高分子論文集
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33 巻, 7 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 山木 準一
    1976 年 33 巻 7 号 p. 367-372
    発行日: 1976/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高強度タイプの炭素繊維とアセタールコポリマーを用いた短繊維複合材料に関して, 種々の表面処理を行い, 繊維と樹脂の接着強さや接着機構を検討した. 繊維の表面処理効果は, 前報で述べた方法により, 複合材料の引張強さから繊維と樹脂界面のせん断強さを求め評価した. また, 繊維表面のカルボキシル基の滴定, 重量減少の測定, 繊維の強度・弾性率の測定, 繊維の表面積の測定をした. 界面のせん断強さは, 繊維表面にカルボキシル基のナトリウム塩を作る方法や, モルホリン仕上げなどでは向上せず, 熱処理により繊維表面を清浄にし, 表面の粗さを増加させることにより向上することがみられた.
  • 橋本 静信, 山下 隆之, 尾野 真史
    1976 年 33 巻 7 号 p. 373-379
    発行日: 1976/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    3-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸サルトン (PS) と1-置換アジリジン類 (Az) の開環共重合を溶媒中および無溶媒中にて行った. Azとして1-フェネチルAz (PEEI), 1-ベンジルAz (BEI), 1-β-シアノエチルAz (CEEI), 1-メトキシカルボニルメチルAz (MCMEI) および1-β-メトキシカルボニルエチルAz (MCEEI) を使用した. 共重合は開始剤なしで進行し白色粉末状のコポリマーを生成した. Azとの共重合性は以下の順となった.
    PEEI>MCEEI>BEI>MCMEI>CEEI
    PS/Az0.8 0.7 0.6 0.5 0.3
    塩基性の小さいAz, CEEIとPSの共重合では, コポリマー中にAzの連続した構造が増加した. 共重合反応はPSとAzの付加反応によって生成したスルホベタインによって進行することが考えられた.
  • 野口 弘道, 野瀬 卓平
    1976 年 33 巻 7 号 p. 381-388
    発行日: 1976/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン-メチルシクロヘキサン溶液の相分離温度の圧力依存性を, 上の臨界共溶温度の近くで測定した. 常圧における臨界温度の圧力による変化 (∂Tc/∂P) は, およそ-5.38×10-2deg/atmであった. (∂Tc/∂P) の値から配位エントロピー以外の混合エントロピーと, 混合エンタルピーの組成に対する2次微分係数を求めた. これらの値を, 前報で状態方程式から実験的に決定した混合自由エネルギーの普遍関数から計算される値と比較した. 普遍関数から計算された混合エンタルピーの2次微分係数は実測とほぼ一致した. しかし配位エントロピー以外の混合エントロピーの2次微分係数は, (δTc/∂P) から計算される値より大きかった. これらの結果から, 状態方程式に関係した項, およびFlory-Huggins型の混合エントロピーの項とは別に必要な, 混合自由エネルギーへの補正項は, 主として正の混合エントロピーであることを結論した. Floryらの理論およびPattersonの理論は, (∂Tc/∂P) の値をよく再現したが, これらの理論においても, χパラメーターへのエントロピーの補正項が必要であることが分かった.
  • 松村 武宣
    1976 年 33 巻 7 号 p. 389-398
    発行日: 1976/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリエチレン・インフレーション・フィルム成形過程における結晶軸優先配向機構について考察した. 既報のRod構造をもとに, Rodを構成するラメラ晶の成長量を変えることにより, 結晶化進行に伴う結晶a, c軸の配向分布変化を計算した. 成形方向への優先配向は, 成形方向に直角な面内でねじれながら成長するラメラ晶の成長に伴ってc軸配向からa軸配向に連続的に変化した. 核発生密度はラメラ晶の成長量を規制する. また, メルト表面に直角な方向にある温度こう配もラメラ晶の成長異方性を生む. これらの効果は成形方向に直角な面内におけるb軸の優先配向方向を決める原因となる. ポリエチレン・インフレーション・フィルムには溶融紡糸フィラメントと同様にスキン層が存在する. X線極点図はスキン層の結晶軸配向度が内部層より高いことを示している. 断面形状の異なるRod集合体のモデル計算による極点図はポリエチレン・インフレーション・フィルムの種々のX線極点図と一致した.
  • 中川 和明, 川瀬 進, 加倉井 敏夫
    1976 年 33 巻 7 号 p. 399-404
    発行日: 1976/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン-ポリメチルメタクリレートの混合トルエン溶液に超音波照射を行い, ブロック共重合体生成反応に関する定量的知見を得ることを目的とした. ポリスチレン-ポリメチルメタクリレート混合溶液の切断挙動は, 各ポリマーの単独トルエン溶液の場合と同様であり, ポリマー種による切断挙動に大きな差異 (切断速度, 極限重合度) は認められなかった. 本研究のポリマー濃度範囲で生成したブロック共重合体は, 重量分率15.5%から23.5%であり, ポリマー濃度が大きくなるにつれて生成量が減少する傾向がみられた. ブロック共重合体の分子量は, 照射後生成したホモポリマーに比べて小さく, 分子量, 組成から推定したブロック共重合体のsequenceは, スチレン単位で1600から5500量体, メチルメタクリレート単位で1200から2800量体であった.
  • 岡橋 和郎, 林 修, 柴山 恭一
    1976 年 33 巻 7 号 p. 405-410
    発行日: 1976/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    金属カルボン酸塩によるエポキシ樹脂の硬化反応の知見を得るために, この樹脂のモデル化合物であるフェニルグリシジルエーテル (水分含有量0.08重量%) と各種の亜鉛カルボン酸塩との反応を130~170℃の温度で無溶媒下で行い, 150℃の温度で溶媒下で行った. 無溶媒重合の場合, 反応は一次で進行し, その速度定数は亜鉛カルボン酸塩の炭素数が多くなるほど小さくなっている. また, 活性化エントロピーはかなり小さい. 溶媒重合の場合も一次で進行するが, その速度定数はメタノール溶媒の場合は大きくなり, トルエン溶媒の場合は小さくなる. 亜鉛カプリル酸塩のカルボニル基に起因する赤外吸収スペクトルの吸収は1550cm-1と1525cm-1に出現するが, フェニルグリシジルエーテルと混合することにより消失し, 新たにエステル結合に起因する1735cm-1の吸収が出現する. 以上のことから, 亜鉛カルボン酸塩によるフェニルグリシジルエーテルの重合機構を推定した.
  • 松村 武宣, 佐々木 博成, 長沢 俊夫
    1976 年 33 巻 7 号 p. 411-416
    発行日: 1976/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    球晶核が配向結晶化に及ぼす影響を論議する. 過冷却温度に保つ時間を変えて, わずかに球晶が発生した擬均質状態の低密度ポリエチレン融液を伸長し, 引張過程における応力と複屈折の変化を測定した. それらの変化挙動はゴム状物質のそれとは大幅に異なる. 融液中の球晶核の生成量が増せば, 200%変形時の応力は増加するが, 同じ変形時に発現する複屈折は減少する. 球晶核が未発生の均質な融液を伸長した場合, 結晶化物はa軸配向と正の複屈折を示した. 一方, 球晶核が発生した擬均質な融液を伸長した場合, 結晶化物はb軸配向で負の複屈折を示した. この試料を電子顕微鏡で観察したところ, Rod構造とb軸配向構造が見いだされた. Rod構造は配向結晶化により得られ, b軸配向物は配向した球晶核より始まったordered-crystallizationで得られる. 以上の結果から配向結晶化は均質な融液から形成される線状核より始まると結論した.
  • 冨田 耕右
    1976 年 33 巻 7 号 p. 417-420
    発行日: 1976/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    キレート形成性配位子を使用することによって, ポリエチレンテレフタラートの生成反応における金属化合物の触媒活性の向上, 抑制を試みた. Al化合物はテレフタル酸ジメチルのエチレングリコールによるエステル交換反応の触媒として通常は低活性であるが, アセチルアセトナト, オキシナト錯体などとすると活性の向上することを見いだした. Ti化合物はビス-2-ヒドロキシエチルテレフタラートの重縮合反応の触媒として過激な挙動 (熱分解反応をも著しく促進する) を示すが, これにキナリザリンのような多環芳香族性配位子を加えるとかなりこの挙動がやわらぐことを見いだした. これらの結果は金属化合物のLewis酸強度とその触媒活性との関係と矛盾しない.
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