高分子論文集
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31 巻, 10 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 天野 修
    1974 年 31 巻 10 号 p. 595-600
    発行日: 1974/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    スクリュー往復形射出成形機と高化式フローテスタのダイを組み合わせて新しい円管流動形レオメータを試作し, 従来の測定器では得られないせん断速度106sec-1に至る高せん断速度下の溶融樹脂の流動特性を測定した. 高密度ポリエチレンの流動曲線が圧力と流量の同時測定で得られ, 前者は成形機ノズルでストレインゲージ形圧力計で直接測定され, 後者は成形機スクリューの移動量から計算で求めた. 細管から射出された樹脂の温度は圧力に比例して上昇することから細管内での流動は非等温と思われる. 非ニュートン流動指数はせん断速度105sec-1付近で5以上にも達する最大値をもち, このような値は低せん断速度領域からは想像できない. 見掛けの流動の活性化エネルギーはせん断速度の増加とともに減少し, せん断速度106sec-1では0.6kcal/molと非常に小さくなる.
  • 天野 修
    1974 年 31 巻 10 号 p. 601-606
    発行日: 1974/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高化式フローテスタと射出成形機を部分的に改造した毛細管レオメータを併用して, 樹脂温度170~290℃, せん断速度100~106sec-1の広範囲にわたる7種の高密度ポリエチレン (HDPE), 4種のポリプロピレン (PP), および一般用ポリスチレン (PS) の流動特性を測定した. 毛細管流入部での末端補正係数と圧力損失は全樹脂についてせん断速度の増加とともに増大する. 見掛けの流動の活性化エネルギーはHDPEではせん断速度の増加とともに減少し, せん断速度106sec-1では0.5kcal/mol以下となる. 他方PPやPSでは複雑な現象を示す. 非ニュートン流動指数はせん断速度に大きく依存し, 高せん断速度下での溶融樹脂の流動性は樹脂の製造方法に強く影響されるので, 広範囲の流動特性は低せん断速度の溶融指数から推定できないばかりか, 指数則の流動曲線への摘要も大きな誤差を伴う危険性がある.
  • 野沢 靖夫, 矢野 直美, 東出 福司
    1974 年 31 巻 10 号 p. 607-611
    発行日: 1974/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    酸化デンプンを含むポリビニルアルコール (PVA) 膜の透過性と水に対する溶解性および膜の性質について, X線回折, 示差走査熱量計 (DSC), 引張り試験の測定により調べた. この膜のPEGの透過性は明らかにアルカリ性側で向上した. また溶解性も同様の傾向を示した. さらに, pH2および11において膜の透過性は可逆的に変化することが認められた. X線回折の結果より, PVAの結晶の大きさは酸化デンプン量とともに小さくなり, DSCの結果からも同様のことが推察された. 膜の引張り強度は酸化デンプンの量とともに減少するが44%以上では強度の回復が認められた. これより, 本論文では膜の透過性と化学的構造との関係について検討を行った.
  • 大野 亮, 宮坂 啓象, 石川 欣造
    1974 年 31 巻 10 号 p. 612-616
    発行日: 1974/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    カーボンの補強効果を検討するため, ストラクチャーの異なる3種のHAFカーボンとシリカを充てんしたSBRを試料として応力緩和を測定した. カーボン充てんSBRにおいても時間-温度の換算則が成立し, 緩和弾性率の合成曲線が得られた. 充てんゴムのシフトファクターの温度依存性は三つの領域から成り, ガラス, ゴム領域で直線, 転移領域で曲線となる. ゴム領域での活性化のエネルギーはカーボンのストラクチャーに依存せず, 体積分率とともに急激に増す. 一方, シリカは活性化のエネルギーを変えない. 充てん剤とゴムの結合が活性化のエネルギーを増加させる一因であり, またカーボン充てんによるゴム相の構造変化にも関係していると推定される.
  • 藤村 敏一, 岩倉 賢次
    1974 年 31 巻 10 号 p. 617-622
    発行日: 1974/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンとエチレン-酢酸ビニル共重合物の混合融液の, 混合状態を検討するため, 混合物の定常流レオロジー特性に対する温度の影響を, ワイセンベルグレオゴニオメータにより, 測定した. 1) ゼロせん断粘度 (η0) が極大, 極小を示す混合組成は, 温度によりほとんど変わらなかった. 2) 時間-温度重ね合わせ則は, 混合物の粘度 (η) については成立しなかった. 3) 混合物の流動の活性化エネルギーおよび解析式, η0/η=1+ (αγ) m, (γはせん断速度) 中のパラメータ, m, α, は温度により不規則な変化を示した. これらの変化は, ゼロせん断粘度が極大, 極小を示した混合組成で著しかった.
  • 山下 雄也, 鈴木 範男, 信時 孝次
    1974 年 31 巻 10 号 p. 623-628
    発行日: 1974/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    α, ω-二官能性ポリスチレン (PSt) またはスチレン-アクリロニトリルランダムコポリマー (St-AN) とα, ω-二官能性ポリテトラメチレングリコール (PTG) とのカップリングが各種条件下で行われ, PStジアミジン-PTGジイソシアナート系カップリングでは (PSt-PTG) 2.6, St-ANランダムコポリマージアミン-PTGビスクロロホルメート系カップリングでは (St-AN-PTG) 3.8のマルチブロックポリマーが合成された. マルチブロックポリマーの生成条件として, 異種官能基間の反応性, モル比および反応温度, 時間, 添加剤の効果などが検討され, さらにマルチブロックポリマーのキャラクタリゼーションが行われた.
  • 椿山 教治, 佐々木 幸子, 平木 誠一, 鯨井 忠五
    1974 年 31 巻 10 号 p. 629-636
    発行日: 1974/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    異なったふんい気中での紫外線照射によるポリカーボネート皮膜の光崩壊挙動を主としてUV吸収スペクトルおよび粘度法より調べた. 崩壊中には主鎖切断, 橋かけ, フリース転位が起こることが確認され, 以下のことが分かった. 真空中照射 (λ>220nm) では微小の重量減少を伴って橋かけが起こりゲルを生成する. 空気中では長時間照射しなければゲル化を起こさないが, 大きい重量減少を起こす. 一方, 可溶部ポリマーの固有粘度の変化より, 照射初期ではランダムな主鎖切断を起こすが, その速度は時間とともに急速に減少することが分かった. またUV吸収スペクトル変化より, 転位反応も初期において急速に起こり, それ以降は進行しにくいことが示された. さらに酸素の存在は橋かけを抑制するが主鎖切断を加速させること, また主鎖切断よりも転位反応の方が優先することが明らかにされた.
  • 荒川 興二, 阿部 均
    1974 年 31 巻 10 号 p. 637-642
    発行日: 1974/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    少量のメタクリル酸の共重合は, ポリメタクリル酸メチル (PMMA) に自己消火性を与えるのに必要な有機リン化合物の添加量を著しく減少させた. したがって, 有機リン化合物による外部可塑作用を少なくすることが可能となり, 熱的, 機械的性質が良好で, かつ有機リン化合物のブリード現象もない難燃性PMMAを得ることができた. 燃焼樹脂表面のリンの形態を調べることによって, 難燃性における相乗機構は分子鎖中のカルポキシル基と燃焼時生成するリン酸との脱水橋かけ反応に基づくと推定した.
  • 荒川 興二, 阿部 均, 今井 清和
    1974 年 31 巻 10 号 p. 643-647
    発行日: 1974/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリメタクリル酸メチル (PMMA) と塩化ビニルー塩化ビニリデン共重合物のブレンド物を用い, PMMAに自己消火性を与える塩素とリンあるいはアンチモンの相乗効果を定量的に検討した. PMMAを離炎後30秒で自己消火させるための難燃化元素の必要量は次のようであった.
    Cl+P=0+4.8=20+0.8=10+2.2 (wt%)
    Cl+Sb=32+0=20+1.8=15+3.6 (wt%)
    また, メタクリル酸メチルとペンタクロロフェニルメタクリレートの共重合物についても検討したが, 自己消火性への塩素化合物の構造的相違による影響は認められなかった.
  • 馬越 淳
    1974 年 31 巻 10 号 p. 648-653
    発行日: 1974/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    メタノール-水系で処理した絹フィブロインフィルムの熱的特性について動的粘弾性と示差熱分析とを行った. メタノールだけで処理した場合, 1分間以内では, 160~210℃に非晶領域のmicro-Brownian motionに基づくαaが現れ, 210℃に絹フィブロィンの結晶化に由来するE′の上昇が現れた. DTA曲線において190℃にガラス転移点 (Tg) が, 215℃に結晶化温度が現れた. 30分間以上の処理では, αaの分散とガラス転移点 (Tg) および結晶化温度が現れなくなりβ化していることが分かった. 中濃度処理 (40~80%MeOH) の場合, 1分間以上の処理ではβ型の絹フィブロインと同じ動的粘弾性を示した. DTA曲線において, 絹フィブロインフィルムの分解温度は処理時間が長くなるとともに高温側に移行した. 低温度処理 (20%MeOH) の場合に, 1時間以上の処理では, ガラス転移点 (Tg), 分散 (αa) は観察されず, β型に転移していることが分かった. またDTA曲線において288と295℃に分解温度が現れた.
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