日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
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73 巻, 2+3 号
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報文
  • 桑田 光雄, 堀江 武
    2004 年 73 巻 2+3 号 p. 71-76
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/11/13
    ジャーナル フリー
    施肥量を異にする桑葉で育てたカイコの,外部からの異物に対する感受性の差異を明らかにするために,カイコに腫瘍を起させるフロキシンを接種し,その影響を比較した。施肥桑葉で飼育したカイコのLC50でみたフロキシン感受性は無施肥栽培クワで育てたそれより約10倍高かった。窒素施用量を異にする桑葉間では,95%信頼区間のLT50でフロキシンに対する感受性に有意な差があることが認められ,LT50は無施肥区>無N区>N0.5倍区≒標準区の順となった。窒素施用量の増加によって増加したアミノ酸成分は,Asp,Gln,Thr,His,Pro,Gly,Alaであった。フロキシン感受性と負の有意な相関が認められたアミノ酸成分はMetと必須アミノ酸の全アミノ酸に対する割合であり,これらは施肥量の減少とともに増加した。一方,フロキシン感受性と正の有意な相関を示したアミノ酸成分はAspとGABAであり,これらは施肥量の増大とともに増加した。以上よりクワへの窒素施用量の増加は,カイコの異物に対する感受性を増加させ,そしてそれにはアミノ酸組成の違いが関与している可能性が示唆された。
  • 福井 邦明
    2004 年 73 巻 2+3 号 p. 77-82
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/11/13
    ジャーナル フリー
    クワ品種しんいちのせの葉身,葉柄,節間生長の経時的変化を調査し,その生長と温度との関係を明らかにした。各部位の生長は,節間が最も早く終了し,次いで葉身,葉柄の順であった。葉身の生育期間は開葉時期近辺の温度と負の相関が高く,一方,節間の生育期間は開葉日より10日以上前の温度と負の相関が高かった。葉柄の生育期間は温度との関係が不明であった。葉柄は生長停止後に再生長するものがあり,その伸長長は葉位の低いものほど長くなる傾向を示した。20,24,28℃恒温条件下で生育したクワの節間長の節位の進行に伴う推移は生育初期の段階でのみ温度による違いが見られた。20℃における節間長は,節位が1近辺の節間長は短く10あたりまで節位の進行とともに急激に長くなり,その後20節位あたりまではしだいに短くなった。28℃では,節位が1近辺の節間長は20℃のものよりも長く,その後節位の進行とともに節間長は長くなるがその増加度合は緩やかで,節位が10以降になるとほぼ一定の値となった。24℃では20℃と28℃の推移の中間のものとなった。本試験の結果から,節間は早期に生長を進行することで葉身の空間での高さを早期に確立し,葉柄は葉身生長完了後も生長することで葉身の空間での位置と向きを微調整し受光態勢を改善させるものと推察された。
  • 栗岡 富士江, 栗岡 聡, 青木 昭, 塩崎 英樹
    2004 年 73 巻 2+3 号 p. 83-88
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/11/13
    ジャーナル フリー
    綿布の改質加工のために,クエン酸を架橋剤としたセリシン加工を行った。セリシン粉末とクエン酸を同量溶解した水溶液に綿布を浸漬し,約100%に絞液後,80℃で5分間の予備乾燥,150℃で7分間の熱処理によりセリシン加工を行った。セリシン処理濃度 1.5,3,4.5,6%の加工綿布を作製し,加工綿布のセリシン付着量,防しわ性,水分特性について調べた。アミノ酸分析および染色試験の結果から,綿布にセリシンの付着が確認され,処理濃度が高くなるほど綿布へのセリシン付着量は増加した。また,セリシン加工綿布は未加工綿布に比べて防しわ性,吸水性が向上した。
テクニカルレポート
  • 高林 千幸, 中村 邦子, 宮崎 栄子
    2004 年 73 巻 2+3 号 p. 89-95
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/11/13
    ジャーナル フリー
    1本の生糸を構成する際に,それぞれの繭糸の構成糸長を変えることによる嵩高生糸「ハイバルク・シルク」を繰製する方法を開発した。本方法は,煮熟繭から引出した分繊状態の繭糸を上下1対のフィードギアの間に挿通して積極的に送り出す機構が基本となっている。このフィードギアはテーパを付けたV字型のもの(下部)に,フラットなギア(上部)を噛み合わせ,これらのギア間へ繭糸を分繊させて広げた形で挿通することにより,?X字型のフィードギアの外側の繭糸はフィードギアの中心部分の繭糸に比べギアの円周が長い分多く送り出され,繭糸長が異なった糸条が形成される。その後,エアージェットノズルを介して糸条を更に送り出し,ノズル内を旋回するエアーで繭糸の捲縮を高めるようにした。
    この装置により,繭糸条幅やエアー圧力等の繰製条件を変えた時の嵩高さや糸条の力学的特性を調査した結果,フィードギアへの繭糸条幅を広くすることにより嵩高さは増し,強度は低下するが,柔らかな糸条となることがわかった。また,撚糸をすることにより嵩高さは抑えられるが,精練後の嵩高さは精練前に比べやや高い傾向を示し,精練によって嵩高さが低下することなどは認められなかった。
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