高分子論文集
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32 巻, 12 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 佐藤 謙二, 阿部 芳首
    1975 年 32 巻 12 号 p. 687-693
    発行日: 1975/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    メラミン (MH) のホルムアルデヒド (F) による初期ヒドロキシメチル化について, 極小速度のpH約2.5からpH0.6に至る領域において検討を加えた. 主な結果は次のとおりである. (1) pHにかかわらず, 2次速度定数をkとすると, 初速度R0=k [MH] [F] で与えられる. (2) MHを二酸塩基と考えた場合の反応機構に基づく速度式をたて, この速度式を示す理論曲線と, kと溶液の酸性度間の対応する実測曲線を比較した. この結果, pH約0.6~1.7 ([塩酸] 0/ [MH] 0≒1.3~5.0) の領域の主反応はMHの共役酸MH2+とメチロールカチオンの反応であり, MH2++H3O+↔MH3+++H2Oの反応により生成するMH3++とメチロールカチオンの反応は非常に少ないことが分かった. さらに極小速度付近のpH約2.0~2.9 ([塩酸] 0/ [MH] 0≒1.02~1.2) の領域の主反応はMH2+と分子型F (HCHO) の反応と考えられる.
  • 片岡 紘三
    1975 年 32 巻 12 号 p. 694-699
    発行日: 1975/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    家蚕の熟蚕の液状絹を1,3,10, および30cm/secの各延伸速度で延伸し, 20℃で乾燥後, 絹フィプロイン分子の構造変化をX線回折, 密度, 光学顕微鏡, DSCなどを用いて検討した. その結果, 液状絹は数cm延伸するとネットキンギを起こす. 絹フィブロインは延伸の増加に伴い未延伸部分からネッキング部分間まではα型から非晶まで連続的に変化し, ネッキング以後は配向非晶を示すが, 液体絹の延伸によってβ型は得られなかった. α→配向非晶転移は延伸比に強く依存するが, 延伸速度にはほとんど関係しない. ネッキング部分における径の減少の様相は絹糸腺の中部糸腺中区と前部糸腺との問における径の減少の様相とよく類似し, 絹糸腺内フィブロインの変形様式は液状絹のフリーな状態における延伸変形と類似していると推察された. なお, DSC曲線に現れる205℃の小さな吸熱ピークは配向非晶の崩壊によるものと考えられる.
  • 高橋 利禎, 鈴木 祥夫, 辻本 石男
    1975 年 32 巻 12 号 p. 700-707
    発行日: 1975/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ε-カプロラクタムのアニオン重合中における6ナイロンのエピタキシャル結晶化について研究した. 重合結晶化6ナイロン (I) が延伸・熱処理した6ナイロン (α型とγ型), 高密度ポリエチレン, 12ナイロン, ポリテトラフルオロエチレン, およびポリオキシメチレン上にエピタキシャル結晶化した. ((I) -ポリプロピレン) 系と ((I) -低密度ポリエチレン) 系においてはエピタキシーは認められなかった. 高分子のエピタキシーは分子軸に沿った原子間隔の類似性に基づいて説明された. (I) のb軸が下地の延伸方向に平行に配列しているばかりでなく, (I) のa軸は下地表面に垂直であった. 6ナイロンのインフレーションフィルム (II) の表面層における分子配向状態を検討するため, (I) を (II) の表面上で結晶化させた. (II) 全体のX線図にはDebye-Scherrer環が認められるだけであるにもかかわらず, (II) の表面層においては6ナイロンのb軸はほぼ成形方向に平行に配向していることが確かめられた.
  • 高橋 利禎, 大鹿 勉, 辻本 石男
    1975 年 32 巻 12 号 p. 708-716
    発行日: 1975/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ホルムアルデヒドのアニオン重合中におけるポリオキシメチレン (POM) の結晶化について研究した. トリ-n-ブチルアミンの共存下に有機溶剤中と窒素ガス中で重合を行った. 六角形の半分 (half-hexagonal) のPOMの板状結晶が延伸POM上にエピタキシャル成長することが見いだされた. ラメラ状の結晶の厚さは150~200Åである. 重合中に得られたPOMの分子鎖は下地POMの延伸方向に平行であり, 結晶の (1010) プリズム面は下地表面に平行である. 重合中に得られるPOMの結晶の構造を明らかにするため赤外線吸収スペクトルをとった. 単結晶については明確な985と1130cm-1のバンドの強度は, 重合中に得られたPOMについては弱かった. このことは重合中に得られるPOMの結晶が多くのタイモレキュールを含み, そのコンホメーションは結晶中のコンホメーションとあまり変わらないことを示唆している.
  • 吉井 文男, 早川 直宏, 阿部 俊彦
    1975 年 32 巻 12 号 p. 717-723
    発行日: 1975/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    広幅NMRにより尿素包接化合物中の1,3-ブタジエンの放射線後効果重合 (包接重合) について検討した. 得られた結果は前報のアクリロニトリルおよび塩化ビニルの包接重合と対比して考察した. 1,3-ブタジエンは尿素と1: 4のモル比で包接化合物をつくり, それは-15℃で分解する. 尿素包接化合物中の1,3-ブタジエンには, アクリロニトリルおよび塩化ビニルには認められないきわめて運動しやすい成分がある. 他の包接化合物中の1,3-ブタジエンの線幅はすべての温度域で塩化ビニルよりも広い. 尿素の線幅は塩化ビニルの場合よりも低温側から減少する. 重合は-78℃付近から顕著に起こり, 20℃に昇温するとすべての1,3-ブタジエンが尿素包接化合物中で重合する. 重合中は, アクリロニトリルや塩化ビニルの場合と同様に包接化合物中に生成した活性中心ヘモノマーが移動しながら重合する. カナルの尿素はポリマーになった周辺の尿素が崩れながら進行するアクリロニトリルや塩化ビニルの包接重合と異なり, 常に尿素のカナルが保持されたまま重合が進行し, ポリブタジエン-尿素包接化合物になる, その構造は六方晶系で, a=8.21, c=10.50Åの値を得た.
  • 山田 憲二, 高柳 素夫
    1975 年 32 巻 12 号 p. 724-732
    発行日: 1975/12/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    ロール配向ポリエチレンシートの引張り変形過程は三つのパラメーターをもつMIT式を用いて説明できた. ひずみ硬化パラメーターcは試験引張り方向に依存する. この傾向は初期延伸倍率の増加により著しくなり, c値はtie moleculeの配向に著しく依存する. 初期降伏応力σ*は試験温度の増加に伴って減少し, 融点において無視しうる値となる. 試験引張り方向θ=45°では分子軸方向に最大せん断応力が働くので, σ*は最小値をとる. 折り畳み鎖が仮説的な意味において伸び切り鎖になる極限真ひずみ値ε*は試験引張り方向と試験温度とに依存しないが, 初期延伸倍率の増加に伴って減少しtie molecule分率にのみ依存する. 各々のtie moleculeがその分担する折り畳み鎖をほどいて伸び切り鎖に変化させるという予想は, tie moleculeが無視できる単結晶マットでε*=5.5 (延伸倍率=240) という大きい数値をとることにより支持される.
  • 飯阪 捷義
    1975 年 32 巻 12 号 p. 733-739
    発行日: 1975/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリメタクリル酸メチル (PMMA), ポリ酢酸ビニル (PVAc) およびポリスチレン (PS) に, ガラスビーズおよびマイカを充てんさせた系について, 動的粘弾性研究を行った. 充てんによる主分散温度の上昇 (ΔTα) は, 高分子一充てん材系によって異なる. 換算変数法によって合成曲線を求め, 分子鎖の屈曲性と関係のあるパラメーターnをlog E′ (υaT) = (log E1+log E2) /2の値における傾斜より求めた (E1およびE2は, それぞれlogυaT=6および1における値を示す). 未充てん試料からのnの減少率とΔTαは, 同じ充てん材のとき, 高分子の種類と無関係に直線関係によって与えられる. 活性化エネルギーの温度依存性および緩和スペクトルから, 充てん材による高分子運動の束縛の程度は, 充てん材界面と高分子鎖との接着に依存すること, そして充てん材界面の影響を受ける高分子マトリックスの範囲はかなり大きいことが判明した.
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