高分子論文集
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35 巻, 4 号
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  • 酒井 五十治, 中前 勝彦, 野中 敬三, 松本 恒隆
    1978 年 35 巻 4 号 p. 209-214
    発行日: 1978/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    水-油界面に吸着したポリマーの溶媒和の状態を明らかにすることを目的とし, du Noüyのring法により求めた水-油界面の界面張力 (γW/O) と, 接触角の測定および拡張Fowkes式より求めた水-ポリマー界面の界面張力 (γW/P) とより, 水-油界面に吸着したポリマーの界面占有率を求め, 次の諸結果を得た. (1) 水-油界面に吸着したポリ酢酸ビニル (PVAc) およびエチレン-酢酸ビニル共重合体 (EVAc) の界面占有率は, 油相が貧溶媒であるほど大きくなった. (2) 水-油界面に吸着したEVAcの界面占有率は, VAc含量の増加とともに増大した. (3) 水-油界面におけるポリマーの界面占有率とα-Fe2O3-油界面におけるポリマーの飽和吸着量との閥には, 正比例の関係が存在した. 以上の結果, 水-油界面に吸着したポリマーの溶媒和状態は, 油相における状態を反映していることが明らかにされるとともに, 水-油界面とα-Fe2O3-油界面における吸着ポリマーの溶媒和状態に関する定量的類似性が確認された.
  • かせ村 知之, 山下 典男, 鈴木 克巳, 近土 隆, 畑 敏雄
    1978 年 35 巻 4 号 p. 215-222
    発行日: 1978/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アルカンジオール (ADO) とポリアルキレングリコール (PAG) の表面張力 (γ) およびこれらの試料のエイコサンとの界面張力 (γ12) を種々の温度において, 静泡法を用いて測定した. ADOおよびPAGの繰返し単位中のメチレン基の数 (m) とγおよびγ12との関係を検討する. ADO系のγは畑の式に従って, 1/ (m+2) に比例して増加し, γのm→∞への外挿値はポリエチレンの値と一致した. PAG系に対して我々はγと1/ (m+1) の間の直線関係を示す式をパラコールと分子容の加成性に基づいて誘導した. しかし, PAG系のγの測定値は式から予想される直線にはならなかった. 試料のエィコサンとの界面張力はmの増加に伴い急激に減少する. 表面張力の分散力成分 (γd) と極性成分 (γp) はγ12のデータからFowkes式によって計算した.
  • 角田 光雄, 千葉 克義, 福村 勉郎
    1978 年 35 巻 4 号 p. 223-228
    発行日: 1978/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    水中に浸せきした硫酸クロム酸混液浸せき, 紫外線照射, 放電処理ポリエチレン上に置いたニトロベンゼン滴の接触角の測定を行った. 硫酸クロム酸混液処理の場合には, 浸せき時間10分以内の処理でニトロベンゼンの接触角の増加は大体一定の値になるが, 紫外線照射処理では緩やかな増加がみられた. 電処理の場合には, 0.1mmHgの圧力で放電処理したポリエチレンで最大の接触角が観察された. 空気中における水およびニトロベンゼンの付着張力および水中におけるニトロベンゼンの付着張力を計算で求めた. 水中に浸せきした表面処理ポリエチレン上のニトロベンゼン接触角の増加と付着張力の減少は, 表面処理ポリエチレン表面上への親水性官能基の導入で説明される. 水中に浸せきしたポリエチレンに対するニトロベンゼンの付着張力の実験値と計算値の差が考察され, その原因としてポリエチレン表面上の水およびニトロベンゼンの吸着分子による拡張圧力の省略が推定された.
  • 角田 光雄, 大場 陽一, 福村 勉郎
    1978 年 35 巻 4 号 p. 229-235
    発行日: 1978/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    紫外線照射処理 (UV処理) したポリエチレンテレフタラートの表面の性質を調べた. UV処理によって, 種々な液体に対する接触角は減少し, ぬれ性が増加する. 赤外吸収スペクトルの観察から処理によって結晶性が若干減少する. しかし, ATR法では差が認められなかった. 触針法や電子顕微鏡観察結果から表面粗さの変化も認められなかった. 空気中で測定した接触角の低下, 臨界表面張力の増加, 一方, 水中におけるニトロベンゼンの接触角の増加などの結果からUV処理による極性基の表面導入が推定される. ピール強度による接着性は, 未処理のものに比較して処理をしたものは約4倍の増加が見られた. 水やグリセリンの付着張力の増加とピール強度の増加の傾向はよく対応している. これらの結果から表面処理面におけるピール強度の増加は表面における極性基 (特に水素結合性) の導入によって説明できる.
  • 諏訪 武, 渡辺 光崇, 岡本 次郎, 町 末男
    1978 年 35 巻 4 号 p. 237-243
    発行日: 1978/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    乳化剤不在下で得られたPTFEラテックスの安定化機構とその安定性について, 電気泳動によるζ電位, NaOHによる電導度滴定および塩添加 (KCI) による凝集速度などの実験結果を基に検討した. ζ電位のpH依存性と電導度滴定の結果からPTFE粒子表面に酸が存在することが明らかとなった. これらの酸はポリマー鎖末端に生成したカルボキシル基と粒子表面に吸着したフッ化水素であると推測される. ラテックス粒子の安定化は, 主にこれらの酸と水の放射線分解により生成したOH-によるものと考えられる. 疎水性粒子の分散安定性の理論 (DLVO理論) に基づいて, ラテックス粒子間のポテンシャルエネルギー曲線を求め, 実際に観察される現象と対比させた. KCl濃度が1mmol/l以下であれば, この曲線の山は50kT以上ある. また, ポリマー濃度が60wt%程度になってもラテックスは凝集を起こさない.
  • 酒井 五十治, 江川 哲夫, 藤村 保夫, 松本 恒隆
    1978 年 35 巻 4 号 p. 245-252
    発行日: 1978/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ボリアクリル酸エチル (PEA) -セメント系複合材の内部における相互作用機構を, PEおよびPEAがけん化されたモデル物質としてのアクリ酸エチル-アクリル酸共重合体 (EA-AA) を用い, 水和セメント粒子に対する吸着ボリマー量ならびに (水和セメントサスベンジョンの上澄み液) - (トルエン) 系 (A界面) の界面張力を測定することから検討した. 水和セメントに対するEA-AAの吸着量は, PEAの5.7倍であった. (水) - (EA-AAのトルエン溶液) 系の界面張力は, 水相のCa (OH) 2濃度の増加とともに低下した. A界面に吸着したEA-AAの結合Ca量はPEAの30倍であった。以上の諸結果より, 水和過程でPEAがけん化されて生成するEA-AA中のカルボキシル基と, セメント粒子表面に生成するCa (OH) 2とのイオン結合により, PEA-セメント粒子間の相互作用が非常に大きくなることを明らかにした.
  • 能美 隆, 牧野 広行, 真鍋 征一, 上出 健二, 河合 徹
    1978 年 35 巻 4 号 p. 253-261
    発行日: 1978/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高分子多孔膜中の気体の流れ機構を明らかにするために, 1次の平均孔径 (r1) が0.75~0.035μmの範囲の円筒状孔を持つ多孔膜の気体透過係数P (P1, P2) (P1, P2は多孔膜面の圧力, P1P2) と孔径頻度分布関数N (r) との関係, およびP (P1, P2) に及ぼす透過気体の化学構造の影響を検討した. 毛細管 (直径2r) 内の気体流れは, 2r≦λのとき (λは気体の平均自由行程) には自由分子流れ (F流れ) のみで, 2r>λのときには粘性流れとスリップ流れとが混在する流れ (V流れ) で近似できる. また2r=λを漢足する圧力をP0とするとP2P0<P1の条件下では毛細管入口付近ではV流れ, 出口付近ではF流れが起こると仮定すれば, P (P1, P2) の実測値は計算値と一致する. 無機分子気体について, 実測されたP (P1, P2) のP1, P2, N (r) , λ依存性は, 既報 (高分子論文集, 34, 729 (1977)) で提出した理論式によって説明できる. しかし, 2r1=0.035μmの高分子多孔膜でF流れが起こる条件下での有機分子気体のP (P1, P2) の実測値は理論値よりも大きい. この差は気体の沸点が高いほど大きく, 膜素材と気体との間の相互作用に関連した透過 (表面拡散など) の寄与が無視できないためと推論される.
  • かせ村 知之, 山下 典男, 鈴木 克巳, 近土 隆, 畑 敏雄
    1978 年 35 巻 4 号 p. 263-268
    発行日: 1978/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    異なる組成をもつエチレンープロピレン共重合体とテトラヒドロフランープロピレンオキシド共重合体の表面張力 (γ) を種々の温度で, 静泡法を用いて測定した. 一方, 共重合体とその組成との間の関係式を, それぞれの成分のパラコールと分子容の加成性を仮定して誘導した. 低表面張力成分のモル分率=x2<0.4の範囲では, 両方の共重合体のγの測定値は, 式から予想される直線とよく一致した. しかし, x2>0.4ではγは直線より小さくなった. この挙動は低表面張力成分の比較的長い連鎖の形成とその表面への吸着によって説明される. 表面エネルギーはx2とともに減少し, 表面エントロピーとMacLeod指数は共重合体の組成への大きな依存性はなかった.
  • 高橋 彰, 若林 宏, 本多 和彦, 加藤 忠哉
    1978 年 35 巻 4 号 p. 269-274
    発行日: 1978/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ABおよびABA型のスチレン-テトラヒドロフランブロック共重合体 (テトラヒドロフランプロックの分子量60,000~70,000) のぬれと表面のモルホロジーを検討した. シクロヘキサン溶液から製膜したフィルムへの水の接触角 (θ) 測定とオスミウム酸で染色したフィルムの電子顕微鏡観察を行った. cosθはブロック共重合体の組成に依存せず, テトラヒドロフランに富む共重合体のぬれはポリスチレンにほぼ同じであり, スチレンに富む共重合体はこの逆であった. 電子顕微鏡写真の解析からスチレン部の表面組成を求めた. スチレン部あるいはテトラヒドロフラン部の表面への蓄積はテトラヒドロフラン部の結晶化または界面活性によることが示された. cosθ, すなわち, ぬれは表面のモルホロジーに無関係に共重合体の表面組成の関数であることが分かった.
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