高分子論文集
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32 巻, 5 号
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  • 松本 恒隆, 大久保 政芳, 嶋尾 正行
    1975 年 32 巻 5 号 p. 265-271
    発行日: 1975/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ヘドロの凝集処理に対する, 特にエマルジョン粒子表面上のカチオン性開始剤末端基の挙動に着目し, カチオン性の開始剤である2,2′-アゾビス (2-アミジノプロパン) 塩酸塩 (AIBA) を用いて作製したポリアクリル酸エチル (PEA) エマルジョン粒子によるヘドロの凝集を行い, その有用性を明らかにしようとした. なお, 比較のためにアニオン性の過硫酸カリウムおよび4,4′-アゾビス (4-シアノワレリン酸), ノニオン性の過酸化水素を開始剤としたものを使用した. 得られた主な結果は次のとおりである. 1) AIBA-PEAエマルジョンのみが巨大フロック形成能を有した. 2) カチオン荷電数の異なるエマルジョンにおいて, 荷電数の多いもの (A) は巨大フロック形成能が, 少ないもの (B) は清澄化能が, それぞれ優れた. その理由として新しい凝集モデルを提案した. 3) そのモデルに基づき, Bをまず添加し, さらにAを追添加するという2段階添加法をとることにより, それぞれの単独系では不可能であった巨大フロックの形成と清澄化を同時に達成することができた.
  • 藤村 敏一, 坪田 実
    1975 年 32 巻 5 号 p. 272-275
    発行日: 1975/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    熱接着が困難である2軸延伸ポリスチレンシートを, 発泡ポリスチレン紙を媒体として積層接着性を向上させるために金属熱板による加熱条件, 接触状態の積層シート内部温度上昇とはく離強度に対する影響を測定し, 基礎となる伝熱挙動と接着機構を検討した結果, 1) 両シートとも定温熱板接触において, 算出した表面熱伝達係数は有限値を示し, 境界熱抵抗を無視し得なかった. これらの表面熱伝達係数は熱板の温度を高めるか, または密着すると大きくなる傾向があった. また, 発泡シートの表面熱伝達係数は, 表面をサンドペーパー処理することによっても大きくなった. 2) 延伸シートと発泡シートを熱圧着したはく離強度は, 界面をガラス転移点以上に上昇するか, 圧着圧力を増すか, 表面をサンドペーパー処理すると増大した. 3) 界面熱抵抗の軽減による局部熱軟化と気泡間げきに圧入するanchoring作用により接着強度を向上したと考えられる.
  • 並木 勇, 堀 久子
    1975 年 32 巻 5 号 p. 276-279
    発行日: 1975/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    銅張り積層板における銅ハクのはく離強度に影響を及ぼす諸因子について検討した. 接着剤の組成ならびに分子構造との関係についてはすでに報告したので, 本報では接着剤の抗張力, 伸びなどの力学的性質の影響, 銅ハク表面の形状の影響, 酸化処理または還元処理による銅ハクの化学的性質の変化による影響について検討した. これらの実験結果より次の事項が明らかになった. (1) PVB-フェノール樹脂系の接着剤において適当量のフェノール樹脂の配合によって, はく離強度が極大値を示すのは, 接着剤皮膜の弾性ひずみエネルギーが大きく支配するためとみられる. (2) 接着剤の力学的性質は銅ハク表面と接着剤の極性基との間の配向効果よりも, はく離強度に影響する度合は大きい. (3) 銅ハク表面の凹凸の状態も, はく離強度に大きな影響を及ぼす.
  • 森川 洸, 天野 高男
    1975 年 32 巻 5 号 p. 280-287
    発行日: 1975/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニルの窒素中熱分解体 [d (N) -PVC] および酸素中熱分解体 [d (O) -PVC] とジボランとの反応生成物の構造と熱安定性を検討した. d (N) -PVCはTHF溶液状態および粉末状態でジボランによりハイドロボレーションされる. 粉末状態において, 粒子内部までハイドロボレーションされるのは, 表面に生成した構造-BH2がPVC鎖上を自由に移動して粒子内部へはいり込むことに基づくものと考えられる. この反応体は真空中での分解において未分解PVCより安定である. この安定化機構は, >CH-BH2自身およびこれから脱離したボランが, 熱分解により生じた二重結合に付加することによる二重結合の共役化の抑制などに基づくものと結論した. d (O) -PVCとジボランとの反応においては, THF溶液状態ではハイドロボレーションとともにカルボニル基の還元が起こる. しかし粉末状態ではハイドロボレーションは起こらず, 粒子表面で還元反応が起こる. これは粒子表面に濃度の高いカルボニル基がジボランと反応して>CH-O-BH2を生成するが, この>CH-O-BH2は熱に対し安定で内部へ移動できないことによるものと思われる. またこの反応体の熱に対する安定化機構にっいても検討した.
  • 矢野 彰一郎, 村山 三樹男, 吉田 政夫
    1975 年 32 巻 5 号 p. 288-294
    発行日: 1975/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    硫黄加硫天然ゴムの熱および光劣化過程の力学的挙動の変化を動的粘弾性測定により研究した. 熱劣化過程の相対動的弾性率は経時的に, E′ (t) /E′ (0) =A exp (-k1t) +B exp (-k2t) で表されることが分かった. ここでA, Bは定数, k1, k2は速度定数である. 短時間側での見掛けの活性化エネルギーは空気中で27.5kcal/mol, 窒素中で22.7kcal/molであった. また硫黄加硫天然ゴムに紫外線を分光照射して動的弾性率E′と網目鎖密度nを測定した結果, 300nm以上では橋かけ反応が優勢となり, 300nm以下では切断反応が促進されることが認められた. これをさらに確かめるためにフィルターで短波長の紫外線をカットしたキセノンランプで紫外線を当てながらE′の経時変化を測定した結果, 長時間側で橋かけによるE′の増大が認められた. 300nm以下の紫外線の効果を検討するために低圧水銀灯で照射しながらE′の経時変化を測定した結果, 特に130℃で切断反応が促進されることが認められた.
  • 山本 晃, 浜田 一人, 村上 平一郎, 大原 国男
    1975 年 32 巻 5 号 p. 295-300
    発行日: 1975/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    60%塩化亜鉛水溶液を溶媒とし大豆タンパクへのアクリロニトリルのグラフト重合を行い, 分別溶解法によってグラフト効率を求めた. 過硫酸アンモニウムー亜硫酸ナトリウム系触媒では, 開始温度10℃の場合に最も高い重合率が得られた. 触媒1回添加法では十分に高い重合率は得られず, 分割添加法によって得られた. アクリロニトリルに対する大豆タンパクの仕込比の増すほど重合率, およびポリアクリロニトリルの分子量は低下した. 過硫酸アンモニウム単独開始剤による10℃における重合でも, 予想以上の高い重合率が得られることを見いだした. これは大豆タンパクのシスチン, メチオニンなどの還元性基の効果によると考えられる.
  • 満島 英行, 宮川 博司
    1975 年 32 巻 5 号 p. 301-307
    発行日: 1975/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    酸無水物硬化ビスフェノールA型エポキシ樹脂のシリカ充てん物について, 引張り応力緩和弾性率より, 非体積圧縮性を仮定して, 定ひずみ速さ引張り, 引張りクリーブ, ねじりクリーブ, 圧縮応力緩和, 温度変化を伴う応力緩和の各弾性挙動を, 線型粘弾性理論および数値的取り扱いの工夫により算出, 各々の実験値とのよい一致を見た。
  • 瀬尾 利弘, 加倉井 敏夫
    1975 年 32 巻 5 号 p. 308-313
    発行日: 1975/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    p-アミノスチレン塩酸塩とジシアンジアミドの溶融反応によって定量的にポリビグアニジノスチレンが得られた. 生成物の構造を元素分析, IRおよびUVスペクトルなどで確認した. このポリマーは二酸塩基で塩酸中では電解質的粘度挙動を示し, また銅 (II) イオンと紫色のキレート化合物を作る. さらに, 活性なエステル類との反応によってトリアジン環が高反応率で高分子側鎖に導入され, 元のポリマーに比ベ酸化熱分解に対する安定性が向上した. アミノスチレン-スチレン共重合体を出発物質としてもビグアニジノ基およびトリアジン環をもっポリマーが容易に合成された.
  • 今井 逸郎, 松本 昭, 大岩 正芳
    1975 年 32 巻 5 号 p. 314-320
    発行日: 1975/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    環状構造, 未環状構造, および橋かけ構造から成るジアリルフタレートプレポリマ (PDAP) のアルカリケン化を, 水-ジオキサン混合溶媒中で行い, 構造単位, 重合度などの影響について検討した. 不飽和度および重合度の異なるいずれのプレポリマーにおいても, 反応の進行とともに見掛けの速度定数の増大が観察され, その傾向は, 重合度の増大とともに顕著となった. しかしながら構造単位による影響は見られなかった. また, 反応の進行とともに活性化エントロピーが大きく増大した. さらに, 加速効果はジアリルイソフタレートプレポリマー (PDAI), ジアリルサクシネートプレポリマー (PDASu), およびジアリルアジペートプレポリマー (PDAA) においてもPDAPの場合と同様に生起し, その度合は, PDAP<PDAI<PDAA<PDASuの順に増大した. これらの結果は, 反応の進行とともにポリマー中に生成するOH基によるOH-イオン吸着作用とポリマー鎖の剛直性との関連性, さらには低分子モデルとの対比といった観点から考察された.
  • 鉛山 洋一, 仲里 盛雄, 内藤 郁夫, 木下 尭博
    1975 年 32 巻 5 号 p. 321-326
    発行日: 1975/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    イソプロペニルスチリルケトンモノマーの重合により側鎖にスチリルケトン基を含む感光性樹脂を合成した. n-BuLiを開始剤とするアニオン重合によりイソプロペニル基のみによる重合が起こる. ポリイソプロペニルスチリルケトンはπ→π*の吸収をλmax=295nm, (εmax=19500) に持ち長波長の吸収末端は380nmであり, 紫外線照射により2量化反応を起こし溶媒に不溶解となる感光性樹脂である. 2量化反応の初期量子収率 (φ0) は313nmの波長でI0=6.896×10-9E/cm2・sec, [C] =1.23×10-7mol/cm2 (フィルム状態) の範囲においてφ0=0.81である. 三重項増感剤の添加効果よりPISKの2量化反応において三重項状態が大きく関与していることが理解された.
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