高分子論文集
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32 巻, 1 号
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  • 並木 勇
    1975 年 32 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1975/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    触媒の種類, 触媒添加量, ホルムアルデヒド-フェノールのモル比を変えてフェノール樹脂を合成し, ポリビニルアセタール樹脂と配合した2成分系の印刷回路用接着剤のはんだ耐熱性とはく離強度を測定し, フェノール樹脂の分子構造との関連性を考察した. アンモニア, 低沸点のアミン類, アルカリ土類金属酸化物, および水酸化物などを触媒とした樹脂は良好な性能を示した. アンモニア触媒添加量がフェノールに対して5~10モル%, ホルムアルデヒド対フェノールのモル比1.5の場合に, 良好な性能を有するフェノール樹脂を得ることができる. またフェノール樹脂を溶液状態で加熱し, 熟成するとはんだ耐熱性が向上することを明らかにした.
  • 並木 勇, 堀 久子
    1975 年 32 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 1975/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アセタール基の種類, 水酸基含有量, アセチル基含有量, アセタール化触媒の種類, および重合度の異なるポリビニルアセタール単独, またはフェノール樹脂と配合した2成分系の印刷回路用接着剤のはんだ耐熱性とはく離強度を測定し, ポリビニルアセタールの分子構造との関連性を検討した. はんだ耐熱性についてはアセタール基の種類, 水酸基含有量, 重合度が影響する. はく離強度についてはアセタール基の種類, 水酸基含有量, アセチル含有量, ならびに重合度が影響を及ぼす. 特に水酸基含有量とはく離強度の関係はフェノール樹脂の配合量の変化によって異なった傾向を示すことが明らかとなった.
  • 児玉 峯一
    1975 年 32 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 1975/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    球状充てん材, 短繊維, および粒状充てん材と短繊維混合物でそれぞれ強化したエポキシ樹脂硬化物の動的粘弾性に温度-時間換算法を適用した. 強化材-マトリックス間相互作用が強い場合には, それが弱い場合に比べて, 緩和スペクトルのくさび型部分の負こう配は小さくなる. シフトファクターのArrheniusプロットは, マトリックス樹脂の主分散温度以上で, 3本の直線で表される. 各々の直線部分の活性化エネルギーは対応する温度域で比較すると, 強化材-マトリックス間相互作用が強いほど小さくなる. 粒状充てん材-短繊維混合強化系では粒状充てん材の含有率が大きくなるにつれて, 強化材-マトリックス間相互作用は弱められることが推定された.
  • 飯阪 捷義
    1975 年 32 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 1975/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン (PS) およびポリメタクリル酸メチル (PMMA) にガラスビーズおよびマイカフレークを充てんさせた系について, ガラス転移挙動を動的粘弾性測定により調べた. 充てん材の増加とともに, ガラス転移領域は広がり, Tgは上昇する. 充てんによるTgの上昇は, 同じ高分子のときガラスビーズよりマイカの方が, また同じ充てん材のときPSよりPMMAの方がそれぞれ大きい. 固相ガス吸着クロマトグラフィーにより充てん材界面上での相当する単量体の吸着熱を測定することにより求めた高分子-充てん材間相互作用エネルギーを, Tgの上昇と相関づけた. 高分子マトリックスが充てん材界面の影響を受ける範囲は, 数100Åの大きさとなる. Tgの上昇を, 高分子-充てん材間相互作用エネルギーおよび充てん材界面上での高分子鎖の配位の両者の効果により説明した.
  • 根岸 章雄
    1975 年 32 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 1975/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    2,4-トリレンジイソシアナートとエチレングリコール (EG) から合成したポリウレタン (PU・Mn=1870) の熱分解に及ぼす鉛, スズ, およびそれらの酸化物 (PbO, PbO2, Pb3O4, およびSnO) の影響を熱重量分析, 示差熱分析および熱分解ガスクロマトグラフィーにより検討し, 次の結果を得た. (1) 鉛, 鉛の酸化物はPUの熱分解を促進するが, スズ, 一酸化スズは影響を与えない. (2) PUのN2ガス中での熱分解の初期の見掛けの活性化エネルギーは39kcal/molであり, 一酸化鉛, 二酸化鉛添加試料では36, 四酸化三鉛添加試料では33kcal/molであった. (添加量, 金属として1wt%). (3) 主揮発性分解生成物は炭酸ガス, EG, ジエチレングリコール (DEG) および2,4-ジアミノトルエンであった. 鉛の酸化物添加試料では分解の中期にDEGの生成量が増し, EGは減少した. (4) 一酸化鉛, 四酸化三鉛に固着させたPUを190℃に加熱すると約1640cm-1に新しい吸収帯が現れたことから, 鉛, 鉛の酸化物はポリマーのウレタン結合と不安定な複合体を形成することによりポリウレタンの熱分解を促進するものと推察される.
  • 飯阪 捷義, 西本 芳夫
    1975 年 32 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1975/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ゴム配合ポリスチレンについて, n-アルコール系列中でのクレージングに対する臨界ひずみεcの温度および時間依存性をBergenの1/4だ円曲げ治具を使用することにより求めた. 併せて, 各アルコールの飽和蒸気 (室温) による収着の実験および動的粘弾性の測定も行った. εcが時間の経過とともに減少する短時間領域では, アルコールの鎖長およびゴム配合量が増すほどクレーズは発生しにくい. εcが下限値をとる長時間領域では, アルコールの鎖長が増すほどおよびゴム配合量が少なくなるほどεcの下限値は小さくなる. 短時間領域でのクレージング挙動は, 溶剤分子の高分子内部への拡散によって, また, 長時間領域での挙動は, 平衡膨潤量によってそれぞれ説明される. ゴム配合量の異なるポリスチレン間のクレージング挙動の違いは, 溶剤による因子のみでは説明できない.
  • 前田 修, 山木 準一, 片山 祐三
    1975 年 32 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 1975/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    炭素繊維複合物の電気伝導率について, 平均繊維接触確率を用い, 繊維と繊維の接触で電極間に生じる繊維行路を求め, これより伝導率を計算した. さらに理論計算に用いたモデルに近い高密度ポリエチレン, ナイロン6系プレス成形品の実験結果と比較検討した. その結果, 次のことが分かった. (1) 理論値と実験値は, 高密度ポリエチレン系では大体一致したが, ナイロン6系とは一致せず, 理論値は実験値より大きい値を示した. これは高分子と繊維の密着性が接触抵抗として関与しているためと考えられる. (2) 理論計算において, 補正のための見掛けの接触抵抗を, 高密度ポリエチレンの場合, 0.5Ω-cm, ナイロン6の場合, 5×105Ω-cmとすると, 理論値と実験値は一致した. (3) 繊維長が長くなると, より低い充てん量で急激に伝導率が大きくなり, 繊維長分布が伝導率に影響することが, 理論計算および実験結果から明らかになった.
  • 香西 保明, 林 信夫, 池田 能幸
    1975 年 32 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 1975/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アンモニア水の存在下でピペラジン-2,5-ジオンの開環重合を封管中で行い, それに及ぼす諸因子の影響と反応機構について検討した. グリシンオリゴマーの収率は封管容積の増大に伴って低下するが, アンモニア水濃度の増大により上昇する. また, 加熱温度が高いほど収率は上昇するが, 加熱時間を延長するとオリゴマーの不可逆的分解が起こり収率は逆に低下する. オリゴマーの重合度は主として加熱温度に依存し, その上昇に伴って増大する. したがって, 封管容積を20cm3とした場合の最適反応条件は, モノマー8.78×10-3mol (1g) に15N水酸化アンモニウム0.3mlを加え, 160℃で5時間加熱した場合であり, 重合度約13のオリゴマーが61%の収率で得られる. 反応機構としては, まずピペラジン-2,5-ジオンが加水分解されてグリシルグリシンとなる. このときアンモニアは触媒作用を呈する. 次いで, グリシルグリシンが適量の水の存在下で部分的に溶解して縮合を繰り返しオリゴマーを生成すると推定した.
  • 鬼頭 諒, 宮野 靖, 鈴木 克人
    1975 年 32 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 1975/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    不飽和ポリエステル樹脂の緩和弾性率Er (t) とクリープコンプライアンスDc (t) をガラス転移温度Tgの上下約100℃の範囲で測定し, 時間-温度換算則の成立およびshift factorの温度依存性について検討した. この不飽和ポリエステル樹脂には, 時間-温度換算則が成立し, master curveより予測した短時間のEr (t) は動的弾性率の結果と, 長時間のDc (t) の予測値は実測値と一致した. しかしshift factorの温度依存性は, WLFの式に従わず, Tgを境としてそれぞれ異なった活性化熱で示されるArrhcniusの式に従った. これは不飽和ポリエステル樹脂が非常に橋かけ密度が高いという特徴と関連があると思われる.
  • 野々山 寛, 滝沢 章, 門田 秀作
    1975 年 32 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 1975/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    2成分混合蒸気の透過実験により, 各成分の透過係数が決定され, また混合収着実験から各成分の溶解度係数が求まり, これより各成分の拡散係数が求められるが, この方法を用いて透過性の大きいpoly (γ-methyl-L-glutamatc) 皮膜による, 水-メタノールおよびメタノール-t-ブタノール混合蒸気の透過および収着を行った. 結果として混合収着の場合, 水-メタノール系では両分子間の強い親和性のために共に収着量が増加し, 一方, メタノール-t-ブタノール系では収着量は単独の場合と比較してあまり変化がなかった. 次に拡散係数については拡散の活性化エネルギーが同程度の値にある水-メタノール系では, 水の拡散がより緩やかに拡散するメタノール分子の存在によって抑制された. 一方, メタノール-t-ブタノール系では, 両分子ともポリマーを可塑化しやすい効果をもつため, それぞれの拡散係数が単独の場合より増加した.
  • 児玉 峯一
    1975 年 32 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 1975/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    無配向のガラス短繊維で強化したメタクリル酸メチルーエチレングリコールジメタクリレート共重合体 (I) およびスチレンーエチレングリコールジメタクリレート共重合体 (II) の粘弾性におよぼす繰り返し疲労の効果を調べた. (I), (II) ともに70℃以下での繰り返し疲労によって, マトリックス樹脂の主分散温度より高温側に現れる繊維間の摩さつあるいはすべりに基づくものと考えられる分散 (α′分散) が消失あるいは不めいりょうになり, ゴム弾性率が低下するという変化が生じる. しかし, これらの変化は (I) では疲労時の温度がマトリックス樹脂の副分散温度に近い場合に最大になり, (II) では疲労時の温度とともに大きくなる. この現象から, マトリックス樹脂の力学的エネルギー吸収能は複合体の疲労挙動に対して重要な役割を果たすものといえる.
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