市販されている食用トキイロヒラタケから抽出された色素は, 絹布等をトキ色 (ピンク掛かった肌色) に染色することが判明した。その概要をまとめると以下の通りである。(1)本色素は水やメタノールなどで容易に抽出される。(2)本色素は水溶液の状態では絹を黄色に染色し, 80%メタノールなどの有機溶媒中ではトキ色に染色する。(3)本色素は, 水の中では安定であるが, 有機溶媒の中では不安定で1日で染色力を失う。(4)以上のことから, 80~90%メタノールを用いて, 抽出と染色を同時に行う同時染色法と, 2時間抽出して直ちに染色する抽出液染色法を確立した。(5)本色素は, ビニロンおよびナイロンを最も良く染色し, ついで絹を良く染色した。しかし, ポリエステル, アクリル, レーヨン, アセテート, 羊毛, 綿をほとんど染色しない。(6)染色堅牢度をみると, 耐光性は弱いが洗濯性などは極めて強い。(7)本色素は安全性が高いと推察されることから, 食品や化粧品の着色剤として利用できる可能性を論じた。
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