高分子論文集
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33 巻, 12 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 占部 正義, 今田 清久
    1976 年 33 巻 12 号 p. 697-702
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリエチレン単結晶の希薄溶液中における結晶化において, 高温における一定時間の結晶化が終了した後に徐冷を行う過程で, その時の結晶化温度に対応する薄い層厚が本体結晶の周辺に生成する. しかし, この二次的な結晶化の進行と同時に周辺で分子鎖の再配列が生じ, 本体結晶と等しい層厚に修正される. このことはポリエチレン単結晶の溶液内結晶化の過程および単結晶の空気中あるいは高真空中および溶液中での熱処理の効果から確かめられる.
  • かせ村 知之, 山下 典男, 近土 隆, 畑 敏雄
    1976 年 33 巻 12 号 p. 703-709
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ジアルキルフタレートは高分子の可塑剤として広く用いられており, その界面化学的性質を研究することは重要である. 我々は鎖長の異なるジアルキルフタレートの表面張力を静泡法で測定し, パラフィンに対する接触角を測定した. ジアルキルフタレートの表面張力 (γL) と表面エネルギー (ES) は, 最初分子量の増加とともに減少し, M=418における極小値を通過する. 表面エントロピー (SS) はMとともに減少し, ポリエチレンの値に接近する. 表面張力の分散力成分と極性成分は, 接触角のデータからFowkesの式を用いて計算した. 分散力成分 (γLa) はM=250までは一定値を示し, 250<M<418ではγLに平行に減少し, M=418で極小となり, それ以後はアルキル基の2倍の分子量をもつn-alkaneの表面張力に一致して増加する. 一方γLbは最初Mの増加とともに急激に減少してゆき, M>300において一定値を示す. これらの結果はGainesの式でも畑の式でも説明できない.
  • 藤原 康晴, 小林 才子
    1976 年 33 巻 12 号 p. 711-716
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    γ線を30, 40Mrad室温の空気中で照射したナイロン6繊維の表面形態について検討した. 照射後, 約70℃の水を用いて抽出すると, 繊維の重量は減少し繊維表面には繊維軸とほぼ垂直方向に深さと幅のほぼ一定なクラックが生成した. 水抽出によるクラックの発生に伴い, スキンのみが繊維軸方向へ収縮し, 結晶化度の増加が観察された. クラックの発生した繊維では, スキンがコアから容易に分割することができた. 以上のような形態変化は, スキンとコアがγ線照射および水抽出に対して, 異なった挙動を示すためと考えられる.
  • 上野 博, 大塚 晋也
    1976 年 33 巻 12 号 p. 717-721
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    溶融状態におけるbulk viscosity (η) とlocal viscosity (ξ) の測定を分子量分布の狭いポリスチレンを用いて行った. 分子量範囲は600~390000までの5種であり, 測定温度範囲は50~230℃であった. ηの測定は毛管粘度計およびコーンプレート型粘度計を用い, ξはけい光法によって求めた. その結果以下のことが明らかとなった. (1) ηの温度依存性はこれまでに報告されているようにWLFの関係に従う. 一方, ξの温度依存性は高温部では上に凹の曲線を示すが, 低温部では温度に対しほとんど変化しない. (2) ηとξの分子量依存性の相違は分子量が104程度以上から明らかとなる. すなわちηは鎖長に起因するからみ合いの効果が直接反映するのに対し, ξはけい光分子の回転運動を束縛する鎖長がからみ合いを起こす程度に達するとそれ以上鎖長が長くなってもξに対し大きな変化を与えない.
  • 上野 博, 大塚 晋也
    1976 年 33 巻 12 号 p. 723-731
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    第1報で報告した分子量分布の狭いポリスチレン (PS) を用いて2成分系のブレンドを行い溶融状態におけるbulk viscosity (ηb) とlocal viscosity (ξb) の検討を行った. ブレンドを行ったPSの分子量は. M600とM37,000である. ηb, ξbの測定は第1報で報告した装置および方法で行った. その結果, 以下のことが明らかとなった. (1) ηbの温度依存性, ブレンド成分濃度依存性は自由体積の理論を適用するとよく説明できる. (2) ηbについて得られた自由体積 (f) の逆数で, logξbをそれぞれの分子量でプロットすると上に凸となる曲線で表せる. (3) ηb, ξbの分子量依存性については両粘度ともMwでプロットすると上に凹となる曲線を示す. (4) ηbの各分子量における等温粘度を自由体積一定の状態に換算してプロットするとMw=1.78×104で折点をもつ傾き1.0, 3.3の2本の直線で表せる. (5) ξbの分子量依存性を調べると自由体積一定という条件ではMw0.1に比例する.
  • 糸山 国義, 柏木 陸男
    1976 年 33 巻 12 号 p. 733-739
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    一軸延伸ナイロン6および12フィルムのNMRスペクトルの二次モーメントの異方性, 温度変化を解析し, 次の結果を得た. 1) 延伸倍率6.0のナイロン6フィルムの配向分布パラメーターP2 (cosΔ), P4 (cosΔ) は, それぞれ0.99, 0.54で, 擬アフィン変形モデルで説明できない. 2) 170℃でのナイロン6の二次モーメントの異方性はCO, NH基の隣接CH2が静止し, 他のCH2が主鎖のまわりに自由回転しているモデルからの計算値と一致する. 3) 広幅成分を与えるナイロン6の配向領域の分子は, 110~130℃で主鎖のまわりの回転振動の転移を起こす. ナイロン12では, 20℃と125℃付近で, 比較的動きにくい領域の分子が等方的に近い運動の転移を起こす.
  • 糸山 国義
    1976 年 33 巻 12 号 p. 741-748
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    延伸と熱処理によるナイロン6およびポリエチレンテレフタレート (PET) 糸の内部構造の変化を広幅NMRによって調べた. ナイロン6未延伸糸を熱処理してもmobile部分の量は保存される. mobile部分の量の温度依存性から, 非晶領域のポテンシャル障壁の高さを見積ると, 150℃以下で12.1kcal/mol, 以上で2.9kcal/molであり, この値は糸を弛緩熱処理しても変わらない. PET延伸糸を弛緩熱処理すると, rigid部分はその量を減少し, そのrigidさは増すが, 定長熱処理ではその量, rigidさともわずかしか変化しない. 延伸, 熱処理によるPET糸の挙動は, ナロン糸に対してStattonが提案したモデルによって, うまく説明できる.
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