日本蚕糸学雑誌
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68 巻, 5 号
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  • 河本 夏雄, 行弘 研司, 田村 俊樹
    1999 年 68 巻 5 号 p. 357-363
    発行日: 1999/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    キサンチン脱水素酵素 (XDH) 活性を欠く油蚕突然変異体ogoqとにおいてXDH遺伝子 (BmXDH1BmXDH2) の構造と発現とを解析した。ゲノムDNAを用いたサザンハイブリダイゼーションの結果, BmXDH遺伝子とoq座位とが関連していることがわかった。次に, 幼虫脂肪体から抽出したRNAを用いてノーザンハイブリダイゼーションを行なったところ, oq突然変異体では他のカイコにくらべてBmXDH1の発現量が少なく, BmXDH2の発現量が多いことがわかった。2つのBmXDH遺伝子の発現量の比較からおもにBmXDH1遺伝子がXDH活性に関わるらしいので, BmXDH1遺伝子の異常がoq突然変異の原因であると考えられる。
  • 特殊生糸の開発第2報
    松本 陽一, 斎藤 英毅, 諸岡 英雄, 原川 和久
    1999 年 68 巻 5 号 p. 365-371
    発行日: 1999/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹の新しい用途として, ラケットスポーツ用ストリングを考え, 絹製品の利用と進出が著しく遅れているスポーツ界へ進出することによって, 絹の用途拡大と活性化を図ることを目的とした。そこで, 新しい絹ストリングを試作・供試し, ストリングの反発性 (伸長回復試験) と耐久性 (表面摩擦試験), ならびに樹脂加工について各実験を行った結果, 絹ストリングの2層 (シース・コア) 構造および外層 (シース) 糸の撚り数は反発性, 耐久性ならびに切断様式に大きく影響を及ぼすことが明らかとなった。したがって, 絹ストリングの耐久性は断面構造と撚り数によって改善でき, その設計と開発に向けて確かな手応えを得ることができた。
  • 徐 衛華, 佐藤 行洋, 山下 興亜
    1999 年 68 巻 5 号 p. 373-379
    発行日: 1999/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワコの食道下神経節から抽出したRNAとカイコの休眠ホルモン-フェロモン生合成活性化神経ペプチド (DH-PBAN) cDNAの一部からなるプライマーを用い, RT-PCRならびに5′-および3′-RACE法によってクワコのDH-PBAN cDNAの塩基配列を決定し, アミノ酸配列を推定した。クワコのDH-PBAN cDNAとカイコのcDNAは構成および塩基配列においてよく類似していた。しかしcDNAのβ-SGNPペプチド領域のアミノ酸配列の両者間での相同性は66.7%であり, 他の領域 (90%以上) に比較して明らかに低かった。また他のヤガ科昆虫のDH-PBAN cDNAと比較した場合にもβ-SGNPの配列は50%以下と相同性が低く, この領域が特異的に変異を起こしていることが判明した。本結果は, ポリプロテンをコードしている遺伝子の進化は遺伝子全体ではなくて特定の領域で先行することを示す最初の例となった。
  • 石井 正市, 高部 真典
    1999 年 68 巻 5 号 p. 381-386
    発行日: 1999/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    広食性蚕と湯練り人工飼料を利用し, 各種野菜に含有されるカイコに対する生理活性物質の検定方法, 並びにその生理活性効果を検討した。湿体重量で71.6~75.9%の野菜磨砕汁 (乾物換算で8.7~23.4%) を人工飼料粉体に添加して調製した飼料を, 広食性蚕の4齢幼虫に摂食させたところ, 供試野菜11種のうち9種では正常に発育したが, ホウレンソウとピーマンの添加飼料では頭部が脱皮できなかった個体, 脱皮不能蚕および死亡蚕が発生し, 生理活性物質による効果と考えられる現象が観察された。特に, ホウレンソウ乾燥粉末添加飼料をカイコの3齢あるいは4齢初期に摂食させた場合には就眠時期が早まり, 5齢初期の摂食では過剰脱皮が起こり, 5齢中期の給餌では熟蚕の出現が促進される等の脱皮ホルモン様の生理活性を示す成分が含有されていることが明かとなった。また, この成分は, ホウレンソウのメタノール抽出画分に含まれることが判明した。
  • 姜 玉蘭, 木口 憲爾, 相薗 泰生
    1999 年 68 巻 5 号 p. 387-395
    発行日: 1999/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    エビガラスズメの脱皮・変態に関与する神経内分泌カスケードの解明を試みた。まず, 蛹化前~蛹期にわたる体液中のPTTH力価とエクジステロイド量の変動を解析し, 前者は蛹化2日前から蛹化後5日前までの7日の間に, 蛹化日に最大値を有す1つのピークを示したのに対し, 後者は蛹化日から蛹化後7日目までの7日の間に, 4日目に最大値を有す大きな1つのピークを示すことを認めた。また, in vitro における脳-側心体だアラタ体複合器官の神経伝達物質にたいするPTTH分泌応答は, カルバコールに対して蛹化1日前と蛹化後2-3日目に, セロトニンに対しては蛹化2日前と蛹化後3-4日目に認められた。これらのことから, 複合器官によるPTTH分泌のタイミングは, 脳の神経細胞による神経伝達物質の放出だけでなく, 複合器官の神経伝達物質に対する時期特異的応答能に依存していることが示唆された。
  • 栗岡 聡, 山崎 昌良, 平野 久
    1999 年 68 巻 5 号 p. 397-403
    発行日: 1999/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕繭 (64品種) から抽出した繭低分子量タンパク質を native ポリアクリルアミド電気泳動で分析した結果, 6種類のトリプシンインヒビター (CSTIS-I-VI) が検出された。インヒビターバンドの分布から, 供試品種は9種類のインヒビターパターンに分類され, インヒビター活性をもたない繭は11品種確認された。CSTI-IVとCSTI-VIは熱および酸に安定なインヒビターであったがCSTI-IとCSTI-IIは熱および酸に不安定なインヒビターであることが明らかとなった。CSTI-IVは既に一次構造を明らかにした牛膵臓トリプシンインヒビター (BPTI) 様の繭トリプシンインヒビターであることが確認された。CSTI-VIの分子量測定とアミノ酸配列分析結果から, CSTI-VIはCSTI-IVに類似したBPTI様トリプシンインヒビターであり, 繭にはアイソインヒビターが存在していることが示唆された。CSTI-IとCSTIS-IV-VIは共優性的にF1で発現されていることが今回の実験で示された。
  • 加藤 弘, 秦 珠子, 安田 公三, 神田 千鶴子
    1999 年 68 巻 5 号 p. 405-415
    発行日: 1999/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    野蚕繭 (アナフェサン, クリキュラ, ヨナクニサン) の精練方法, 紡績性, 染色性, 物性について検討した。
    1) 炭酸ナトリウムを用いたアルカリ精練において, ガラ紡機で紡績糸をつくることが可能となる精練処方を検討した結果, アナフェサン繭は, 最初に4g/lの炭酸ナトリウム水溶液で3~4時間, 煮沸精練したのち, 精練液を更新して, 3g/lの炭酸ナトリウム水溶液で2~3時間, 煮沸精練を行うことが適切であることがわかった。
    アナフェサン繭からは弾力性のある紡績糸が得られた。
    2) 酸性染料の染着性においてエリサン繭紡績糸がもっとも高い染着率を示し, 次いでクリキュラ繭紡績糸, アナフェサン繭紡績糸, 家蚕絹糸となり, ヨナクニサン繭紡績糸はもっとも低い染着率となった。
    3) アナフェサン, クリキュラ, ヨナクニサンの各野蚕繭紡績糸のATR法によるFT-IRスペクトルを比較したところ, アミドA, I, II, Vの各ピーク位置はほぼ同じであり, 種属の異なる野蚕繭の紡績糸であっても, 糸表層部の分子鎖の立体構造は類似していることがわかった。
    4) DSCおよびTGA測定から, 野蚕繭 (アナフェサン, クリキュラ, ヨナクニサン) 紡績糸の熱分解による吸熱ピーク温度は家蚕絹糸よりも40℃内外高いことが認められた。アナフェサン繭紡績糸と家蚕絹糸は熱分解初期の挙動が似ており, 野蚕繭 (クリキュラ, ヨナクニサン, エリサン) 紡績糸の熱分解挙動は全体的に類似していた。
  • 石田 裕報, 新美 輝幸, 山下 興亜
    1999 年 68 巻 5 号 p. 417-427
    発行日: 1999/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ休眠ホルモン (DH)-フェロモン生合成活性化神経ペプチド (PBAN) 遺伝子の7kbの上流域にlacZを接続した検索コンストラクトを作製し, ショウジョウバエに導入した。5系統の形質転換体を得た。レポーター遺伝子の発現は, 胚発育期から成虫期まで酵素活性と免疫染色で調査した。胚発育期11-16では, レポーター遺伝子は, antennomaxillary complex, 腹部側方の表皮下層, posterior Spiracle の表皮下層の限られた細胞で発現した。幼虫期では, 中枢神経系の食道下神経分節と腹部神経分節の限られた細胞で発現した。囲蛹殻形成期から成虫期まででは, 腹部神経分節の6個の細胞で発現した。抗FXPRL-NH2神経ペプチド血清によってもそれらの細胞が免疫染色された。以上の結果から, 本形質転換ショウジョウバエは, カイコDH-PBAN遺伝子発現制御機構の解析を進めるための有効な実験系になると考察した。
  • 加古 武, 片山 明
    1999 年 68 巻 5 号 p. 429-431
    発行日: 1999/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 河原 豊, 田村 英利
    1999 年 68 巻 5 号 p. 433-435
    発行日: 1999/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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