高分子論文集
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35 巻, 5 号
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  • 花房 廣明, 佐藤 行彦
    1978 年 35 巻 5 号 p. 277-282
    発行日: 1978/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    マイクロ波帯において高誘電率・低損失で, しかも引張り強度や可とう性などの機械的性質に優れた材料を得るために, 低損失の高分子とTiO2粒子との複合物の誘電特性および機械的性質について理論的・実験的検討を行った. まず, 複合物の誘電特性の複合則について検討し, LayleighおよびBöttcherによって提出された式を包括する, より一般的な複合則を導いた. この複合則から算出した複合物の誘電率および誘電正接とそれらの実測値とはよく一致した. 一方, 高分子にTiO2粒子を50vol%まで混合することにより, 誘電率が2.3-35の複合物を得た. また, TiO2粒子に吸着している水分を除去することにより, これらの複合物の誘電正接を3.4×10-4以下に減少させ得る見通しを得た. 複合物の可とう性はマトリックスである高分子に比べてかなり減少したが, 引張り強度はほとんど変わらなかった.
  • 山下 修蔵, 高倉 孝一, 今井 庸二, 増原 英一
    1978 年 35 巻 5 号 p. 283-289
    発行日: 1978/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    PVA-アクリル系モノマーのエマルショングラフト共重合体ラテックスから得られる膜について, 血液透析膜としての可能性を検討した. この膜は親水性, 疎水性のミクロ相分離構造を有し, 系中に生成するPVAジアルデヒドによるアセタール化反応で親水性相に橋かけを導入することで, 湿潤時の機械的性質が顕著に向上した. また, 透過性の改良のためPVAと相溶性の良好な親水性ポリマーとのブレンド不溶化膜についても検討した.
  • 古川 薫, 吉崎 修
    1978 年 35 巻 5 号 p. 291-298
    発行日: 1978/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ε-カプロラクタムの単純な加圧重合によるナイロン6の連続製造法において, 初期組成と重合条件による反応生成物の特性との定量的相関を見いだすため本研究を行った. 粘度安定剤としては酢酸又はブチルアミン, あるいはこれらの両者を0.05モル比以下で用い, 水分量0.3モル比以下とともに密閉容器中でラクタムを重合した. 十分平衡に達した生成物の物性を分析した. 粘度安定剤とポリマー末端基との間に等反応性を仮定して主反応の平衡定数を求めた. この定数は上の組成の範囲では組成による変化はほとんど見られなかった. 平衡での直鎖状分子数ST, 数平均重合度P, および残存ラクタム量xが平衡定数と初期組成を用いて理論的に導かれた. 得られた理論値は実測値によく一致し, 粘度安定剤と分子末端基の等反応性を仮定した平衡反応の取扱いが妥当であることが示された.
  • 古川 薫, 竹 勝生, 塚本 千秋, 吉崎 修
    1978 年 35 巻 5 号 p. 299-306
    発行日: 1978/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリカプロラクタム (PCL) の後重合反応における反応速度および平衡状態のポリマーの特性と重合条件の諸因子との定量的な関係を見いだすことを目的に本研究を行った. 減圧下の水蒸気吹き流し系でPCLを溶融した後, この溶融ポリマーをメタクレゾールに溶解し, 水分量を測定した. これより水蒸気圧とポリマーの中の水分溶解度につきヘンリーの法則に従う実験式を得た. 種々の温度および水蒸気圧の下でのPCLの後重合反応を動力学的に解析した. これより後重合の重合度上昇速度が, 粘度安定剤量, リン酸触媒量, 水蒸気圧および温度の関数として理論的に精度良く求められるようになった. 後重合反応の平衡重合度式を平衡論より理論的に導き, 実験値と良い一致を得た. これより初期重合時添加した粘度安定剤はほとんどすべてポリマー末端に結合すること, 又, 減圧加熱系でその粘度安定剤の離脱とカプロラクタムの再生は等反応的に起こることが分かった.
  • 半田 隆, 吉澤 秀二, 福岡 正芳
    1978 年 35 巻 5 号 p. 307-313
    発行日: 1978/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ブナ単板にスチレン (St) モノマーを含浸し電子線照射した木材-ポリマー複合体 (WPC) と, PStを注入したWPCの低温領域における誘電特性から, 木材とポリマーの分子レベルにおける相互作用を検討した. 木材空隙部分のPStがWPCのε′に対する寄与は大きいが, メチロール基の回転配向の活性化エネルギー (ΔE), Cole-Coleのパラメーターに対する寄与は認められず, 木材実質部分のメチロール基には影響を及ぼさない. 電子線照射により木材実質部分でPStが生成したWPCでは, ε′, ε″, ΔE, Cole-Coleのパラメーターは減少したことから, PStは木材実質部分のメチロール基にグラフト重合しており, セルロース, ヘミセルロースおよびリグニン鎖閥を押し広げて分散して存在し, グラフト重合に関与しないメチロール基の回転配向を容易にしたが, PStとメチロール基の相互作用のために回転配向はより多様性を示している.
  • 住田 雅夫, 船田 節生, 宮坂 啓象, 石川 欣造
    1978 年 35 巻 5 号 p. 315-321
    発行日: 1978/05/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    低密度ポリエチレンに粒子径の異なる球状ガラス粒子 (平均粒子径=35, 65, 105μm) を混練し, 一軸延伸試料の延伸軸に平行方向, 垂直方向, および45°方向の応力-ひずみ曲線, ポアソン比を測定し, このような粒子充てん一軸配向試料 (6方対称構造) の弾性的性質を決定する5個のコンプライアンスのうちS33, S11, S44, S13の4個のコンプライアンスとポアソン比ν0を測定し, fillerの充てんがこれらの値にどのような影響を与えるかを解析し次の結果を得た. (1) 同一粒子径のfillerを含む試料では充てん量の増大とともにS33, S11, S13の値が増大し, とりわけS33の増加率が一番大きい. (2) ポアソン比ν0はfillerの充てん量の増大とともに減少し, 同一充てん量では, fillerのサイズの減少とともにその値が減少する. (3) 同一充てん量を含む試料のヤング率はfillerのサイズの増大 (したがって表面積の減少) に伴ってわずかながら増大する傾向を示すが, その変化は小さい.
  • 森 哲夫, 山田 哲郎, 田中 隆一, 田中 武英
    1978 年 35 巻 5 号 p. 323-330
    発行日: 1978/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリグルタミン酸-γ-メチルの種々の部分加水分解物 (PMG-PGA) とポリオキシエチレングリコール (PEG, Mn=302,583, および980) から組成, 橋かけ密度およびカルボキシル基濃度を系統的に変化させた橋かけ高分子を合成した. その動的粘弾性はPMG-PGAの含量に最も強く依存するが, 組成が一定のときはその相構造の影響が大きい. 橋かけ高分子の相構造は, 反応溶液中で形成されるコレステリック液晶構造に依存し, PMG-PGAの側鎖カルボキシル基濃度が高いほど, メチルエステル基濃度が低いほど液晶を形成しやすく, 橋かけ高分子膜中の配向領域も多くなる.
  • 小関 健一, 後藤 義隆, 山岡 亜夫, 角田 隆弘
    1978 年 35 巻 5 号 p. 331-337
    発行日: 1978/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸2-ヒドロキシエチルとパラアジドベンゾイルクロリドとのエステル化反応で得られた感光基を内蔵するモノマー [メタクリル酸2- (p-アジドベンゾイルオキシ) エチル] を種々な条件下でラジカル重合して, 分子量の異なる感光性樹脂を得た. 同じユニット構造を持つと思われる13種類の感光性ポリマーの分子量分布をGPC測定により求め, 計算により各平均分子量および多分散性を求めた. 得られたポリマーの数平均分子量は12000-110000で, 多分散性の値は, 2.0-6.1であった. この樹脂の感光域は, 260-380nmにあり, その硬化膜は十分な感脂性と耐腐食性を有しており, 増感剤なしで高い感光性を示した. 感光性樹脂の画像特性の一つである感度は, グレースケール法により評価した. その結果, 平均分子量の増加に伴い, 感度の上昇が見られ, 又, 同じ平均分子量を示すポリマーでも, その多分散性の値の小さなものほど, 橋かけ効率が良く, 高感度であることが明らかとなった.
  • 上野 博, 大塚 晋也, 岸本 昭
    1978 年 35 巻 5 号 p. 339-344
    発行日: 1978/05/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    著者らは前報においてポリスチレンのbulk viscosity (η) とlocal viscosity (ξ) について報告した. 本報告ではこれらの結果に加え, 新たにηとbulk diffusion coefficient (DB) およびξとlocal diffusion coefficient (DL) との関係を検討した. その結果, 以下のことが明らかとなった. (1) Huecheの自己拡散係数と粘度の関係について, 分子重600-37000のポリスチレンのunperturbed dimensionおよび普遍定数φの検討からBuecheの関係DBη=const. が上記分子重範囲で成立することが明らかとなった. (2) n-バラフィン類の自己拡散係数とξとのプロットからDLξ=1.10×10-7 (cgs unit) が実験的に得られた. (3) ポリスチレンのDBDLの分子量依存性は異なり, からみ合いが起こる分子量以上ではlogDBがlogMWに対して直線的に変化するのに対し, logDLはlogMWに対してほとんど変化しない.
  • 香西 保明, 池田 能幸, 木下 裕
    1978 年 35 巻 5 号 p. 345-348
    発行日: 1978/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ナトリウムナフタリン (Na-NaPh) を触媒としてメタクリルアミド (MAAm) の水素移動重合を各種条件のもとで検討した. その結果, Na-NaPhはトルエン, キシレン, クロルベンゼンなどの溶媒中でMAAmの水素移動重合触媒として有効であり, 分子量は小さいが高収率でポリ-β-メチルアラニンを与えることを認めた. 重合における最適条件を示すと次のようである. 上述のいずれかの溶媒を使用し, MAAm1.0-1.5mol/l, Na-Naph0.05-0.15mol/lを乾燥した窒素気流中で110℃, 3-5時間反応すると, 粘度数0.06-0.07のポリ-β-メチルアラニンが90-95%の収率で得られる.
  • 山縣 知之, 石井 忠浩, 高仲 善明, 半田 隆
    1978 年 35 巻 5 号 p. 349-351
    発行日: 1978/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    芳香族ポリウレタン樹脂の光劣化反応は酸素が存在すると促進されることは知られている. しかし, 酸素の種類に関する検討を行った結果, この光反応は三重項酸素の濃度にはほとんど影響を受けず, 一重項酸素の濃度に著しく依存していることが明らかになった.
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