1. 潰れ繭は正常繭に比べて著しく解舒が惡るく又其の生絲は絲條斑、類節等の品位が不良である。
2. 乾燥後の潰れ繭は乾燥前の潰れ繭に比べて解舒及生絲の品位が不良である。
3. 正常繭に潰れ繭を混じて繰絲すると、解舒及生絲の品位が不良になり、其の混合割合10%で既に明らかに其影響が認められる。
4. 潰れ繭の混じてゐる原料から、それを除いて繰絲すると、解舒及生絲の品位が良くなる。
5. 潰れ繭は煮繭の際、滲湯量少なく繭形の變化するものが多く又滲透斑が多い、是等の事實から潰れ繭は正常繭に比べて中内層部の煮熟が完全に行はれ難いものと認められる。尚滲透斑は潰れた側よりも其反對側に多い。
6.潰れ繭の潰れた側は其反對側よりも著しく落緒が多い。又乾繭に濕氣を與へ繭層を軟化して潰したものは斯かる操作を施さぬ普通の潰れ繭よりも成績が良い。
7. 前項の事實から潰れ繭は潰れた部分の繭絲が傷つけられ、それが繰絲中落緒に影響するものと推定される。
8. 潰れ繭が解舒惡るく又生絲の類節、絲條斑等の品位不良なる原因は中内層部の煮熟が完全に行はれ難いこと及び潰れた部分の繭絲の一部が傷つけられることの二つが主なるものであると考へられる。
9. 本研究の結果から次の事が言ひ得られる。
(イ) 繭取扱のあらゆる過程に於て繭を潰さぬことの注意が肝要である。
(ロ) 繰絲の際に潰れ繭を選除すれば繰絲能率を高め又生絲の品位を向上せしむる事が出來る。
(ハ) 試驗又は調査等に用ひるサンプルに潰れ繭が混じて居ると正確なる結果が得られない。
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