日本蚕糸学雑誌
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69 巻, 2 号
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  • I: Pteroylglutamic acid の蚕体組織分布とその必須性
    張 剣韻, 黄 龍全, 早川 享志, 柘植 治人
    2000 年 69 巻 2 号 p. 83-89
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ビタミンフリー牛乳カゼインをタンパク質源とした合成飼料に各種濃度の Pteroylglutamic acid (PteGlu) を添加して4, 5齢幼虫を飼育し, 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) に紫外吸光検出器および電気化学検出器を付けて, 初めてカイコ体内におけるPteGluの分布を分析した。飼料への添加量が3μg/g飼料以上の場合, 幼虫の体液より多量のPteGluが検出され, その含有量は飼料への添加量と並行し, 盛食期で最も多く, その後大幅に低下した。体液以外の幼虫組織と蛹体からPteGluはほとんど検出されなかった。一方, 4齢起蚕よりPteGlu無添加飼料を与えた場合, 幼虫は3日目から葉酸欠乏による影響が現れ, 次々死亡した。5齢幼虫に対する葉酸欠乏の影響は4齢幼虫より弱かった。カイコに対して栄養上葉酸が必須であることが確認された。
  • II: Tetrahydropteroylglutamic acid, methyl-tetrahydropteroylglutamic acid 及び formyl-tetrahydropteroylglutamic acid の蚕体分布
    張 剣韻, 黄 龍全, 早川 享志, 柘植 治人
    2000 年 69 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    高速液体クロマトグラフィー (HPLC) に蛍光検出器および電気化学検出器を付けてカイコ5齢幼虫体内における還元型葉酸誘導体である tetrahydropteroyl glutamic acid (H4PteGlu), methyl-tetra-hydropteroylglutamic acid (5-CH3-H4PteGlu) 及び formyl-tetrahydropteroylglutamic acid (5-HCO-H4PteGlu) の分布と動態を分析し, 哺乳類などと異なる昆虫に特異的な現象が見い出された。還元型葉酸誘導体は幼虫の体液より検出されなかった。体液以外の蚕体組織において, H4PteGlu量は飼料へ添加された pteroylglutamic acid (PteGlu) の量によって支配される。そして, 主な存在形はH4PteGluであり, 1炭素単位を結合した5-CH3-H4PteGluと5-HCO-H4PteGlu含有量の恒常性が存在していることが明らかにされた。H4PteGluは主に脂肪体に存在し, 幼虫の発育に伴ってその含有量が顕著に増加し, 次齢の起蚕あるいは蛹化まで貯留され, カイコ体内における貯蔵型葉酸誘導体であると考えられる。また, カイコ体内において, 多量に検出されたH4PteGluは主としてモノグルタミン酸の形で存在していることが分かった。
  • 張 敏, 乾 博, 羽賀 篤信, 平野 茂博
    2000 年 69 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    新規の水溶性キチン及びその不溶性誘導体, 甲虫及びエビキチンに対するキチナーゼの親和性を調べた。疎水性 methyl group の置換により得られた6-deoxychitinはキチナーゼによる加水分解速度に大きな影響を与えなかったが, N-pivaloylchitosan 誘導体は加水分解速度を減少させ, N-acetylchitosan 誘導体の三分の一の速度であった。甲虫キチンのキチナーゼ酵素親和性はエビキチンよりも高かった。
  • 柳 悦州, 近藤 慶之, 平林 潔
    2000 年 69 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    江戸時代の絹織物の中には, 経糸が同一箇所で切れていたり, ごく弱い力を加えるだけで多数の経糸が切れて横方向に布が破断してしまうものが多く見られる。何故このような経糸切れ現象が起こるのか検討した。
    安土桃山時代絹織物1点, 江戸時代中期絹織物17点を試料とした。その結果, 織物の設計段階で経糸方向が緯糸方向より弱く設計されているものが大部分であった。さらに, 経糸が生糸である試料が多くあり, 生糸の劣化は練絹より大きい。以上の2点より, 経糸破断が起こるものと考えた。
  • 石田 裕幸, 新美 輝幸, 山下 興亜
    2000 年 69 巻 2 号 p. 111-119
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコのDH-PBAN遺伝子は, 食道下神経節の12個のFXPRLamideペプチド神経分泌細胞で発現し, その発現は, 発育プログラムと環境温度よって調節されている。この遺伝子発現に関わるcis-制御領域を同定するために, 12種類の鎖長の本遺伝子5′上流域に lacZレポーター遺伝子を接続させたコンストラクトを作製し, キイロショウジョウバエに導入し, 70種類の形質転換系統を作出した。レポーター遺伝子は腹部神経分節の6個の細胞体で安定的に発現した。系統的な削除実験の結果, BomDH-PBAN遺伝子発現のための最小の領域は, -4,883~-4,233に属する650bpの配列と決定された。免疫組織化学により, これらの細胞体はdPHMによるアミド化機能を有するFXPRLamideペプチド合成神経分泌細胞であることが示された。したがって, このcis-制御領域は, カイコの食道下神経節においても機能を果たしていると推察した。
  • 新井 仁, 大城戸 利久, 藤井 博, 土井 良宏
    2000 年 69 巻 2 号 p. 121-130
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ体液の全エステラーゼ活性を基質としてα-ナフチル酢酸を用いて測定した。その結果, 5齢初期は低かったが, 吐糸期以降急激に上昇し, 蛹期は高い状態であった。以前BeSBと名付けられていたカイコ体液の主要エステラーゼを塩化プロカインアミドをリガンドにしたアフィニティークロマトグラフィーを用いた方法で蛹1日の体液から精製した。BesBの分子量は58,000, 等電点は4.6であった。活性はpH7.0の時が最も高く, また, pH7~9の範囲で安定であった。N末端28残基のアミノ酸配列はモモアカアブラムシから精製されたエステラーゼと相同性が見られた。kinetic 解析では用いた4種の基質に対するKm値に差異は見られなかったが, Vmax 値には違いが認められた。BesBは paraoxon と diisopropyl fluorophosphate (DFP) に感受性が高く, 硫酸エゼリン, phenylmethylsulfonyl fluoride (PMSF), p-chloromercuribenzoic acid (pCMB) にも阻害効果が見られた。これらの結果から, BesBは体液中のカルボキシルエステラーゼあると思われた。
  • 白井 孝治, 金勝 廉介, 木口 憲爾
    2000 年 69 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    エビガラスズメ幼虫体色の緑色構成成分の一つカロチノイドの皮膚への輸送のメカニズムとその制御機構を明らかにする目的で, 体液中の運搬者であるリポフォリンについて調査した。まずエビガラスズメとカイコ (乞食) の終齢幼虫の体液からリポフォリンを精製した。エビガラスズメのリポフォリンのアポタンパク質はApo-Lp IおよびApo-Lp IIからなり, カイコリポフォリンのアポタンパク質に比べいずれも若干低分子であった。含有カロチノイドについて調べたところ, エビガラスズメリポフォリンから主要カロチノイドとしてカイコリポフォリンと同じくルテインが検出された。エビガラスズメおよびカイコの両リポフォリンの吸光スペクトルはカロチノイドの含有方式がほぼ同じであることを示唆した。また, エビガラスズメリポフォリンのカロチノイド以外の脂質成分は他の昆虫のリポフォリンと同様にジアシルグリセロールとリン脂質を多く含むことが明らかになった。
  • 張 建強, 久野 勝治
    2000 年 69 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    3価及び6価クロムを添加したクワ苗のクロム含有率及び植物栄養元素含有率などへの影響について検討した。その結果, クワ苗の各器官のクロム含有率は, 3価および6価とも添加濃度の上昇に伴って, 急速に上昇し, 特に根では高いクロム含有率が見られた。3価クロムと6価クロムの含有率を比較すると, 根では3価クロムが高ぐ, 地上部では6価クロムが高くなる傾向が見られた。クワ苗に吸収されたクロムの90%以上は根に蓄積され, 地上部の諸器官への移行率は10%以下であった。地上部への移行性は6価クロムの方が3価クロムより大きい傾向が見られた。3価とも, 6価とも添加濃度とクワ苗各器官のクロム含有率の間に有意に高い正の相関関係が見られた。3価クロムの添加濃度とクワ個体のクロム含有量は有意に高い正の相関関係が見られたのに対して, 6価クロムの添加濃度とクワ個体のクロム含有量は有意な相関関係が見られなかった。クロムの添加によりクワ苗の各器官の栄養元素 (K, Ca,Mg, Fe, Mn, Zn, Cu) の多くは含有率が低下するのに対して, クワ苗の根のカルシウム含有率は逆に増加する傾向が見られた。
  • 佐藤 守, 魏 薇, 川北 弘, 山ノ内 宏昭
    2000 年 69 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワ冬芽からの外植片を表面殺菌し, 無菌的に培養しているのにもかかわらず, 形成されたシュートから細菌様コロニーの浸出する現象が時々観察されていた。この原因を究明する目的で, これらコロニーから細菌を分離し, その性状を調べた。Y1-Y5と名付けた5株の分離細菌はいずれもLB培地上で黄色のコロニーを形成したが, 植物培養用のMS培地のみでは増殖しなかった。これら菌株は, 主要な細菌学的性質の調査, API20-NE同定キット判定, 及び16Sr-RNA遺伝子解析等により, Xanthomonas campestris と同定された。一方, Y1株にマーカーとしてRSF1010プラスミドを導入して, その菌株を培養シュートに種々の方法で接種し, その動向を調べた。その結果, 培養16日後にシュートの基部から前述のコロニーが浸出しているのが観察された。また, 接種した菌株は少なくとも45日間, シュート組織内で, 生存していることが確認された。以上により, シュートから浸出するコロニーは, 冬芽内に生存し, 表面殺菌を逃れた Xanthomonas campestris に起因するものと判断された。
  • 栗岡 聡, 山崎 昌良, 鈴木 雅博, 平野 久
    2000 年 69 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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