年周年影響することも認められた。春蚕期, 夏秋蚕期の過剰収奪は夏秋期の樹の消耗を招き, 病害に対する抵抗性を著しく損ない, 桑萎縮病が激増した。即ち, 仕立・収穫法は桑の樹勢回復と効率的な収穫による安定多収穫を目指すものである。
    6. 潜在的にリン酸の欠乏した多腐植質火山灰土壌に対するリン酸施用の効果は, 経済的に可能な通常の土壌改良では最大約30%の増収が観察されたが, 通常はこれ以下であった。
    7. 桑園の生産性は桑の生産効率だけでなく育蚕の生産効率も含まれ, 古くは蚕の健強性, 繭の大きさと葉質の関係に関する研究が多かったが, 暖地では現在も桑葉質と蚕の耐病性の関係が重要である。多腐植質火山灰土壌におけるリン酸施用の効果は細胞質多角体病 (CPV), ウイルス性軟化病 (FV) に対して10~100倍の耐病性強化の効果が認められた。窒素の多施用による葉質低下の影響は核多角体病 (NPV) に対する耐病性の低下として認められた葉質低下をもたらす日照不足の遮光区は, 蚕のウイルスに対する対病性の影響を発現する前に, 人工飼料として育たない程度まで葉質を低下させた。
    8. 桑園生産力を支える個々の要因とその影響の度合は以上に述べた。桑樹は根圏の拡がりと深さが大きいので, 一般作物では確認できない深層の土壌母材の影響を強く受けていることが判明した。
  • 何 麗, 中垣 雅雄, 梶浦 善太, 武井 隆三
    1997 年 66 巻 3 号 p. 192-199
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    幼若ホルモン, エクダイソン, および抗ホルモン作用を示すイミダゾール誘導体が, 劣性3眠蚕の精細胞 (1C細胞) の出現時期に及ぼす影響について調査した。眠性に影響を及ぼさない量のJHAとKK-42で劣性3眠蚕を処理したところ, 精細胞の出現時期は, 無処理の精巣では4齢4日であるのに対し, JHA処理では, 2日遅れて4齢6日となり, KK-42処理では4齢0日に早まることが明らかになった。過齢脱皮幼虫 (4眠蚕) が高頻度で誘発されるほど多量のエクダイソンを劣性3眠蚕の4齢起蚕に投与したにもかかわらず, 精細胞の出現時期は半日ほどしか遅れなかった。優性3眠蚕の4齢起蚕に同じ量のエクダイソン処理を行ったところ, 眠性は変化せず, 精細胞の出現時期は対照区より1日遅れて4齢2日となった。これらの結果より, 幼若ホルモンとエクダイソンが劣性3眠蚕の精母細胞から精細胞への分化のプログラムを抑制的に調節している可能性が推察された。
  • 小山 朗夫
    1997 年 66 巻 3 号 p. 200-206
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    3倍性桑品種の稔性について調査し, 育種素材として利用する可能性について検討した。供試した16品種のほとんどは完全な不稔性ではないことが認められた。2倍体に匹敵するような稔性を示す3倍性品種は見あたらなかったが, その中で「しんけんもち」及び「多胡早生」は比較的高い傾向にあった。3倍性桑の種子は発芽率が低く, その後の実生の生育も不斉一であった。人為交配による3倍体×2倍体の実生20個体の染色体数を調査したところ, 正倍接数体と異数体がほぼ同数で, 正倍数体には2倍体, 3倍体及び4倍体が認められた。これらの実生のうち, 4倍体については倍数性交配母本として, 異数体は遺伝様式解明のための材料として利用できる可能性があることを示した。さらに, 交配母本として最も適性の高い3倍性品種は「しんけんもち」であることを明らかにした。
  • 佐原 健, 田中 陽子, 山田 恭裕, 斉藤 寛, 中田 徹, 浅野 真一郎, 伴戸 久徳, 川村 直子, 飯塚 敏彦
    1997 年 66 巻 3 号 p. 207-211
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    低温処理により誘起した家蚕4倍体雄は本来不妊である。5齢60時間目における4倍体雄に対する絶食処理が妊性の獲得に有効であるので、5齢60時間を開始点とした様々な長さの (1~72時間) 絶食処理を行い、妊性獲得のための最も効果的な絶食処理時間を明らかにすることを目的とした。
    処理個体の生存率は絶食時間の長さに必ずしも影響されず、絶食4倍体蚕の受精率向上は12時間以上の処理区において認められ、15時間処理区、30時間処理区および51時間処理区においてピークを示す右上がりの放物線状に推移した。また、絶食処理による5齢期間ならびに羽化までの期間の延長もしくは短縮と受精率向上には関連が認められなかった。生存率と受精率向上の観点から、4倍体雄の妊性獲得には5齢60時間からの27~30時間絶食処理が有効であり、48時間~54時間の処理が最も効果的であった。
  • 蜷木 理, 永易 健一, 尾崎 正孝, 田島 弥太郎, 黄色 俊一
    1997 年 66 巻 3 号 p. 212-214
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 大浦 正伸, 彭 彦昆
    1997 年 66 巻 3 号 p. 215-218
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ飼育環境の温度制御についてインキュベーターを利用した計測制御シミュレーションシステムを構成し計測制御機能の検討を行った結果, 作成したプログラムによりパソコン上から環境温度データの計測収集を行い1時間単位及び24時間単位の時系列データをCRT上に表示する事が可能となった。さらに, 飼育位置の温度計測データに基づきインキュベーターの温度コントロール機器に信号出力することにより, 飼育環境温度をリアルタイムフィードバック制御で調整することが可能となった。以上の結果から, パソコンによるカイコ飼育施設の環境温度計測及び制御の可能性を得た。
  • 洗 幸夫, 尾崎 正孝, 小林 正彦
    1997 年 66 巻 3 号 p. 219-221
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
feedback
Top