高分子論文集
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33 巻, 6 号
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  • 田中 浩雄, 千手 諒一
    1976 年 33 巻 6 号 p. 309-316
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリアクリルアミド (PAM) のHofmann分解における全ハロゲン, N-クロル基, アミノ基およびカルボキシル基の経時的変化を測定した. またアミノ化率に及ぼす種々の因子についても検討した. PAMのHofmann分解速度は低分子モノアミドや高分子多価アルコールのカルバモイル誘導体のそれより数百~千数百倍も大きい. 一般にアミド化合物のN-ハロゲン基は0℃では極めて安定で, 加熱しないとアミンを生成しないが, PAMの場合には0~-15℃の低温でも容易にアミンを生成する. アミノ化率は反応温度が低いほど, NaOHの濃度が高いほど増大する. 次亜ハロゲン酸塩としてはNaOClがNaOBrより有効で, アミノ化率は前者を用いる方が後者の場合より約1.7倍も大きい. PAM0.60mol/l, NaOCl0.61mol/l, NaOH4.5mol/l, 0℃, 24時間の条件でアミノ化率は約90%に達する, 副反応の主なものは, 尿素結合とカルボキシル基の生成であることを推定した.
  • 山下 晋三, こうじ谷 信三, 中村 寿男
    1976 年 33 巻 6 号 p. 317-322
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    1-クロロブタジエンとブタジエンの乳化重合により合成された1-クロロブタジエン-ブタジエン共重合ゴム (CB-BR) は, 分子中に反応性塩素を有している. 第三アミノ基をもつ酸化防止剤はトルエン溶媒中80℃でCB-BRの塩素と反応して第四級塩を形成し, CB-BRに化学的に結合されることが紫外スペクトルにより示唆された. CB-BRにこれらの酸化防止剤を配合し, カーボンブラック, 硫黄, ならびに加硫促進剤を加え, 熱プレスによって得られたCB-BR加硫物は溶剤抽出後も優れた耐熱老化性を示した. このような反応性酸化防止剤によるゴムの安定化は, 従来行われてきた酸化防止剤の物理的な混合では達成できない特徴を有しており, CB-BRはこの方法による安定化に適した新しいブタジエン系の合成ゴムといえる.
  • 岡本 秀正, 岩井 正
    1976 年 33 巻 6 号 p. 323-329
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    放射線によるシンジオ-1,2-ポリブタジエンの連鎖的環化橋かけ反応において, ゲル生成, ビニル基減少および融点低下に及ぼす空気, 特に酸素, ならびに一般的な酸化防止剤としての2,6-ジtert-ブチル-p-クレゾール (BHT) の影響を検討した. 酸素はゲルの生成を抑制するとともに酸化をもたらした. ゲル生成の抑制と酸化の程度は, 試料が厚くなればまたγ線よりも電子線を用いれば小さいが, 逆の場合には大きかった. 一方, 酸化が著しい場合ビニル基の減少速度は真空中照射に比べて大きくなった. また, BHTによりゲル生成およびビニル基の減少はいずれも抑制され, 橋かけのG値はBHT添加量とともに低下した. さらに, 酸化反応が顕著でなければ, 融点の低下はゲル分率のみによって決まることが分かった. これらの結果に基づいて, 酸素およびBHTの作用機構を考察した.
  • 岡本 秀正, 岩井 正
    1976 年 33 巻 6 号 p. 331-338
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    放射線により環化橋かけしたシンジオ-1,2-ポリブタジエンを無酸素ふんい気下で熱処理すると, 融点付近で流動することなくさらに高温で熱硬化し透明なポリマーに変わる。この熱硬化はビニル基の関与する環化反応であり, ビニル基の減少速度は温度が高いほど大きく, 反応の初期と後期とでは著しく異なった. 硬化物は比重の増大した無定形物質であった。また, 耐酸化性, 機械的には著しく剛性, 電気的には絶縁破壊の強さ, 耐アーク性が増した. 一方, 未橋かけ物についてラジカル開始剤を用いれば, より低温で熱硬化できることが分かった. 高温での本熱硬化反応におけるビニル基の減少をラジカル機構で説明するとともに, その様式を速度論的に考察した.
  • 伊藤 武男, 白川 英樹, 池田 朔次
    1976 年 33 巻 6 号 p. 339-345
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    任意のシス-トランス組成を有する3種類のポリアセチレンを次の方法で調製した. Type-1; Ti (OC4H9) 4-Al (C2H5) 3系触媒を用い一定のAl/Tiモル比 (Al/Ti=4) で温度を変えることにより, Type-2; 上記の触媒系を使い一定温度 (0℃) でAl/Tiモル比を1~3に変えることにより, Type-3; Type-1のシスポリアセチレンを熱処理温度と時間を変えシス-トランス異性化させることによりそれぞれ調製した. これらの重合体の固体構造をX線回折と密度測定に基づき検討した結果, Type-1はシス-トランスランダム共重合体が重合時に共結晶化したもの, Type-2は異なる活性種から生成した全シス重合体と全トランス重合体の混合物であると結論した. またType-3は固相状態におけるシスートランス異性化反応で生成したシス-トランスランダム共重合体であろうと推察した.
  • 山木 準一
    1976 年 33 巻 6 号 p. 347-350
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    短繊維複合材料の引張強さについて, 著者が先に報告した理論解析をもとに, 実験との比較が可能な式を新しく導いた. この式より引張強さが繊維長の一次関数となるような比較的短い繊維を含む複合材料では, 複合物の破壊はマトリックスの破壊あるいは繊維・マトリックス界面のはく離に起因し, その引張強さはマトリックスが破壊する場合には繊維の弾性率に, 界面のはく離の場合には界面のせん断強さにそれぞれ依存することが推定された. また, この式より求まる引張強さの繊維長・繊維含有率の依存性は実験と一致し, 試料中の繊維の配向性をは握すれば, 引張強さの実験値より界面のせん断強さが求められることが分かつた.
  • 芹田 元, 木村 誓, 村井 幸一, 高橋 幸男
    1976 年 33 巻 6 号 p. 351-355
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    良好な凝集剤を得る目的でポリ (p-クロロメチルスチレン) を第三級アミンと反応させ, ポリ (ビニルベンジルアンモニウムクロリド) を生成した. 四級アンモニウムポリマーの凝集能を構造との関連で検討するため, カオリン懸濁液中での沈降速度, 沈降容積および残留濁度を観察した. 実験結果よリトリアルキル (C1~C4) アミンはヘテロ環状アミン (ピリジン, α-ピコリン, N-メチルピペリジン) より良い凝集剤の生成において勝り, トリアルキルアミンより生成した約60%の四級化率の四級アンモニウムポリマーは, 代表的市販品に見劣りしない優れた凝集剤であることが分かった.
  • 山田 純男
    1976 年 33 巻 6 号 p. 357-360
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ酢酸ビニルを部分けん化して得られたもの (Sap-PVAc) と, ポリビニルアルコールを部分再酢化して得られたもの (Acet-PVA) の2種類のポリ (酢酸ビニル-ビニルアルコール) 共重合体フィルムについて, ヘリウム, 炭酸ガスと酸素の気体透過性を検討した. ブロック的構造をもつSap-PVAcとランダム的構造をとるAcet-PVAの両者を同一共重合組成比で比較すると, いずれの気体透過係数もランダム性構造よりもブロック性構造の方が低い値をとることが分かった. 気体透過係数の活性化エネルギーを求めてみるとランダム性構造よりもブロック性構造の方が大きく, 難透過性成分であるビニルアルコール単位の連鎖がある程度集団的に分布した構造の方が分散した構造よりも拡散に必要な高分子鎖のセグメント運動をより強く束縛するものと考えられる。
  • 大内 辰郎, 中 茂, 井本 稔
    1976 年 33 巻 6 号 p. 361-364
    発行日: 1976/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    p-オキシ安息香酸とp-アミノ安息香酸の共重縮合体を合成し, 各々の単独重縮合体と熱的性質を比較した. その結果, これらのポリマーはいずれも熱濃硫酸に溶けるが, 通常の有機溶媒に溶解しなかった. またX線回折の測定により, 共重縮合体は両単独重縮合体に比べて結晶性は劣るが, やはりかなりの結晶性をもっていることが分かった. さらに示差熱分析および熱重量測定により, 共重縮合体は510℃以上の耐熱性を示し, ポリマー中のアミド組成が増すにつれて熱安定性が増加することが明らかになった.
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