高分子論文集
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34 巻, 10 号
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  • 山田 純男, 仲川 勤
    1977 年 34 巻 10 号 p. 683-690
    発行日: 1977/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (アクリロニトリル-酢酸ビニル) とポリ (アクリロニトリル-スチレン) の2種類の共重合体フィルムの40℃における透湿度および20℃におけるヘリウム, 二酸化炭素, 酸素および窒素の気体透過係数をアクリロニトリル含有量をいろいろ変えて測定した. また, 共重合体のX線回折および溶解性を測定して, 気体透過係数および透湿度と共重合体組成との関係を化学構造の観点から検討した. 得られた2種類の気体透過係数と共重合体組成との関係は, これまで高分子鎖のミクロ相分離の考えから誘導された気体透過に関する関係式とは一致しなかった. 相対気体透過係数と透湿度の共重合組成に対する特異な変化は側鎖の化学構造の違いによって生じる水素結合, 結晶性, バルキー性および親水性によって説明されることが明らかになった.
  • 浦上 忠, 前川 一仁, 杉原 瑞穂
    1977 年 34 巻 10 号 p. 691-696
    発行日: 1977/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ナイロン12 (N-12): m-クレゾール=20: 80 (wt%) の割合のキャスト液から得られるN-12膜の透過特性を成膜および透過条件を種々変化させて検討した. 蒸発過程におけるキャスト液中への水分吸収量は, 生成する膜の微細構造に著しく影響することを知った. 水分吸収量の増加とともにポリエチレングリコール水溶液の透過速度は増大し, 排除率は減少した. ゲル化媒体として用いた水-メタノール混合溶媒の割合によっても透過特性は著しく変化した, 原液濃度, 操作圧, 操作温度および原液溶質分子量により透過速度および排除率は変化した. これらの結果は, 有効圧, 原液粘度に基づいて説明された. ポリエチレングリコールとポリビニルアルコール水溶液の透過特性の相違から, 水溶液中での高分子溶質の形態および膜基質と高分子溶質との複雑な相互作用を考慮する必要のあることを知った.
  • 川井 収治, 大森 昭夫, 山本 浩造
    1977 年 34 巻 10 号 p. 697-703
    発行日: 1977/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    耐酸・耐アルカリ・耐薬品性に優れたPVAの特徴を生かした中空繊維を透析用膜として利用して, 従来のセルロース系平膜を用いた装置では困難であった膜寿命の大幅な向上, 装置の小型化など多くの改良を目指し, 膜面積100m2の大型工業用透析装置の製作ならびにそのシステムの確立を試みた. PVA中空繊維は均一膜であり, 膜性能の設定には結晶化度の変化が有効であることを明らかにし, 本報告のレイヨンパルプ圧搾液からの水酸化ナトリウム回収用膜としてはサンプルNo. A膜 (水酸化ナトリウム透析係数UNaoH=1.6×10-4cm/sec, 結晶化度XC=0.602) を用いて, そのシステムの最適化条件の設定を行った. えの結果, 定期的膜洗滌法を採用して, 水酸化ナトリウム平均回収率95%, ヘミセルロース廃棄率98%を維持して, 同一膜での約1ヵ年の連続運転に成功した. この膜寿命は現在一般に使用されている硫酸紙膜の10倍にも達するものであった.
  • 及川 栄蔵, 大崎 俊行, 西山 茂
    1977 年 34 巻 10 号 p. 705-712
    発行日: 1977/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    4-ビニルピリジン (4VP) とアクリロニトリル (AN) 塊状共重合体 (R) のDMF溶液からの逆浸透膜の0.35%NaCl, 80kg/cm2における結果を, 乳化 (E) およびブロック共重合体 (B) 膜の結果と, 単量体組成, 重合度 (E>R>B), 単量体配列について比較した. 3者ともある組成で塩排除率Sと水透過係数K1の変化がみられた. これは膜構造の変化に起因した. Eはより広い組成範囲で高いSの膜を与え, 非対称膜になる傾向を示した. Bはほぼ同じ分子量のラジカル体より膜の形成が容易であった. Sの最高は99%で, そのときK1は3.6×10-10 (R) および4. 8×10-10 (E) g/cm・sec・atmであった. 1,4-ジョードプタンによる膜の四級化は一官能性四級化剤より強度維持と性能改善で有効であり, 一般に低四級化率の場合Sの低下なくK1を数倍増加させた. ANの多い場合Sは格段に改良され, Bも他の2者に匹敵するSK1を示した.
  • 西村 正人, 室 哲雄, 辻阪 好夫
    1977 年 34 巻 10 号 p. 713-718
    発行日: 1977/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    物理的ならびに化学的に安定な合成高分子であるポリスルホンから, 優れた性能をもった限外濾過膜を作るために, 製膜条件について検討した。溶媒としてN-メチル-2-ピロリドンを用いた. ポリマー濃度が15%のキャスト液をガラス板上に流延し, 60℃, 15分間溶媒を蒸発しで得られた膜は, 102l/m2・hr (4kg/cm2, 20℃) の透過流束を有し, ポリエチレングリコール (Mw=20000) の排除率は97.2%で, 分画分子量が20000の限外濾過膜としてよい性能を示した. また, この膜について, ビタミンB12, チトクロームC, PEG (Mw=20000) ならびにヘモグロビンを使用して調べた排除率は, それぞれ26.1, 49.1, 97.2および98.2%であった. また, 1N-HClと1N-NaOHを用いて, この膜の耐酸・耐アルカリ性を調べたところ, 約1ヵ月以上各々の溶液に膜を浸せきしても, その膜特性は安定であった.
  • 田村 諭, 山崎 隆喜, 田坂 雅保
    1977 年 34 巻 10 号 p. 719-723
    発行日: 1977/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリスチレンスルホン酸とコロジオンから作られた4枚の陽イオン交換膜について, 銀-塩化銀電極を用いて電気浸透と流動電位の測定を行った. 低電流密度では, 電流密度と電気浸透体積流の間に直線関係が成立し, 高電流密度では, 電流密度と電気浸透体積流の間の関係は非線形となった. 流動電位は2×104Pa以下の圧力差の下で測定され, 時間変化にたいする電位差を時間ゼロに外そうすることによって求められた. 電気浸透と流動電位の両者について線形関係が成立していれば, Saxenの関係が成立することが認められた.
  • 箕浦 憲彦, 仲川 勤
    1977 年 34 巻 10 号 p. 725-728
    発行日: 1977/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリジメチルシロキサン膜のトリエチルアミンの透過を10~70℃の温度範囲で, 相対蒸気圧を変えで測定した. トリエチルアミンに対する透過係数は大きく, 10-6~10-5cm3 (STP) ・cm/cm2・sec・cmHgのオーダーであり, 相対蒸気圧の増加につれ, または温度の低下につれて増大した. 相互拡散係数はトリエチルアミンの体積分率に対し図示すると極大を示した. 固有拡散係数はトリエチルアミンの体積分率の増加につれて直線的に増加したが, トリエチルアミンの体積分率の大きいところで減少した. この減少はトリエチルアミン分子の会合の結果と考えた. 拡散のデータを藤田の自由体積理論により検討した.
  • 能美 隆, 真鍋 征一, 上出 健二, 河合 徹
    1977 年 34 巻 10 号 p. 729-736
    発行日: 1977/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    4次の平均孔径 (r4) が0.567μmの円筒状貫通孔を持つポリカーボネート製多孔膜による1~3原子分子気体の透過性を検討した. 膜面上の圧力P1, P2 (P1P2) の時の気体透過係数P (P1, P2) は (1) スリップ流れを含む粘性流れ, (2) 自由分子流れ, (3) 表面拡散流れ, (4) 拡散流れ機構の4種の機構の組合せで表現されると仮定して, 孔径分布関数N (r) とP (P1, P2) との定量的な関係式を導いた. Maxwellの反射係数が既知ならば, N (r) を実験的に定めれば, この関係式を利用して多孔膜のP (P1, P2) は算出される. r4が透過気体分子の平均自由行程の1/10以上である時のP (P1, P2) はこの関係式を用いて解析される. P (P1, P2) は平均圧力 (P1+P2) /2のみの関数ではなく, P1P2との両者それぞれに依存して変動する. P (P1, P2) はP1, P2と共に増加する. これは粘性流れによる気体透過量が増大し, Maxwellの反射係数が減少するためである.
  • 能美 隆, 真鍋 征一, 上出 健二, 河合 徹
    1977 年 34 巻 10 号 p. 737-745
    発行日: 1977/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    4次の平均孔径 (r4) が0.325, 0.183, 0.0984μmである円筒状貫通孔を持つ3種のポリカーポネート製多孔膜の気体の透過係数P (P1, P2) に及ぼす平均孔径の影響を検討した. ここで, P1, P2は多孔膜に負荷された圧力であり, P1P2である. その結果, (1) P (P1, P2) のP1, P2依存性は孔径分布関数N (r) を考慮すれば, スリッブ流れを含む粘性流れと自由分子流れとの組合せで説明できる, (2) r4が小さくなると, P (P1, P2) 中に占める自由分子流れの比率が増大する, (3) P (P1, P2) はP1, P2のそれぞれに依存して変動する, (4) P (P1, P2) はP2と共に増加する. これらの実験事実は, 前報で提出したP (P1, P2) の理論式で説明される. r4P1における気体分子の平均自由行程にくらべて小さい場合, 酸素のP2→0の時のP (P1, P2) (≡P (P1, 0)) の方が二酸化炭素のそれよりも大きい. 両者のP (P1, 0) の大小関係はr4P1とによって変動する. ヘリウムと窒素との混合気体は多孔膜により実際に成分気体へ分離された.
  • 住友 宏, 橋本 和彦
    1977 年 34 巻 10 号 p. 747-750
    発行日: 1977/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    8-オキサ-6-アザビシクロ [3.2.1] オクタン-7-オン (BOL) のテトラヒドロフランおよびジメチルスルホキシド溶液に, 少量のビロリドンカリウム塩を加えて, ガラス面上あるいは金属板上室温で重合させること (“キャスティング重合”) により, テトラヒドロビラン環とアミド結合とが交互に並んだ構造の新規親水性ポリアミド膜を調製した. 得られたポリBOL膜は水中で高いアルカリ金属イオン透過能を示した.
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