ブナ単板にメタクリル酸メチル (MMA) を含浸し電子線同時照射した木材-ポリマー複合体 (WPC) とポリメタクリル酸メチルを注入したWPCの動的粘弾性 (
E′,
E″) の挙動の比較から, ポリマーが木材空隙部分に存在する場合は, 木材実質部界面とポリマーとの間の相互作用により, 系の
E′,
E″の増加を示し120℃付近の
E″のピークはポリマーの
Tg (85℃) の移動と解釈された. ポリマーが木材実質部分で生成した電子線照射WPC系の
E′,
E″は増加せず, 木材のヘミセルロースの熱分解と構造変化に起因する230℃の
E″のピークが低温側へ移動した. 電子線照射WPCからホモポリマーと枝ポリマーを分離した. 枝ポリマーはMMA含浸前の木材の含水率の増加に従って分子量は増大し, ホモポリマーより分子量分布は狭い. 以上の結果から, 電子線重合でMMAは木材実質部分の非結晶部分のセルロースおよびヘミセルロースに近接してマトリックス重合的に反応し, 枝ポリマーは非結晶部分のセルロースおよびヘミセルロース中に分散して存在し強い相互作用を受けている.
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