日本蚕糸学雑誌
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68 巻, 6 号
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  • 屠 振力, 山崎 修平, 白井 孝治, 金勝 廉介, 木口 憲爾, 小林 泰彦, 田口 光正, 渡辺 宏
    1999 年 68 巻 6 号 p. 443-453
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    重イオンビームの家蚕に対する生物影響とその利用法を開発する目的で, 家蚕の4・5齢幼虫に重イオンを全体および局部照射し, その後の成長および形態形成に及ぼす影響を調べた。炭素イオンおよびヘリウムイオンの全体照射実験から, 両イオンの照射効果はほぼ同様であり, 4齢幼虫は5齢幼虫より感受性が高いこと, 蛹化率および羽化率は照射線量が増大するにつれて低下することが分かった。一方, 4齢催眠期の幼虫および熟蚕に局部照射した場合は, その後の生存に大きな影響は見られないが, 照射部位・線量に応じて卵形成阻害, 翅や鱗毛の欠失などの局部的な影響が誘導された。局部照射により熟蚕の組織・器官の重イオン感受性を調べたところ, 生殖巣が最も感受性で (部分傷害を誘導する表面線量: 10-40Gy), 次いで外部生殖器, 複眼・触角および翅の原基等で高く (20-70Gy), 皮膚組織 (150-175Gy) や神経系 (500-900Gy) で低いことが明らかになった。これらの結果から, 重イオンビームの局部照射によってラジオサージャリーが可能であり, 各種の生体機能解析研究に有用であることが示唆された。
  • 佐藤 有紀, 佐藤 匡克, 清水 崇之, 鈴木 幸一
    1999 年 68 巻 6 号 p. 455-460
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ体液の酸メタノール抽出物を逆相HPLCで溶出して得られた粗画分は, 宮城県で主要な農作物病原糸状菌であるイネいもち病菌, イチゴ炭疽病菌, キュウリつる割病菌およびリーキ黒斑病菌に対して高い抗カビ活性を示した。この粗画分のもつ抗カビ活性は, 非誘導性で濃度と密接に関係していた。また, 100℃で3分間の熱処理を施しても, その活性は失われなかった。
  • 須藤 光正, 藤原 裕紀, 堀江 保宏
    1999 年 68 巻 6 号 p. 461-468
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    4, 5齢カイコの成長速度と飼育温度との関係を数式化するための試験を行った。得られた諸結果は次のように要約される。4, 5齢期の飼育経過に伴う体重の増加を秤量し, ROBERTSONの式を導入して1/2成長時間を求め, 両齢期の成長時間を算出した。この逆数をもって成長速度とした。成長速度と飼育温度との関係にARRHENIUSの公式が適合すること, 1~5齢の成長時間の実測値とARRHENIUSの式による計算値とを比較し, 両者が良く一致していることが明らかとなった。成長速度と飼育温度とから, カイコ幼虫の発育零点が10℃および発育有効積算温量が260~280日・度であることが認められた。
    以上の結果は, 特に人工飼料による稚蚕期, および全齢期大量飼育において, 各齢の飼育期間の計画的な調節に役立つと考えられる。
  • 村上 理都子, 安居 拓恵, 白田 昭, 加藤 厚
    1999 年 68 巻 6 号 p. 469-477
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワ暗斑病の病原菌であるMyrothecium roridumは, クワに対して毒性を示す成分 (毒素) を病斑部だけでなく, ポテト・スクロース寒天培地上においても生産する。本毒素を単離するため, 培養物を風乾し, メタノールで抽出後, 水と酢酸エチルで分配した。酢酸エチルの相に分配された毒素を, HPLCを用いて単離し, 7種の純品を得た。各種のスペクトル測定を行い, 2種をミロトキシンBおよびDを同定した。ミロトキシンはトリコテセンに属す物質である。他の毒素はトリコテセンに属す4種とトリコテセンに属さない1種であった。単離された毒素の主要のものはミロトキシンBであり, 単離毒素の95.1%をしめるだけでなく, 他の単離毒素の2倍以上の毒性を示した。また, 洗浄することにより毒素を除去した本菌の分生子をクワに接種しても, 病斑はほとんど形成されなかったが, 毒性を示さない濃度に希釈したミロトキシンBをこの分生子に加えて接種すると病斑が形成された。このことからミロトキシンBは, 本菌が病原性を発現する上において重要な役割を果たしていると推察された。
  • 町井 博明
    1999 年 68 巻 6 号 p. 479-489
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワ品種287種を用いて, 不定芽形成能力の高い品種のスクリーニングを行った。すなわち, 冬芽内の未熟葉を外植片とし, BA4.4μMを含むMS培地に40日間培養して不定芽及びシュート形成率を調べるとともに, シュートをIAA1.1μMを含むMS培地に移植し, 30日後に発根率を調査した。その結果, 供試した287品種のうち, 121品種 (42%) で不定芽が形成された。そのうち, 83品種 (29%) がシュートを展開し, 発根に至ったものは55品種で, 全体の19%であった。このように, 不定芽形成率や個体再生率は品種による差異が大きかったが, 葉片からの不定芽形成能力や個体再生能力の高い2, 3の品種を選抜することができた。特に, カナダ産桑Aは高い不定芽形成率 (72%) を示し, おおゆたかは葉片当たり不定芽形成数が最も多く, シュート形成率も高かった。また, 発生したシュートを切除し, 再度その外植片を再培養する refreshing culture を2週間毎に行っても, 連続的にシュートが再生したことから, この不定芽誘導系はクワの in vitro 大量増殖法としても適していることが分かった。
  • 屠 振力, 白井 孝治, 金勝 廉介, 木口 憲爾, 小林 泰彦, 田口 光正, 渡辺 宏
    1999 年 68 巻 6 号 p. 491-500
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕における血球の未知生理機能を探索する目的で, 造血器官存在部位に重イオンビームを局部照射し, その後の発育, 血球密度および体液タンパク質の成分変動に及ぼす影響を調べた。4齢催眠期幼虫を用いて, 翅原基が存在する第2・3体節の左右両側面に炭素イオン (50Gy) を局部照射した。その結果, 重イオン局部照射により造血器官の機能を破壊しても, その後ほぼ正常に発育して踊化および羽化することが分かった。しかしながら5齢中・後期の血球密度は, 対照蚕に比して明らかに低く, また体液タンパク質成分にも変化がみられた。その一つは貯蔵タンパク質で, 5齢day 0において対照蚕より明らかに太いバンドとして検出された。一方, 分子量約24kDaのタンパク質成分は, 5齢初期 (day 0-2) では対照蚕よりバンドが薄く, day 3以降消失した。これらの成分変化は, 全体照射蚕においてもほぼ同様であり, 血球の機能と何らかの関係があるものと推察された。
  • 中島 健一, 高林 千幸, 田村 泰盛, 宮崎 栄子
    1999 年 68 巻 6 号 p. 501-505
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繭の品質評価の一項目として, 繭の大きさとそのばらつき状態を画像処理により計測することを試みた。試作したシステムの計測精度及び計測結果の再現性を確認するとともに, 実際に検定繭相当量の繭について計測を行った結果, 次の知見が得られた。
    1) 試作したシステムを繭検定用自動選繭機に設置して計測を行った結果, 進行中の繭の大きさを計測できることが分かった。
    2) 大きさが既知の球体について繰り返し計測を行ったところ, 長径, 短径の計測値と実測値は一致した。平面積については2値化変換時の誤差が生じたが, 計測の精度については問題はないと思われた。
    3) 繭の長径, 短径及び平面積の計測結果には再現性があり, それらを計測して繭評価項目とするためには, 本システムは有用である。
  • 高林 千幸, 坪井 恒, 鮎沢 弘子, 岩垂 美智子, 宮崎 栄子
    1999 年 68 巻 6 号 p. 507-513
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繭から解離させた繭糸を筒状の繰枠へ巻いて造る立体形状物“シルクシェル”を繰製する際の繭糸が織りなす模様をコンピュータによって模擬し, それに基づいて実際にシルクシェルを繰製した。シルクシェルの繰製模様パターンは, 円筒の繰枠周長 (mm), 繰枠回転速度 (rpm), 絡交幅 (mm), 絡交速度 (t/min) によって変化するが, 絡交速度のみを変えて模擬した。その結果, シミュレーションによるパターンと繰糸によるパターンはほぼ一致した。本方法のようにシミュレーション結果に基づいて繰糸パラメーターを設定する方法は, シルクシェルのように立体形状で使用するものや, それを切開し平面で用いるものへの利用が可能である。
  • 村上 理都子, 白田 昭
    1999 年 68 巻 6 号 p. 515-519
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 加古 武
    1999 年 68 巻 6 号 p. 521-523
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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