日本蚕糸学雑誌
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73 巻, 1 号
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報文
  • 常山 泉, 池嶋 智美, 飯田 のり子, 鶴井 裕治, 田中 幸夫
    2004 年 73 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/28
    ジャーナル フリー
    広食性蚕の蟻蚕における嗜好性物質に対する摂食反応について調査した。蚕品種は,広食性系の「ひたち」,「にしき」,「日603号」,「中604号」,「沢J」及び対照となる食性正常の「朝・日×東・海」を供試した。また,蚕の嗜好性物質として,ショ糖,ミオイノシトール及び炭酸カルシウムを用いた。試験は,セルロース粉末,寒天及び蒸留水に嗜好性物質を単独,あるいは2種組み合わせ加えた飼料を孵化直後の蟻蚕に与え,72時間後の排出糞数を調査し,この糞数から対照区の糞数を引いた値(補正糞数)によって,飼料中の嗜好性物質に対する各蚕品種の摂食に関する反応(摂食反応)を評価した。飼育条件は,25℃,全暗とし,同一の母蛾から得た蟻蚕を各試験区に50頭割り当て,10蛾反復で行った。この結果,いずれの飼料を与えた場合にも,同一の飼料における広食性蚕の摂食量(補正糞数)は,食性正常蚕に比べ顕著に多く,広食性蚕が,これらの嗜好性物質に対して強い摂食反応を示すことが確認された。
  • 清水 一彦, 近藤 由隆, 塩見 邦博, 梶浦 善太, 武井 隆三, 中垣 雅雄
    2004 年 73 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/28
    ジャーナル フリー
    日本産ジョロウグモの横糸タンパク質の特徴を明らかにするため,横糸タンパク質の反復モチーフ配列をコードする1エクソン分の遺伝子をクローニングして,塩基配列を決定し,北米ジョロウグモやマダガスカルジョロウグモの1エクソン分の横糸タンパク質との類似性を比較検討した。それは,(1)GPGGXの44回繰返し領域,(2)GGXの7回繰返し領域,(3)スペーサー領域(TIIEDLDITIDGADGPITISEELTISGS),そして(4)GPGG(X)nの28回繰返し領域という4つのモチーフ領域から構成されていた。この構成は,北米ジョロウグモやマダガスカルジョロウグモのものと同じであった。北米ジョロウグモやマダガスカルジョロウグモと体長や特徴の異なる日本産ジョロウグモで,横糸遺伝子の繰返しユニット構成における高い保存性が認められたことは,4つのモチーフ領域がジョロウグモ横糸の共通した物理化学的特徴に関わる重要な役割を果たしていることを示すと考えられる。
  • 清水 一彦, 塩見 邦博, 梶浦 善太, 中垣 雅雄
    2004 年 73 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/28
    ジャーナル フリー
    大腸菌で横糸タンパク質を発現させた場合,主要バンドより分子量の高い域にある多数のラダー状タンパク質が出現した。このほとんどが発現中にフレームシフトを起こし,横糸タンパク質本来のアミノ酸配列を示していないものと推定された。横糸タンパク質のC末端に6×His-tagを付加しておくことにより,多数のラダー状タンパク質の中から,横糸 mRNAのコドンを忠実に翻訳したと思われる横糸タンパク質のみを,培地 1000 mlから約 50 mg精製・回収できることを明らかにした。C末端の6×His-tagを利用した精製法で,十分に満足できる収量の横糸タンパク質が大腸菌から得られることを明らかにした。
  • 清水 一彦, 塩見 邦博, 梶浦 善太, 中垣 雅雄
    2004 年 73 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/28
    ジャーナル フリー
    バキュロウイルス発現系を用いてジョロウグモ横糸タンパク質を昆虫細胞で発現させた。予想される分子量を持つ横糸タンパク質の発現が,大腸菌で見られた変則的な発現を伴わず,可溶性分画中に確認された。沸騰水中での10分間の熱処理で発現産物は変性沈殿することなく安定だった。この熱安定性は,横糸タンパク質の簡単で効率的な精製法として利用できることを示した。横糸が200%にも及ぶ伸び率を持つのは,横糸タンパク質の GPGGX モチーフがβ-スパイラル構造というタンパク質の二次構造をとるためと予想されている。我々は昆虫細胞で発現させた日本産ジョロウグモの1エクソン分の横糸タンパク質がβ構造をとり得ることを確認した。このことは,昆虫細胞で発現させた横糸タンパク質が,クモによって出糸される横糸の性状を有している可能性を示唆するものである。
  • 中島 健一, 三村 温子
    2004 年 73 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/28
    ジャーナル フリー
    数種の植物の染液および染色布の抗細菌特性について「繊維製品の抗菌性試験方法(JIS L 1902)」の定性試験により検討した結果,キハダに黄色ぶどう球菌に対する抗細菌活性が認められ,肺炎桿菌に対する抗細菌活性はいずれの植物にも認められなかった。また,定量試験によりキハダとタマネギの染色布について,染色条件の違いによる黄色ぶどう球菌に対する抗菌特性を検討した結果,染色濃度については,染色濃度が高くなるほど抗細菌活性が増す傾向が認められ,媒染剤については銅に強い抗細菌作用が認められた。
テクニカルレポート
  • カイコ供給機の開発と把持器の改良
    小林 亨
    2004 年 73 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/28
    ジャーナル フリー
    昆虫工場のシステム化の一環として試作したカイコ用体液採取装置の高性能化を図るため,カイコ供給部等について試作装置の改良を行い,その作業性能について検討した。得られた結果は,以下のようになった。
    1. これまでに試作した装置にカイコ5齢幼虫用の供給機を開発して付加すると共に把持器の改良等により,供給機,把持器付きコンベアチェーン,炭酸ガスレーザ,体液採取容器,冷却機等からなる自動カイコ体液採取装置を開発した。
    2. 本装置は,カイコの供給,切開,体液採取,採取後の取り外しまでの一連の体液採取工程が機械化され,低温麻酔した5齢4~5日のカイコ幼虫からの体液採取は,1頭当たり2.5分弱で連続して行うことができた。
    3. 供給機が無かった試作装置に比べて,作業人員は2人から1人に半減し,1人作業の見通しが得られた。
    4. 体液採取量は,1頭当たりカイコ体重の12~13%程度であった。
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