高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
31 巻, 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 野田 隆弘, 阿部 嘉宣, 坂元 隆一
    1974 年 31 巻 4 号 p. 203-207
    発行日: 1974/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ-L-グルタミン酸-γ-メチル (PMLG) 未延伸繊維が約150℃で顕著な動的粘弾性分散を示すことをすでに報告した1) 。この温度で未延伸繊維のクリープ挙動を観察したところ, PMLG繊維が容易にクリープ変形を受けることが見いだされた。クリープした繊維の分子形態は赤外線吸収スベクトル, X線回折より, α-ヘリックスであることが明らかになったので分子形態の変化が起こらないと考えた。クリープ変形により分子配向がかなり増大することがX線回折から明らかになった。クリープした繊維の動的粘弾性分散は160, 180℃で二つの極大を示した。分子配向の増加に伴い180℃の極大は増大したが, 160℃の極大は減少した。実験結果から, これらの力学分散の分子的機構について次のように考察した。PMLGの側鎖はこれらの温度で全く屈曲性になっているから, PMLG分子の剛体棒状の主鎖は, ゴム状態の側鎖のマトリックスにより, 囲まれているであろう。外力が加わるとα-ヘリックス分子のすべり運動と配向が起こるであろう。160℃の分散は未配向ヘリックスの運動により, 180℃の分散はα-ヘリックス結晶子の運動によるものとした。
  • 坂口 康義, 玉置 克之
    1974 年 31 巻 4 号 p. 208-214
    発行日: 1974/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    合成高分子の水溶液の粘度に及ぼす種々の有機添加物の影響を検討した。有機添加物を10%添加することにより, ポリビニルァルコール (I) のようなビニルポリマーの水溶液のηsp/Cは一般に増大したが, メタクリルポリマーのそれは減少した。より長いアルキル基を含むアルコールおよびカルボン酸は, 粘度に対してより大きい影響を及ぼした。 (I) の溶液の粘度に及ぼす化学的改質と温度の影響についても検討した。これらのビニルポリマーは室温において水溶液中で, 分子内疎水性相互作用によって少しhyper-coilingしていると考えられる。
  • 奥居 徳昌, 島田 俊雄, 河合 徹
    1974 年 31 巻 4 号 p. 215-223
    発行日: 1974/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    結晶化に及ぼす分子量, 分子鎖末端および共重合の影響について, 分子量分布の狭い低分子量ポリエチレンオキシドを用い, 折り畳み型結晶から伸びきり型結晶への転移に関して特に小角X線, 熱解析により研究した。
    これらの低分子量ポリマーの2成分結晶化では, 伸びきり型結晶の方が折り畳み型結晶より先に生成するが, 一折型, 二折型の折り畳み型結晶では後者の方が先行して生成する。
    末端をフェニル化したポリエチレンオキシドでは, 末端フェニル基が結晶格子内に取り込まれ, X線長周期は結晶化温度とともに連続的に変化することを示した。さらに, マルチブロック共重合体の場合においても, 折り畳み周期は化学構造 (この場合, 分子鎖末端) により規制される。
    結晶化に伴うコンポメーションの変化が分子鎖の折り畳みに重要な役割を果していることが, これらの結果から示唆される。
  • 加藤 芳男, 橋本 勉
    1974 年 31 巻 4 号 p. 224-226
    発行日: 1974/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    GPCにおけるbroadening effectの補正に必要なresolution factor hをreverseflow method, Hendricksonの方法, TungとRunyonの方法, およびHamielecとRayの方法で測定した。あとの3方法で必要な標準試料の真の分子量分布として, 高分解能GPCで測定した分布を使った。4方法で得られたhの値は実験誤差 (±10%) の範囲内で一致した。
  • 荒井 定吉, 浅野 秀樹
    1974 年 31 巻 4 号 p. 227-233
    発行日: 1974/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高分子溶液の流動複屈折現象の主因と目される溶質高分子の配向を溶液中に浮遊する高分子により形成されると仮定した弾性球模型の変形で置き換えて論じた。すなわち消光角χから, この球のひずみ, 主ひずみ差ならびにずりの弾性係数Gmを求める関係式を示した上で, 同心円筒型装置によるカルボキシメチルセルロース水溶液など種々な試料の流動複屈折に関する実測値をそれらの式に基づいて整理した。そして単位光路長当りのしま次数nと球のひずみおよび主ひずみ差との関係を検討した。またχとGmをそれぞれ動的損失正切tanδおよび動的弾性係数G′ (ω) と対比させ, 動的静的粘度換算法を適用してみた結果, tan2χとtanδは一致し, G′ (ω) の値はGmよりもむしろ一次法線応力差の1/2に近い傾向が認められた。
  • 国府田 悦男, 平田 光男, 岩井 信次
    1974 年 31 巻 4 号 p. 234-238
    発行日: 1974/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンイミン (PEI) の電気易動度と粘度を, イオン強度 (μ: 0.03~0.2) の異なるCH3COOH-CH3COONa系とNa2HPO4-KH2PO4系の緩衝溶液を用い, pH4~8の範囲で測定した。極限易動度 (UC→0) と極限粘度 ([η]) のμ依存性は, pH7.0で, また, pH依存性はμ0.05, 0.1および0.2で検討した。さらに, それらの関係から, μ, pHをパラメータとして表わした [η] のUC→0依存性を調べた。その結果は次のとおりである。
    (1) UC→0と [η] は, μの増加によって単調に減少する。μ対UC→0と [η] の対数プロットから, μがほぼ0.05以上の域では, UC→0と [η] はμ-0.84に比例して減少することが推定された。
    (2) UC→0と [η] は, pH8から6で, わずかに増加し始め, pH6付近で急に増加した後, それ以下のpH域では緩慢な増加を示した。
    (3) UC→0対 [η] のプロットは, μがほぼ0.05以上で, 直線となることが明らかとなった。
  • 田中 善蔵
    1974 年 31 巻 4 号 p. 239-243
    発行日: 1974/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    原綿と水の存在下, 開始剤を用いないで, メタクリル酸メチルの重合を行ない, MMA過酸化物の重合に及ぼす影響について検討した。MMAが10ml以下, MMA過酸化物の濃度が22.4×10-4mol/l以下の場合には, 重合速度Rpは近似的に,
    原綿不在下では, Rp=k [MMA] 1.0 [MMA過酸化物] 0.50
    原綿存在下では, Rp=k [原綿] 1.0 [MMA] 1.0 [MMA過酸化物] 0.55
    で表わされる。重合速度は原綿存在下では, 熱重合に比べて増大する。実験結果から考えるとMMA過酸化物が存在しないと重合は起こらないことを暗示している。MMA過酸化物は, 原綿および水との相互作用により分解されて, ラジカルを生じ, 重合が開始されるものと考えられる。重合反応の活性化エネルギーは, MMA過酸化物の濃度が11.1×10-4mol/lのとき, 13.5kcal/molであった。
  • 西野 潤, 近藤 史朗, 由良 努, 玉置 克之, 坂口 康義
    1974 年 31 巻 4 号 p. 244-249
    発行日: 1974/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高分子試薬を用いるトルエンのニトロ化により得られるニトロトルエンのp-異性体/o-異性体の比 (p/o) を, 常法の混酸による場合のそれと比較した。高分子スルホン酸と硝酸によるニトロ化の際, 塊状のポリマーはp/oに変化を与えなかったが, 多孔性のイオン交換樹脂はp/oを増大させ, 最高のp/oは (アンバーリスト15使用の場合) 普通の揚合の0.69に対して1.83であった。ポリビニルァルコールあるいはセルロースの硝酸エステルは硫酸とともに用いてトルエンをニトロ化する能力を有し, かつp/oを増大させる (最高1.11) 。硝酸とポリ無水マレイン酸あるいはポリアクリル酸無水物との縮合物も同様の能力を有し, 小さいがP/o増大効果を有していた (最高0.86) 。反応媒体としてポリマーを共存させても, p/oには何ら変化を与えなかった。高分子触媒およびニトロ化剤によるこのようなp/oを増大させる効果は, 主としてオルト置換に対する立体障害によるものと思われる。
  • 大津 隆行, 井上 正巳
    1974 年 31 巻 4 号 p. 250-255
    発行日: 1974/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    N-フェニルメタクリルアミド (PMAM) のラジカル重合過程, ならびにその核置換体の共重合性に及ぼす置換基効果と溶媒効果について研究した。速度論的研究により, PMAMのラジカル重合速度はAIBN開始剤濃度の0.5次とモノマー濃度の1次に比例し, 全重合反応の活性化エネルギーは18.3kcal/molと求められた。また, メタクリル酸メチルとのラジカル共重合において, エタノールのような水素結合形成能を有する溶媒中で共重合パラメータの変化することが認められた。さらに5種のp-置換PMAMとアクリロニトリルとの共重合結果より, モノマー反応性はHammettの置換基定数とρ=-0.13の直線関係が成立した。
  • 中山 和郎, 金綱 久明
    1974 年 31 巻 4 号 p. 256-261
    発行日: 1974/04/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    固体高密度ポリエチレンの静水圧押出しにおける押出し圧力を, ダイス角度の小さいダイス (2α=20°) を用いて調べた。不安定な押出しをさけるために, 定圧保持装置を使って, 押出しの行なわれている間中, 一定圧力に保った。この方法で, 表面状態のよい押出し物を得た。ポリエチレンの変形挙動の概要をつかむために, 13~120℃の温度範囲で押出しを行なった。いろいろの押出し温度における押出し下限圧力 (P0) を決定した。P0は押出し温度が高いほど低い。また, 押出し速度について調べた。押出し温度は押出し圧力と押出し速度の関係に大いに影響する。
  • 青木 修三, 安沢 興平, 大津 隆行
    1974 年 31 巻 4 号 p. 262-267
    発行日: 1974/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アルキレンオキシドの重合における金属カルボン酸塩の触媒活性を比較検討するため, 種々の金属カプリル酸塩を用い, プロピレンオキシドの塊状重合を80℃で行なった。用いた12種の金属カプリル酸塩のうち, (C7H15COO) 3Fe, (C7H15COOSn) 2Oおよび (C7H15COO) 2Snが優れた重合触媒作用を示し, 活性はこの順で増大した。生成ポリマーは高分子量で結晶性部分を含むことが認められた。 (C7H15COO) 3Feおよび (C7H15COO) 2Snについて, プロピレンオキシドの重合に及ぼす重合条件の影響について詳細に研究した。また, 上記3種の触媒はブテンオキシド, スチレンオキシド, エピクロルヒドリンおよびアリルグリシジルエーテルなどの開環重合にも活性が認められた。
feedback
Top