高分子論文集
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33 巻, 3 号
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  • 村上 良一, 新 憲明, 楠本 直, 本里 義明
    1976 年 33 巻 3 号 p. 107-111
    発行日: 1976/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    プラスチックーゴム混合物の疲労を, 繰返し応力引張試験機を用いて行い, 疲労物の動的粘弾性を測定することにより疲労機構を検討した. その結果, 混合物における疲労は粘弾性吸収の変化から, プラスチック相自体の変化と2相間の界面における相分離の進行という形で起こるものと推定した. また, 混合物におけるプラスチック相の種類により疲労後の粘弾性変化は異なり, 疲労の進行がプラスチック相自体の構造と密接に結びついているものと考えた。
  • 箕浦 憲彦, 木下 秀雄, 仲川 勤
    1976 年 33 巻 3 号 p. 112-115
    発行日: 1976/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    三酢酸セルロース膜を再生してセルロース膜とし, この膜の両面および片面に酢化反応を行い逆浸透膜を得た. 膜状態での反応により調製した膜は, 膜の両面が三酢酸セルロース, 内部がセルロースというめいりょうな3層構造から成っているのではなく, 膜全体が均質膜のような構造であると推定した. これらの膜では, 酢化反応時間を増すと, 透水速度が減少し, 分離度が増加した. この方法で得られた膜では, 透水速度1. 6×10-5g/cm2・sec分離度93%の値が得られ, 20時間連続操作後でも, それらにほとんど変化がみられなかった. 水および塩の膜透過機構について検討した.
  • 松田 英臣, 岡部 勝, 黒岩 茂隆
    1976 年 33 巻 3 号 p. 116-121
    発行日: 1976/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    従来の拡散セルの欠点であったセルもれが起こらず, また機械的に動かす部分が全くない新しい拡散セルを作り, このセル内で溶液と溶媒のシャープな界面を作るための装置を試作した. 界面形成はすべて自動的に行われる. その方法は最初セルの下部に溶液を入れ, 金属ボールを境にして, 上部に溶媒を満たす. 温度平衡に達した後, 両者の界面を毛細管により吸引し, 界面の低下とともに毛細管を下降させ, 最終的にセルの中央部に界面が来た時に吸引を停止する. 本装置では毛細管の吸引速度を溶液 (または溶媒) が吸引される速度の2倍に設計してあるために, 毛細管は界面で溶液と溶媒の等量を吸引し, しかもその先端と界面は一致して下降する. 本装置によると拡散実験における界面形成の成功率は100%近くになり, しかもシャープな界面が形成できる. したがってこの装置は高分子希薄溶液の拡散測定のためにはほとんど完全な装置と思われる.
  • 笹木 勲, 伊藤 憲一, 児玉 恒雄, 井手 文雄
    1976 年 33 巻 3 号 p. 122-130
    発行日: 1976/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    無水マレイン酸 (MAH) をグラフトしたポリプロピレン (PP) と炭酸カルシウム (CaCO3) のブレンドポリマーについて, 補強機構を解析した. 成形試片の破断面を電子顕微鏡で観察すると, CaCO3の結晶はPPで包埋されており, キシレン抽出によってPPとともに一部のCaCO3が溶出することから, PPとCaCO3の親和性向上が認められた. この親和性向上の原因としては, MAHグラフトPPとCaCO3がイオン橋かけ構造を形成することが考えられるが, ポリマーの構造解析その他から分子間のイオン橋かけではなく部分中和塩を形成することによるものと推論した. 部分中和塩の形成は, MAHグラフト率とCaCO3のイオン解離性の低いことが原因と考えられる.
  • 上田 明, 塩津 義信, 日高 愛公, 永井 進
    1976 年 33 巻 3 号 p. 131-140
    発行日: 1976/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アゾビスシアノペンタン酸クロリドとヘキサメチレンジアミンとの界面重縮合により, ポリ (ヘキサメチレンアゾビスシアノペンタン酸) アミドを合成した. 同様に, 酸成分にセバシン酸クロリドを併用することにより, 上記ポリアミドとナイロン6・10とのコポリアミドも合成した. これらポリアミドまたはコポリアミド主鎖中のアゾ基は固相でも液相でも通常のアゾ系開始剤におけると同様の分解性を示した. DMFまたはm-クレゾール中でこのポリアミド (またはコポリアミド) をビニルモノマー, 例えばスチレンの共存下に分解させると, スチレンの重合が起こり, ブロック共重合体PS-PAが得られ, 重合初期には生成ポリマーの分子量の顕著な増大がみられた. これは, いったん重合を停止したポリマーが次々と主鎖分裂とビニル重合を繰り返すためと考えられる. 上記ブロック共重合体に第2のモノマー, 例えばMMAを加えて分解させると, 三元ブロック共重合体PS-PA-PMMAが得られた.
  • 大石 勉, 木村 規
    1976 年 33 巻 3 号 p. 141-146
    発行日: 1976/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    N-(2-フルオレニル) -マレイミド (I), N-1-(4-アセトキシナフチル) -マレイミド (II), N-2-(9-アセトキシフルオレニル) -マレイミド (III) の単独重合, 共重合をアゾビスイソブチロニトリル (IV) を開始剤としてテトラヒドロフラン中, 60℃で行った. 単独重合の初速度 (Rp) は, Rp=k [I] 2.11 [IV] 0.64, Rp=k [II] 2.26 [IV] 0.72, Rp=k [III] 1.76 [IV] 0.52となった. kは速度定数である. 全重合の活性化エネルギー (E), 頻度係数 (A) はE=26.4kcal/mol (I), 23.3kcal/mol (II), 22.8kcal/mol (III), A=3.4×1015 (I), 2.7×1011 (II), 1.5×1011 (III) となった. またN置換マレイミドとメタクリル酸メチル (V) との共重合におけるモノマー反応性比, Q, e値を次のように決定した.
    I (M1) -V (M2) 系で, r1=0.24, r2=0.93, Q1=0.43, e1=1.82, II (M1) -V (M2) 系で, r1=0.17, r22.29, Q1=0.51, e1=1.37, III (M1) -V (M2) 系で, r1=0.068, r2=1.34, Q1=0.87, e1=1.90となった.
  • 半田 隆, 吉澤 秀二, 池田 康久, 斎藤 実
    1976 年 33 巻 3 号 p. 147-154
    発行日: 1976/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ブナ単板にメタクリル酸メチル (MMA) を含浸し電子線同時照射した木材-ポリマー複合体 (WPC) とポリメタクリル酸メチルを注入したWPCの動的粘弾性 (E′, E″) の挙動の比較から, ポリマーが木材空隙部分に存在する場合は, 木材実質部界面とポリマーとの間の相互作用により, 系のE′, E″の増加を示し120℃付近のE″のピークはポリマーのTg (85℃) の移動と解釈された. ポリマーが木材実質部分で生成した電子線照射WPC系のE′, E″は増加せず, 木材のヘミセルロースの熱分解と構造変化に起因する230℃のE″のピークが低温側へ移動した. 電子線照射WPCからホモポリマーと枝ポリマーを分離した. 枝ポリマーはMMA含浸前の木材の含水率の増加に従って分子量は増大し, ホモポリマーより分子量分布は狭い. 以上の結果から, 電子線重合でMMAは木材実質部分の非結晶部分のセルロースおよびヘミセルロースに近接してマトリックス重合的に反応し, 枝ポリマーは非結晶部分のセルロースおよびヘミセルロース中に分散して存在し強い相互作用を受けている.
  • 荘司 顕, 花岡 和夫, 武谷 晋, 河合 徹
    1976 年 33 巻 3 号 p. 155-161
    発行日: 1976/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    L-アラニンとN-メチル-L-アラニン (MA) の共重合体をそれらの酸無水物 (NCA) の不均一系重合により合成した. それらのコンホメーションをジクロロ酢酸 (DCA), トリフルオロ酢酸 (TFA) およびTFA-クロロホルム混合溶媒中で旋光分散 (ORD) および核磁気共鳴 (1H-NMR) 法により研究した. 水素結合を形成し得ないMA単位はL-アラニン連鎖によって形成されるα-ヘリックスに組み込まれず, そのポリ-L-アラニン鎖への導入は水素結合の数をMA含量に応じてMA単位当たり2~10個減少させることが見いだされた. NMRの結果は共重合体分子鎖のヘリックス-コイル接合部の運動性がポリ-L-アラニンのそれとは異なることを示した. 共重合体分子鎖の部分ヘリックス性をMA含量の関数として議論した.
  • 笹木 勲, 児玉 恒雄, 井手 文雄
    1976 年 33 巻 3 号 p. 162-169
    発行日: 1976/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高密度ポリエチレン (PE) と炭酸カルシウム (CaCO3) のブレンドにおけるPEのグラフト効果を検討した結果, 微量の無水マレイン酸 (MAH) をPEにグラフトすることによってCaCO3とPEの界面接着性が改善され, ブレンドポリマーの機械的強度の向上することが明らかになった. MAHグラフトPEは押出機を用いて容易につくることができるが, この段階で水分が存在するとグラフト反応が抑制されて機械的強度の低いブレンドポリマーしか得られない. この原因としては, PEラジカルの水分による失活とMAHの一部が水分によって開環しグラフト活性の低いマレイン酸に変化することの二つが考えられた. ただしPEの分子量は水分によって影響を受けない.
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