高分子論文集
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31 巻, 8 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 奥居 徳昌, 成田 昇, 島田 俊雄, 河合 徹
    1974 年 31 巻 8 号 p. 469-479
    発行日: 1974/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    分子末端間会合が結晶化および生成構造に及ぼす影響を調べるため, α, ω-ポリエチレンジカルボン酸の比較的低分子量で分子量分布の狭い数試料を, 異なった結晶厚のポリエチレン結晶を硝酸によって解重合して調製し, 結晶化挙動を調べた。融液結晶化では分子鎖の延びきった結晶 (ECC) と折り畳み型結晶の生成は分子量と結晶化温度に依存したが, 希薄溶液からの結晶化では分子量のみに依存した。これらECCの融点は対応した伸長分子鎖長のポリエチレン結晶のそれより高く, 結晶表面での鎖末端の水素結合による会合を反映している。鎖末端のカルボン酸の会合はIRによって生成結晶のみならず, 融液や0.1%以上の濃度の溶液中でも存在することが確かめられた。結晶状態で鎖末端はラメラ表面にあり, 同じラメラ表面上で互いに会合しているようである。カルボン酸末端間の会合は融液や溶液中ですでに存在し, 結晶化および生成結晶中のコンポメーション (すなわち, 折り畳み周期の結晶化温度に対する不連続な変化) に支配的な役割を果たすことが指摘された。
  • 菊地 幹夫, 加倉井 敏夫
    1974 年 31 巻 8 号 p. 480-483
    発行日: 1974/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (2-ビニルピリジン) を枝として持つグラフト共重合体をニトロメタン中で15日間, 臭化n-デシルを用いて80℃でまたは臭化エチルを用いて50℃で4級化した。グラフト共重合体の2-ビニルピリジン単位は臭化n-デシルを用いたとき44~57%の収率で, 臭化エチルを用いたとき26~50%の収率で4級化された。4級化高分子は水に溶けるが, 水溶液の表面張力は低下しなかった。臭化n-デシルで4級化した高分子はN, N-ジメチルアミノアゾベンゼン (DMAB) を水に可溶化した。臭化エチルで4級化したグラフト共重合体はDMABを可溶化するが, 臭化エチルで4級化したポリ (2-ビニルピリジン) はDMABを可溶化しなかった。なお臨界ミセル濃度はなかった。
  • 片岡 紘三
    1974 年 31 巻 8 号 p. 484-488
    発行日: 1974/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    家蚕熟蚕絹糸腺内フィブロインを室温で圧縮し, 除重後乾燥した。絹フィブロイン分子構造の圧縮依存性をX線回折写真, IR, DSC, 密度などにより検討した。その結果, 絹フィブロイン分子構造は圧縮力を増大するにつれてα型→ランダムコイルへと非晶化した。しかし104g/cm2以上では, その構造はβ型であった。ランダムコイルの非晶密度は1.345g/cm2であった。また, ランダムコイルのDSC曲線には177℃にガラス転移, 224℃にランダムコイル→β型への発熱ピークが認められた。
  • 並木 勇
    1974 年 31 巻 8 号 p. 489-492
    発行日: 1974/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    印刷回路用接着剤のはんだ耐熱性に影響を及ぼす要因を取り上げ, これらを変えた接着剤皮膜の透湿係数を測定し, 既報のはんだ耐熱性の傾向と比較した結果, 次のことが分かった。 (1) PVB-フェノール樹脂系とPVB-エポキシ樹脂系の比較, PVB-フェノール樹脂系とPVAc-フェノール樹脂系の比較, PVF-フェノール樹脂系とPVB-フェノール樹脂系の比較, およびPVB-フェノール樹脂系におけるPVBの水酸基含有量の影響については, 透湿係数の変化する傾向とはんだ耐熱性の変化する傾向とはよく一致した。 (2) フェノール樹脂合成時のホルムアルデヒドと石炭酸のモル比の影響については, はんだ耐熱性は大きく変化するのに対して, 透湿係数には大きな変化が認められなかった。
  • 斎藤 鷹逸郎, 崎田 高明, 結城 敬美
    1974 年 31 巻 8 号 p. 493-499
    発行日: 1974/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン, ハイインパクトポリスチレン, スチレン-アクリロニトリル共重合体, およびABSについて, 分子量, アクリロニトリル含有率およびゲル%を変え, 高化式フローテスターを用いて, メルトフラクチャーに関する一連の研究を行った。メルトフラクチャーの起こり始める臨界せん断応力τcrは, 分子量が高くなるにつれて低下し, アクリロニトリル含有率およびゲル%が増すにつれて高くなった。一方, メルトフラクチャーが起こり始めるときのダイ膨張比Bから求めた臨界回復性せん断ひずみSRcr (ただし, SR= (B4-B-2) 1/2) は, 分子量, アクリロニトリル含有率と無関係に一定で, ゲル%の増加とともに単調に減少した。
  • 荒井 定吉, 石川 広高
    1974 年 31 巻 8 号 p. 500-507
    発行日: 1974/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    平行スリット流路内の高分子融液の等色線しま次数が定常流においてもスリット内入口から出口に向かってわずかずつしかも継続的に減少することは既往の文献において共通して指摘することができる。本研究では, この現象がBarus効果の管長依存性と直接的な関係があるとの予想のもとに, スリット金型内で重合させたシリコンゴムにプランジャを介して種々な荷重を加えたときに現れる等色線と等傾線を追跡した。そしてそれらの曲線ならびに等傾線から求まる主応力線を同一の流路を流れるポリエチレン融液のものと比較した。その結果, 固体と液体の上述の両試料間に複屈折に関して本質的な違いを見いだすことができなかった。これらの結果から, Barus効果に管長依存性のあることが流入後の流れの過程におけるひずみ力の緩和や流速分布の変動により生ずるのではなくて, 流路系全体の形状と寸法により規定される一つの弾性固体と同様なひずみ力の分布に基づくものと推論された。
  • 松本 恒隆, 中前 勝彦, 野中 敬三, 上原 徹
    1974 年 31 巻 8 号 p. 508-514
    発行日: 1974/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    水溶性ポリマーの水/油界面への吸着挙動をdu Noüyのring法による界面張力から検討し, 次の結果を得た。 (1) ポリビニルアルコールは疎水性媒体とほとんど相互作用をもたないが, 若干の酢酸ビニルを有する部分ケン化ポリ酢酸ビニルでは油相との相互作用が非常に増大した。 (2) 電解質ポリマーにおいても, 水相中の分子鎖の広がりが系の界面張力を変化させることが, カルボキシル基の中和ならびに中性塩添加による検討から明らかにされた。 (3) 水, トルエンの両相に溶解するポリマーを各々の相から界面に吸着させると, 界面張力は各々の相中におけるポリマーの溶解形態を反映して, 異なる値を与えた。以上の結果から, 水溶性ポリマーの水/トルエン界面への吸着は水相における分子鎖の広がりと分子鎖の水和能に大きく依存していることが明らかにされた。
  • 岩垂 芳男, 須沢 利郎
    1974 年 31 巻 8 号 p. 515-521
    発行日: 1974/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    FA化PVA皮膜の透湿性と吸湿性に及ぼすFA化度, 皮膜の密度, 相対湿度, および温度の影響について検討した。透湿係数は相対湿度依存性を示し, 低湿度ではFA化度の増加とともに漸次増加したが, 高湿度では減少し, 極大を経たのち, さらに高FA化度において減少した。拡散係数はFA化度とともに漸次増加し, 皮膜の密度とともに減少した。透湿の活性化エネルギーは数kcal/mol程度であった。水分率は低湿度においてFA化度とともに漸次増加したが, 高湿度においては漸次減少した。しかし, FA化度約30mol%以上においてはいずれもその値はFA化度とともに急激に減少した。
  • 松本 恒隆, 中前 勝彦, 野中 敬三, 三好 誠治, 酒井 五十治
    1974 年 31 巻 8 号 p. 522-527
    発行日: 1974/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    油溶性ポリマーの水/油界面への競争吸着現象を, 主として水/トルエン界面を用いて, du Noüyのring法による界面張力から検討し, かかる競争吸着は界面張力 (γW/T) をより低下させるポリマーが, 常に, 優先的に界面に吸着するという現象であることを明らかにした。次に, 相分離系におけるα-Fe2O3の偏在現象をγW/T, あるいは, 0.1NKOH水溶液/トルエンの界面張力 (γ*W/T) から検討し, ポリ酢酸ビニル, ポリアクリル酸エチル, ポリメタクリル酸メチル, ポリスチレン, エチレン-酢酸ビニル共重合体などの非電解質ポリマーではγW/Tの小さいポリマー相へ, スチレン-アクリル酸共重合体のような電解基を含むポリマーではγ*W/Tのより小さいポリマー相へ, α-Fe2O3が偏在することを明らかにした。さらに, 従来から検討してきた劣化SBRについては, その分子内におけるCOOH基について特に着目し, α-Fe2O3の偏在能にSBRが特異的に挙動することをさらに裏付けた。
  • 馬場 義博, 影本 彰弘
    1974 年 31 巻 8 号 p. 528-530
    発行日: 1974/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    前報において, ポリマー溶液用に試作した示差熱分析 (DTA) 装置を用いて, メチルセルロース水溶液の相平衡を研究した。その結果, この系は温度上昇とともに2相に分離する。本報において, メチルセルロース-NaCl水溶液系の相平衡を前報で発表したDTA装置を用いて追求した。この系において, メチルセルロース-水系と同様に, DTA曲線はS字曲線を示し, また低臨界溶解温度 (LCST) が存在することを見いだした。このLCSTはメチルセルロース-水系より低温で, NaCl濃度の増加とともに減少する。またこの系でのエンタルピーパラメータκ1およびエントロピーパラメータψ1は正の値を示し, NaCl濃度とともに減少する。
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