ポリ塩化ビニルを幹ポリマーとして, アクリル酸エチル (EA), 酢酸ビニル (VAc), スチレン (St) などをラジカルグラフト重合させたPVCグラフト重合物の空気中における比較的低温での熱安定性について, 熱重量測定, 紫外線 (UV) 吸収スペクトル法, および反射分光光度法を用いて検討した. グラフト重合物の熱安定性はグラフト率30~200%の範囲では, グラフト率よりもむしろ枝ポリマーの種類によって決まるようである. 熱重量測定による分解開始温度付近の比較的低温における脱HCl分解に対する安定性の順序は枝ポリマーがEA≈アクリル酸
n-ブチル (
n-BuA) >VAc≥Stのそれぞれのポリマーであり, この順列は可視部の反射分光光度法により測定された熱着色安定性の順とも一致している. またUV吸収スペクトル法によって調べたところ, ジエンまたはトリエン型の吸収に相当する260~270nm当たりに比較的大きな吸収がPVCでは認められるが, VAcのグラフト重合物 (PVC-
g-VAc) では吸収が減少し, EAのグラフト重合物 (PVC-
g-EA) では吸収はほとんど認められなかった. 枝ポリマーのガラス転移点の低いものほど, また, モノマーのラジカル反応性の高いものほど, 幹PVC分子に存在する二重結合を減少させ熱安定性を増大させることが分かった.
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