日本蚕糸学雑誌
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71 巻, 1 号
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  • 坪内 紘三, 山田 弘生, 高須 陽子
    2002 年 71 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕繭からフィブロイン試料を調製する過程での繭の加熱処理および繭層の精練の条件が, フィブロイン分子におよぼす影響について検討した。加熱処理は, 乾燥条件では120℃3時間でもフィブロイン分子の分解をおこさなかったが, 水の存在下では120℃10分でフィブロインのH鎖を低分子化した。0.05%炭酸ソーダ水溶液中, 1時間の煮沸による精練処理, あるいは0.4%マルセル石鹸液中で30分間煮沸したあとでは, フィブロインのH鎖は残っていなかった。
  • 福井 邦明
    2002 年 71 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1/2000aポットに植え付けられたクワ (Morus alba L.) 品種「しんいちのせ」を, 15℃から34℃までのさまざまな温度条件下で生育させ, その個葉の光合成速度の葉温に対する反応を調査した。その結果, 生育温度の違いによって葉温-光合成速度曲線が変化することが明らかとなった。光合成速度の温度反応は最適葉温を中心にその値から離れるほど速度が低下する傾向を示した。クワの生育温度が高いほど光合成速度が最大となる温度 (最適葉温) も高くなり, 本試験の恒温条件下の試験区では, 生育温度と最適葉温との関係は直線関係を示した。また, 昼夜の温度が異なる条件では, 昼間の温度と最適葉温の関係がこの直線関係と一致した。また, 20℃以上の温度で生育したクワの光合成速度の最大値はほぼ等しかった。気孔伝導度はおおむね生育温度が高いほど高くなる傾向を示した。葉温が最適葉温に向かって上昇する際, 気孔伝導は低下していたことから, この葉温上昇による光合成速度の上昇は, 二酸化炭素固定系の活発化によるものであると推察された。
  • 花之内 智彦, 河原 豊, 木村 照夫
    2002 年 71 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    天蚕絹にジメチルスルホキシド (DMSO) を用いた処理を行い, 繊維構造の変化を調べた。DMSO処理はセリシンにβシート構造を生じさせ, フィブロインを結晶化させることがわかった。このため, 繊維の力学的性質が向上し, フィブリル化が抑制された。DMSO処理は天蚕絹のフィブリル化を制御するのに有効であると考えられる。
  • 山崎 和樹, 坂口 明男, 鳥海 浩一郎
    2002 年 71 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    節糸を使った草木染黒染紬の風合いと力学特性について研究を行った。草木染の伝統的な技法により6種類の染料で黒染絹糸を染色し, 手織紬試料を製作した。試料はSD法と一対比較法による2種類の官能試験を行い, 厚さ, 糸密度, 質量や力学特性と比較した。
    その結果, 染料の種類が異なる黒染糸の表面特性や曲げ特性が製織条件に影響し, 織物の幾何学的構造を変化させ, 黒染紬の風合いや力学特性を変化させる効果があることがわかった。また, 黒染糸の曲げ特性が, 織物構造変化の影響以上に作用し, 織物の風合いや力学特性を変化させる効果があることがわかった。そして, 黒染織物試料間の官能試験の結果と曲げ特性が一致することから, 黒染紬の風合いと曲げ特性には, 黒染糸に使用した染料の種類が影響することが明らかとなった。
  • 山本 好和, 熊沢 敦子, 坂田 佳子, 木下 靖浩, 片山 明
    2002 年 71 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    マダガスカル島原産の観賞用植物であるハナキリンを組織培養することによって生産された単一のアントシアニン (シアニジン-3-アラビノシド) で, アニオン化された絹を染色した。被染素材としてアニオン化された絹を用いることで, 鮮やかな赤色を呈するフラビリウムカチオンが濃着染色されること, およびカチオン色素が繊維中で安定化することを明らかにした。また, フラビリウムカチオンが染色したアニオン化絹に対する種々の金属塩による後媒染および耐光性への影響を調べた。
  • 鈴木 繁実
    2002 年 71 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    養蚕農家のやや開放型の飼育施設と蚕具類を消毒するため, 小型常温煙霧機 (ジェーピークラルス社製ジェットパーフェクター) を利用した無人消毒技術について検討した。
    1. 小型常温煙霧機を利用した超微粒子ホルマリン煙霧による蚕飼育施設の消毒効果は施設の気密性の程度と消毒時刻により大きく左右された。施設の隙間をガムテープやポリエチレンフィルム等でふさぐ程度の簡易処理で気密性を高め, 煙霧消毒を行ったところ十分な効果が得られた。煙霧消毒の効果は日中では劣るものの, 深夜から早朝では高く, 消毒時刻により大きく左右された。
    2. 蔟器の消毒には組み立てた回転蔟2基を1組として互いに支え合うように隙間を空けて配置し, さらに, 扇風機等を利用して, 風向きを変えながら (首振り送風), 超微粒子ホルマリンを強制的に拡散させる必要があった。
    3. 小型常温煙霧機の機体内部へのホルマリン固着を回避するため, 外気取り入れ装置を考案試作した。
    4. 小型常温煙霧機を利用した農家飼育施設・回転蔟の無人消毒技術を明らかにした。
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