1) 他の個體の排泄物や、斃蠶の汁液等の附著して汚される繭と異なる汚れ繭の一種を見出した。
2) こゝに所謂汚れ繭の汚染部の色は、鐵錆色乃至帯紫鐵錆色である。其著色状態、繭層の一小部分に限られる不規則な大小種々の斑状である。
3) 其汚染部位は繭の端部に多く出來る。此中には兩端共に又は一端のみのものがある。其場合數は互に相半ばして居る。而して中央部に出來ることは少ない。
4) 汚れた部分の、内中外層別の數は、中層のみ汚れてゐるもの最も多く、外層之れに次ぎ内暦のみ汚れてゐるものは最も少ない。外觀では汚れ繭であることを識別し得ないことがある。
5) 汚れ繭は正常繭より解舒が不良である。
6) 一般家蠶繭中に此汚れ繭を見出すが、品種によつて多少の相違がある。概して支那種に少なく、日本種及歐洲種に多い。
7) 此汚れ繭の出方は、5齢用桑の硬軟の差及営繭方位との差によつて差異を生する。即ち軟葉給與は硬葉給與より多く、営繭中の位置にあつては、縦作に多く斜作之れに次ぎ横作に少ない。
8) 此汚れ繭は、営繭中胃液の残物が排出されて後、Malpighi氏管から排泄される微酸性液が、肛門から漏出して繭層を汚染することから出來る。
9) 種子ヶ島種から此汚れ繭の最多出、最少出の2蛾區を選び、其系統的淘汰を行つたところ、最多出系統は最少出系統に比べて常に其數が遙かに多い結果を得た。故に之は系統的に別があると思はれる。
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