高分子論文集
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34 巻, 11 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 清水 剛夫, 吉川 正和, 長谷川 正幸, 千葉 尚
    1977 年 34 巻 11 号 p. 753-756
    発行日: 1977/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    含ラクトンポリマーであるコボリ (3-ビニル-1,4-ブチロラクトンーアクリロニトリル) 膜は, KOHとNaOHの混合溶液とHCl溶液の系において, Na+およびK+を選択的に透過することを見いだした. この選択性はH+濃度に大きく依存する. H+濃度が高い場合, 選択率 (K+/Na+) は1より大となり, H+濃度が中程度の場合, 選択率は1よP小となる. この膜は, 両側に濃度の等しいNaOHをおき, 一方にHClを加えるとその方にNa+が濃縮され, H+は反対に移動する. 選択率の変化は, 膜中のラクトンの開環率および膜の疎水性あるいは親水性など, 化学的および物理的性質によると推論される. また, Na+の濃縮はプロトンポンプ機構によると推論される.
  • 野沢 靖夫, 東出 福司
    1977 年 34 巻 11 号 p. 757-762
    発行日: 1977/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    水中乾燥法により調製したポリスチレンマイクロカブセルには走査電子顕微鏡により小孔の存在が確認された. 小孔は一次乳化液の撹拌速度が増すほど, カプセル粒径が大きいものに顕著にみられた. 含酵素カブセルからのα-アミラーゼの溶出が一次乳化液の撹拌速度とともに増大することから, 溶出に影響を及ぼす小孔の成因について検討を行った. 光学順微鏡により観測される小泡は, 一次乳化液の撹拌速度とともに多くなることから, 乳化液中の微少液滴の一部がカプセル化の際に未合一のまま膜内に封入されたと考えられる. 小泡の分布状態は小孔のそれに大きさおよび数量において類似した傾向を示すことから, 小孔は微少液滴の周りの薄膜部分がカプセル化の際に受けた調製条件のわずかな変化で破れることにより生成したと解釈される.
  • 橋田 勲, 田中 満雄, 西村 正人
    1977 年 34 巻 11 号 p. 763-769
    発行日: 1977/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ-trans-2, 5-ジメチルピペラジン-テレフタル酸アミド系限外濾過膜の製造について検討した. ギ酸溶媒から得られる膜の透水性はポリマー濃度と溶媒蒸発時間によって大きく変化するが, ギ酸-クロロホルム溶媒系ではポリマー濃度, 溶媒蒸発時間および溶媒組成の変化よりも浸せきゲル化浴組成に大きく左右される. 膜は非対称性で, 透過水量18l/m2hrの膜では, 緻密な活性層は0.9~1.2μm, 多孔性の支持層は40μmであることが電子顕微鏡写真より確認された. ギ酸溶媒から得られる膜はチトクロームC阻止率が小さい. ギ酸-クロロホルム溶媒から得られる膜は高いチトクロームC阻止率を示し, 分子量分画性は, 透過水量5.8l/m2hrの膜ではチトクロームC99.4%, ビタミンB1272.2%の阻止率を, 166l/m2hrの膜ではヘモグロビン95.6%, チトクロームC79.4%, ビタミンB1238.8%の阻止率を示した.
  • 羽藤 正勝
    1977 年 34 巻 11 号 p. 771-777
    発行日: 1977/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    真性粘菌Physarum polycephalumの変形体の物質認識機能に関連した, 粘菌表面膜の電気化学的性質中, クーロン力が支配的な部分が液体イオン交換膜 (オレイン酸マグネシウム+1-デカノール系) でシミュレートできることを見いだした. すなわち, (1) 起電力の対数濃度依存性 (∂E/∂logC) がカチオンの価数zによらずほぼ20mVであること, (2) 起電力 (=膜電位+定数) を大きく変化させるのに必要な最低濃度Cth (粘菌の場合には走化性を引き起こす最低濃度に等しい) がZ-6に比例して減少すること, (3) Cthの温度依存性が与えた物質によらず一定であることがシミュレートできた. これはクーロン力が支配的な現象に関しては, 粘菌表面膜もイオン交換膜と同じように振る舞うことを示している. また, 本研究結果は粘菌表面膜の電気化学的性質が主として表面膜-外液界面現象として理解されることを示唆した.
  • 前田 政利, 横井 国俊, 滝沢 章, 辻田 義治
    1977 年 34 巻 11 号 p. 779-783
    発行日: 1977/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (L-ロイシン) (I) 膜の水および水蒸気透過性を検討した. Iの水和度はセルロースアセテート (II) 膜の約1/3であるが, 透水性はIがIIより約1桁大きい. ポリ (γ-メチル-L-グルタメート) (III) 膜に比べると, Iは, 水和度は1/2であるが, 透水性は同程度である. Iの流体力学的透過係数および水蒸気拡散係数のアレニウスプロットから得る活性化エネルギーは, 水の粘性流動の活性化エネルギーの2~2.5倍である. この挙動を, 物質移動についての自由容積概念により解析し, 水は, ヘリックス間の疎な構造を通って, 数個程度の会合分子をつくって拡散することを示した. Iの均一膜を通しての水溶性溶質の分離を検討した結果, 排除率は溶質の分子サイズとともに増加し, 血清アルブミンはほとんど排除される. Iの溶質排除はIIIよりもよく, これはIの側鎖の疎水性によるものと考えられる.
  • 岩崎 博四, 帆足 興次
    1977 年 34 巻 11 号 p. 785-791
    発行日: 1977/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    各種エチレン含量のエチレンービニルアルコール共重合樹脂 (EVA) 試料を用い, 溶融成膜時の分子配向以外に延伸および熱処理を受けていないフィルムを作製後, 圧力法により酸素ガス透過係数 (P) を求めて各物性との関係を考察した. 低湿度下では, エチレン含量30mol%以上のEVAのPの対数値はエチレン含量とともに直線的に増大し, 高湿度下では, ポリビニルアルコール (PVA) および低エチレン含量のEVAは, 水分子の吸着に基づく分子運動性の増大によりPは増大する. 酸素ガスの拡散, 透過の過程は, 空孔の大きさによって律速されることを考慮して, 共重合体のPと成分組成の容積分率の関係を導き, ランダム共重合体では
    ln P=V1・ln P1+V2・ln P2
    の関係が成立することを示した.
  • 加藤 誠志, 相沢 益男, 鈴木 周一
    1977 年 34 巻 11 号 p. 793-799
    発行日: 1977/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ホトクロミズムを示すスピロピラン化合物をアセチルセルロース膜に固定化して光応答性膜を調製した. この膜は可視光線や紫外線を照射することによって, 著しく膜電位を変化させることが見いだされた. この光誘起電位はホスファチジルコリンを共存させると増大し, 固定化スピロピランの光異性化に伴って生成することが示された. 本報では光誘起電位に及ぼすホスファチジルコリンの役割について述べている.
  • 酒井 良忠, 保坂 俊太郎, 丹沢 宏, 糸賀 正明
    1977 年 34 巻 11 号 p. 801-806
    発行日: 1977/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    膜設計の指針を得るために, 各種含水率の均一膜を作成した. 疎水性および親水性素材の例としてポリメチルメタクリレート (PMMA) およびN-ビニルピロリドンーメチルメタクリレートコポリマー [P (NVP/MMA) ] を取り上げた. これらの膜の水, NaCl, 尿素に対する透過性を測定した。PMMA膜では, 同一含水率で比較して, P (NVP/MMA) 膜よりはるかに高い透水性を示した. しかし, NaClおよび尿素の透過性は両素材膜であまり差が見られなかった. PMMA膜での透過性は, tortuosityを考慮した毛細管モデルで説明される. P (NVP/MMA) 膜に対しても, 毛細管壁上に固定水を考慮した同様のモデルを適用できる.
  • 谷岡 明彦, 角田 章男, 尾崎 脩, 大野 正剛, 石川 欣造
    1977 年 34 巻 11 号 p. 807-811
    発行日: 1977/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    原子炉のカバーガス中に含まれている放射性クリブトンを窒素ガスと分離するため, スキン層とマトリックス層から成る凍結乾燥酢酸セルロース膜の応用を試みた. 製膜方法はAgrawalとSourirajanによる方法に従った. 製膜条件のうち, アセトンの蒸発時間を4~6分として固定して凍結乾燥したところ, 透過性も分離性も優れた膜を作製できた. 窒素の透過速度が10-1~10-8 (cc/cm2・sec・atm) であった. 透過速度は気体の分子量の平方根に逆比例しており, クヌーセン流が支配的である. しかし, 若干圧力の依存性が認められ粘性流の影響がみられる. 多孔体の気体透過の式から平均孔径を算出したところ, スキン層には30~40Åの細孔の存在が考えられる. 次に分離係数は約0.7 (Krの希釈度) となり, 分離効率Zは60%であった. 気体の異分子間の衝突 (Present-de Bethuneの効果) や粘性流の影響により効率が低下する. これらの影響を考慮してZを求めたPresen-de Bethuneの式を実験結果は満足し, スキン層の平均孔径は10~25Åとなった.
  • 相沢 益男, 加藤 誠志, 鈴木 周一, 長村 洋一, 篠原 力雄, 石黒 伊三雄
    1977 年 34 巻 11 号 p. 813-817
    発行日: 1977/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    カルジオリピン抗原を固定化した免疫応答性膜を調製し, この膜を梅毒血清診断用免疫センサーに応用した. センサーには, 免疫応答性膜の両面が等濃度電解質溶液に接し, 抗原抗体反応が膜の片面のみで行われる膜電位測定システムを用いた. このセンサーは血清中の梅毒抗体に特異的に応答し, 計測システムとして極めて優れた特性を示すことが明らかにされた. センサーの出力は, 抗体濃度の増大および温度の上昇に伴い大きくな, 約5分間で定常値が得られることが認められた. またセンサーにおいて発生した電位は, 抗原固定化膜の荷電の非対称分布によって生じる膜電位であると結論された.
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