高分子論文集
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34 巻, 4 号
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  • 岡崎 正之, 吉田 文武
    1977 年 34 巻 4 号 p. 255-260
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    血液中の中間分子量毒性物質の除去性能の良い透析膜を捜すことを主眼として, 人工腎臓用透析膜の透過性能を検討した. 膜としては, Cuprophane PT-150膜, 変性ボリアクリロニトリル膜を用い, 透析される物質としては, 尿素, クレアチニン, ショ糖, イヌリンを使用した. 各物質の移動速度は, 理論に従い溶液濃度の経時変化から求め, 種々のかきまぜ速度に対して物質移動の総括抵抗をWilsonブロットの直線を外挿することにより, 液体境膜の抵抗を除いた膜抵抗を求めた. その結果, 変性ポリアクリロニトリル膜は, 在来用いられているCuprophane膜より中間分子量物質に対する透過性が優れていること, また膜厚を変えた実験結果から, 乾燥膜の場合には膜表層部の抵抗を重視しなければならないことが分かった.
  • 山内 愛造, 松沢 康夫, 西岡 啓介, 原 嘉昭, 神谷 貞義
    1977 年 34 巻 4 号 p. 261-266
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール (PVA) 水溶液を放射線照射して人工硝子体を作成し, その生体適合性を検討した. 完全ケン化PVAの7%水溶液をγ線で0.6MR照射してわずかに橋かけした透明な流動性のPVAハイドロゲルを得る. 次いでこのゲルを蒸溜水または生理食塩水で膨潤させ, 硝子体とほぼ同様の膨潤比と届折率をもった人工硝子体を得た. オートクレーブ加熱による滅菌後, 白色家兎から除去された硝子体と同量またはやや少量のゲルを注入して置換した. 結果として, 眼圧は一時的に高くなるが2か月後に大部分が術前と同じにまで回復した. 網膜電位図も正常であった. 検眼鏡による臨床学的所見ならびに標本による病理学的所見も注射部位以外はほとんど異常が認められなかった. またゲルは肉眼で識別し得ないほど硝子体中でよく一体化していた.
  • 小島 幸一, 今井 庸二, 増原 英一
    1977 年 34 巻 4 号 p. 267-273
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    合成高分子材料と生体組織との相互作用を明らかにする一環として, ポリエステル, ポリアミド, ポリイミドなどの10種の芳香族縮合系高分子と, 医療用のポリ塩化ビニル (PVC) およびシリコーンゴムの生体内劣化について検討した. 埋植 (in vivo) と同時に室温空気中 (in air) と37℃緩衝溶液 (pH7.4) 中 (in vitro) にも同じ試料を保存して比較試料とした. 26か月後に回収して, 微分干渉顕微鏡観察, X線回折強度, 伸び率, 引張り強度, 極限粘度, 重量変化, 赤外線吸収スペクトルなどの測定を行った. PVCは添加物質を溶出した. 機械的性質は, 開始時と比較すると差が大きかったが, in air, in vitro, in vivoの相互には, あまり差はなかった. 他の測定でもほとんど差はなく, 分解しやすいと考えられている縮合系高分子も, 本研究で用いたものは生体内劣化はほとんど受けず, 安定であった.
  • 坂元 隆一, 小島 徳久, 山口 鎮雄
    1977 年 34 巻 4 号 p. 275-279
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    代用血漿用ヒドロキシエチルデンプン (HES) の分別とcharacterizationについて研究した. HESは酸で部分的に加水分解したwaxy corn starchと酸化エチレンの反応で作られる. HESの分別は水を溶媒とし, イソプロパノールを沈殿剤とする分別沈殿で行うた. 分別試料について各種溶媒中での粘度, 浸透圧, 光散乱などの測定を行うた. 分別および分子量測定の結果からHESの分子量分布が非常に広いことが分かった. 粘度と分子量の測定結果からMark-Houwinkの粘度式を作るとその指数aが各溶媒とも0.24から0.33という小さい値となり, 高度に枝分かれした高分子の特徴を示した. 以上の結果から, HESの溶液物性がその代用血漿としての生物学的特性に及ぼす影響について考察した.
  • 門磨 義則, 中林 宣男, 増原 英一
    1977 年 34 巻 4 号 p. 281-286
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸メチル (MMA) とポリメタクリル酸メチル (PMMA) 粒状重合体のスラリー状混合物を常温重合して得られる常温重合タイプのPMMAおよび加熱重合して得られる加熱重合タイプのPMMAからの溶出物を紫外吸収スペクトルを用いて比較検討した. 溶出物としてはMMAのみが検出された. 常温重合タイプの重合物ではPMMAとMMAの比重の違いから, 上部にMMAが多くPMMAが少ない状態で重合し, 上部ほどモノマーの溶出量が多かった. 寒天型に注入して常温重合する場合は, 含水した寒天のために重合中の重合物の表面から熱が奪われて, 表面近くの重合が不完全になり残留モノマーが多くなると思われる. 加熱重合タイプの重合物はモノマーの溶出量が小さく場所による差異はなかった. 常温重合タイプの重合物からのMMAの溶出量は表面研摩あるいは水洗などの適当な表面処理を行えば, 加熱重合タイプの重合物からの溶出量とほぼ同等にまで減少した.
  • 辻 楠雄, 水町 彰吾, 飯田 和子, 大場 琢磨
    1977 年 34 巻 4 号 p. 287-290
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    前報において人工腎臓用軟質ポリ塩化ビニル製血液回路から溶出するフタル酸ジ (2-エチルヘキシル) (DEHP) を定量するために, 乾燥人血染液を灌流させ, 溶出液中のDEHPの量をガスクロマトグラフィにより定量を行ったが, この方法は人血漿を用いていることや, 抽出操作に繁雑な面があり, 再現性のあるデータを得るには, 熟練を必要とした. そこで簡便にして分析精度の高い, DEHPの定量法を見いだす目的で, 40%エタノールを用いたところ, 溶出したDEHPの量を再現性良く紫外吸収スペクトルで定量できることを見いだした. この方法は, 40%エタノール300mlをとり, 20℃, 250ml/minの流速で血液回路内を灌流させると, 最初の30分で急激に溶出し, この間に溶出したDEHPの量は約11mgで, 乾燥人血漿液を用いて6時間灌流した場合の約1/2量に相当した.
  • 田村 正博, 浦上 忠, 杉原 瑞穂
    1977 年 34 巻 4 号 p. 291-298
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    尿素, 水溶液を加水分解するためのニトロセルロース (CN) -ウレアーゼ (U) 系膜の濾過特性をキャスト液溶媒組成およびU添加量を変えて検討した. 限外濾過速度 (FR) および尿素加水分解率 (H) はキャスト液溶媒のn-プロピルアルコール (n-PrOH) とN, N-ジメチルホルムアミド (DMF) の割合, Uの添加量に著しく影響された. CN-スチライト (SL, アンモニア除去剤) 系膜のFRおよびアンモニア除去率 (R) はSL含量によって変化した. CN-U-SL系膜の濾過特性を成膜および濾過条件を種々変化させて検討した結果, FRn-PrOH/DMF=1/3で最大となり, 原液濃度の増加とともに減少し, 操作温度や原液のpHにはほとんど影響されなかった. HおよびRはキャスト液溶媒組成, 原液濃度, 操作圧により変化を受け, 操作温度40℃, PH7.3が最適条件であった. 上記の諸現象を作製した膜および原液の物理的ならびに化学的性質の観点から考察した.
  • 上出 健二, 真鍋 征一, 松井 敏彦
    1977 年 34 巻 4 号 p. 299-307
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    円筒状および裁頭円錘状孔を持つ高分子多孔膜の孔径分布を, 水銀圧入法 (MI法), 濾過速度法 (combination method of bubble pressure and fluid permeability) (BP法) で評価する厳密な解析理論を提出した. この理論によると, 溶媒の濾過速度と空孔率Prとの値から従来法に従って計算される平均孔径riは (r4r3) 1/2に等しい (円筒状孔) かあるいはそれに近い (裁頭円錐状孔). ここでri (i=3,4) は次式で定義される. 
    ここで孔半径がrr+drの範囲内にある単位面積当たりの孔数がN (r) drと表記されるとしてN (r) は定義される. MI法で決定される平均孔径rppr3に等しい (円筒状孔) かあるいはそれに近い (裁頭円錐状孔). 3種の実在膜, すなわち円筒状の孔を有するポリカーボネート製の多孔膜, 表面のr1と裏面のそれとが異なる酢酸セルロース多孔膜および不規則形状の孔を有する酢酸セルロースと硝酸セルロースとの混合物から構成される多孔膜, のPr, N (r), ri (i=1~6) を本解析理論に従ってMI法, BP法および走査型電子顕微鏡法 (SEM法) で評価した.
  • 古沢 清孝, 志村 幸雄, 乙部 和, 渥美 和彦, 津田 圭四郎
    1977 年 34 巻 4 号 p. 309-316
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン-ポリエチレンオキシドブロック共重合体およびセグメント化ポリエーテルウレタンを合成し, その表面の性質を赤外全反射吸収スペクトルの測定, 接触角の測定, 偏光顕微鏡観察により検討した. 接触角の測定より表面張力を3成分に分けて評価した. この結果, ブロック共重合体とセグメント化ポリウレタンの間に差のあることが分かり, 特に水素結合性成分に差が認められた. ヤギの血液を用いた全血凝固時間の測定の結果, セグメント化ポリウレタンがブロック共重合体より血液適合性であり, PEOを含むセグメント化ポリウレタンがPPOを含むものより血液適合性の良いことが示唆された. 表面の性質と凝血時間の関係を検討した結果, 血液適合性には表面張力の成分, 特に水素結合性成分の値が重要であることが分かった. また同時に表面の構造も影響をもつことが明らかとなった.
  • 中林 宣男, 増原 英一, 越川 昭三, 松井 則明, 末永 松彦
    1977 年 34 巻 4 号 p. 317-321
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    医薬品精製用粉状活性炭をスチレン-ブタジエン共重合体・エチルセルロース・ゼラチンで各々マイクロカプセル化して球状化し, これによるクレアチニンの吸着速度を測定し, 血液中から直接代謝老廃物あるいは毒性物質を吸着除去できる吸着剤の作製法を検討した. ゼラチン: 粉状炭=1: 3で球状炭を造り, グルタルアルデヒドでゼラチンを橋かけすると煮沸滅菌可能な血液直接灌流用活性炭が得られることが分か病動物実験によって, 血液中よりクレアチニンが除去できることを確認した.
  • 中林 宣男, 山中 園枝, 増原 英一, 越川 昭三, 末永 松彦, 松井 則明
    1977 年 34 巻 4 号 p. 323-330
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    石炭ベースの造粒活性炭を写真用ゼラチンで被覆する条件とクレアチニン吸着力との関係, これが血液直接灌流 (DHP) に使用できるかどうかを検討した. 10%ゼラチン溶液で被覆するとDHPに使用できる活性炭が得られることを認めた. さらに炭粉遊離防止のためには1%と10%のゼラチン溶液による二重コーティングが良いことが分かった. 不純物の少ないヤシ殻造粒活性炭を写真用ゼラチン・化学修飾ゼラチン2種の10%溶液でコーティングした, クレアチニン吸着力からみて, 東洋醸造 (株) 製血漿増量剤用のゼラチンによるコーティングが最良であることが分かった. ゼラチンの橋かけに使ったグルタルアルデヒドの完全な脱着には被覆活性炭を20回煮沸洗浄する必要がある. 安全性確認試験に合格し, 1時間の動物を使ったDHPに成功したところから, 臨床使用可能なゼラチンカプセル化活性炭が得られたといえよう.
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