直接染料による酸性浴染法でのキトサン処理柞蚕絹織物の染着性について検討した。C. I. Direct Orange 39, C. I. Direct Brown 106による無処理織物, キトサン処理織物のK/S値は, いずれも染浴pH約6~3まで著しく増加した。pH約4より低い場合, C. I. Direct Brown 106 (分子量1300) では, 無処理織物のK/S値はキトサン処理織物より高いが, C. I. Direct Orange 39 (分子量299) は, 逆に小さくなった。また, pH約8~6では, いずれの染料もキトサン処理織物のK/S値は, 無処理織物がより大きくなった。C. I. Direct Orange 39, C. I. Direct Brown 106では, 染色時間の増加に伴って織物のK/S値はいずれも増加し, 酸性浴染法のK/S値は中性染浴法より大きい傾向を示した。また, 酸性浴染法では, 染色初期 (染色温度80℃) は, いずれの染料もキトサン処理織物の染色速度は無処理織物より小さいが, C. I. Direct Orange 39は C. I. Direct Brown 106より, いずれも大きかった。酸性浴染法 (pH 3.20) において, 染色温度90℃が30℃より増加し, C. I. Direct Orange 39では, 無処理織物, キトサン処理織物のK/S値は, それぞれ26.1%, 13.5%, また, C. I. Direct Brown 106では, それぞれ52.2%, 9.0%増加した。
中性浴染法による緩衝液 (pH 7.20) で染色した織物のK/S値は, 塩化ナトリウム添加液 (60%owf) の場合より大きく, C. I. Direct Orange 39では無処理織物2.9倍, キトサン処理織物1.5倍, C. I. Direct Brown 106では無処理織物2.0倍, キトサン処理織物1.4倍, いずれも増加する傾向を示した。
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